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ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士

作者:涙カノ
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第74話 =突きつけられた現実=




「…お兄ちゃん…それに…陸也……なの…?」

「え……?」

「う、うん…俺はリクヤだよ?」

音だけ聞くならただ呼び捨てになっただけ……なんだけどその前の言葉が気になった。あの言葉は兄を指すくらいしか意味が無かったはずだけど…キリトに妹は直葉ただ1人だけ…でもその直葉はゲームが嫌いじゃなかったか?

「……スグ……直葉…?」

黒衣のスプリガンもリーファと同じようにほとんど音にならない声で自身の妹の名を呼ぶ。どうやらキリトも俺と同じ答えにたどり着いたらしい。ここにいるシルフの妖精、リーファは現実の桐ヶ谷和人の妹、桐ヶ谷直葉だということに。

「……酷いよ…。あんまりだよ、こんなの……」

リーファはうわ言のように呟きながら首を横に振る。向こうのその反応からこの答えはどうやら正解らしい。彼女は俺たちから目をそむけて左手を振り、その体から意識を失わせるコマンドを選択する。

「リーファ!!」

「……っ」

一瞬ビクリと体を震わせるがそれを無視してリーファはログアウトしていく。まさかの出来事に誰も声を出すことが出来ず沈黙に包まれた。

「……リクヤ…」

「うん、判ってる………でも…」

実際の兄であるキリトは直葉の元へ行くべきだと思う。でも俺はどうなる…ただの同居人でしかなく、直葉と知り合ってからまだ2ヶ月くらいしか経っていない。そんな他人の言葉は今の状況では聞く耳なんてないだろう…。

「……ハァ……なにウジウジとしてるの?リーファちゃんの体は見ておくから早く行って上げなよ」

「わ…わかった」

サウスの言葉にキリトは左手を振ってログアウトを選択し、現実へと帰っていく。

「……リクヤ君も」

「いや…俺は…ただの居候だし…」

「一番来てほしくない人が来て、その真実を知らされるって言う辛さ……リクヤ君は知らないよね」

「…それはそうだけど……」

「あの時、わたしは感じたけど…想像できないくらい苦しいよ…。わたしは人間が出来てるから何とかこうして接せれるけどリーファちゃんは多分…というか絶対にわたし以上のダメージを負ってるはず…」

それでもやはり俺は居候だから…という気持ちが抜けずに左手を振ることが出来なかった。と、その瞬間辺りにバチンという何かを叩いた音が生まれ、俺が倒されていた。

「…だから言ったでしょ、ウジウジするなって!!」

見上げるとそこには腕を振りぬいて俯いているサウスの姿が。

「キミがここでウジウジしてて何か変わるの!?……あのままだとあの2人はばらばらになるかもしれないよ……だから、早く行ってあの2人のココロを守ってあげなよ…」

「っ……わかった…ありがと、サウ…じゃなくて、美菜実」

その言葉を最後に俺はログアウトした。


―――――――――

「あたしとお兄ちゃんは、ほんとの兄妹じゃない。あたしはそのことを、もう2年前から知ってるの!!」

この言葉が現実に戻ってきて最初に聞いた言葉だった。
恐らくこれはあの2人とその親しか知っちゃならないような…何度も繰り返すけど俺みたいな部外者が聞いちゃならない内容だったと思う。だが、聞いてしまったからには最後まで聴かなきゃならないと思い、その場から動かず…というか動けずに話に耳を傾けた。

「お兄ちゃんが剣道辞めて、あたしを避けるようになったのは、ずっと昔からそれを知ってたからなんでしょ?あたしがほんとの妹じゃないからって遠ざけてたんでしょ!?なら…なら、なんで今更優しくするのよ!!」

いつもの直葉からは想像できないくらい、言葉が止まることなく流れていく。彼女自身、剣道をやっているおかげかこうして感情をあらわにすることは少なかった記憶があるがいまは完全に感情が支配している。

「あたし…お兄ちゃんがSAOから戻って来てくれて嬉しかった…。小さい頃みたいに仲よくしてくれて、すごく嬉しかった。ようやくあたしを見てくれたって…。そう思った」

「…でも、こんなことなら冷たくされたままのほうがよかった!!それなら、お兄ちゃんを好きだって気付くことも……お兄ちゃんの連れてきた陸也に不思議な感情を抱くことも……あの世界をもう1つの現実だって思うことも………キリト君を好きになることも無かったのに!!」

すさまじい絶叫の後、嗚咽とともに息のする音も聞こえる。

「…ごめんな」

「……もう放っておいて」

その言葉を最後に乱暴にドアを閉める音が響いて、いつも以上に静かな空気がこの場を支配する。この状況でやっと体の自由が戻ったかのようにゆっくりとドアを開けて廊下に出ると目に入ったのは直葉の部屋のドアを背もたれに座り込んでこちらを見ている数との姿だった。

「……聞いてた…のか…?」

「…うん…そのことは、下いって話そう…」

「……あぁ」

頷いたのを確認して和人の手をとり静かに立たせ、ゆっくりと音を立てないように階段へとむかった。そしてリビングへ入って椅子に腰掛けて口を開く。

「…その……盗み聞きみたいなことして…ごめん」

「いや、遅かれ早かれ知ることにはなったと思う……」

「あの、さ…今聞くことじゃないと思うけど……」

「……いい機会…っていうと駄目だけど…多分、これも言わなきゃいけないことだから言う…だから陸也も知っててくれないか」

「わかった……」

―――――

和人の口から話されたものは今ここにいる桐ヶ谷和人と上にいる桐ヶ谷直葉は実の兄妹じゃないということだ。俺はなんの疑いも無くこの2人を兄妹だと思ってきたがどうやら違った。
和人は小さい頃、両親が亡くなってしまい叔母夫婦に引き取られ今まで育ってきた。この事実に気付いたから遠ざけていた、と直葉は言っていたが和人が言うには人との距離感がわからなくなった…とのことらしい。そのせいで翠さんや和人の父親に当たる峰高さんが冷たく接したか、というとそうでもなく変わらず愛してくれたからショックというのは受けなかったらしいが…。それでも和人の心に根強く芽生えたのは相対した人に対して生ずる『この人は一体誰なのか』という小さな…でも考え直すと大きな疑問だ。
この疑問が和人に壁を作ってしまったらしくネットゲームへ向かわせた1つの理由かもしれないと、小さく笑いながら本人は言っていた。
その理由はネットゲームで活動する人間は全員「アバターには異なる内面が生じて当然」という大前提があったから。実際に名前の時点で偽っているし性別すら偽るプレイヤーもいる。だから和人はどんどん進んでいった。やがて2年という年月の間幽閉されることになるあのデスゲームへ。

「……でもあのゲームで俺は…気付かされたんだ」

「どっちも同じだって?」

俺の言葉に迷い無く頷く和人。確かに現実世界と仮想世界、何が違うかといえばログアウトできるか出来ないかという1つのみ。でもソードアートオンラインは違う。ログアウトという違う一点が無くなった世界…つまりモンスターとか関係なくあの世界は現実世界そのものだった。そうと気付いた和人はようやく10歳からの疑問の虚しさを悟ったらしく、それと同時に他人に出来ることにも気付いた。信じ、受け入れること…それが自分の認識する誰かを本当のその人にすることってことに。

「信じて受け入れる…か……俺もあの世界のおかげで出来たのかな…」

「……?」

「いや…まぁ……俺もあの世界があったからそれが自然に出来たのかな~って…」

信じて受け入れるにはこちらにものすごい勇気が必要だ。もしかしたら…という疑問を払う必要があるから。身近な人だと信じて受け入れるのは簡単だがその身近な人と何か問題を起こしてしまうと信じるという前に立ちふさがる壁は他人と比べ相当大きなものになってしまう。

「…『恐れよ。されど手を伸ばせ。そこに希望を掴み取らん』…か…」

「何の言葉だよ、それ」

「アハハ……これもテイルズのなんだけど向こうで学んだことと一緒かなって…」

他人と…そして一度関係が崩れた人ともう一度関係を持とうとするのに怖いと思うのはしょうがない。大事なのはその気持ちを受け入れ手を伸ばす事。

「…確かにな…言葉で足りないときには手を伸ばす……これも向こうで知ったことだしな」

「なら…その伝えたいことを今から伝えに行きますか」

「あぁ……あのさ、陸也…。スグに伝言を頼めないか?」

「…別にいいけど…なんでさ」

「サウスにも礼言っておきたいとから先に行こうと思うんだけど……」

「そっか…。わかった、直葉にはちゃんと伝えるよ」

そういうと和人は俺に伝言を託して早速2階へと上がっていった。

―――――

「…直葉…?起きてる?」

アルパカのマスコットがかかった扉をノックしながら声を出すが予想通り返事はない。でもここで待っていても何も進展しないので俺はそのまま口を開く。

「……和人…じゃなくて、キリトからの伝言…ちょっと聞いてくれないか?」

返事も無く俺はそのまま口を開こうとしたが突然、扉の向こうでガタッと音がし、ちょっとすると扉がほんの少しきしむような音がした。恐らく直葉が扉に寄りかかって聞こうとしてるんだと思う。

「キリトがアルンの北側のテラスで待ってる…ってさ。俺はキリトがなに考えてるのか判らないから何をやるのかも言えない」

でも、行くかどうかは直葉が決めること。俺が無理やり行かせても何の意味もない。俺が言えるのはこれだけなのでアルヴヘイムへ先に行こうとしたら消えるかのような声で直葉の声が聞こえる。

「…………ねぇ、陸…也…」

「ん、どうかした?」

「陸也は…どうしてあの世界にまた行けたの…?」

「どうしてって言われても……」

「…やっぱり…悠香さん…?」

悠香の名前を言われるとそうかもしれない、と答えそうになるがあの一件はあくまできっかけでしかなかったかもしれない。もしあそこで須郷たちが猫を被ったままだったらキリトは判らないが俺はあいつ等のやろうとすることに気がつかずにただ見守るだけだったかもしれない。でもこの世界に囚われていることを知って俺はアルヴヘイム・オンラインに入ることを決めれたんだ。だからきっかけ…かな。

「……サウスっているだろ?」

「…うん」

「あいつがにも言われたし一応自覚してるけど俺ってソードアート・オンラインから帰ってきてないんだ……。だから終わらせるために…かな」

「……そっか…ありがと」

直葉はお礼の言葉を言うとその場から立ち上がったらしく小さくだが足音が聞こえた。そこからは何も聞こえなくなったのでどうやらアミュスフィアを被ってALOへと飛び立ったらしい。

「…よし、俺も行かないと!」

頬を叩いて、自分の部屋へと戻るとナーヴギアを手にとって被る。そして小さく「リンクスタート」と呟いて俺も向こうの世界へと飛んだ。


―――――――――

「……何してるの?」

思わず呟いてしまった先にはキリトからの伝言で伝えられたテラスの方へ飛ぼうとしているサウスとそれを必死に止めている何故かここにいるレコンの姿が。

「えー、行こうよレコン君」

「いやいやいやいや…リーファちゃんに殺されちゃうって!!」

よくレコンがサウスを止められてるな…と思ったがどうやら加減しているらしくサウスはあの状況を楽しんでいるらしい。さすがに兄妹だけで何かをしているところにいくのは気が引けるけど…。

「キリトがしようとしてることも気になるんだよね」

「リ、リクヤさんまでぇっ!?」

「そういうレコンは気にならないのかよ」

「そりゃあ……気にはなりますけど………」

レコンの同意もまぁまぁ無理やりだが得られた、ということでさっそくキリトがリーファと何かするであろうアルンのテラスへと飛ぶ。同じ町といえど中心部から街の端までは結構距離があった。が、どうやら間に合ったらしくレコンに続いて物陰へと隠れ上空を見上げるとそこにはすごい光景が広がっていた。

「あの黒いのは……キリト君…だよね…」

「…じゃあ、向こう側はリーファちゃん…!?」

それぞれが見上げた方向には緑光の尾を伸ばす何かと黒い閃光が幾度となくすれ違っていた。俺はなんとか目で追うことが出来たがそれでもやはり速かった。リーファはもうさすがといわんばかりの飛翔能力だったがそれと互角以上の飛翔能力をキリトは十分に発揮している。

「……っ」

「…リクヤ……君?」

「………ん?」

「…どうしたの…そんな怖い顔して…」

サウスの声のあと、一瞬で顔の筋肉が緩んだ感じがする。そんなに険しい顔をしてたのか俺…。

「……多分、悔しいんだ…」

「えっ?」

「また、キリトとの差が大きくなってる気がして……」

向こうの世界ではまだあいつと対等…もしくはその少し下でいられたような、そんな気持ちは自分でも持っていた。少しはヒースクリフさんが俺に行った「剣」になれてたかもしれないのにあの剣舞を見せられてしまうとどうしても俺とキリトの間に圧倒的差を感じてしまう。

「それが別に気に食わないってわけじゃなけど……なんか、嫌なんだ」

「……VRMMOの青春ってこういうものなのかな」

「何か言った?」

「ううん、別に何で……きゃっ!?」

サウスが言っている途中、突然空からキリトの黒い大剣が降ってきた。ギリギリサウスの前に突き刺さったのでHPに別状は無かったが何を考えているんだ、と疑問を感じながら上を見上げるとそこには2人がお互いの体を支え回っているという不思議な光景が。そしてなぜかリーファの手にもあの長刀は存在しない。

「……あぁ、なるほどね」

結構な時間キリトといたおかげと2ヶ月あの家に住んでいたから判ったような気がした。あいつ等、やっぱ兄妹だ。キリトは謝罪の言葉の代わりにリーファの剣を、リーファも同じく謝罪の代わりにキリトの剣を受けようとしていた。だがその二人の思惑はどっちも同じことを考えていたというまさかの展開に失敗に終わった…ってとこかな。

「……よし、剣探そうぜ」

「りょーかい」

「はい」

とりあえずキリトの剣はサウスが持つことにして俺はその剣と真逆の方向へ、サウスはこの場所中心に、レコンは俺とは逆方向を探し始めた。
なんとか無事に見つけてリーファに直接渡したところで怒鳴られたのは理不尽だと思ったけど…この2人がようやく仲直りできたらしいのでよしとするか。







 
 

 
後書き
リ「テストはどうした」

涙「明日からですキリッ」

リ「…勉強しろよ」

涙「だって…英語Writingと現代文だよ!?…無理無理諦めモードなう」

リ「あっそ…」

涙「でも一応勉強してるからだいじょーぶ!ということで今も勉強してるはず!!」

リ「はず…って……頼むからしてくれよ…」

涙「はい…がんばります…なんとか週1なら更新できそうなので…これからもよろしくお願いします!!いつもの通りですが感想、評価待ってます。ではっ!!」 
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