真似と開閉と世界旅行
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過去~
前書き
なんかもう、原作変えまくりになりそうな予感・・・ではどうそ。
・・・結局村の人は何も知らず、手がかりは得られなかった。
「・・・はぁ」
外に出ると、ウルフの親子は姿を消していた。
「(・・・そういえば)」
俺は再び空を飛びながら、昔の事を思い出していた。あれは確か・・・
「う、うぅ・・・」
身体中が痛い。意識が朦朧としている。
「・・・」
ガサッ、と草が揺れる。俺は顔を上げると、目の前には大型の魔物がいた。
「(死ぬのか・・・)」
俺は半ば諦めて意識を手放す。
「ううん・・・」
再び目を開くと、そこは森の中だった。
「ここは・・・?」
「・・・ッ!」
何かが動く気配。身体を起こすと、そこには一糸纏わぬ姿の少女がいた。
「・・・君は・・・」
「ふーっ・・・!」
だが少女は四つん這いになり、威嚇してくる。・・・そして、それに合わせて出てくるさっきの大型の魔物・・・本で見たことがある。確か、ライガクイーン。
「・・・お前が助けてくれたのか?」
「・・・」
ライガクイーンが頷く。・・・隣の少女は、このライガクイーンに育てられたのだろう。
「ガルル・・・」
ライガクイーンが少女を俺に向けて押し出す。そして、無理矢理二本足で立たせ、何かを訴えてくる。
「・・・人間の知識を与えろって事か?」
再び頷く。俺は痛む身体を無理矢理動かし、立ち上がる。
「・・・わかった。俺はサキ。サキ・・・あれ?」
思い出せない。一般常識などはすぐにわかるのに、自分の事だけ綺麗に頭から抜けている。
「・・・?」
警戒を解いた少女が不安そうに見上げてくる。
「・・・いや、とにかく・・・俺はサキだ。サ・キ。言ってみな?」
「さ・・・き・・・」
少女が掠れた声で言う。
「そうそう。・・・これからよろしく」
それから奇妙な生活が始まった。魔物達に助けられながら、少女に知識を与えていく。・・・何時しか俺も魔物の言葉が分かるようになっていた。
「・・・名前が必要だよな・・・」
「な、まえ・・・?」
少女が首を傾げる。・・・流石に裸のままでは可哀想なので、俺の着ていた上着を貸している。
「そう、名前。お前はライガクイーンを何て呼んでる?」
「・・・まま」
「じゃあお前は何て呼ばれてる?」
「・・・(ふるふる)」
なるほど、特に無しか。俺は考える。・・・何かないかな・・・
『このゲームにさー・・・』
『いたいた・・・』
『・・・アリエッタ』
「っ!?」
頭の中にいきなり流れる映像。知らない男と話していて・・・
「アリ、エッタ・・・」
「ありえった?」
少女が繰り返す。
「あ、ああ・・・どうかな?」
「ありえった・・・名前・・・アリエッタ!」
少女・・・アリエッタが俺に飛び付いてくる。
「アリエッタ、嬉しい!ありがとう、サキ!」
・・・後でライガクイーンに聞いたが、何れはアリエッタも人並みの暮らしをさせたかったらしい。アリエッタも俺と同じように海に流されてきた・・・ただし、アリエッタは当時赤ん坊だったから、どうしても知識が得られなかったらしい。
「なるほどね・・・」
まだ文字と言葉しか教えてないが、この調子ならきっと歴史や常識も・・・だけど、その日々は急に終わりを告げる。
「海か・・・」
俺は崖の上から遠くを眺めていた。
「俺にも・・・家族はいるのかな」
そう呟いた時、後ろから物音がした。
「アリエッタか?」
振り返ろうとした瞬間。
ズシャア
「・・・え・・・」
背中に冷たい感触。斬られた、と気づく前に身体は力を失い、崖下に落下していく。
「・・・」
そのまま意識が黒ずみ、同時に水面に落ちた・・・そしてまた流れ、ガイに助けられて、今に至る・・・と言うわけだ。
「(アリエッタ・・・どうしてるかな・・・)」
そのままキムラスカ中を探し回るが、まったく見つからない。
「まさか・・・マルクトか?」
俺は再び飛び、今度はマルクトに入る。・・・そして近くの村・・・エンゲーブに寄る。
「あの、すみませんが・・・ここら辺に紅い髪のチンピラみたいな奴が来ませんでしたか?」
「ああ・・・それなら昨日、ここを出ていったよ。確か・・・チーグルの森に行くとか・・・」
「ありがとうございます。それでは」
俺は村人に頭を下げてから森へ向かう。
「ここがチーグルの森か・・・」
俺は辺りを見渡しながら歩く。
「でも、ルークがこんな森に来たがるか・・・?」
そんな事を考えながらもどんどん奥に進んでいく。
「(ッ・・・血の匂い・・・)」
そして最深部で見たのは・・・
「・・・ライガクイーン!?」
血塗れで倒れていたのはライガクイーンだった。
「どうした!?何があった!?」
俺はライガクイーンに回復術をかけながら問いかける。
「ガァ・・・」
「『人間にやられた』だって?」
どうやらライガクイーンも俺だと分かったようだ。
「一体誰が・・・」
「グォォ・・・」
「『マルクト帝国の人間』・・・そうだ。他のライガやアリエッタは!?」
「・・・」
「ライガクイーン!」
俺は慌てて空間から・・・クレスがくれた薬を取り出す。
「間に合え・・・!」
薬を少量出し、音素の力で蒸発させ、それを風でライガの全身に纏わせる。
「ライガクイーン・・・」
何とか傷は癒えたが、それでも無茶は危険だ。俺はクイーンライガを移動させる。
「(ライガやアリエッタの行方が気になる。そもそも、ここはライガの住処じゃない。血の匂いはライガクイーンだけだから、他は無事なんだろうけど・・・)」
とにかく、考えていても仕方がない。俺は空を飛び・・・遠くにマルクト帝国の陸上装甲艦“タルタロス”が見えた。
「(アレか・・・!)」
俺は勢いをつけて飛ぶ。・・・こんな長時間飛ぶのは初めてだぞ。
「(・・・あれ?)」
タルタロスより遥か前に、見慣れた顔がいる。俺は離れた位置で着地して、元の姿に戻る。
「やっぱり・・・ルーク!」
俺が呼ぶと、ルークが振り返る。
「おま・・・サキ!?」
他にも何人かがいた。
「よっ、俺の方が早かったみたいだな」
「ガイまで・・・」
そして、見慣れない三人(後一人はファブレ家に侵入した少女)とお互いに話し合う。
「俺はファブレ家で使用人をしているサキだ。・・・お前らは?」
「僕はイオンと申します」
「イオン?イオンって・・・」
「ダアトのローレライ教団の最高指導者だな」
ガイが教えてくれる。
「なるほどね・・・そっちは・・・」
「私は、マルクト帝国第三師団師団長、ジェイド・カーティスと言います。以後、お見知りおきを」
「・・・」
俺はジェイドを見る。
「おや、何か私の顔についていますか?」
「いや・・・知り合いに似てたから」
まるで、てかまんま于吉にそっくりだ。態度も、声も。
「そんで、屋敷じゃ世話になったな」
「・・・私は、ダアトの神託の盾騎士団所属の、ティア・グランツよ」
「こいつ、ヴァン師匠の妹なんだとさ」
「妹?」
俺は少々考えた後・・・いきなり方天画戟をジェイドに突き付ける。
「サキ!?」
「おやおや、穏やかじゃありませんねえ」
「聞きたい事がある。ライガクイーンをやったのは・・・お前か?」
その言葉にルークが反応する。
「な、なんでお前がそれを・・・」
「俺はライガクイーンに助けられた事がある。・・・親代わりになって育ててもくれた」
「人を餌にするライガがあなたを・・・!?」
ティアが信じられないといった風に俺を見る。
「・・・ええ。確かに私が殺しました。ですが、そうしなければ被害が出ていたので」
「・・・」
確かに、正しいのはジェイドかもしれない。それに、ここで下手に口を滑らせてライガクイーンが生きている事を知られたら不味い。俺は大人しく方天画戟を引く。
「最後に・・・何でライガクイーンがチーグルの森にいたんだ?」
「・・・それはボクのせいですの」
いきなりルークの背後から小動物が現れた。
「な、なんだこいつ・・・」
「はじめましてですの!ボクはミュウと言うですの!」
「・・・お前が原因ってのは?」
「うみゅぅぅ・・・ボクがライガさんのお家を間違って燃やしてしまったんですの」
俺はそこまででミュウを止める。
「反省はしてるか?」
「もちろんですの!」
「じゃあ繰り返すなよ」
俺はそのまま黙り込む。その時、イオンがふらつく。
「イオン様。まさかタルタロスの中でダアト式譜術を使いましたね?」
ダアト式譜術・・・確か、ローレライ教団の導師だけに与えられる特別な術・・・そうか。最高指導者って事はイオンは導師なのか・・・とりあえず、そこで休憩する事になり、この変則的なパーティの理由を聞く。
「・・・戦争を回避するための使者って訳か」
ガイが説明を聞いてそう返す。・・・どうやらマルクト帝国はキムラスカ王国にキチンとした和解をしたいらしく。お互いが休戦できるようにしたイオンを頼ったらしい。そこでジェイドとイオンはキムラスカまで行こうとしたら、途中でタルタロスが襲撃にあい、イオンを拐われかけたそうだ。
「でも、なんだってモースは戦争を起こしたがっているんだ?」
・・・ちなみに、わりとローレライ教団もゴタゴタしているらしく、イオンを支える改革派と、大詠師モースを中心とした大詠師派がいるらしい。んで、イオンを拉致ろうとしたのが大詠師派という訳だ。
「それはローレライ教団の機密事項に属します。お話しできません」
「なんだよけちくせえ・・・」
ルークがぼやく。
「理由はどうあれ、戦争は回避すべきです。モースに邪魔はさせません」
ジェイドがそう言うと、ガイはルークを見る。
「ルークもえらくややこしい事に捲き込まれたなぁ・・・」
「ところで、あなたは・・・」
「そういや、サキはしたが俺はまだだったな。俺はガイ。ファブレ公爵のところでお世話になってる使用人だ」
ガイがイオンと握手し、ジェイドと・・・ティアが近づいた時、ガイがいきなり跳んで避けた。
「・・・何?」
「・・・ひっ」
ガイが後ずさる。
「・・・ガイは女嫌いなんだ」
「・・・というよりは、女性恐怖症のようですね」
「わ、悪い・・・キミがどうって訳じゃなくて・・・その・・・」
「私のことは女だと思わなくていいわ」
そう言って近づこうとするが・・・ガイはとことん逃げる。
「・・・わかった。不用意にあなたに近づかないようにする。それでいいわね?」
「すまない・・・」
「ガイも難儀だよな・・・」
俺は呟く。するとジェイドが・・・
「貴方達がファブレ公爵家の使用人ならキムラスカ人ですね。ルークを捜しに来たのですか?」
「まあ、な」
「ああ、マルクトの領土に消えてったのはわかってたから・・・俺は陸づたいにケセドニアから、グランツ閣下は海を渡ってカイツールから捜索してたんだ」
グランツ閣下ってのはヴァンの事だ。
「・・・って待て。マルクトに落ちたのを知ってたのか?」
「そうだが・・・あ、すまない。サキに言うのを忘れていた」
「お前な・・・」
だが、俺の言葉を区切るようにルークが言う。
「ヴァン師匠も捜してくれてるのか!」
「・・・兄さん」
その時、背後から鎧の音が聞こえる。
「やれやれ。ゆっくり話している暇はなくなったようですよ」
「に・・・人間・・・」
ルークが怯えたように下がる。
「ルーク、下がって!あなたじゃ人は斬れないでしょう!」
ティアが前に出る。俺は方天画戟を捻る。すると刃が動き、闇を通すと鎌に変形する。
「オラァァァァァ!」
一撃目で相手の剣を両断する。
「なにっ!?」
「そらよ!」
そのまま切り裂き、兵士は倒れる。見るとジェイドとガイも倒していて、ルークは一人、膝をついている兵士を見ていた。
「ルーク、とどめを!」
「・・・う・・・」
ルークが目を閉じて剣を振りかぶる。
ガキィン!
・・・だが、その剣は立ち上がった兵士の一撃で弾き飛ばされた。
「ボーッとすんな、ルーク!」
ガイとティアが走りだし、ガイが刀を振り、ティアがルークを庇う。
ズバァ!
・・・音が二つ聞こえた。ティアは片腕を抑えながらその場に倒れる。
「・・・ティア・・・お、俺・・・」
「・・・ばか・・・」
俺は急いでティアに駆け寄り、回復させる。
「あなたも・・・第七譜術師なの・・・?」
「いいから黙ってろって。・・・そこまで傷は深くないか・・・」
「・・・仕方ありません。今日はここに野宿しましょうか」
俺はうなずく。
「ルーク・・・立てるか?」
ガイがルークに言う。そして、夜中になり・・・
「なあ、サキ・・・」
ルークが思い詰めた顔でやって来る。
「・・・どうした?」
「サキは・・・人を殺すのが怖くないのか?」
その質問に、俺は・・・
「さあ、な・・・怖かったと思う」
「思う?」
「俺さ・・・愛する人をこの手で殺してしまった事があるんだ」
「お前、記憶が・・・」
「関係ない記憶だけどな。なんつーか、その後に親友を勘違いでその仲間ごと殺そうとしちまった。俺が仲間に頭冷やされてわかったんだ。本当に怖いのは力を持つ事だって」
「力を・・・」
「俺は大切な人を守りたいから力を得た。どんどん強くなっていった。・・・けど、その力は守るどころか・・・大切な人を・・・傷つけてしまった」
「サキ・・・」
「そんな事があったからこそ、今の俺がいるんだ。二度と後悔しないように・・・な。だから怖いなんて感じてる余裕がないんだと思う」
「・・・俺、サキの事何にも知らなかったんだな」
「そうそう知られてたまるかよ。・・・ま、後悔だけはするなよ」
「・・・ああ」
俺はそのまま木に背中を預けて目を閉じる。・・・あの頃の夢を見た気がした・・・
後書き
サキ
「今回は・・・」
ルーク
「へへ、俺だな」
サキ
「んじゃ、一言よろしく」
ルーク
「なんかたりーな・・・俺はルーク・フォン・ファブレだ。まぁ、よろしくな」
サキ
「ついでに俺のプロフィールっと・・・」
サキ
二十歳
見た目は本編に書いてある通り、ほぼ真っ黒の服。赤のマフラーに詠の眼鏡。変わった点は髪が黒ではなく金髪だということ。また、十四までの記憶がないが、五十嵐咲の記憶はある。そして、魔物に助けられ、その際に魔物の言葉がある程度理解できるようになっている。全ての音素の適正がある。
サキ
「・・・こんなとこかな。質問があったらどうぞ」
ルーク
「別に答えなくてもよくねーか?」
サキ「いや、ダメだろ。それじゃ、次回の続・真似と開閉と世界旅行!」
ルーク
「次回も見ろよな」
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