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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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剣だって偶には世界を両断したいんです。その6

 
前書き
お気に入り登録が300を突破。この作品を300人くらいの誰かが常に監視していると考えるとコワく聞こえる不思議。
というかまたランキングに上がったんだけどこれはあれか。お試し投稿で遊んでないで続き書けという読者からのメッセージ?(←被害妄想) 

 
 
万物流転、諸行無常。この世に動かぬモノなどありはせず、変わらぬものも又ありはしない。世界は常に動き、変化し、時代と共にその在り方を変容させる。
・・・本当にそうだろうか。
例えば伝統というものは無くなることもあるが世代を超えて継承されるし、子は親に似る。シーラカンスだのカブトガニだのは相も変わらず大昔と同じ姿をしているし、人間が花を美しいと感じることにも今と昔で差異は無いはずだ。

変わらないものだってある。例えばそう――人が本を読んで知識を得ることとか。

「という訳なんだけどなのはちゃん、君の意見を聞こう!」
「図書館で大声出すのがマナー違反なのは昔から変わらないと思うよ?」
「・・・だよねー」

ちっ、うっせーよ。反省してまーす。なんて口が裂けても言えない正当な理論だったため自重するしつつ自嘲する。や、前世ではラノベと漫画ばっかり読んでたもので、なんか真面目に本読んでる自分が滑稽に見えてきたんですよ。

「それにしても・・・いつ読んでも源氏物語の面白さが分かんないなぁ。(さか)った馬鹿が馬鹿なことと変態行為してるだけじゃん?何が楽しいの?ばかなの?しぬの?あ、馬鹿だしもう死んでるか」
「何でそこまで辛辣!?というかそうなら何で読書感想文の本それにしたの!?」
「そりゃあ今の担任が光源氏大好きだからだよ。担任の好きなものはボロクソに貶しておくのが学生としてのマナーってものでしょ?」
「発想がゲスいよ苗ちゃん・・・」

どう見てもひねくれ者です本当にありが(ry・・・とまぁ今私は図書館で本を読みつつ感想文書いてます。あまり漢字使いすぎると「お前本当に小学生か?」と聞かれそうだけど面倒だからこのまんまでいいや。

しかしまさかなのはちゃんが玄関で待ち伏せしてるとは思わなかったんだ。確かに昨日メールで「明日の予定なぁに?」って聞かれたけど・・・だって今日日曜日だよ?友達と遊ぶなり家で過ごすなりいろいろやりたいことあったろうに何で一直線に私のもとに来てんの?・・・ハッ!?まさかキマシ!?キマシなのか!?だとしたら私はどうすればいいんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

「ぁぁぁぁぁ・・・・・・あ。原稿用紙足りなくなっちった。おやっさーん一枚追加で」
「はいはいもう突っ込まないよ?どれだけ光源氏の悪口書けば気が済むの苗ちゃん・・・」
「いや、今空蝉の気高さに話が移ったところ」
「・・・先生の困った顔が目に浮かぶなー」

そんなこんなで400字詰め原稿用紙4枚を消費したところで私の筆はようやく止まった。なのはちゃんはそんな私に深い深いため息とともに「何か納得いかないの」と呟いた。何故なら私はお喋りしながらも感想書きまくっていたのに対し、なのはちゃんのそれはあまり状況が芳しくなかったからだ。そりゃねーこちとらズルしてますから。中身がアラサーですから。

「ねぇ苗ちゃん」
「んー?何かなー?」
「もしも苗ちゃんが・・・何かこう、魔法みたいな力を手に入れたら、どう使う?」

突然何を言い出すのかとも思ったが、そういえば君は魔砲少女でしたね。いろいろ悩みもあるからついつい私に聞いちゃったわけですか?うーんそうだなー・・・人生の先輩として貴方に贈る言葉は・・・

「邪魔な地上のダニどもを全て焼き払い、唯一絶対の神としてこの地上世界に降臨するとか?」
「野心大きい!?」
「あっはっはっはっはっ・・・まぁさすがに冗談だよ」
「冗談じゃなかったら刺し違えても苗ちゃんを止めなきゃいけない所だよ・・・」
「言うねぇ。まぁ、あれかなぁ」

実体験を込めて言わせてもらうと、そんな力にゃ裏がある。例えば強すぎとか暴発とか寝ぼけて発動とか!!・・・あれ、前半はともかく後半私のうっかりのせい?

「その力、思ってるほど便利な力じゃないんじゃないかな?だから私なら最後の最後まで取っておいて、それでも使えないなら捨てちゃうと思うよ」

四宝剣を抜刀するのは最後の手段なり。だって使い方間違えたら大切なものをいろいろ両断しちゃいそうじゃん。ちなみに私が一番斬りたくないのは自分の良識と常識です。投げ捨てたら発想が世紀末まっしぐらになりそうだもん。
なのはちゃんはその言葉に静かに頷き、「そっか」と短い一言を発したのち、再び読書感想文に戻っていった。
・・・何か思うところがあったのか、それとも私が一人で滑っただけだったりして。・・・滑ったんだとしたら何だか心がもやもやするのでイヤガラセがてらに教えてあげよう。

「・・・2行前のところ、脱字してるよ?」
「うにゃー!?かーきーなーおーしー・・・」
「あははっ。じゃあ私別の本探してくるねー」

取りあえずそれだけ伝えて、私は別の本を探しに行くことにしたのであった。まる。
なお、こういうミスをした場合その文の近くで言葉を換えれば1文字縮められる部分を探すと書き直しが楽である。




「思ってるほど便利な力じゃない、かぁ・・・」

その言葉が耳に残った。そして最後まで取っておくという事は、多分苗ちゃんはあの剣をあんまり使いたくないのかな?
(でもそれなら何で学校で剣を振ったのかが分かんなくなっちゃうなぁ・・・)
分かったようで結局分からなかった。言動もよくわからないし本当に魔導士なのかもわからない。でもひとつ分かったことがある。それは・・・

「何だか正体が分かったところで私たちの関係は変わらないような気がしてきた・・・」

苗ちゃんは多分そういう子だ。だからどんな道を行ってもきっと同じ出口、すなわちいつもの苗ちゃんが待ってるような気がする。ならそれは何も変わってないのと同じではないか。

真面目に考えるだけ時間の無駄だと勝手に結論付けたなのはは、とりあえず後でフェレットをイジメないように忠告だけしておこうと決めて読書感想文の作成に取り掛かった。



・・・数分後、苗がメモ張の隅に走り書きしてあった「感想文の簡単な書き方」を発見。それによって筆が進んだものの、その書き方と苗自身の感想文の書き方が全く違うことん気付いて「もしかして、私のために?」と感動していたとか。



 = =



車いす、ああ車椅子、車イス。人生で一度も乗ったことない車イス。乗らない方が幸せのような気がするし、乗りたいと考えていたのもせいぜい小学生くらいの頃までだが。

「何なら車イス仲間、なってみんか?」
「お断りします」

普通の仲間でいいです。ブンブーンとかフライングマンとかヨクバみたいな・・・あ、どれも死ぬじゃん。
普通って何だっけ。それはね、佐藤さんってことだよ(?)。

「エンディングまで、泣いたらあかんよ」
「でも涙が出ちゃう・・・だって女の子だもん!」
「なら涙の数だけ強くなりぃや」

ボケたらネタであしらわれた。この車イス娘、出来る!きっと彼女の父親はイタリアギャングで車イスの中にヤバイ兵器を積んでいるに違いない、などと勝手すぎるほど勝手な妄想をしつつも彼女の本を抱えて並び歩く。
何か高いところの本取ってたら下からもの欲しそうな目でこっちを見ていたので本を取ってあげ、そのまま一緒に歩いているのだ。どうせ暇だしノリもいいから話し相手として不足はない。

「私、(おおとり)苗っていうんだ。お嬢の名前は?」
「何やそのお嬢って?まぁええわ。私は八神はやて言うねん。よろしゅうな!」

うむ、元気があってよろしい。お姉さんにはその若々しさに満ちあふれた笑顔が眩しいですよ。
車イス少女ことはやては見た通り足が悪いらしく、そのせいで学校も休学中。暇を持て余してはこの図書館で本を読み漁っているらしい。

「親御さんとか両親が付き添ったりしてくんないの?」
「ああ、その・・・おらへんねん」
「ふぅん、遠くへ出かけちゃったんだ。銀河鉄道でもたどり着けない遠くへ」
「うん、そんなところや」

今のはジョークなどではなく、割と本気で言った言葉だ。あの口ごもった感じから他人にホイホイ言いたくない事だったのは明白なのでそう推察したが、当たっていた模様。謎の足長おじさんの資金援助とお医者さんがよくしてくれるから不便はあってもさほど生活に困ってはいないそうだ。

「本を持ってあげたのも余計なお世話だったかな?かな?」
「いや、持ってくれたんは普通にうれしいわ」
「そっかそっか」
「・・・謝らへんのやな」
「何が?」
「家族の事。大体の人は気付いたら謝んねん」

それは気にしている訳ではなく純粋な疑問みたいだね。そんなの答えは決まってる。

「謝る理由ないし、謝られ飽きてるでしょ?」
「まぁな。苗ちゃん変わっとるなぁ?友達少ないやろ!」
「いるもん!16進数換算で11人いるもん!」
「よぉ分からんけど少ないってことでええんやな?そもそも11人ってちょっと微妙な数やし」
「うわーんイジワル―!」

はやては思う。彼女に特別こちらを気遣ってる雰囲気は感じられない。本当に家族の事に関して謝る必要性を感じないのだろう。
実を言うとはやては彼女の言う通り謝られ飽きていた。皆家族の事になると大抵俯いて「ごめん」という。だがそんなことを謝られたって正直困る。何故なら自分はとっくに今の環境を受け入れているし、両親がいないことは事実だ。そんな既に終わったことについて何度も謝られてもはやては嬉しくないし、そのせいで空気が重くなるのも会話に飢えている彼女には苦痛だった。

だから苗の無神経ともいえるこの態度が、はやてにとっては新鮮だった。だからだろうか、はやてはこの短期間で鳳苗という人物に惹かれはじめていた。それは単に今までにないタイプの人間だったからにすぎないのか、それともそれが苗という人間の魅力なのか、将又運命のいたずらというやつが結び付けたのか・・・それは重要ではない。

はやてにとって重要な事柄はただ一つ。



この日、彼女は鳳苗という少女と――初めて同年代の少女と、友達になった。



(これは家に帰ったら早速チャット仲間に報告やな!)

・・・ちなみに彼女のチャット仲間は「栗ご飯とカメハメ波」という人と「ヒースクリフ」と名乗る人の2人しかいなかったりする。




その頃・・・

「苗ちゃん遅いなぁ~・・・もしかして忘れられてる?」
≪魔力反応は未だに図書館内です≫

感想文は書き終わったものの今度は苗がいつまでたっても戻って来ず、退屈に潰されかけているなのはであった。
暇なので脳内魔法訓練で暇をつぶした!精度が3あがった!ディバインシューターが3つ同時に出せるようになった!!

 
 

 
後書き
昔「もしあなたが物語の主人公ならどうする?」という質問文が国語の授業で出たので「物語の登場人物やるのダルイから主要人物ガン無視する」と書いて提出したら「とても君らしい回答だ」と○がついて返ってきた。あの人は俺を何だと思ってたんだ。
しかも後で知ったが俺の内申書には「自他共に厳しい」と書かれていたらしい。だからあの人は俺を何だと思っていたんだ。厳しい面倒くさがりって何ジャンルだよ。 
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