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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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武装無能力者集団
  Trick29_暗殺だよ

宗像と信乃が互いの得物を構えて、互いに隙を窺っている。

「刀をどこから? 転移で持って来る能力なの?」

御坂のつぶやきを聞いて白井は閃いた。

確かに宗像は何の武器も持っていなかったはずだ。
しかし今は両手に刀が握られている。
自由に持って来ることができるなら信乃に直接攻撃するように転移もできたはずだ。

それをしなかった理由は

「信乃さん! 相手はわたくしと同じようにテレポート系の能力者ですわ!
 ですが信乃さんへ直接テレポートをせずに自分の武器を出したのを考えますと
 自分の周りにだけしか転移できないなどの条件があるみたいですわ!

 体に直接攻撃されてないですが接近戦には気をつけてくださいですの!!」

自分の能力は自分が一番理解している。

白井は宗像が同系統と考えて信乃に助言をした。

「「残念外れ。あれ(これ)は能力じゃないよ」」

宗像、そして“信乃”が同時に誰にも聞こえないようにつぶやいた。

「白井さん、助言ありがとうございます。殺人者の相手は任せてください。
 間違っても手を出さないでくださいよ」

「さてと、どうやって君を殺そうかな」

宗像が笑う。

同時に信乃が突撃してきた。

「とりあえず太刀(これ)で試してみる・・・かな!」

信乃にタイミングを合わせて2本の刀を振り下ろす。

信乃は軽く横に避けて、そのまま木刀で横薙ぎに頭を狙う。

宗像は軽く上体を反らしてかわす。そのまま後ろへ数歩下がって体勢を整えた。

追撃。勢いを殺さずに木刀を振り上げる。

宗像は刀を下で交差させて防御する。



目にも止まらぬ戦いが続き、打ち合う音が50以上も響いた。

能力者同士のけんかや模擬戦を何度か見ている4人だが、この2人の戦いは格が違った。
一手一手が洗練されている。剣術の素人の目から見てもわかった。

だが打ち合いも1本の刀が飛ばされたことで終わりを告げる。

「ちっ!」

宗像の左手の刀が弾き飛ばされた。そして右の刀も同じように弾かれる。
武器はなくなった。

「次の武器を出す前に早く!!」

白井が叫んだ。だが叫び終わる前に終わった。

右の刀を弾いた後、そのまま懐へと潜り込んで肩を宗像の鳩尾へと当てた。
全体重をかけたタックル。

「がはぁ!」

宗像は壁と信乃の肩に挟まれて攻撃を受け、そしてうつぶせに倒れた。

「いくら能力を持っていても、意識がなければ出せません。そうでしょ白井さん」

「・・・・そ、そうですわね」

「ったく、さっきの俺と美偉の活躍がかすんで見えるじゃねぇかよ」

「そんなことないですよ。西折くんもすごかったけど先輩も強かったですから」

「まったく。殺人者にも勝っちゃうなんて、さすがというか異常というか」

宗像が倒れたことで4人がそれぞれ安堵して軽口を言いあった。

「さて、残るはあんただけだ」

木刀の先を金髪の男に向けながら近づいていく。

「・・・まさか宗像がここまで苦戦するなんて思わなかった。
 10日前からあいつと契約したが、まさかこの策を使うことになるとは・・・」

「策? まだ足掻くつもりか?」

その瞬間、信乃の背に強い違和感が発生した。

背中にはナイフが根元まで突き刺さっている。

「やっと気を緩めてくれたね。背中がガラ空きだったよ」

「・・・あ・れ?

  油断した・・な」

漏れた信乃の言葉には危機感も苦しみも感じない。まるで他人事のようにつぶやいた。

後ろではナイフを投げた終わった体勢の宗像。
そして腕や肩をまわして体をほぐす。

あれほどの衝撃を真正面から受けて宗像にダメージは感じられない。

信乃は体の力が抜けて膝をつき、うつぶせにゆっくりと倒れた。

「宗像の得意の策、それは死んだふりをして隙をつく暗殺だよ。
 何度見ても痛快だなぁ!! ギャハハハハハ!!」

金髪の男が汚い笑い声を上げる。



「信乃にーちゃん・・・」

「みな さん、私は大丈夫です。ただ、これは 結 構きつ い。
 動けそうに ないです」

信乃は苦しそうに、その黒い目の片方を閉じて微笑みながら言う。

「信乃にーちゃん・・・」

御坂は突然のことで、現状を把握できなかった。

自分の兄のような人の背中に、刃物が刺さっている。

あれは 致命傷? 助からない? “また”死んじゃうの?

不吉な言葉だけが御坂の頭の中を巡る。

白井や固法、黒妻も声こそは出していなかったが、同じように頭がフリーズしていた。

「信乃にーちゃん、信乃にーちゃん、信乃にー・・・」

どういう状況なのか受け入れられなかった、ただただ信乃の名前を御坂は呼び続けた。

そして御坂の瞳から涙が際限なく流れていく。

「きみは人が死んだら人目もはばからず泣くのかい。
 それはとても羨まし感性だね。


  殺 し た く な っ て く る    」

「!?」

憐れむような眼。しかし、殺気が十分にこもった眼差しが御坂を射抜く。

「あ、あ、あんた!!!」

電撃の槍を飛ばそうとするが

「動くな」

宗像はいつの間にか信乃の側に近寄り、首筋に手を添えていた。

そして手を離すと、そこには首輪のような装置が付けられている。

「爆弾だ。下手なことをすれば爆発させる」

「な!?」

「もちろん、外そうなんて考えるなよ。ほら、僕の首にも同じのを付ける」

全く同じ装置を宗像は自分に付けた。

「この爆弾は連動していてね。片方の生体反応がなくなると、
 もう片方が爆発する仕組みになってるんだよ。

 だから、空間移動(テレポート)で彼の爆弾だけ移動させると僕が死ぬ。
 風紀委員が人殺しはいけないよね?」

「わたくしの能力までご存知でしたの?」

「もちろん。さっきの戦いで銃を無効化していたのも遠くから見たいたし、
 ある友人からも君の事を聞いていてね。
 第177支部の空間移動者(テレポーター)は優秀だとさ」

「・・・・・それは光栄ですわね」

言葉とは裏腹に苦虫を噛んだような顔をした。

「さて、そこのお前。こいつ(信乃)を奥に運んどいてくれ。手錠はしてあるし
 完全に意識はない。あと、剣は抜くな、出血が増えて下手に死んだら困る」

「ひ!?」

声をかけたのは気絶していたはずのビックスパイダーの一人。
一人だけ早く意識を取り戻していたが、巻き込まれないように動かずにいた。

宗像はそれを簡単に見抜いて、その男に命令する。

「早くしろ」

「は、はい! わかりました!」

「君たちも分かってるだろうけど、下手に動かないでね。殺すよ?」

「く!」

御坂たちは身動きができず、信乃が奥の部屋に連れて行かれるのを見てるしかなかった。

「どうするつもり? あんな怪我の信乃にーちゃんを奥に連れて行って!?」

「なに、簡単なことだよ超電磁砲(レールガン)
 あいつはただの人質だ。用事はお前にある。


 ゲームをしよう。殺しあいという名のゲームをな」



つづく
 
 

 
後書き
信乃にナイフが突き刺さりました。
一体どうなるのやら(笑)

作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。

皆様の生温かい感想をお待ちしています。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。
 
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