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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
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第四十三話

 
前書き
GW遊び過ぎて申し訳ありません。

お気に入り登録300ユーザー様突破、総合評価1500点越えという信じられないことへのお礼を申し上げます。
外伝のほうにお礼小話を先日UPいたしましたのでご興味ある方はご覧くださいませ。 

 
 王都ヴェルダンから離れる際にはバトゥ王から返礼の品をたっぷりともたされた。
非公式な訪問とは言え、同盟国の大物相手だけに気を遣わせてしまったらしい。
離れる前の夜会でガンドルフ王子やキンボイス王子と面識を持ったが、ジャムカ王子は国内の視察に出ていたようで知己を得ることは叶わなかった。
この王子二人は原作ではまさに蛮族にふさわしき所業であったが、このような平時では素朴な、ただ、自分自身と国の未来に希望を持つ若者たちに過ぎなかった。
互いに小国の王子ということで通じるところもあるだろうと話してみると、グランベル諸公家への劣等感や憧れ、だとしても自分達の故郷だってこういう所は負けちゃいないとか、思うところは同じだった。

酒宴の勢いもあって彼らと力比べも行うことになった。
もちろん、武器を持ってのものでは無く、腕相撲とか相撲やレスリングみたいにぶつかり合ってただただ腕力や体全体の力を比べるだけのものなのだが。
キンボイスには辛勝を納めたがガンドルフとは勝負がつかず、バトゥ王の仲裁があって引き分けとなった。
言い訳するなら、キンボイスと勝負してすぐの連戦だったので俺も疲労していたということで……
勝負の際には彼らに倣って上半身脱いでみると、鍛えてるな~と感心されてぺちぺち叩かれた。
加減が強くて少し痛くはあったのだが心が通ったような気がして少し嬉しかった。
悪く言えば単純だけれど、こうやって気のいいところもある彼らと友誼を結べたのは予想外の収穫だったに違いない。

                                           




 マーファ城への船旅の中でディアドラ保護に向けての打ち合わせは毎日のように行い続けた。
彼女を発見するまでの期限をどの程度までに切るか。
……これについては一カ月、ぎりぎりで二カ月と定めたのは集落一か所に長々と滞在するのはヴェルダン側が不審に思うに違いないからだ。
その場合俺は単独で現地に留まり、探索を続けるつもりだ。

もし、説得が不首尾に終わった場合どうするのか。
……殺すのはあり得ない、これは以前決めたようにナーガの使い手を守るべきなのと俺が嫌なのもあるし、クロード神父もそんなことは許さないだろう。
話しも聞いてくれないならばそっとしておくより他無いが、多少でも耳を傾けてくれるなら出来る限りの情報を伝えたい。

説得が上手く行ったとして、どの程度協力を得られるか。
……グランベルまで同道し、父であるクルト王太子、祖父であるアズムール王に会ってくれるのか。
船の旅を断り、陸路を選ばざるを得なくなった場合どのようなルートでエバンス城を目指すか。
もし、ヴェルダン側に発見された場合、どう言い繕うか。
あくまで彼女が森から出ることを拒むならば王太子や王に出向いてもらえるかどうか。
様々な状況を考えた打ち合せを行ってはみたものの、想定外の事態は必ず出て来るであろうから、一喜一憂せず常に冷静に心を保つこと、これが大切だろう。
マーファ城より南の漁港に停泊した俺たちは繋留の許可願いを漁港の管理者に願い出た。
ここでさっそく滞在許可や各地の施設での便宜を計るようにとしたためられたバトゥ王からの書状が威力を発揮し、適正な対価を払いはしたものの繋留許可を得られた。
船員達はこの時とばかりに、船底や側面に張り付いた貝を削ぎ落し、痛んだ船具を修理したり交換したりなど、航海を続けている間にはやりにくい仕事を片づけていった。




 マーファ城に付随する集落は予想よりも大きく、ひいき目で見れば街と呼んで差し支えは無いほどだった。
俺がアタリを付けているのは街の市場で薬草などを売っているだろう店だ。
原作でディアドラは外の世界の人との交わりを断つよう言われて、それを守る姿勢を持っていたにも関わらずシグルドさんがマーファ城を制圧した際に城下に現れる。
精霊の森で人目を避けて暮らすにしても生活必需品を全て自給自足するなど可能であろうか?
これは単なる予想に過ぎないが、定期的に物資の補給くらいの関わりを持っていたのではないだろうか?
そうなると彼女が提供できそうな品を考えると薬草あたりは可能性があるのでは無いかと踏んでいる。
俺にとっても薬草は嫌いでは無い分野だし、彼女が詳しいならいっそ教えを乞いたいくらいだ。
外れたら外れたで精霊の森に立ち入って探すと言うだけであるし……
そういえば薬草は売っている者だけでなく使っている医者に直接売り込んでいる場合もあるだろうからそのルートでの捜索も選択枝に入れたほうがいいかもしれない。
なんにせよ、まずは滞在の名目を果たす為にも街の有力者と繋がりを作っておくにしくはない。

街の有力者には長老が三人居り、彼らに付け届けを行った。
タダで物をもらえるのは裏に何か事情が……と勘繰りでもしなければ嬉しいもので、こちらの好意や誠意を示すには人の営みの中では普遍的な価値ある行動だろう。
バトゥ王の書状も示し、彼らにエッダ教の礼拝所建立の許可という面から話題を切り出した。

「そういえば、精霊の森の巫女さまからも許可をいただいたほうが良いと思うのですが、長老様達は何かご存じありませんか? 巫女さまということはこの辺りの土着の神さまを祭っておられるでしょうし」
「ふーむ、我らもよくわからんというか精霊の森の隠れ里の者とは関わらないようにと言い伝えがあってのぅ。 商いくらいなら構わんと思っておるが、月に一度か二度訪れるようじゃし、見かけたらお知らせいたそう。もっとも知らせた時には既に用を済ませて立ち去っておるかもしれんがのぅ」

髭を扱いて長老がそう言うものだから、彼女が立ち寄りそうな店を教えてもらい、待ち伏せるより他は無さそうだ。




 それから一週間ほど毎日、俺は薬草屋で張り込んでいた。
毎日いろいろ買うものだから気を良くした店主から薬学を教わったりしたものだ。
だが、ディアドラはここでは無く違う場所に現れた。
外見の特徴は他の皆にも伝えていて、特にサークレットのような装身具を付けている人などほとんど見かけない界隈なものだから怪しいと、俺の所にベオウルフが知らせに来てくれた。
どうやら塩の専売業者の所に現れたようで、彼が追跡に残してくれたメンバーは彼女の動勢を捉えており、目立たないように指し示して知らせてくれた。
横顔が見えたが彼女に間違いない。
現在は布や糸を扱う店に居て、品定めをしているようだ。
ここから北西方面の街の出口へと彼らには先回りしてもらい、俺は彼女を尾行した。
無理やり拉致するのも一つの策ではあるが……それではロプトの奴らと変わりはしない、害意は無いし話を聞いてもらいたい、それにその後の関係を考えると荒っぽいことは絶対避けるべきだ。

どうやら買い物は終わったようなのは露店ひしめく市場の品物を見るのをやめ、前だけを見て歩きだしたからだ。
適度な距離を置いて、俺も彼女の後ろに付いて行った。
街外れに近くなると俺の尾行に気が付いたようで彼女は少し速足になった。
それに合わせてすぐに俺は足を早めたりせず少し距離が離れ、仲間の姿も見えるようになってから一気に全速力で距離を詰めた。

ほっと一安心したであろう彼女はしかし、自分の前方から迫ってくる者達のただならぬ気配を察したのか左右を見て後ろを振り返ると、錯乱して暴れ出しそうなところであったが、俺は彼女の手前で跪き

「恐れ入りますが、言上したき儀がございましてまかりこしました。ディアドラ殿下には初めて御意を得ます。それがしはレンスター第二王子ミュアハと申します」

事態を理解できそうにないディアドラさんは呆気にとられていたが

「外の世界の者とは関わらないようにと幼きころより言い遣っています。遠い国の方、せっかくですがすみません……」
「お言葉を返すようでございますが、殿下は市街の者らと商っておいでのご様子。これは果たして殿下のおっしゃる外の世界の関わりとは違いないかと推察されます。一つ禁を破った以上もうひとつふたつ破ったところで差しさわりがございましょうや?」
「……さきほどから私のことを殿下とお呼びですが、お人違いではありませんか?私は時の流れから取り残された里に暮らす者に過ぎません」

少しおびえたようなディアドラの様子であったので、俺は腰の剣をベルトから外して地面に置き、敵意の無いことを示した。
ベオウルフと他数人の仲間も俺に倣って武器を外し、片膝をついて跪いた。
すると少しは彼女も安心した様子だったので

「………わたしは殿下のさまざまなことを存じております。一つは殿下のお母上のお名前はシギュン様、聖者マイラの血を引く由緒正しきお方にして(さき)のヴェルトマー公ヴィクトル様のご正室にあらせられました。突然のことで誠に心苦しき限りなれど、殿下のお母上がシギュン様であらせられることお間違いありますまい?」
「……なぜ、それをご存じなのでしょうか」

興味を引くような反応だったのでここは攻め時に違いない。

「それを語るとなれば、長き時がかかりますゆえ、殿下はそれがしよりの言上、聞き遂げてくださいますことお許しいただけたと思いますが、如何に?」

頷いた彼女を見て、俺は辺りを確認した。
先程と変わらず、俺達を除いては人影も無かったが……俺は声を低くして

「あなた様のお父上はグランベル王国のクルト王太子にあらせられます。 その証拠はあなた様が額を隠すサークレットの下にある聖痕にございます……」

驚きの声と表情を見せるディアドラの顔を確認して、俺はより一層身を低くして敬意を現した……

 
 

 
後書き
現代ならキャー!ストーカー!きもwってなっちゃいますね。

ただ、いろんな事をズバズバ言い当てて(マッチポンプとかかも?)有名な芸能人を思いのままにしていた占い師なんかがこの現代にすら居るようですし、ディアドラさんの立場としてはびっくり!、なんで知ってるのー?ってなっちゃうと言う事くらいは信じてくれないかなーと。 
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