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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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幕間
  Trick25_七色の電撃って!!



幻想御手(レベルアッパー)事件の後、信乃はA・T(エア・トレック)の使用に
制限が掛けられていた。足への負担のことも理由の一つだが、信乃の実力が
"超能力者"(レベル5)にも匹敵するのが一番の理由、問題だった。

他の理事に目を付けられる前に、信乃へ許可を出している学園統括理事の一人
『氏神クロム』から信乃の“武装”に制限を付けることを数日前に取り決められた。




相手にする敵は3人。

一人は御坂が相手にしている筋肉男。
こちらは任せて大丈夫だと判断して残りは2人。

校舎の屋上と、すぐ近くの体育館の上にそれぞれ1人。

遠距離の攻撃を考えて、相手は銃を持っているか遠距離攻撃ができるレベル3以上。




「なんで効かないのよ!?」

「おいおい、この程度の電撃で俺を倒せると思ってるのかな?」

(まさか木山先生が電撃の防御で使っていた能力を持っているの?
 あの能力だったら電撃を強くすれば焼くことができるけど、人間相手には
 使いたくない。

 それだったら!!)

御坂は砂鉄の鞭を作り、男へと攻撃した。

能力を無効化する上条とは違い、威力を手加減して皮膚を少し削る程度にした。

今度ははじかれずに男へ当たった。だが、傷一つ付いていない。

「!?」

「おっと、俺がお前の能力を知っているのにお前が俺の能力を知らないなんて
 不公平だな。

 俺の能力は筋力強覆(マッスルコーティング)、筋肉強化だな。
 だが、生半可な攻撃は全て受け付けないな。筋肉の鎧があるからな」

「筋肉強化・・・だったらなんで私の電撃が効かないのよ?」

「ああ、それな。筋肉を増幅するのに体内電流を使っていてな、能力を使う副産物で
 電力無効化が少しだけできるんだよな」

(威力を上げれば攻撃は届くかもしれない。でも強すぎたら殺しちゃうんじゃ・・・)

「今度はこっちから行くからな」

男の攻撃を御坂は避けたが、拳が地面にめり込んでいた。

「それくらったら、ただじゃすまなさそうね!」

「楽しく遊ぼうな はははは!」





一人目の敵は校舎の屋上。

正確には屋上ではなく、そのさらに上の屋上出入り口の上。
給水タンクなどが置かれているあの位置にいる。


信乃は階段を駆け上がり、その勢いのままドアを蹴り破った。

そしてドアの上の縁を掴み、鉄棒の逆上がりの要領で、そのまま上へ飛ぶ。

そこにはライフル銃を構えた黒覆面の男がいた。
上からの狙撃をしたことで、屋上へ来る者を待ち伏せするように銃口を下へ向けて
構えていた。

だが信乃の移動は想定外。即座に上がったことで銃の照準から外れる。

信乃は棒で覆面男の肩を突いた。しかし、防弾チョッキを着けているのか手応えが固い。

覆面男は後ろに飛ばされたが、ダメージはないようですぐに脇にあるハンドガンに
手を伸ばす。

「やらせないよ」

信乃は再び突きを同じ方へ放つ。だが、棒には協力な回転が掛かっていた。

「な!?」

直撃防弾チョッキは簡単にえぐれて貫通し、男の体へと棒が達する。

「ぐぁ!」

取り出す途中だったハンドガンは落とされ、信乃はそれを蹴って拾えない位置へ飛ばす。

棒を引きもどして同じ位置、防弾チョッキに穴をあけた場所に突きを入れる。

「が!」

男がうめいて膝をつく。
間髪を容れずに信乃は棒を下から上へ振り、顎を攻撃して気絶させた。

「ふう、一人目。セリフを言う前に退場するとは何とも噛ませ犬な奴だな」


直後に背中から殺気を感じた。急いで給水タンクの陰に隠れると、

 カシュン

自分がいた位置に弾丸が突き刺さる。体育館の上にいるもう一人の攻撃。

ライフル銃に狙いをつけられては下手に動けない。どう対処するか考えていると

『おい、陰に隠れている奴。出てこいよ。遊ぼうぜ』

倒した男が落としたのトランシーバーから声が聞こえた。
屋上から攻撃してきた奴が話しかけてくる。

信乃はトランシーバーに手を伸ばそうとしてすぐに戻した。

 カシュン

銃撃。そのままトランシーバーを取っていれば腕をやられていた。

『あらら。残念無念』

「やっかいなやつだな。人を撃つことに楽しみすら感じている」

作戦を考えていると嫌な言葉が

『出てこいよ。それとも、他のガキどもが撃たれる方が良かったか?』

「!?」

周りの空気が変わった。信乃と向けられていた殺気が薄くなる。

男の姿は見えないが、信乃に警戒しつつも、銃口を別に向けたような、そんな空気。

『だ・れ・に・し・よ・う・か・な』

銃口が自分以外、この学校の生徒に向けられていた。

「しょうがないか」

信乃は何の躊躇もなく、給水タンクの陰から出てきた。

体育館上を見ると、やはり校舎の方へうつぶせの体勢で銃口を向けている男がいた。

だが信乃を確認するとゆっくりとこちらへ銃口を合わせる。

眉間。動かない的へと確実に狙いを定め


「死ね」


男がスコープ越しに言い放つ

その前に信乃が言った。持っている棒を投げやりのように振りかぶって投げ飛ばした。

「うわっ!?」

スコープを覗いていたので反応が遅れたが、男は体を横へ転がしてギリギリで避ける。

棒は男のいた場所より手前にあたり、真上へと跳ねた。

態勢を崩したがすぐに立ち上がって屋上を見渡したスナイパー。

だが、信乃がどこにもいない。

「ち、どこだ!? まさか、また隠れやがったのか?」

給水タンクの陰、屋上の出入り口、両方とも隠れるには十分の時間があった。

「なら、またガキを狙うふりをして」

再び校舎に銃口を向けたが

「痛ッ!」

上に飛んだ棒がちょうど男の頭に落ちた。
偶然なのか、それとも信乃の計算通りなのか。

「あのクソガキがッ! どこに居やがる!!?」

棒のせいで冷静さを失くして生徒を人質にすることを忘れて叫んだ。

そして

「ここだよ」

男の叫びに信乃は真後ろの位置から答えた。

隣の校舎の屋上にいたはずなのに、体育館の屋根の上にいる自分の後ろに。

「ばかな!? たった数十秒しか経ってないんだぞ!!」

この状況を信じられないのか、驚きすぎて後ろの信乃へ無理向かずに怒鳴った。

「数十秒? ははは、数十秒ね~。それは永遠という意味ですか?
 たった数十メートルの距離を移動するのに数十秒もあれば十全すぎる時間だぜ」

「数十メートルって・・それは直線距離の話だ! 別の建物の屋上と屋上に
 いるのに数十メートルは」

「直線距離が数十メートル。つまり走り幅跳びで十分な距離ってことだ。
 まあ、充分って言っても本当は屋上に繋がる梯子がある、窓近くに着地したけど。
 梯子登るのに数十秒も掛かちった」

「な・・」

走り幅跳びの世界記録は8.95メートル。

校舎と体育館の間の距離は20メートル。

落下しながら距離を伸ばしたとしても20メートルの距離はありえない。

しかし信乃は跳んだ。A・Tを使わずに脚力で。
いや、脚力だけじゃない。空中で体を回転させて体の重心を移動させた。

そして より遠くへ より向こうへ より上へ

  まるで月面の上で飛んだかのような軌跡を生む


 Trick - Method Air to Spin That Grab Moonride -


A・TなしのでA・Tの(トリック)を使い、20メートルを“飛行”した。


「さて、神様に祈る時間を・・・与えません。面倒臭いから」

「そげふっ!!」

信乃は男のこめかみを蹴り抜いた。

「完了完了」

持っていた手錠で男を拘束する。

「よし、最後はあいつだけか」

グランドでまだ戦っている御坂達を見下ろした。



御坂と男の戦いは拮抗状態が続いていた。

一方の攻撃は当たれば確実に勝利が決まる拳。だが、素早い動きで避けられ続ける。

一方は電撃や砂鉄で様々な攻撃をしているが効かない。
AIMバーストと戦ったときのように威力を上げれば防御を崩せるかもしれないが
人間相手には殺す可能性があり躊躇していた。

「御坂さん、まだ終わらないんですか?」

声の方向を見ると、信乃が体育館の外梯子から降りてきていた。

「だって、あいつに私の攻撃が」

「見てました。電撃や砂鉄は効かないみたいですね。
 けど、強い衝撃を直接当てれば倒せそうに思うんでが。この見た目筋肉は」

「ほう、面白いことを言うな。超電磁砲(レールガン)も逃げてばっかりで
 飽きてきたしな。お前が相手してくれるのかな?」

「いいんですか? その程度の実力で私と戦おうなんて」

「はははは!!!」

男が殴りかかってくる。足の筋肉も強化されていて、その速度も十分だ。

だが信乃はタイミングを合わせて胸の前で手を叩くように合わせた。

「どんな攻撃も俺のマッスル」 パァン!!

男の体が吹っ飛んだ。否、信乃に吹っ飛ばされた。
風の面を挟むように叩いて、発生した風の爆発に襲われた。


翼の(ウイングロード)
 Trick - Flapping Wings of Little Bird -


「すっご・・あ、でもあいつの能力で防御しているからすぐに来るよ!」

「その心配はないですよ。手ごたえはありましたから」

「ぐ、  がぁ・・」

男は起き上がろうとしたが、腹を抱えて呻くことしかできないようだ。

「あの見た目筋肉は斬撃には強いけど衝撃にはダメみたいですね」

「こ、の・・クソガキが」

男は立ち上がってきた。

「まだやる気? とどめは私が!!」

御坂が電撃が襲うが、男の能力が生きていたようで弾かれてしまった。

「まだ能力が生きているの? しぶといわね」

「筋肉強化の演算は他と比べると少しは簡単ですから。あの状態でも使えるみたいです」

「どうする信乃にーちゃん? さっきのをもう一発入れると終わりそうだけど」

「御坂さん。『とどめは私が』って言ってませんでした? 自分の言った言葉に
 責任を持ってくださいよ」

「え、でも私の攻撃じゃ・・」

今まで一度たりとも御坂の攻撃は男へと通じていない。
もちろん手加減を考えずに放てば関係ないのだがそうはいかないだろう。

「あの電撃の弾かれ方を見る限り、電気の波長に問題があると思います。一定の波長に
 対しては弾くことができても、波長の種類が増えれば同時には防げないはずです。
 だから複数の複雑な波長を複合したら攻撃は通ると思いますよ。

「無理言わないでよ! ただでさえ演算が複雑だっていうのに!!」

「イメージ」

「は?」

「演算を考えるより先にイメージしろ。周波数計のような2次元的な波じゃない。
 海面のような、立体的で規則性のない荒々しい波を思い浮かべるんだ。

 そのイメージを強くして、イメージに合わせて演算をするんだ」

「えっと・・」

「いいから!」

「は、はい!」

御坂は目を閉じて集中し、信乃の言った通りのイメージをした。


嵐の時のような、荒れた海。

その波の動きに自分の電気を走らせる。

強く、強く強くイメージする!!

するとできないはずの複雑な波長の電撃が男へと向かって出せた。

しかもただの電撃ではない。
色がつくはずのない雷に 赤 橙 黄 緑 青 藍 紫 に光る。

向かった電撃は今までと同じく弾かれたが、それは赤と黄と藍だけ。
橙、緑、青、紫の電撃は見えない壁を通り抜けて男へと到達した。

「な!? ぐあああぁぁああぁあああ!!」

体は感電し、黒い煙を上げながら男は倒れ伏した。そして今度こそ起き上がらなかった。


御坂は茫然としていた。
今までならこれほどの演算をすると頭が痛くなったはずなのに、イメージに合わせて
演算をしたらそれほどの負担がない。

しかも出てきたのが七色の、虹の色をした電撃。

「な、なんなのこれ?」

「敵を倒せたんですし、いいじゃないですか。気にすることないですよ」

「いや、イメージ通りにやったらこんな簡単にできて、しかも七色の電撃って!!」

「興奮しすぎですよ。それに、イメージを先にする方法は実際にあるスポーツの
 学習法なんですよ。

 動作をするとき、人間の中には『指示する自分』と『実行する自分』の二人が
 いるそうです。普通の人は『指示する自分』が強いそうなんですが、
 プロのスポーツ選手の多くは『実行する自分』が強い傾向にあるそうです。

 御坂さんで言うなら、複雑な波長を出すにはどうするか考える『指示する自分』よりも
 どんな波長を出すかをイメージした『実行する自分』が強くて今の電撃が出せたんです。

 まあ、さすがに虹色の電撃は予想外、いや予想以上でしたけど」

「イメージを先に、それに合わせて演算をする・・・・すごい」

「はい。すごいと思いますよ。ほら、常盤台中学の全生徒が御坂さんを認めてます」

信乃が校舎を見ろと促すように指を向けると、すべての窓から生徒たちが御坂を
見ていた。

そして

パチパチパチ

一人の拍手を皮きりに

ハチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

全ての人が御坂へと拍手をした。

「はは!」

照れもあったが、それよりも自分の実力以上なことを出来た喜びの方が大きく
御坂は笑顔でそれに応えて手を振った。

「さて、俺は丸焼きさんを拘束しますか」

信乃は御坂から、主役から離れるようにして歩いていった。

実はこの拍手には信乃へ向けたものが半分を占めていたが本人は気付いていない。

(常盤台とわかっていてけんかを売ってきていた。しかもライフル銃を持ち出して。
 なにか不穏な動きがありそうだな。クロムさんにお願いして神理楽(ルール)から
 誰か貸してもらうかな)



つづく
 
 

 
後書き
電気を弾く防御に対して複数の波長で攻撃するというアイディアは、ZOIDSから
きています。

ガンブラスターというゾイドに武装されている砲撃、ハイパーローリングキャノン

各ビームの周波数を変更することでいかなるEシールドもすり抜ける優れものですが、
不憫にもアニメには一切出てこなかったんですよね。

私の好きなEシールドを無効化、それだけでスッゲーカッコイー!と思ったのに
かわいそうな機体です。

『電撃の波長の操作』は後々役に立ちます。エアギア好きなら勘付くかな?
勘付いても言わないでくださいね。



作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。

皆様の生温かい感想をお待ちしています。一言だけでも私は大喜びします。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。
 
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