真似と開閉と世界旅行
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雪降る街~
前書き
雪降る街にいるのは少しですが・・・ではどうぞ。
俺達は知事の家に到着したが・・・
「・・・お兄さん!?」
・・・知事がジェイドを見てそう言うと、全員がビックリする。
「お兄さん!?え!?マジ!?」
「やあ、ネフリー。久しぶりですね。あなたの結婚式以来ですか?」
「お兄さん!どうなってるの!?アクゼリュスで亡くなったって・・・」
「実はですねぇ・・・」
ジェイドが事情を話す。
「・・・何だか途方もない話だけれど、無事で何よりだわ。念のためタルタロスを点検させるから、ピオニー様にお会いしてね。とても心配しておられたわ」
「おや、私は死んだと思われているのでは?」
「お兄さんが生きてると信じていたのはピオニー様だけよ。皆さんも出発の準備ができるまでしばらくお待ちください」
・・・どうやらネフリーさんは宿も取ってくれたみたいだった。・・・更に仰天。あのディストもここの出身らしい。あ、そうそう。ガイから聞いたのだが、フォミクリー・・・つまりレプリカ技術を生み出したのはジェイドらしい。・・・つまり、ルークが生まれたのは間接的とはいえ、元凶はジェイド・・・と言っても差し控えないらしい(もっとも、ルークはそれなりに感謝していたが)・・・とにかく、俺達はホテルに到着する。
「知事から承っています。ごゆっくりどうぞ」
「あ、俺ネフリーさんトコに忘れ物した。行ってくる」
ルークがやけに棒読みでそう言った。
「俺も行こうか?」
「ネフリーさん、女だぞ」
「美人を見るのは好きだ」
「ガイも男性ですものね・・・」
「年上の人妻だよ~?」
「や、違うぞ!変な意味じゃなくて・・・」
「ご主人様、ボクも行くですの」
「あーもう、うぜぇって!俺一人でいいよ!」
ルークはそう言って走り去っていく。
「・・・変な奴」
大方ネフリーさんに話を聞きにいったんだろうけど・・・
「俺達は休むか・・・な、愛依?」
「・・・あ、うん」
ぐるる~・・・
「・・・!」
愛依が顔を赤くして腹を抑える。
「・・・飯食いに行くか?」
「・・・(コクッ)」
俺達はジェイドに一言言ってからホテルのレストランに入る。
「いらっしゃいませ、こちらの・・・席・・・へ・・・」
いきなりウエイトレスが俺を見て固まる。
「・・・咲、さん?」
「え・・・あ、な、撫子!?」
服装や髪型が違うのでお互いに気づけなかった。
「何やってんだ。早く案内・・・って、あ」
奥から出てきたのは・・・黒羽だ。
「な、何で黒羽まで・・・」
「いや、咲の手助けをしようとしたら転移がズレてな」
「・・・凍えそうになりながら、ここに到着して、アルバイトをして宿代を稼いでいたんです」
「そうだったのか。まったく、ビックリ・・・愛依?」
振り向くと、愛依は両手で両腕を掴んでガタガタと震えていた。
「わ、わた・・・う、あ・・・」
・・・そうだ。愛依はこの二人とユエを消し、更にそれによって増長したシィの闇を奪ったんだっけか・・・
「・・・悪い、少し表に出れないか?」
「・・・わかりました」
「・・・ああ、もうすぐ休憩時間になるから、先に行っててくれ」
・・・俺達は外に出るが、愛依は変わらず震えていた。・・・寒いからではなく、恐怖と罪悪感で、だ。
「お待たせしました」
「ああ、悪いな」
「・・・ッ!」
愛依がゆっくり立ち上がり、撫子達を見る。
「ハッ、ハッ、フッ・・・」
胸元を抑え、過呼吸気味になりながらもしっかりと相手を見る。・・・そして・・・
「ご・・・ごめ・・・ごめんな、さい!」
・・・謝罪を口にした。・・・いくらガイの言葉で多少マシになったとは言え、その恨みを持たれる“ご本人”を見たのであれば、そういうわけにはいかない。
「わた、し・・・浅はかで・・・考えてなくて・・・傷、傷つけて・・・う、うぁ・・・ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
遂には言葉が出なくなり、ただごめんなさいと言い続ける。・・・俺はこれ以上見ていられなくなり、愛依に話しかけようとしたら・・・先に黒羽が何かを渡した。
「ほら」
「え・・・」
それは魔法瓶だった。何かの飲み物のようだが・・・
「寒いだろ?俺が作った特製スープだ。暖まるぞ」
「どう、して・・・」
「別にあの時の事は気にしていない。・・・やられた俺達も俺達だからな」
「・・・で、でも」
「いいんです。こちらは許してるんですから」
「そ、それじゃあこっちの気が・・・」
すると黒羽がため息を吐く。
「・・・んじゃ、目ぇ閉じてくれ」
「・・・!」
愛依はそれを聞いて身体を強張らせながら目を閉じる。そして黒羽は手を上げ・・・
「・・・そら」
・・・愛依の額にデコピンをした。
パチン
「あた!?・・・え!?」
殴られると思っていたのか、愛依は唖然としていた。
「これであの時のはチャラな。・・・あ、撫子の分もあるか。・・・撫子」
「はい」
再び愛依の額にデコピンが炸裂する。
「あいた!?」
愛依が涙目になりながら赤くなった額を擦る。
「な、な・・・」
愛依も思考が追い付かず、ずっと黒羽と撫子を交互に見ている。
「さっさとスープ飲め。冷めるぞ?」
「え、あ・・・う、うん・・・」
愛依が慌てて・・・でもゆっくりとスープを口にする。
「あ・・・」
愛依の目にまた涙が溜まる。
「おい、しい・・・」
「だろ?・・・それに、腹も空いてるみたいだしな、特別にフルコースを作ってやる」
「・・・」
「・・・俺は咲や亮みたいに気を使える訳じゃないけどな・・・」
黒羽が頬を掻く。
「・・・とにかく、お前に関しては特に恨んでもないし、嫌いな訳でもない」
愛依は再びうずくまってしまう。
「愛依・・・」
「・・・ありがとう・・・」
「・・・泣き止んだらレストランに来いよ」
「・・・話は終わりましたか・・・」
しばらく黙っていた撫子を見ると、もの凄いスピードで震えていた。
「さ、さささ、寒いです・・・は、早く中に・・・」
「・・・く、くくく・・・」
俺は笑いながら中に戻る。すると、ジェイドがいた。
「おや、随分数が増えていますね。・・・もしかして、隠し子か何かですか?」
「あのな・・・まあ、確かに黒羽と撫子は小さいけど・・・それでも、隠し子な訳あるか!」
「そうですか。・・・ですが、そちらのお二人と知り合いに見えましたが・・・あなたは記憶が無い筈では?」
「・・・ッ!?」
僅かに反応してしまう。・・・当然、ジェイドがそれを見逃す筈がない。
「・・・愛依、先に行っててくれるか?」
「・・・わかった」
三人はエレベーターに乗る。
「・・・まったく、これは秘密で通そうとしたんだけどな・・・」
俺は話す。・・・全てを、真実を。当然、それに併せて俺の“力”についても。
「・・・にわかには信じがたいですが・・・それを真実だと認めざるを得ませんね。否定しようにも証拠がありすぎる」
「・・・何だ。アンタならイレギュラーは認めなさそうなもんだけど」
「いくらなんでも事実を否定する真似はしませんよ。・・・この事は秘密にした方がいいですか?」
「・・・ああ。アンタは理解してくれても、他がそうだとは限らないしな」
「・・・わかりました」
「・・・そんじゃ、次はこっちの番だ」
俺はジェイドを見る。
「この街の二人の出身・・・バルフォア博士とネイス博士ってのはジェイドとディストだな?」
「・・・その通りです」
「街の人が口にしていたが・・・この街にはゲルダ・ネビリムという先生がいたそうだな」
「・・・はい」
「ネビリムさんは街の子供達に様々な事を教え、街の人気者だった」
「・・・」
「・・・だけどある日、ネビリムさんの家が火事になり、ネビリムさんは亡くなった・・・」
「・・・」
「・・・確か、フォミクリーの技術を作り出したのはジェイドだったよな?」
「・・・その様子ですと、気づきましたか」
「ああ。ジェイド、アンタは何らかの形でネビリムさんを“造りだそう”としたんだ」
「・・・あなたは頭が良いですね。・・・私が最初にフォミクリーを・・・レプリカを生み出したのは九歳の時です」
「・・・そんなに早く」
俺は驚きを隠せなかった。
「ネフリーのお気に入りの人形が壊れましてね。・・・その時に」
「・・・それで」
「その時、ネビリム先生に出会ったのです。・・・あの人は第七音素が使えた。・・・尊敬していたんです」
「・・・」
「・・・ところがある日、私は素養が無いのに第七音素を使おうとしてしまった。・・・結果、制御不能の譜術が家を焼き払いました。・・・ネビリム先生は重傷を負った。その時何を血迷ったのか、私はこう考えてしまった」
「・・・」
「『今ならネビリム先生を生き返らせることができる』・・・とね」
「ッ!?」
「結果生まれたのはただの化け物でした。・・・今にして思えば、私はネビリム先生に許しを請いたいんでしょう。自分が楽になる為に・・・」
「ジェイド・・・」
「・・・ですが、どうしようと所詮レプリカはレプリカ。私は一生過去の罪に苛まれるのです」
「・・・悪かったな。話しづらい事を・・・」
「あなたも話しづらい事を話してくれましたからね」
「・・・俺、アンタのこと、ただのムカつく堅い軍人って思ってたけど・・・誤解してたみたいだ」
「いえいえ、私ほど柔らかい軍人はいませんよ?」
「よく言うよ。・・・んで、この事も秘密の方がいいよな?」
俺が聞くとジェイドは眼鏡を上げる。
「ええ、お願いします。・・・きっとルークもネフリーに話を聞いているでしょうから、ルークにも口止めしておきます」
「そっか。・・・ふぅ、重苦しい話で疲れた」
「・・・では、保護者はもう行った方がいいのでは?」
「は?保護者?」
「娘を一人にしても良いのですか?」
それで愛依のことだと気づき。俺はため息を吐く。
「誰が娘だっての・・・つーかアンタとアニスの方がよっぽど親子に見えるっつの?」
「おや、知らなかったのですか?私とアニスは実は親子・・・」
「は?嘘だろ!?」
「・・・だったら毎日騒がしいでしょうねぇ」
俺はずっこける。
「こ、このオッサンは・・・!」
「はっはっは。さて、そろそろ行ってみてはどうですか?」
俺はもう一度ため息を吐き、ジェイドに背を向ける。そしてレストランには“貸し切り”の文字。中に入ると・・・
「うわぁ」
思わずそう漏らす。何故なら大量の料理が並べられていたからだ。
「・・・黒羽、作りすぎじゃないか?」
キッチンに近づき、そう言うと黒羽が指差す。
「・・・あれ見てそう言えるか?」
真ん中の席には・・・尋常じゃないスピードで料理を食べる愛依の姿。
「・・・よく食べるな」
「俺も驚いた。チーフが材料を無料で使っていいって言ってくれたからな・・・許可された材料を見て多すぎだろ、なんて考えてたのがバカらしい・・・」
見ると愛依は食べながら撫子と楽しそうに話をしていた。
「・・・仲良さそうだな」
「最初はまだビクついてたけどな」
「愛依ー。あんまり食うと太るぜー」
すると愛依がすぐに言葉を返してくる。
「うるさい。いいんだよ、アタシは太らない体質なんだから!」
・・・そのまま時は流れ・・・次の日、撫子と黒羽も着いてくる。皆には意外にもジェイドが説得してくれた。
「・・・んで、グランコクマに行くためにはこの森を抜けるのか・・・」
テオルの森。グランコクマに行くにはここを抜けなくてはならない。
「何者だ!」
マルクト兵が身構える。
「私はマルクト帝国第三師団師団長、ジェイド・カーティス大佐だ」
「カーティス大佐!?大佐はアクゼリュス消滅に巻き込まれたと・・・」
「私の身の証は、ケテルブルクのオズボーン子爵が保証する。皇帝陛下への謁見を希望したい」
「大佐お一人でしたらここをお通しできますが・・・」
「えーっ!こちらはローレライ教団の導師イオンであらせられますよ!」
「通してくれたっていいだろ!」
アニスとルークが言うが・・・
「いえ。これが罠とも限りません。たとえダアトの方でもお断りします」
「皆さんはここで待っていて下さい。私が陛下にお会いできればすぐに通行許可を下さいます」
「それまでここに置いてけぼりか。まあ仕方ないさ」
「・・・ちぇっ」
ガイに言われてルークが引き下がる。・・・そのまましばらく経ち・・・
「・・・遅いな、ジェイド」
俺はぼやく。
「ただ待つのも結構大変ですわね」
バキィン・・・
「ぐわぁぁ・・・!」
俺達は一斉に立ち上がる。
「今のは・・・!?」
「悲鳴ですの・・・」
「行ってみるか」
黒羽がそう言うのと同時に俺達は走り出す。・・・その途中、マルクト兵が倒れていた。
「しっかりなさい!」
「神託の盾の兵士が・・・くそ・・・」
そう呟いてマルクト兵の首がガクンと下がる。
「神託の盾・・・まさか兄さん・・・?」
「グランコクマで何をしようってんだ?」
「まさかセフィロトツリーを消すための作業とか?」
「いえ、このあたりにセフィロトはない筈ですが・・・」
イオンの言葉にルークが返す。
「話してても拉致があかねぇ!神託の盾の奴を追いかけて取っ捕まえようぜ」
「そうですわね。こんな狼藉を許してはなりませんっ!」
「待ってください」
撫子が二人を止める。
「勝手に入ってマルクト軍に見つかったら不味いです」
「・・・じゃあ、見つからないように行くしかないと思う」
愛依がそう撫子に言う。
「かくれんぼか。イオン様、ドジらないで下さいね」
「あ、はい!」
そのまま森に入るが、やはりこの大人数だ。
「・・・厳しいですね」
撫子が呟く。
「何とか隙を作れればな・・・」
その時、黒羽と撫子が相談する。
「ナタリアさん、予備の服はありますか?」
「?ございますわよ。でも・・・」
「ちょっと貸してくれないか?」
「構いませんが・・・」
そして二人が俺を見てニヤリと笑う。
「え・・・な、なんだよ。何でジリジリ近寄ってーーーーーーーーーーー」
「・・・む、そこ!何故この森にいる!」
「す、すみません・・・道に迷ってしまって・・・」
「ここは立ち入り禁止だ。さっさと帰れ!」
「で、でも・・・魔物がいて・・・怖くて・・・」
「・・・」
「お、お願いします・・・森を出るまででいいので・・・一緒に来てくれませんか・・・?」
「・・・仕方ない。わかった」
「あら・・・首にゴミがついていますよ?」
「・・・特に気にすることでは・・・」
「いいえ、せめてものお礼です・・・ふっ!」
ガッ!
「ぐ・・・!?」
そう言って首に手刀を落とし、気絶させる。
「・・・くそっ!何で女装しなきゃなんねぇんだよ!」
「似合ってますよ、咲さん」
俺は今・・・ナタリアの服を着て、髪を下ろして女装していた。
「何で俺なんだよ!ナタリアやティアでもいいだろ!?」
「私では上手く気絶させられませんもの」
「私も演技は苦手だわ」
「じゃあアニスや撫子に黒羽でも同じだろ!?」
「私じゃ首まで手が届かないもん。気絶させる力もないし♪」
「その通りだな」
「そうですよ」
「黒羽はともかく撫子には影があんだろーが!?」
「すみません、つい忘れてました」
「嘘つけ!あと黒羽、今カメラ持ってたろ!」
「安心しろ。もうカメラはない。クレス達に送ったからな」
「何してくれとんじゃああああ!!ルークと愛依!んなあからさまに顔を逸らして笑いを堪えるな!」
「わ、わりぃ・・・で、でもよ・・・」
「笑うなって方が・・・む、むり・・・!」
「サキ、いっそ私のメイドになります?」
「何で執事でも召し使いでもなくメイドなんだよ!おかしいだろっ!」
「はは、大変だな、サキ」
「笑い事じゃねえよ・・・」
そう言ってガイに近寄ったら・・・ガイが逃げた。
「・・・ガイ?」
「あ、いや・・・つい」
「イオン・・・」
「似合ってると思いますよ」
「違う・・・女装の感想が聞きたいんじゃなくて・・・!」
その時、パシャ、っと音がした。
「・・・黒羽?」
「いや、今のは俺じゃ・・・」
みんなが首を振り・・・俺は隅に行ってリパルを取り出す。
「素直に白状しなければ折る」
『ごごごごごめんなさいッスーーー!?』
犯人はリパルだった。
「写真消せ。即行。OK?」
『わわ、わかったッス!・・・あ』
「・・・?」
『う、うっかりリョウコウさんの所に送信しちゃったッス・・・』
「・・・」
『・・・』
「・・・(ニコッ)」
『・・・(ホッ)』
「~~~~~~!!!!!」
『いだだだだだだだだ!?』
マジでへし折りそうな程全力でリパルに力を加える。・・・とにかく、俺は再び着替える。
「もうすぐ出口だぞ。神託の盾の奴、もう街に入っちまったのか?」
「・・・マルクトの兵が倒れていますわ!」
ナタリアが近づいた・・・瞬間、ラルゴが上から鎌を振り下ろしてくる。
「ナタ・・・!」
だがナタリアはすぐ反応し、後ろに跳びながら矢を放つ。
カキン!
「お姫様にしてはいい反応だな」
「おまえは砂漠で会った・・・ラルゴ!」
「侵入者はおまえだったのか!グランコクマに何の用だ!」
ルークがナタリアに近づき、剣を構える。
「前ばかり気にしてはいかんな。坊主」
「え?」
その直後、“ガイが”ルークに向かって刀を振り下ろした。ティアがルークを庇い、何とか避ける。
「ガイ!?」
「ガイさん!?どうしたんですか!」
愛依が偃月刀を構えながら混乱する。
「いけません!カースロットです!どこかにシンクがいるはず・・・!」
その間にもガイはルークに斬りかかる。
ガキィン!
「おっと、俺を忘れるなよ」
「させませんわ!」
ナタリアが矢を放つ。
「ふ、ふはははははっ!やってくれるな、姫」
そして遂にルークの剣が弾かれてしまう。・・・その時、地震が起きた。
「きゃっ、また地震!」
・・・その時、見えた。一本だけ落ちる葉が多い樹がある。
「撫子、上!」
「ッ!操!」
影が樹を貫き、シンクが落ちてくる。
「・・・地震で気配を消しきれなかったか」
「やっぱりイオンを狙ってるのか!それとも別の目的か!」
愛依は倒れたガイに駆け寄る。
「誰の指示だ!ヴァンか!?モースか!?」
俺の言葉にラルゴが返す。
「どちらでも同じことよ。俺達は導師イオンを必要としている」
「アクゼリュスと一緒に消滅したと思っていたが・・・大した生命力だな」
「ぬけぬけと・・・!街一つを消滅させておいてよくもそんな・・・!」
ナタリアが弓矢を構える。・・・その言葉にシンクが鼻で笑う。
「はき違えるな。消滅させたのはそこのレプリカだ」
「何の騒ぎだ!」
マルクト兵が近づいてくる。
「ラルゴ、いったん退くよ!」
「やむをえんな・・・」
二人が去っていく。
「何だ、お前達は!」
「カーティス大佐をお待ちしていましたが、不審な人影を発見し、ここまで追ってきました」
ティアが言う。
「不審な人影?先ほど逃げた連中のことか?」
「神託の盾騎士団の者です。彼らと戦闘になって仲間が倒れました」
「だがお前達の中にも神託の盾騎士団の者がいるな。・・・怪しい奴等だ。連行するぞ」
「・・・抵抗しない方がいいよな」
「当たり前でしょう」
・・・俺達はマルクト兵に従う。そしてグランコクマに入り・・・
「フリングス少将!」
「ご苦労だった。彼らはこちらで引き取るが、問題ないな?」
「はっ!」
「ルーク殿ですね。ファブレ公爵のご子息の」
「どうして俺のことを・・・!」
「ジェイド大佐から、あなた方をテオルの森の外へ迎えに行って欲しいと頼まれました。その前に森に入られたようですが・・・」
「すみません。マルクトの方が殺されていたものですから、このままでは危険だと思って・・・」
ティアが謝るが、フリングス将軍は首を振る。
「いえ、お礼を言うのはこちらの方です。ただ騒ぎになってしまいましたので、皇帝陛下に謁見するまで皆さんは捕虜扱いとさせて頂きます」
「そんなのはいいよ!それよりガイが!仲間が倒れちまって・・・」
「彼はカースロットにかけられています。しかも抵抗できないほど深く冒されたようです。どこか安静にできる場所を貸してくだされば、僕が解呪します」
イオンが言うとルークがイオンを見る。
「おまえ、これを何とかできるのか?」
「というより、僕にしか解けないでしょう。これは本来、導師にしか伝えられていないダアト式譜術の一つですから」
「わかりました。城下に宿を取らせましょう。しかし陛下への謁見が・・・」
「皇帝陛下にはいずれ別の機会にお目にかかります。今はガイの方が心配です」
「わかりました。では部下を宿に残します」
「私も残りますっ!イオン様の護衛なんですから」
「待てよ!俺も一緒に・・・!」
「・・・ルーク。いずれわかることですから、今、お話しておきます」
イオンが言いづらそうに話す。
「カースロットはけして意のままに相手を操れる術ではないんです」
「どういうことだ?」
「カースロットは記憶を揺り起こし、理性を麻痺させる術。つまり・・・元々ガイにあなたへの強い殺意がなければ攻撃するような真似はできない。・・・そういうことです」
「・・・そ、そんな・・・」
「解呪が済むまでガイに近寄ってはなりません」
そう言ってイオン達は歩いていく。
「・・・ちょっと一人にしてくれ」
俺達はルークを置いて街を回る。
「ガイさんは・・・どうしたんだよ」
愛依が聞いてくる。
「カースロット・・・か」
「でも、ガイさんはルークさんの使用人なんだろ!?だったら殺すチャンスはいくらでもあった・・・」
「愛依、やけに必死だけど・・・」
「・・・誰かの言いなりで誰かを傷つけるなんて・・・そんなの・・・」
愛依がうつ向いてしまう。
「愛依?」
「・・・何でもない」
愛依は海を眺める。
「海・・・か」
「どうした?」
「いや・・・懐かしい気がしてさ・・・椿と見た海が・・・っ!」
「愛依!?」
愛依が頭を押さえてうずくまる。
「・・・う、あああ・・・!」
「愛依!?しっかりしろ、愛依!」
「・・・もう、大・・・丈夫・・・」
愛依が立ち上がる。・・・その顔色は悪い。
「愛依・・・お前」
「大丈夫だからさ・・・」
「・・・おーい!サキー!」
「ルーク?」
・・・ルークとティアがやって来る。・・・どうやらティアがルークを励ましたらしく、ルークは立ち直って陛下に会いに行くと言った。俺達は合流して陛下に謁見する。
「よう、あんた達か。俺のジェイドを連れ回して返しちゃくれなかったのか」
「・・・は?」
「こいつ封印術なんて喰らいやがって。使えない奴で困ったろう?」
・・・ジェイドはどうやら俺と合流する前・・・タルタロスに襲撃してきたラルゴに封印術を喰らって弱体化してるらしい・・・あれでか?
「いや・・・そんなことは・・・」
「陛下。客人を戸惑わせてどうされますか」
「ハハッ、違いねぇ。アホ話してても始まらんな。本題に入ろうか」
陛下の表情が真面目になる。
「ジェイドから大方の話は聞いている」
「このままだとセントビナーが魔界に崩落する危険性があります」
ルークが説明する。
「かもしれんな。実際、セントビナーの周辺は地盤沈下を起こしてるそうだ」
「では、街の住人を避難させなければ!」
「そうしてやりたいのは山々だが、議会では渋る声が多くてな」
「何故ですの、陛下。自国の民が苦しんでおられるのに・・・」
「キムラスカ軍の圧力があるんですよ」
「キムラスカ・ランバルディア王国から声明があったのだ」
玉座の近くにいる男が言う。
「王女ナタリアと、第三王位継承者ルークを亡き者にせんと、アクゼリュスごと消滅を謀ったマルクトに対し、強く抗議する。そしてローレライとユリアの名のもと、ただちに制裁を加えるであろう、とな」
「事実上の宣戦布告ですね」
「父は誤解をしているのですわ!」
「果たして誤解であろうか、ナタリア姫。我らはキムラスカが戦争の口実にアクゼリュスを消滅させたと考えている」
「我が国はそのような卑劣な真似はいたしません!」
「そうだぜ!それにアクゼリュスは・・・俺のせいで・・・」
「ルーク、事情は皆知っています。ナタリアも落ち着いてください」
「・・・問題はそこじゃないんですね?」
撫子がそう言うとピオニー陛下は頷く。
「そう、セントビナーの地盤沈下がキムラスカの仕業だと、議会が思い込んでいることが問題なんだ」
「住民の救出に差し向けた軍を街ごと消滅させられるかもしれない・・・そう考えてるんだな」
「そういうことだ」
ピオニー陛下は黒羽の言葉にそう答えた。
「ジェイドの話を聞くまで、キムラスカは超振動を発生させる譜業兵器を開発したと考えていた」
「少なくともアクゼリュス消滅はキムラスカの仕業じゃない。・・・仮にそうだとしても、このままならセントビナーは崩落する。それなら街の人を助けた方がいいはずだろ!・・・あっ・・・いや、いいはずです。もしもどうしても軍が動かないなら俺達に行かせて下さい」
「私からもお願いします。それなら不測の事態にも、マルクト軍は巻き込まれない筈ですわ」
「驚いたな。どうして敵国の王族に名を連ねるおまえさん達がそんなに必死になる?」
「敵国ではありません!少なくとも庶民達は当たり前のように行き来していますわ。それに困っている民を救うのが王族に生まれたものの義務です!」
「・・・そちらは?ルーク殿」
「俺は、この国にとって大罪人です。今回のことだって、俺のせいだ。俺にできることならなんでもしたい。・・・みんなを助けたいんです!」
「と、言うことらしい。どうだ、ゼーゼマン。おまえの愛弟子のジェイドもセントビナーの一件に関してはこいつらを信じてもいいと言ってるぜ」
「陛下。こいつらとは失礼ですじゃよ」
「セントビナーの救出は私の部隊とルーク達で行い。北上してくるキムラスカ軍はノルドハイム将軍が牽制なさるのがよろしいかと愚考しますが」
「小生意気を言いおって。まあよかろう。その方向で議会に働きかけておきましょうかな」
「恩に着るぜ、じーさん」
・・・というわけで俺達はセントビナーに向かうことになった。・・・問題が山積みになっていくが、まずは目の前のことを片付けていかなきゃな・・・
後書き
リョウ
「えー、咲がまた引きこもりました」
ティア
「まあ・・・彼もショックだったのね」
シェリア
「女装は厳しいわよね・・・あ、私はシェリア・バーンズよ。よろしくね」
ティア
「私は神託の盾騎士団所属の、ティア・グランツよ」
リョウ
「二人の共通点・・・武器&回復か」
シェリア
「ティアもナイフを使うの?」
ティア
「基本は杖だけど・・・それでもナイフはよく使うわ」
リョウ
「二人とも広範囲回復担当だしね。ハートレスサークルやリザレクションとか。・・・あと意外に火力も高い」
シェリア
「そうかしら?」
リョウ
「シェリアはディバインセイバーやインディグネイション使えるし、ティアもグランドクロスやジャッジメント使えるよね?」
ティア
「ええ、まあ・・・」
シェリア
「・・・そうだわ。後で色々聞かせてちょうだい。あなたの世界も興味あるわ」
ティア
「こちらもよ。・・・それじゃあ、次回の続・真似と開閉と世界旅行」
リョウ
「また見てください!」
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