ソードアート・オンライン ~白の剣士~
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戦場のプリンセス
シオンが闘技場入口から出ると、目の前には既にエリーシャとヒースクリフの姿があった。
「よっ、待たせたな」
「いえ、構わないわ。それにしても、随分と多いわね」
そう言ってエリーシャは観客席を見回した。
「まったくだ。一体誰がこんなに呼んだんだか。で、何でアンタがいんだ?」
「君の戦いを近くで見ようと思ってね、ここで見させてもらうとするよ」
「はいはい、どうぞご自由に。さて・・・」
シオンはそう言って剣を抜いた。
「始めようか、《戦場のプリンセス》エリーシャ!」
「そうですね、《白の剣士》シオン!」
シオンはOKボタンを押した。そして二人の間にカウントダウンが表示されて、刻一刻と0へと近づくにつれてシオンは周りの音が段々聞こえなくなっていった。
「・・・フゥ」
シオンは短く息をついた。全神経が研ぎ澄まされていくのを感じた。
そして、
「いくぞ」
その直後、カウントは0になり、二人の間にFIGHT!のエフェクトが表示された。
二人が動きたしたのはほぼ同時だった。そして、二人の刃がぶつかり合う。その瞬間、観客席がドッと湧いた。
「フッ!」
二人は同時に後方へ下がり、シオンは片手直剣から両手槍に、エリーシャはレイピアから片手直剣に切り替え再び刃がぶつかり合う。しかし今度は一撃勝負ではなく、連撃の打ち合いとなった。
「相変わらずはえーなエリーシャ!」
「あなたこそ、腕は落ちてないわ、ね!」
直後、エリーシャはシオンの槍を弾き返し、懐にたたみかける。しかしシオンはその一撃を交わして再び後方へ下がる。
「流石にスピードじゃアイツには劣るか・・・。なら!」
シオンは両手槍から今度は両手剣に切り替えた。
そして、エリーシャは短剣にチェンジした。
「ハアアアア!!!」
シオンはエリーシャに向かって真上から剣を振りおろした。
「甘いわ!」
そう言ってエリーシャは短剣を両手剣に滑らせるようにシオンの刃をずらした。そう、これはシオンがクラディールに見せた返し技である。
「なっ!あっぶ!」
シオンはエリーシャの攻撃をギリギリのところでかわした、はずだった。
エリーシャの刃がシオンの頬をかすめたのだ。
「グッ!」
シオンは後方へと飛躍しながら、《投剣》スキルで短剣を何本か放つがエリーシャは短剣でそれを弾き返し、短剣は地面に突き刺さった。
エリーシャは攻撃を緩めることなく接近してくる。そして、今度は短剣から両手剣に切り替えた。
「オイオイ、マジかよ!?」
「ハアアアア!!!」
エリーシャの攻撃をシオンは防いだものの、重力の関係上+エリーシャの真上からの攻撃により、シオンはそのまま地面へと叩きつけられる形となってしまった。
辺りは砂煙によって二人の姿が見えなくなっていた。
やがて、砂煙の中からひとつの影が飛び出してきた。
「あれは!?」
「エリーシャよ!」
入場口から見ていたキリトとアスナは砂煙の中から出てきたエリーシャを確認した。
「ってことは・・・」
「シオン君・・・」
砂煙の中からは何も応答がなく、恐ろしいほど静かだった。
それと同じように観客席も不思議と静かだった。
そして、その違和感をエリーシャは感じ取っていた。
『おかしい・・・これほどあっさり有利に立てるほど彼は甘くないはず、なのになぜ?そして何?この恐ろしいほどの寒気は・・・』
すると砂煙は突如として渦を巻き始めた。
「な、何だあれ!?」
「急に渦を巻き始めた!?」
観客席からも驚きの声がちらほらとあがってくる。
そしてその渦の中心にいるのは、
「ここまでは約30秒といったところか、この感じからしてあと20秒といったとこだな」
「えっ・・・?」
七十四層の時と同じように白銀のオーラを身にまとったシオンの姿があった。
「さあ、第二ラウンドの始まりだ」
シオンの背中には既に二本の剣があった。
その剣を抜き一振りした瞬間、とてつもない風圧が会場を襲った。
「クッ!」
エリーシャも思わず目を瞑ってしまった。しかし、それが命取りとなってしまう時がある。
シオンはエリーシャに急速に接近し、いつの間にか二人の距離はほんの数メートル弱となっていた。
「は、速い!」
「くらえ、《スター・リフレクション》!」
「クッ!ハアアアア!!!」
エリーシャも負けじとシオンに食らいつこうとする。しかし、それがシオンの本当の狙いだった。
「かかったな」
「えっ?」
次の瞬間、エリーシャは驚愕した。なんとエリーシャの目の前から突如としてシオンが姿を消したのだ。
「そんな!消え・・・」
「消えちゃいねーよ」
その時、エリーシャの後ろにはシオンが姿があった。
「終わりだ」
「しまっ・・・!」
シオンはエリーシャの脇腹に向かって剣を振った。
エリーシャもこの距離では防御が間に合わないと分かっていても、防御の
めに剣を振る。
しかし、次の瞬間誰も予想だにしなかった行動をシオンはとった。
「・・・えっ?」
「おい、何で・・・」
「どうして・・・」
シオンがとった行動、それは・・・。
「どうして・・・どうしてトドメをささないの!?」
エリーシャはシオンに激を飛ばした。
当然である。何故なら、シオンはエリーシャの脇腹まで数ミリのところで剣を止めたのだから。
「俺は剣士ではあるが、殺し屋じゃねーからな」
「何よそれ・・・」
エリーシャは黙り込んでしまった。そしてシオンはそんなエリーシャにこう言った。
「わりーけど、降参してくんねーか?ゲームの中とはいえ、人を斬るのは少しばかり気が引けるからな」
「・・・」
エリーシャは俯いたまま答えないままだった。
「・・・そうか、ならこうさせてもらおうか、な!」
シオンはそう言ってエリーシャの剣を持っていた右手を掴み、その剣を自分に突き刺した。
エリーシャはもちろん、会場にいた観客までもがどよめいた。
「グッ!やっぱし痛てーなー・・・」
「なに・・・してるの?」
「何って、決まってんだろ。もう面倒だから終わらせんだよ。お前がこうなっちまったらテコでも動かんから、な!」
シオンは自分に突き刺した剣を引き抜いた。
その時点でシオンのHPがある程度のところまで減少し、勝負はエリーシャの勝利という形で終わった。
普通なら歓声が湧くはずの会場が今は静まり返っていた。
「良かったなエリーシャ、お前の勝ちだ」
「・・・こんなの」
「あっ?」
「こんなの勝ちじゃない!ホントだったらあなたが勝っていたのよ!」
エリーシャは目に涙を溜めてシオンに訴えてきた。シオンは頭をかきながら言う。
「まあ、そうかもな」
「じゃあ何で!」
シオンは少しばかり黙ってすぐに答えた。
「確かに、違う相手だったらあのまま勝負をつけてたよ。だが、あん時お前が相手だと知って俺はプランを変更した」
「プラン?」
「ああ、当初のプランが相手をフルボッコにするとして、俺が変更したプランは・・・」
シオンはエリーシャの顔を見て微笑んだ。
「お前がどれだけ成長したか確認すること」
「えっ?」
「よく、ここまで頑張ってきたな“エリー"」
そう言ってシオンはエリーシャの頭の上に手をポンポンとおき、退場した。
ヒースクリフはシオンに、
「よかったのかね?」
「ああ、弟子の成長を見れただけで俺は満足だよ」
その時シオンの顔は、本当に満足げだった。
「そうか」
「ああ、んじゃーな♪」
シオンはそのまま出入り口へと歩き出した。その出入り口には、キリトとアスナがいた。
「シオン君・・・」
「わり、負けちった!」
いつものシオンの顔にキリトとアスナは苦笑した。
「まったく、お前らしーよ」
「そうね」
「ほら、さっさと帰ろーぜ!明日から忙しくなるぞ!」
そう言ってシオンは再び歩き出しだ。その姿を見ていたエリーシャは、先程シオンが手をおいた頭に手を乗せて、少し紅くなりながら考えていた。
『よく、ここまで頑張ってきたな“エリー"』
「なによ・・・バカ・・・」
エリーシャの白銀の髪と同時に青い瞳が静かに揺れた。
後書き
はいどうも!最近、執筆が楽しいローレライです!
いかがでしたか!今回久々の戦闘回!
時折気になったシオンとエリーシャの関係とは!?
まあ、そこはいつかお話しましょう!
ではでは!
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