真似と開閉と世界旅行
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兄妹喧嘩~
前書き
っらぁ!気合いで素早く書きました(笑)ではどうぞ。
早貴~
「・・・」
わたしは亮がログアウトした後も座り込んでいた。
「・・・」
『咲さん・・・』
「・・・」
「ちょっと、咲」
詠が話しかけてくる。
「回復してない訳じゃないんでしょ?次はどうやって突破するか考えて・・・」
「・・・無理だよ」
「・・・え?」
「無理だって言ったの。わたしなんかの力じゃ無理・・・」
(無理なんかじゃない・・・!不可能なんてない!)
意識と思考が分離し、離れていく。俺の考えは最早わたしとは真反対にあった。
「・・・ふざけんじゃないわよ。なにヘタレてんのよ!」
「うるさい!もうやだ!なんで何時もわたしばっかり!わたしが何か悪いことしたの!?ただ普通に生きてただけなのに!なんでぇ・・・!」
「・・・(ギリッ)」
「やだぁ!返してよ!お姉ちゃんも何もしてないのに!おかしいよぉ!」
「・・・甘っ・・・たれるなぁ!!!」
パァン!
「あ・・・」
詠に・・・叩かれていた。
「なんで・・・なんで叩くのよ!」
パン!
咄嗟に反撃。詠も負けじとまた叩き、わたしを無理矢理立たせる。
「甘ったれんなって言ってんのよ!なんでわたしばっかりですって!?別にあんただけが辛い訳じゃないでしょ!?キリトも亮も!今はきっとリーファだって!いや、そもそもSAOに巻き込まれた人だってそうよ!醜いこと言ってんじゃないわよ!」
パァン!
「さっきからパンパンパンパン・・・いったいのよ!」
痛覚なんてないけど、何故か平手が痛かった。わたしは詠と叩き合いの取っ組み合いを始める。
「え、詠さん!咲さん!」
『止めて下さいッス!』
亞莎とリパルが止めに入るが・・・止まる筈がない。
「あんたみたいな我が侭な妹がいてアスナも大変だったでしょう、ね!」
「なんですってぇ!?この、人が苛立つことばっかり口にして!」
「軍師なんだから相手の心理くらいわかるわよ!そんなことも解らないのかしら!?」
「・・・こんのぉ!」
平手と平手がどんどん相手の頬を叩く。きっと現実だったらお互いの頬は真っ赤だろう。
「とにか、く!諦めてんじゃ、ないわよ!」
「なん、で!あなたがそんなこと、決めるのよ!」
「アンタは“サキ”なんでしょ!?ボクの知ってる“咲”はねぇ、どんな壁にぶち当たっても、心が折れそうになっても最後は必ず突き進んだ!勝ち取った!あんたもサキなら・・・こんな壁くらいでへこたれてんじゃないわよ!!!」
ガツン!
平手ではなく、拳が飛んできて殴り飛ばされた。
「っぅ・・・!?」
「はぁ・・・はぁ・・・咲は・・・わざわざ別世界にいたボクを迎えに来てくれた・・・けど早貴・・・あんたの姉は同じ世界にいるんでしょ・・・?ボクに比べたら全然近くにいるでしょ?アスナが助けを求めて手を伸ばしてるのに、アンタが手を伸ばさなくてどうすんのよ」
「・・・」
・・・全部吐き出したからか、それとも叩き合いをしたかなのか解らないが、心は落ち着き、分離していた意識が一つに戻っていく。
「・・・詠」
「・・・何よ。まだ文句でも・・・」
俺は詠を見て・・・笑った。
「もう少し手加減して殴ってもいいんじゃねぇの?」
「え・・・」
立ち上がり、再び詠の目をまっすぐ見る。
「俺のこと、そんな風に見ていてくれて・・・そして・・・」
わたしに切り替え、違う笑みを浮かべる。
「わたしを俺じゃなく・・・ちゃんとわたしとして見てくれたんだね、詠・・・」
詠はそっぽ向いて頬を掻く。
「・・・ま、当然でしょ。咲とアンタは違うんだから」
「そっか。・・・ありがとう、俺の愛する人。そしてわたしの大切な友達」
「・・・ふん」
「あぁ・・・よかったです。端から見てて凄い怖かったです・・・」
『亞莎さんより間近にいたオイラの方が恐かったッス・・・』
「あはは・・・悪い、リパル。亞莎もな」
「いえ・・・元の鞘ならそれで・・・」
「いや・・・お姉ちゃんを助けてからじゃないと。それに・・・次は桐ヶ谷家を何とかしないと」
「亮さん達・・・ですか?」
「・・・だってさ、普通だったら実は兄妹でしたー、なら笑って済むレベルだろ?それなのにリーファはあんなリアクション・・・まぁ、失恋した相手ってのはキリト・・・和人さんだろうね・・・まったく、俺の妹が~って奴か」
『若干違うッスけどね・・・』
「さて、じゃあ様子を聞いてくるよ。しばらく待っててくれ」
「ええ、わかったわ」
俺はログアウトボタンを押す。・・・一波乱あるよな、これ・・・
亮~
ナーヴギアを外し、俺は急いで直葉の部屋に向かう。和人も部屋から出てきて、一緒に直葉の部屋の前に立つ。
「おい、直葉・・・」
「スグ、いいか?」
「やめて!!開けないで!」
ドアの向こうから直葉が叫んだ。
「一人に・・・しておいて・・・」
「どうしたんだよ直葉・・・確かに驚いたけど・・・もしかしてナーヴギアを使ったのを怒ってるのか?」
「・・・だとしたら謝るよ。どうしても必要だったんだ」
「違うよ、そうじゃない」
不意にドアが開いた。そこには涙を流す直葉がいた。
「直葉・・・」
「あたし・・・あたし・・・あたし、自分の心を裏切った。お兄ちゃんを好きな気持ちを裏切った」
その言葉に俺達を驚いた。その表現は兄妹愛での“好き”じゃなかったからだ。
「全部忘れて、諦めて、キリト君のことを好きになろうと思った。ううん、もうなってたよ。・・・なのに・・・それなのに・・・」
「好き・・・って・・・だって、俺達・・・」
和人の疑問は最もだが・・・続く直葉の言葉を聞いて、納得した。
「知ってるの」
「・・・え・・・?」
「あたしももう、知ってるんだよ」
それが何かなんて聞く必要もなかった・・・
「あたしとお兄ちゃんは、本当の兄妹じゃない。あたしはそのことを、もう二年も前から知ってるの!!」
・・・そうか、そうだったんだ。それなら・・・きっと直葉の感情はおかしくない。血は繋がっていても、本当の兄妹じゃない異性。ましてや直葉は年頃だ。・・・気になって、“恋”に発展するのもあり得なくないんだ。・・・ふと、直葉が俺を見た。
「亮お兄ちゃん・・・知ってたんでしょ・・・お兄ちゃんのこと・・・」
「・・・うん、SAOで教えて貰った・・・」
「そっか・・・」
続く直葉の言葉に・・・俺は絶句した。
「亮お兄ちゃん、内心で笑ってるんでしょ?」
「え・・・」
いきなり、何を・・・
「愉快だもんね。こんな状況・・・笑っていいんだよ?」
「な、何言ってるんだ。こんな状況で・・・」
「だってそうでしょ!?」
「・・・!?」
「この間はああ言ってたけど・・・嘘だよ!“亮”は絶対にあたしを恨んでるんだ!目を見えなくしちゃって、剣道も続けられなくなっちゃって・・・!」
「そんな訳ないだろ!直葉を恨む必要なんて・・・!」
「あたしの目を見ようとしなかったのに!?」
「・・・!?」
「亮・・・剣道を止めてから、あの世界に閉じ込められちゃうまで・・・一度も目を合わせてくれなかったじゃない!それなのに帰ってきてくれてからいきなり話しかけてきて、優しくなって・・・怖かった・・・!この人は何を考えてるんだろうって・・・久し振りにまっすぐに見れたのに・・・別人みたいだった・・・」
「それは・・・」
あの世界でいろいろあったから、ただ仲直りしたくて・・・だがそれを言う前に直葉が言った。
「亮の・・・亮のことをそんな風に疑うんだったら・・・今まで通りでよかった!!あたしをずっと無視してくれればよかったのにっ!!」
「あ・・・」
きっと、直葉も頭の中が混乱しているんだと思う。そうだ、そうなんだ。だから急いでフォローしないと・・・そう思って俺は下がっていた視線を上げる。・・・あ。
「・・・」
「ーーーーー」
直葉の顔は・・・あの時と・・・俺が目を潰してしまった時と同じ顔をしていた。そして気付いた。また俺は・・・直葉から目を逸らしていたことに。
「う・・・あ・・・」
言葉が出ない。周りの景色や、音が、遠ざかっていく。・・・気付くチャンスは、あったんだ。直葉の・・・リーファの異変に気付くチャンスなんて幾らでもあった筈なんだ。だけど俺はそれをあえて気にしなかった。また、崩れてしまうのが怖かったから。その行動がひび割れを大きくしていき・・・今、とてつもないほど・・・直すのが困難な程に崩れてしまった。直葉が何かを和人に言うが・・・俺の耳には届かない。
「・・・もう、放っておいて」
直葉はその言葉を最後に・・・ドアを閉じた。俺はそのままよろめき、壁にぶつかって座り込んでしまう。
「亮・・・」
多分、和人も同じ風に座り込もうとしたのだろう。だが先に俺が崩れたから・・・和人は崩れなかった。
「・・・最悪な・・・兄だ、俺は」
「亮・・・違う、お前は・・・」
「普通・・・兄は妹を守らなきゃいけないのに・・・笑顔にしなきゃいけないのに・・・それなのに・・・!」
俺は和人を見る。ふと、涙が零れた。
「俺はまた、直葉から笑顔を奪ったんだ・・・!それだけじゃない、俺は、俺はサチも・・・」
「亮!」
「・・・!」
「お前だけのせいじゃない。俺だって同じなんだ。直葉があんな風に俺を思っていてくれたのに、俺は無神経に何度もアスナの話を出した。・・・笑顔を奪ったのは、お前じゃない・・・」
「・・・だけど・・・」
自分を許せなかった。
「何が・・・みんなを助けるだ・・・妹の笑顔すら守れないで・・・!」
~~~~♪
「・・・亮、お前の携帯じゃないか・・・?」
「・・・」
出たくなかった。俺にかけてくるのは今は綾野さんか咲しかないからだ。どっちにも・・・今の俺を隠せそうになかった。すると和人が取ってきたのか、携帯を渡してきた。
「・・・」
表示された番号は・・・咲のものだ。
「出ろよ。きっと心配してるだろうから・・・」
「・・・」
俺はゆっくり携帯を耳に当てる。
「・・・」
『もしもし?亮、聞こえるか?』
「・・・ああ」
『・・・一波乱、あったみたいだな』
「・・・」
『解りきってたさ。物語に波乱は付き物だからな・・・リーファは?』
「・・・部屋で・・・泣いてる」
『わかった。じゃあ・・・“わたし”に話をさせてくれない?』
「え・・・?」
『女同士なら吐き出せるかもしれないし・・・それに』
「・・・」
『逃げる訳にはいかないんだろ?』
「でも、もう・・・」
『考えんな。何度も言ってんだろ?ドツボにハマるんだから、考えるなって。お前には言葉じゃなくてもまっすぐぶつけられるもんがあるだろ?』
「それは・・・」
『当たって砕けろよ。そっちの方が気持ちは伝わるぜ』
「・・・砕けちゃ、駄目だろ」
『はは、そうだな。・・・んじゃ、よろしく』
「・・・ああ」
俺は立ち上がり、部屋のドアを叩く。
「直葉、咲から電話が来てる」
「・・・話したくない」
「いいから出ろ。・・・待たせてんだからさ」
・・・しばらく間があってからドアが開いた、直葉は俯きながら、手を出してくる。俺は携帯を手渡しながら言う。
「直葉、電話が終わってからでいいから・・・“向こう”で、待ってる」
向こう、という言葉を理解したのか直葉はぴくん、と反応する。そして俺は自分の部屋に向かう。
「じゃあ、先に話をつけてくるよ、兄貴」
「ああ、俺もすぐに行く」
部屋に入ってナーヴギアを被り・・・
「リンク・スタート!」
次に目を開いた時にはケットシーのコウハになっていた。
「亮さん」
「ん・・・ああ」
亞莎と詠がいた。・・・と?
「詠?頬を擦ってどうしたんだ?」
「え?・・・別に、ちょっとした戦闘しただけよ」
「ふーん・・・」
「あの、リーファさんは・・・」
「・・・まだ解決はしてないよ。これから・・・」
背後から・・・リーファがやって来た。
「・・・話をするんだ。亞莎、詠。ここで待っていて」
「・・・分かりました」
俺はリーファを見る。視線を逸らさないように・・・まっすぐに。
「場所、変えよっか」
「・・・」
俺達は飛び、ちょっとした通路みたいなところに移動する。
「うん、ここなら誰も来ないか」
俺は大きく息を吸う。
「・・・百本勝負、覚えてる?」
「え・・・」
「確かお互い同点で、後一戦残ってたよね」
「そ、そうだけど・・・」
俺は武器を外し、迷切を構える。
(迷いを切る・・・か。今の俺にはピッタリな武器だよ)
「リーファ・・・ごめん。確かに目が見えなくなったことには多少意識してた。けど、それは恨みとかじゃない・・・って言っても信じてくれないよな」
「・・・」
「言葉じゃきっとお前は納得しないよね。だから・・・剣で示す。剣の道を歩んだお前だったら・・・きっと理解できる筈だ」
「亮、お兄ちゃん・・・」
「俺は逃げない。俺はお前とまっすぐ向き合う。だから・・・お前も全力で来い。最初で最後の・・・本気の兄妹喧嘩だ」
「・・・わかった。あたしも・・・そうする」
リーファも剣を構えた。
「リーファ・・・いや、直葉。あん時の決着、つけようぜ」
子供の頃に競いあった・・・お互いの意地をかけた試合。
「うん・・・いくよ!」
ガキャアン!
お互いが取った行動はまったく同じ・・・真っ正面からの縦斬りだ。リーファがすぐに刀を返し、胴を狙うが、俺は半歩後退りをしてそれを回避。その隙を狙って突きを放つが、勢いに任せて回転斬りを放った刃に弾かれる。・・・お互いに飛ぶ気はなかった。いや、そんな余裕はなかった。
「らぁぁぁぁ!!」
「やぁぁぁぁ!!」
動きの予測なんてしない。ただ振るわれたら防ぎ、振るったら防がれる。お互いの反射神経をフル活用しての斬り合いだった。もし他人がいれば演舞か何かだと思うだろう。それほどまでにお互いの力は拮抗していた。
「ふっ!」
「っ!?」
リーファの突きが頬を掠った。だが怯まずに横に振るう。・・・リーファの腕を浅く斬った。決定打こそないものの、徐々に・・・徐々にお互いのHPと集中力を磨り減らしていく。
「っおお!」
「たああ!」
得意の体術は使わない。あくまで俺の目的は迷いの無い太刀筋でリーファに・・・直葉に後ろめたい気持ちがないことを証明すること・・・
「(ただ・・・まっすぐに!)」
体が軽くなり、更に速度を上げる。周りの景色が消え、リーファだけが視界に映る。
「ずぇぇぁぁ!」
ヒュン!
「・・・っく!?」
突きを避けたリーファの体制が崩れた。
「らぁっ!」
全力の縦斬り。
ガキィン!
「っ・・・あ・・・!」
さすが、というべきかリーファはすぐに防御に刀を回し、防いだ。だが・・・ラッシュは終わらない。
「ややややっ!!」
斜め、横、縦。可能な限りの斬撃がリーファに迫るが、リーファはそれを的確に捌いていく。
「(凄いよ直葉・・・今の俺は本気なのに・・・!)」
別世界の人間と遜色のない戦闘能力。ここで油断をすれば流れを持ってかれる。
「たぁぁ!」
ビュン!
「っ!?」
攻めに転じていた俺はリーファの一撃を避けきれずに胴に掠るが・・・どうやら、先に集中力を切らしたのはリーファだったようだ。
「っおぉぉああっ!」
思いきり切り上げる。
ザシュ!
「っ・・・!?」
リーファは当たる直前に後ろに跳び、直撃は避けたようだが・・・
「逃がすか・・・!」
ここで決めなきゃチャンスはやってこない。俺は足に力を籠め、思い切り地を蹴った。
「これが・・・俺の思いだぁぁぁぁ!!」
すれ違いざまに・・・全力で迷切を振り抜いた・・・
「・・・」
「・・・」
時が止まった。全てが止まった中・・・金属音と何かが倒れる音で再び時が動いた。
「ふぅ・・・」
振り返り、仰向けに倒れるリーファに向かって口を開く。
「・・・百本勝負は俺の・・・勝ちだな」
「・・・あーあ」
リーファは一度ため息を吐いてから・・・笑った。
「・・・負けちゃった」
しばらく、二人で笑いあってから・・・・・俺はリーファに手を差し出した。
「ほら」
「ん・・・ありがと」
俺はリーファを見る。
「・・・気持ち、通じた?」
「・・・うん。とってもまっすぐだった。まっすぐで・・・強かった」
「・・・じゃあ、今の内に俺が直葉に対して今まで感じていた気持ちを白状しとくよ。実はさ・・・俺、直葉に恨まれてると思った」
「え!?」
「俺が剣道を止めたせいで直葉は他にやりたいことがあってもやれなかったんじゃないかって・・・」
「そ、そんなこと・・・!」
「ああ、なかった。それは普段の直葉や、今の太刀筋を見れば充分伝わった。・・・好きで剣道続けたんだなって。・・・きっと俺の不安を直葉は勘違いしちゃったんだと思う。当然、俺も勘違いしてた訳だけど」
「・・・」
「でもさ、こうやって本気で戦ってお互いの気持ち吐き出して・・・スッキリした。なんて下らなかったんだろうってね」
「亮お兄ちゃん・・・」
「・・・スッキリついでに、言うよ」
俺は手をもう一度差し出す。
「もっかいやり直そっか。今度は後腐れなく、後ろ髪引かれることもなく・・・誰が見ても仲良しな兄妹に・・・戻ろっか」
リーファは・・・俺の手を掴んだ。
「うん。また一杯剣道の話しとかして、変なことで笑って、今までの分亮お兄ちゃんと・・・仲良しになろう?」
・・・さて、と。後は・・・
「しかし、直葉が和人のこと好きなんてな・・・」
「ぶはっ!・・・な、なな何でこの空気で言うかなぁ・・・」
するとリーファはバツが悪そうに下を見る。
「やっぱり・・・変かなぁ」
「いや、いいんじゃないか?・・・まぁ、マジな兄妹なら止めに入るけどな・・・本気で好きなら全力でぶつかれ。撃沈したら好きなだけ泣いて次の恋を探せ・・・人間だし、どんな恋愛をしてもいいんじゃないか?」
「・・・そう、かな」
「ライバルが強すぎるけどな。とんでもなく強敵だぞ」
「でも・・・やっぱり諦められないよ」
「そこまで決意が強いなら行ってこい。・・・兄貴とも話をつけるんだろ?」
「うん。じゃあ、行ってくるね」
「おう。頑張ってな」
リーファはそう言って飛んでいく。俺はそれを見送ってから座る。
「はぁ~~~~・・・」
力が抜けた。なんか、ホッとしたのだ。まだ思春もアスナも助けてはいないが、まず一つ・・・山を越えた。・・・あ・・・
「リーファを回復させんの忘れてたな・・・ま、リーファが自分でやるか」
しばらく休んでから再び内部入り口の前に移動すると・・・
「あ・・・」
「あれ、君は・・・」
シルフの・・・レコンだ。どうして・・・
「どうしてここに?」
「ええと・・・」
・・・聞けば苦笑してしまった。彼はシグルドたちに捕らえられていたらしく、シグルドがいない隙に麻痺解除でシグルドと通じていたサラマンダー二人を毒殺。シルフ領にシグルドがいなかったので仕方なくアクティブなモンスターをトレイン(引き連れ)しては他人に押し付けを繰り返し・・・ここに辿り着いたそうだ。完全にマナー違反だが・・・少しその手際がウチの部隊に欲しいと思った。軽いアサシンの資質がある、うん。
「リーファと会ったのかな?」
「あ、はい。・・・勢いで告白してドつかれました・・・」
「え?・・・はは」
少し笑ってしまった。そっか、直葉のクラスメートだったな、こいつ。
「君はリーファとリアルでも友達なんだよね?彼女のことが好きなのか?」
「は、はい。そりゃもう・・・」
「彼女のためなら何でもすると?」
「はい!リーファちゃんが望むなら・・・何でも!」
「くく・・・頑張りたまえ、少年」
なるほどねぇ・・・少年言われるのは嫌いだが・・・言いたくなる気持ちは分かる気がする。
「コウハさん、その様子ですと無事解決したんですね?」
「ああ。無事にね」
会話が終わるまで待ってくれていた亞莎が喋ると・・・レコンが目を丸くした。
「あ、あれ?NPCじゃない・・・?」
あ、そっか。亞莎と詠の姿って今は普通の人間と同じなんだ。・・・その時、サキがやって来た。
「よっ」
「・・・解決したんだな」
咲がそう言って俺に耳打ちする。
「(直葉ちゃん、凄く泣いてたぞ)」
「(・・・解決したのにそんなこと言いますか・・・)」
咲は嫌みっぽく笑った。レコンがおずおずと話しかけてくる。
「あの、あなたは・・・」
あー、咲が合流したのは遅かったな。
「ええと・・・」
「レコンって言ってリーファの友達なんだよ」
「ああ・・・」
咲がレコンを見て、手を差し出しながら微笑む。
「初めまして、レコン。わたしはサキっていうの。よろしくね」
レコンは頷きながら咲が差し出した手を両手で掴み、鼻の下を伸ばす。
「こ、こここちらこそ、はじ、初めまして!」
「リーファ一筋じゃないのかぁ・・・?」
そう言うとレコンは慌ててシャキッとなる。
「そ、そうだ。僕にはリーファちゃんが・・・!」
「くす・・・面白いね、キミ」
・・・その時、リーファと・・・キリトが飛んできた。
「・・・ぶつかったか?リーファ」
「うん・・・文字通りに・・・ね」
俺はあえて何があったか深く聞かなかった。さて、俺達は再び世界樹に挑もうとする。間近で全ての戦闘を見続けたユイとリパルに話を聞くと、どうやら騎士の強さはあまり無茶なものではなく、一、二撃で倒せるらしい・・・が、ゴールに近づくにつれ、ポップする量が増え・・・最終的には秒間十二体だそうだ。普通に考えれば攻略不可だが・・・そこでSAOのデータを引き継いだ俺達の出番だ。二人が言うに瞬間突破力ならいけるかもしれないそうだ。・・・そして、猶予がないかもしれないと判断したキリトの意思で、急いで内部に行く。
「亞莎・・・いいのか?」
人解を装着した亞莎が頷く。
「はい。足手まといかもしれませんが、微力ながらお手伝いします」
「詠・・・無茶はすんなよ」
「何回同じこと言うのよ。ボクが咲に言っても無茶するくせに」
「む・・・」
「サキ、助けたいと思ったんなら、必ず助けなさい。いい?」
「・・・わかった」
翅を持たない二人は上手く跳んでやるらしい。基本的に亞莎と詠とレコンとリーファが援護、俺達三人が突っ込む。
「・・・行くぞ!!」
キリトの掛け声で俺達は一気に地を蹴る。リーファとレコンは地面近くで回復に専念。俺達は真っ正面から迫る騎士を・・・一撃で斬り伏せる。確かに一匹一匹は強くないようだ。だが・・・
「マジかよ・・・」
既に大量の騎士が出現していた。ふと意識が逸れた瞬間に横から騎士が・・・!
ストン!
「っ!」
「亮さんたちの邪魔はさせません!」
壁を蹴って暗器を投げ、動きを止めた騎士に向かって・・・亞莎は拳を突き出した。
ガシャァン!
鎧を粉砕。亞莎は騎士の残骸で跳ぶ。・・・すげぇ。・・・その時。
「レコン、逃げて!」
「ーーーー!」
気づけば騎士の大半が俺達ではなく、レコンにタゲが向いていた。・・・どうやら気づかぬ内に騎士は回復の二人を狙っていたようだ。
「くっ、間に合わない・・・!」
詠が歯を食い縛る。・・・いや、間に合ったとしても・・・この状況、誰も助けにいけない。少しでもタイムロスをすれば新しい騎士に道を阻まれ、クリアは不可能だ。それを理解したからこそ、レコンはあえて弱いが広範囲に放てる魔法でできる限り自分にタゲを集めていた。
「・・・っ!」
そして、ついにレコンが追い詰められたと思った時・・・彼の身の回りに紫の魔方陣が展開した。
『あれは・・・闇魔法ッス!』
この状況で何を・・・そう思った瞬間、光が視界を埋め尽くした。続いて爆音。・・・光が収まった時・・・大量にいた騎士が消滅していた。
「すご・・・」
咲が呟く。だが・・・その後には緑色のリメインライトが浮いていた。
『・・・自爆魔法ッス。かなりの威力ッスけど、代償に何倍ものデスペナルティが課せられるッス・・・』
「・・・」
俺達は言葉が出せなかった。
「レコン・・・」
今までの努力が犠牲になる技・・・だがそれをレコンは使った。・・・彼にも意地があった。覚悟があった。それは、俺達を奮い起たせるには充分だった。
「うおおおお!!」
「はああああ!!」
「やああああ!!」
だが、だがそれでも・・・無慈悲にも騎士は生み出される。ふと上を見れば、詠唱を行う騎士がいた。不味い・・・焦りが見えた時に・・・背後から大声が聞こえた。
「っ!?」
振り返ると、そこには大量の竜がいた。驚きながらリーファを見ると・・・その傍らにシルフとケットシーの領主・・・サクヤとアリシャがいた。二人とも、助けに来てくれたのだ。
「はは・・・」
ケットシーの一人が俺の間近に飛竜を連れてきた。
「アリシャ様がこれを使えと仰っていた!」
「は、はい!・・・アリシャさん、一匹借ります!」
それが聞こえたのかアリシャはブンブンと手を振ってきた。
「ーーーーーー!」
スペルを詠唱。一応テイムのスキルは上げている。飛竜も乗りこなせるくらいには鍛えた。
「亞莎、詠!乗れ!」
二人が飛竜に飛び乗る。
「ファイアブレス、発射ぁ!」
俺の乗る飛竜が紅蓮の業火を吐き出す。・・・凄まじい威力だ。背後からも炎や緑色の雷が次々に騎士を葬る。・・・だが、まだだ。まだ足りない。
『・・・咲さん!これを使って下さいッス!』
すると咲の手に小瓶が現れた。
「なんだ、これ・・・?」
『いいから早く!』
「あ、ああ!」
咲が小瓶の蓋を外す・・・瞬間、音が流れ出した。
「え・・・?」
音楽だ。とても綺麗な・・・聴いているだけで、力が湧いてくるような・・・
「・・・」
キリトやリーファ、詠や亞莎にも同様の効果があったようだ。・・・その時、混雑した空間の中に・・・男がいた。パッと見ではサラマンダーと思う程に真っ赤な男。だがそいつが持つ笛が、奏でる音楽が彼をプーカだと証明する。男は笛を口から離し、こっちを見て不敵に笑った。
ーーーとっとと行けよ、少年たち?ーーー
・・・そう言って男の姿は消えた。あれが誰か・・・なんて考える必要もなかった。
「・・・っとに、お節介な奴が多いなぁ、俺の仲間には・・・」
咲がそう言って、上を見る。
「キリト!!コウハ!!一気に行くぞ!!」
「ああ!!」
「おう!!」
音楽の効果は知らないが、きっと・・・絶対に俺達を強くしてくれた。飛竜の火力に頼るまでもない。
「亞莎、飛竜頼む!」
「え、ええ!?そ、そんな・・・」
「大丈夫、簡単だから!」
「う、うぅぅ・・・わ、分かりました・・・」
飛竜を踏み台に、飛ぶ。蹴りと斬りを使って騎士を蹴散らす。
『・・・!?咲さん、騎士とは違う何かの反応が上から・・・!』
「何っ!?」
「咲、危ない!」
俺は咲に襲い掛かった斬撃を擬音で防ぐ。
チリン、チリン
「ーーーー!!」
鈴の音が聞こえた。それも俺の擬音だけじゃない、相手の曲刀からも、だ。俺はゆっくりと相手の顔を見た。
「あ、ああぁぁ・・・!!」
見た目は妖精だった。けど、その顔には見覚えがあった。見間違える訳がなかった。
「・・・思、春・・・!」
力が緩み、一気に弾かれた。
「ぐうっ・・・!」
「亮!」
「構わず行け!!」
少なくとも俺の目標・・・捜した人は目の前にいる。俺は思春を見た・・・・・・
早貴~
弾き飛ばされた亮を横目に、俺とキリトはすぐに突撃を再開する。数に押されかけるが・・・横からリーファが突っ込み、薙ぎ払った。
「スグ・・・援護頼む!」
「任せて!」
流石兄妹と言うべきか、見事な連携で敵を打ち倒す。タゲがどんどん集まり・・・
「(今か・・・!)リパル、ハンドアックスを頼む!」
『了解ッス!』
一気に飛び、ゴールに向かって突っ込む。右のハンドアックスと左のダークリパルサー。二つの斬撃がさっきよりも手早く叩き落とす。
「届く・・・あと少し・・・!」
だが、あり得ないスピードで騎士が出現してくる。くそっ・・・諦められるか・・・その時、
「キリト君!!」
リーファがキリトに向かって刀を投げる。それをキリトは受け取り、大剣を合わせて二刀流で突っ込んだ。
「う・・・おおおおおおーーーー!!」
爆発的なスピードでキリトが突き進む。
「最高だよ、お義兄さん・・・!」
俺も便乗し、突き進む。
「行けるよな、リパル!」
『いけるッス!この勢いなら・・・抜けるッス!』
そして・・・騎士の群れを、突き抜けた。
「よし・・・!」
目的地のゲートに着地するが・・・
「・・・開かない・・・!?」
「ええ!?」
「ユイ、どういうことだ!?」
「リパル!」
ユイがゲートに触れる。
『これは・・・!』
「この扉は、クエストフラグによってロックされているのではありません!単なるシステム管理者権限によるものです」
「そ、それって・・・!」
『この扉はプレイヤーが開くことは不可能ッス・・・!』
「不可能・・・ってそんな・・・開けられないなんて・・・!」
キリトは俺の言葉を聞いて歯を食い縛ってから・・・何かを思い出したかのようにポケットを探り、カードを取り出した。
「ユイ、これを使え!」
ユイは大きく頷き、カードに触れる。
「コードを転写します!」
するとゲートが発光する。
「・・・転送されます!!パパ、お姉ちゃん、捕まって!」
キリトがユイの手を掴み、キリトが差し出した手を俺は掴む。そして一瞬、意識が空白に呑まれた・・・・・・
後書き
亮
「思春・・・」
早貴
「もうすぐだ・・・もうすぐアスナに会える・・・」
亮
「お互い全力を尽くそうぜ」
早貴
「ああ、それじゃ、次回もよろしく」
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