ソードアート・オンライン～未来を切り開く～

ラグー回です
そしてキリト回です 

キリトside

俺は七十四層の迷宮区に棲息する強敵リザードマンロードとの単独戦闘を終え、帰り道を辿りながら十分ほど歩いた俺は、前方に出口の光を見つけほっと息を吐いた

早足で通路からでると、清新な空気を胸いっぱいに吸い込む
眼前には、暗い森を貫いて一本の小路が伸びている
背後を見れば、さっきまでいた迷宮区が次の層まで伸びている

現在、この七十四層の約八割が攻略されている。
後、もう少しでボスの待つ大広間が発見され、攻略部隊が編成されるだろう
そこには、ソロである俺やハデスも参加することにだろう

現在の俺のホームタウンは、五十層にあるアインクラッドで最大級の都市アルゲードだ
規模ははじまりの街の方が大きいが、あそこは今や完全に軍の本拠地になってるから立ち入りにくい

ここから三十分ほど歩けば七十四層の市街区があり、そこの転移門から五十層のアルゲードへ一瞬で移動することができる
手持ちの転移結晶を使えばどこからでもアルゲードへ帰れるが高いので緊急の時以外は使いにくい…ハデスは普通に使うが…なんであいつはあんなに金を持っているんだ。
まあ、俺は無駄遣いしちゃうタイプだから金たまらないんだよなぁ

まあ、そういうことでまだ日没までは時間があるので早く帰りたいと言う誘惑を振り払って俺は歩いて帰ることにした

帰ってる途中
聞き覚えのない獣の鳴き声がかすかに聞こえた

高く澄んだ、草笛のような一瞬の響き
俺はぴたりと足を止めて、慎重に音源を探った
ソロプレイヤーの俺は索敵スキルを鍛えている。このスキルは不意打ちを防ぐ効果ともうひとつ、スキル熟練度が上がっていれば隠れている状態のモンスターやプレイヤーも見破れる能力がある。やがて、十メートルほど離れた大きな木の枝かげに隠れているモンスターの姿が視界に浮き上がった

それほど大きくはない、木の葉にまぎれる灰緑色の毛皮と、体長以上にながく伸びた耳。視線を集中すると、自動でモンスターがターゲット状態となり、視界に黄色いカーソルと対象の名前が表示される

その文字を見たとたん俺は息を詰めた。ラグー・ラビット、超のつくほどのレアモンスターだ。
実物は初めて見る。その樹上に棲息するもこもこしたウサギはとりたてて強いわけでも経験値が高いわけでもないが

俺は腰のベルトからそっと投擲用の細いピックを抜き出した。俺の投剣すきるはスキルスロットの埋め草的に選択しているだけで、別に熟練度が高いわけではない。
だがラグー・ラビットの逃げあの速さは既知のモンスター中最高と聞いている
まあ、別のゲームで言うとあのメタルなスライムだ。

だから剣で戦えるわけでもないからこうするしかないり
相手がこちらに気づいていない今ならまだ先制攻撃のチャンスがある。
俺は右手にピックを構えて、投剣スキルの基本技シングルシュートのモーションを起こした

スキル熟練度が低くても敏捷度が上がっているから俺の右手は稲妻のように閃き、放れたピックは一瞬の輝きを残して梢の陰に吸い込まれていった

ラグー・ラビットのカーソルが戦闘色の赤になり、その下のHPバーが減り、ゼロになる
ポリゴンが破砕する聞き慣れた硬質な効果音。
思わず左手をグッと握る
俺は即座にアイテムウィンドウを開いた
新規入手品の一番上にその名前があった
ラグー・ラビットの肉、プレイヤーの取引では十万コルは下らないという代物だ
これを金にするか食べるか…
だけど、俺には全然、料理スキルをあげていない。
売るか…？

まあ、これは緊急だろうと思い青い結晶を握って叫んだ

「転移！アルゲード！」


沢山の鈴を鳴らすような美しい音色と共に、手の中で結晶がはかなく砕け散った

同時に俺の体は青い光に包まれ、周囲の森の風景が溶け崩れるように消滅していく
光がひときわ眩しく輝き消え去った時には転移ができていた

あいかわらずここはうるさいな…早く行こう…
俺はエギルの店に向かった