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真似と開閉と世界旅行

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着けるべきケリ~

 
前書き
火曜日に就職試験があるエミルです(笑)もしかしたら更新また遅れるかも・・・ではどうぞ。 

 
早貴~

「・・・」

アミュスフィアを外し、周りを見るが、里香の姿は無かった。一瞬焦ったが離れた位置から音がするので、夜食でも作ってくれてるのだろうか?

「・・・里香、ごめんね」

わたしは物音を立てずに玄関まで行き、靴を持ってから部屋の窓から出る。里香に話しても止められる・・・けど一刻も早くわたしはアスナに会いたかった。荷物も持たずに右足を引きずるように走り出す。ここからなら病院は遠くない筈だ。

「はっ・・・はっ・・・」

足が痛い。よく見れば雪も降ってきた。・・・余りにも薄着で来すぎたのかもしれない。とても寒かった。

「お姉ちゃん・・・お姉ちゃん・・・!」


でも、寒さを気にしてる余裕はなかった。足は勝手に進んでくれる。確実にわたしはアスナに近づいている。・・・ああ、だからだ。焦らないで、ゆっくりと進みながら周りを見れば気付けたんだ。


ーーーわたしに向かって突っ込んでくる車にーーー


「・・・!!」

ドンッ!

視界が、消えた。一瞬、意識が飛んだ。



























「う・・・あぁ・・・」

わたしは道路に横たわっていた。・・・ガードレールとか、歩行者と自動車を隔てる壁がないところを突っ込まれた。でもスピードはあまりなかったようだ。死ぬ感じはあまりしなかった。


「・・・ぐ・・・」

でも、ダメージは深刻だった。頭が揺れ、体が動かない。視界も歪み、焦点が合わない。その時、車から誰かが降りてきて、わたしの髪を掴んだ。

「いっ・・・」

そのまま引きずられ、路地裏に引き込まれる。

「・・・待ってたよ、早貴」

声がした。この声は・・・

「須・・・郷・・・?」


必死に顔を上げる。よくは見えないが、スーツの柄と顔立ちで何となく判別する。

「まったく・・・参っちゃうよねぇ・・・余計なことしてさ」

何かがおかしい。須郷の様子が・・・

「桐ヶ谷君も酷いよねぇ。お陰で痛みが全然消えないよ・・・」

ああ、ペイン・アブソーバのフィードバック・・・多分、片腕、胴、目に後遺症が残ってるのかもしれない。

「・・・ざまぁ、みろよ・・・自業自得・・・因果応報、よ・・・」

笑いながら言ってやると須郷がわたしを見た。

「・・・どうやら調子に乗ってるみたいだね。少し君は自覚し直した方がいいよ」

「なに、がよ・・・」

「君は泣き虫で、臆病で、何もできない弱虫だってことをね」

須郷がわたしに馬乗りになり、何か銀色に輝く物を取り出した。

「・・・!!」

目を凝らさなくても理解した。ナイフだ。刃渡りはよく解らないが、わたしを殺すには充分だ。

「・・・さあ、またお仕置きだ」

「ナイフで・・・殺すつもり・・・?わたしを殺したら、貴方は終わるわよ・・・!」


だが須郷はニヤニヤと浮かべた笑みを消さない。

「残念だけどね。僕は捕まらないよ。例え君を殺してもね。僕はアメリカに行く。あの実験のお陰で僕を欲しいという企業はあるんだ。少なくともこの国のアホな警察じゃ僕は捕まえられないさ」

「・・・!」

・・・狂ってる。頭にウジが湧いてるのか花畑が咲いてるのか・・・何にせよ、コイツは口じゃ止まらないし、止める気もない。

「・・・でも、君は殺さないよ。それ以上に利用価値があるからね」

須郷がナイフをわたしに近づけ・・・

ビリィ!

・・・着ていたシャツを、上から下まで引き裂いた。

「・・・え」

思わず思考が止まる。そして・・・須郷が何をしようとしているか理解した時、わたしは恐怖に支配された。

「っ!きゃあああああああああ!!!」

思い切り悲鳴を上げる。必死に須郷を押し退けようとするが須郷はビクともしない。

「悲鳴を上げても無駄だよ。ここは住宅街からは離れてるし、この時間は交通量もない。安心して君を汚せるのさ」

「やだっ、やだぁっ、どいて!」


「いいねぇ、いい表情だよ。君を壊して明日奈に見せたらどんな反応をするかなぁ?」


「い、いや・・・止めて・・・お願い・・・」

「くく・・・さぁ、もっといい声を聞かせてよ・・・」

須郷の手がわたしのズボンにかかる。わたしは恐怖で目を閉じた。・・・だが、耳に届いたのは須郷の声じゃなかった。

「ーーーーそこまでにしとけよ、変態野郎」

ゴッ、と音がして重みが消えた。恐る恐る目を開くと・・・

「咲!無事か!?」

・・・親友がいた。わたし・・・俺を抱き起こし、呼び掛けてくる。

「りょ、う・・・?どうして・・・」

「・・・話しは後にしよう。今は・・・」

亮はそう言うと立ち上がり、うずくまる須郷の胸ぐらを掴む。

「ぐ・・・!?」

「あんたが須郷か・・・思春やアスナのこと含めて色々あるが・・・取りあえず」


亮の左拳に力が籠められ、思い切り振りかぶる。

「・・・一発、ぶん殴らせろォッ!!!」

ゴォン!!

左腕を振り抜き、凄まじい音が響く。須郷はそのままよろめき、乗ってきた車にぶつかる。

「くそ、どいつもこいつも・・・おい!」

須郷が叫ぶと車の中から黒いスーツを来たゴツい男が数人、降りてくる。

「いいか?コイツらを捕まえろ。僕は病院に向かう」

「なっ!」

亮の表情が変わる。多分、和人が向かってるのだろう。だが須郷はそのまま車に乗り込み、行ってしまう。

「ちっ・・・邪魔をするな!」

亮は右隣に積まれていた鉄パイプを蹴りあげ、左手で掴む。対する男たちは全員ナイフを持っていた。

「時間がないんだ・・・一本で決める」

男が向かってきて、ナイフを突きだす。だが亮はそれを避け、鉄パイプを振り下ろす。

「面!」

ゴキャン!

「ぐぁ・・・」

・・・あっという間に一人を沈黙させる。続く二人目も・・・

「小手!」

手を叩き、ナイフを落としてから・・・

「胴ぉ!」

鉄パイプを腹にめり込ませた。これで、二人。車から出てきたのは四人・・・あれ?亮が対峙してるのはあと一人・・・と、そこまで考えた時、髪を引っ張られ、痛みが走った。

「そこまでだ!」

亮が三人目を打ち倒すと同時にわたしを拘束した男が叫ぶ。

「コイツがどうなってもいいのか!?」

「・・・お前、アホだろ。自分より力がある奴への人質は二人以上で初めて効果が出るんだ。無意味なことは止めろ」


亮が言うが、男の様子はおかしい。

「ど、どうせ失敗したら須郷様に実験道具にされるんだ・・・ならいっそ道連れに・・・」

「・・・っ」

亮の顔が歪む。コイツは本気だ。下手に刺激すればわたしを刺し殺す気でいる。それほどまでに須郷に恐怖を抱いているのだ。

「お、大人しく武器を捨てろ!」

亮が鉄パイプを投げ捨てる。

「よ、よし、動くなよ・・・」

・・・わたしのせいだ。わたしが、足を引っ張った。わたしは掴まれている髪の毛を見た。アスナに憧れて、アスナみたいになりたくて真似をして伸ばした、髪。その真ん中辺りを男は持っている。

「(・・・)」

よく考えれば私服のセンスも、好物も、アスナと同じだ。須郷が言った通り、わたしは“自分”を主張してこなかった。・・・じゃあ、今からやればいい。弱くない、みんなを見返す強いわたしを主張すれば・・・

「・・・っ!」

「な!?は、離せ!」

わたしは男のナイフを掴み、それを髪に近づけ・・・自らの髪を、切り裂いた。

「!?」

男の拘束が解かれ、前のめりに倒れる。亮がそれを見逃す筈がなく・・・

「っ、はあっ!」

ズン!

鳩尾に拳を叩き込んだ。そして亮はまたわたしを抱き抱える。

「・・・ほんと無茶するな。髪は女の命じゃないのか?」

「うる、さい・・・散髪に行く手間が省けた・・・だけ」

そこで気になる事を聞いてみた。

「どうして・・・ここが?」

亮はそれを聞くと笑いながら携帯を取り出した。それを受け取ると・・・

『咲さん!大丈夫ッスか!?』

『ちょっと、ボロボロじゃない!平気なの!?』

「あ・・・」

リパルと、詠の声。

「あの後思春がいきなりログアウトしてな。取りあえず兄貴を待って病院に行こうとしたんだけど・・・詠とリパルがいきなり人ん家の回線通って人の携帯の中に来て、『嫌な予感がする』って言ってきてな」


「・・・」

「リパルと詠はネットでお前が追われてるのを知ってたからな。目覚めてすぐに外を出歩くって解ってたんだよ。だから護衛係として俺が派遣されたんだ。凄かったぜ?まずお前の携帯のGPSを辿って貰ったら家の前で泣きながらお前の名前を呼ぶ篠崎さんがいてさ」

・・・里香に、バレちゃったんだ。後で謝んなきゃ・・・



「聞けばお前を匿ってて、少し目を離した隙にいなくなったって。あたしがちゃんと見てなかったせいだ。って泣き崩れてたぞ。んで、そっからは病院までのルートを二人に検索してもらって、全力で来たら悲鳴が聞こえたんだ。そこに向かって・・・今に至る」


『気持ちはわかるけど無茶し過ぎッス!』

『でも、間に合ってよかった・・・』


「・・・ごめん、二人とも・・・」


ふと亮がわたしを見て、顔を逸らしながら自分が来てたコートを差し出した。

「・・・とにかく、前隠せ」

ここでわたしは自分の身体を見た。シャツは真ん中を綺麗に割かれていて・・・わたしは、下着をつけてなかった。

「・・・変態」

「男に興奮する趣味はございません」

「身体は女ですが?」

「俺の親友は男です。心が」


コートを着て、亮の肩を借りながら歩くと自転車が会った。

「取りあえず後ろに乗れ」

「・・・2ケツッスか?」

「仕方ないだろ。急がないと」

渋々後ろに乗り、亮に掴まると亮は漕ぎ出した。・・・物凄いスピードで。

「ちょ、亮!?路面凍って・・・滑っ・・・」


「百も承知!飛ばすから落ちんなよ!」

・・・わたしは絶叫マシンに乗ったことはないけど、分かる。これは絶叫マシンよりも恐い。2ケツでドリフトとかなんなんだ。カーブのスピードが直線と変わらないって理論がわからない。だが、代わりにすぐに病院に到着した。再び亮に肩を借りて移動した時・・・ふと誰かがいた。

「あ・・・」

それは車に背中を預け、倒れていた。その男は・・・

「須郷・・・」

数センチ離れた位置にナイフが突き刺さっていて、須郷は白目を剥いて泡を吹いていた。


「・・・状況からして兄貴に返り討ちにあったんだろうな。ま、一発ぶん殴ったから良しとするか・・・」

多分、違う世界ならわたしも亮もコイツを殺したかもしれない。けどこの世界はどんな悪であれ、殺してはいけないのだ。

「・・・」

ふと思った。外史が可能性の塊なら、須郷の目論見が上手く行ってしまう世界もあるんじゃないかと。その時、アスナとキリトはどうなってしまうのか・・・いや、今はそんな想像はいい。今は・・・アスナに会いたい。気付けばわたしは病室の前にいた。知らずの内に亮に任せっきりだったようだ。


「・・・」

耳を済ませば、和人と明日奈の声が聞こえた。無事なんだ。それを理解した瞬間、張り詰めていたものが切れ・・・倒れた。

「咲!?おい、咲!?おいっ!」

ふと目の前に・・・“俺”がいた俺はわたしに向かって呟く。


“まだ終わりじゃない”

それを聞いて・・・わたしはゆっくり目を閉じた・・・・・・














































???~


・・・どこかの世界の荒野。そこで四人の少女が戦っていた。

「まったく・・・休む暇もないわね・・・」

「霊夢!口動かすより手を動かそうぜ」

「その言葉、貴女にも言えるわよ、魔理沙」

「ま、まぁまぁアリスさん・・・」

「次!右から来るわよ、早苗!」

彼女達に無数の光の矢が降り注ぐ。

「秘術『グレイソーマタージ』!」

「魔符『アーティフルサクリファイス』!」

東風谷 早苗、アリス・マーガトロイドの技が光の矢を消していく。



「こっちも行くぜ!恋符『マスタースパーク』!」

「蹴散らしてやるわ!霊符『夢想封印 散』!」


霧雨 魔理沙と博麗 霊夢もそれに続く。みるみる矢の数が減り、遂には全てなくなった。

「ま、楽勝ね。スペルカードもまだあるし・・・」

「しっかし、紫はなんでこんなとこまで連れてきたんだ?」

魔理沙の言葉に霊夢は溜め息をつく。

「“異変”だって言ってたでしょ?最近、種族を問わずに忽然と“消える”ことがあるらしいのよ」

早苗が頷く。

「人間の里でもその話題で持ちきりです。それに・・・」

「知ってるわよ。慧音とか、文も連絡が取れないんでしょ?」

アリスは人形の様子を見ながら呟く。

「・・・変ね。そんな異変聞いたことないわ」

「ていうか異変の殆どが聞いたことないわよ。レミリアの時といい幽々子の時といい・・・」

「・・・っと、お喋りは後だぜ。・・・次が来た」

再び無数の矢が空から迫る。

「私たちなら大丈夫です。次も・・・」

だが、霊夢は叫んだ。

「っ、違う!早苗、前!矢は囮よ!」

「え・・・!?」

早苗の目の前に黒い服を着た二刀流の男が迫る。

「バーチカル・スクエア!」

「きゃあ!?」

四連撃を防げずに切り裂かれ、早苗が吹き飛ぶ。

「な・・・」

「アリス、左だ!」

今度は白い服を着た男だ。

「上海!蓬莱!」

人形を使うが、間を縫われ、接近を許す。

「白夜殲滅剣!」

「ぐっ・・・!?」

そして・・・吹き飛ばされた少女二人に矢が降り注ぎ・・・その身を串刺しにした。

「奇跡が・・・起こらな・・・かっ、た・・・」

「私が、こんな・・・とこで・・・」

そして・・・二人とも無数の光となって、“消滅”した。


「早苗!」

「アリス!」

二人は叫びながらも背中を預け合う。

「おいおい・・・まさか今のが異変の正体か・・・?」

「そうっぽいわね・・・まったく、面倒臭いったらありゃしないわね」

再び矢と男達が迫ってきた時、声が響いた。

「アクセルシューター!」

「ハーケンセイバー!」

「バルムンク!」


魔法の攻撃が全てを纏めて吹き飛ばした。

「霊夢さん!無事ですか!?」

「え・・・あ、あんたもしかしてなのは?なんか色々デカくない?」

高町 なのはは少し笑う。

「外史間での時間の流れは共通ではありませんから・・・」

「なのは、時間がないよ。急がないと」

「うん、わかってるよ、フェイトちゃん」

なのはは霊夢に向き直る。

「霊夢さん、力を貸してください。このままじゃ幻想郷だけじゃなくて外史が危ないんです!」

「・・・外の世界にまで関わる気は・・・」

「お賽銭、入れますから」

「・・・仕方ないわね」

「軽っ!?えらい手の平返しやなぁ・・・」

「霊夢は金が命みたいなもんだからな・・・」

「・・・行きましょう。必ず勝たないと・・・必ず、ヴィヴィオ達の仇を・・・」

「なのは、落ち着いて」

「せや、敵討ちをしたいんはなのはちゃんだけやないんやで」

「うん、大丈夫。取り乱したら、相手の思う壺だから・・・」

「とにかく、どうやって外の世界に行くんだ?」

魔理沙が訪ねるとまた新しい声がした。

「・・・私たちが連れていくわ」


空間が開き、現れたのは身の長を越すかもしれないライフルを抱えた水色の髪の少女と、剣を腰に下げた紫がかった長い黒髪の少女だ。

「・・・誰よ、アンタたち」

「そうね。まずは自己紹介から」

ライフルを降ろしながら少女は言う。

「私は今、大澤 亮と五十嵐 咲がいる世界・・・ソードアート・オンラインの世界の傍観者、シノンよ。それでこっちが・・・」

「ボクはユウキだよ、よろしくね!」


「はぁ、長い1日になりそうだぜ・・・」

魔理沙のぼやきには誰も答えなかった・・・・・・




 
 

 
後書き

「ええと・・・終わり?」

早貴
「いや、SAO篇はもう一話あるよ」


「なんか、長いようで短いような・・・」

早貴
「ま、終わりは必ず来るからな。それじゃ、次回もよろしく!」 
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