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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第67話 燃え上がる正義の炎、立ち上がれ英雄(ヒーロー)達よ

 
前書き
 それは、小さな出会いと大きな戦いの物語。
 人々の心が絶望に沈む中、太陽の光を受け新たな力を得た仮面の戦士。
 今、絶望の闇の中に、希望の炎が燃え上がる。




     スーパーヒーロー戦記……始まります。 

 
 南光太郎の腕にはクジラ怪人の亡骸が抱かれていた。クジラ怪人の懸命な努力により仮面ライダーBLACK、南光太郎は蘇った。そして、太陽の奇跡により仮面ライダーBLACKは新たなる戦士、仮面ライダーBLACK RXへと進化する事が出来たのだ。
 だが、その為にクジラ怪人と言う尊い命が失われる事となった。その亡骸を今、光太郎達は海に連れて来ていたのだ。

「クジラ怪人、お前の生まれ育った海だ。この海で静かに眠ってくれ」
「クジラさん、有難うね。私も、クジラさんの好きだった先代世紀王さんみたいに立派に戦い抜くよ。だから、安心して眠っててな」

 南光太郎、そして八神はやての二人は自分達の命を身を挺して救ってくれたクジラ怪人の亡骸を、その生まれ故郷である大海原へと流した。もう二度と、ゴルゴムの悪しき毒牙の届かない、静かな海の底へと、クジラ怪人の亡骸は沈んで行った。その光景を、光太郎とはやてはただじっと見続けていた。その姿が、見えなくなるまで。

「はやてちゃん、俺は決めたよ。この美しい星を守る為に……俺は信彦と、シャドームーンと戦う! そして、今度こそ倒す!」
「うん、私もクジラさんが大好きだった先代世紀王さんの想いと一緒に戦う。そして、この世界を護ります!」

 二人の胸に堅い決意が出来上がった。受け継いだ大いなる力。その力を使い、人間の自由を、世界の平和を今度こそ守りぬくと。そして、人々の自由と平和、そして未来を踏み躙る悪魔達を一人残らず倒す事を。二人は此処に誓い合ったのだ。

「そうや、光太郎兄ちゃん! あの洞窟にはなのはちゃんが居るんや。でも、ずっと目を覚まさへんねや」
「そうだったのか。すぐに戻ろう! 此処も何時また奴等が来るか分からない。今はとにかく少しでも安全な場所に一旦移るべきだ」

 二人はすぐさま例の洞窟へと向った。この場所にもまた何時ゴルゴムや他の敵が訪れるか分からない。今は少しでも落ち着ける場所へ移るのが先決であった。
 例え新たな力を手に入れたとしても侵略同盟が一斉で襲い掛かってくれば一溜まりもないからだ。




     ***




 その頃、未だ目覚めぬ高町なのはは深い眠りの中にあった。回りにあるのは漆黒の闇、何もない。誰もいない。居るのは只、自分だけであった。
 これが死の世界なのだろうか? 死んだ人間は一人寂しく、永遠にこの世界に漂い続けるのだろうか?
 そう思っていた時、一筋の閃光が生まれた。その閃光は最初こそ小さな光であった。だが、やがてその光は大きくなり、遂には巨大な太陽となったのであった。

(太陽……でも、何だろう? あの太陽の輝き……何処か懐かしい感じがする……)

 高町なのはは思った。あの輝きは地球を照らす太陽の輝きではない。その輝きの力も、大きさも、全てが地球を照らす太陽よりも遥かに大きかったのだ。だが、その輝きに何故か見覚えがあった。それも、何処か懐かしさを感じる。まるで、あの輝きを見ながら生まれたかの様に。
 巨大な太陽からまた複数の光が生まれた。その光もまた、やがては太陽へと変わっていった。新たに生まれた複数の太陽達は広い闇の中へと飛び散っていき、漆黒の宇宙を照らした。その太陽から今度は小さな星が生まれて行く。そうして、やがて見覚えのある広大な宇宙へと移り変わって行った。
 そして、最後にまた一つ新たな光が生まれた。その光は最初に生まれた光と同じ強い光を放っていた。

【我が生み出した最後にして最愛の子よ。お前もまたこの闇を照らし、この宇宙に自らの子を生み、そして闇を照らす光となるのだ。最愛の我が娘よ。汝に我が最愛の証である名を与える。汝の名は『ノア』】

 巨大な太陽の前で、幼くも強い光はやがて、一筋の太陽となった。その光は今まで生まれてきたどの太陽よりも強い光を放っていた。そして、その太陽は、やがて九つの子供を生んだ。
 そして、その太陽が生んだ三番目の子。その子が、この宇宙に奇跡を生んだ。
 それは、この宇宙に初めて、生命が生まれた瞬間であった。
 そう、巨大な太陽が生んだ最後にして、最愛の太陽は、我等の住む太陽系となったのだ。

(私が見てるこれは……何なんだろう? 私はこんな覚えなんてないのに、何故か、この光景がとても懐かしい)

 太陽系を照らすノアは、生命の誕生を心から喜んだ。ノアの父も、兄弟達もその喜びを共に分かち合った。そして、その後更に兄弟達の照らしている星達からも続々と生命が誕生していった。やがて、宇宙は生命の息吹が木霊する場所へと変わった。漆黒の闇が、今
命ある世界へと変わったのだ。

(ノアさん、とても嬉しそう。それに、他の太陽の皆もとても嬉しそう!)

 その光景を見ていたなのはもとても嬉しく思えた。太陽達が皆生命の誕生を心より喜んでいた。だが、喜びも長くは続かなかった。それは、最初に生命を生んだノアの三番目の子から起こった。ノアの子、三番目の星、その星から生まれた生命達。その生命達が、突如同じ生命同士で争いを始めたのだ。その争いはやがて、三番目の子の体を蝕み、苦しめた。その光景を前に、ノアは心から悲しんだ。そして、それを見た最初に生まれた太陽は激しい怒りを、その元凶である生命達に向けだした。
 
(そんな、何で? 何でこんな事をするの?)

 なのはの前に映っていたのは凄惨な光景であった。最初に生まれた太陽はその子達が生み出した生命を、次々と殺し始めたのだ。

【我が娘ノアが悲しんでいる。この宇宙に、生命など不要なのだ! 抹殺せよ! この宇宙から、生命を一人残らず滅ぼすのだ!】

 最初に生まれた太陽はその体から星の数程の輝く結晶を生み出した。赤く輝く球体であり、その球体の数は実に数十万個と生み出された。

(あ、あれは!)

 なのはにはその赤い球体に見覚えがあった。そう、あれこそ、なのはが使いこなしてきたデバイス、レイジングハートに他ならなかったのだ。そして、大量に生み出されたレイジングハート達は広大な宇宙へと散って行き、宇宙に生きている生命達を次々と虐殺し始めたのだ。

(止めて! 止めてよレイジングハート! 何でこんな酷い事するの?)

 なのはは叫んだ。しかし、彼女の叫びは大量のレイジングハート達に届く事はなかった。只、無言のまま、そして無心のままにレイジングハート達は次々と生命を殺し始めた。
 そして、大量のレイジングハート達が最後に向った先。それは、太陽系であった。最後にして最愛の娘ノアが照らす太陽系に数十万個と及ぶレイジングハート達が迫る。三番目の子の中に生まれた悪しき生命を滅ぼす為に。
 だが、それをノアは阻んだ。輝きを放ち、レイジングハート達を近づけさせなかったのだ。

【何故邪魔をするのだ? ノアよ】
【私はこの生命を失わせたくない。例え、今は愚かな事しか出来なくても、何時かは生命は分かってくれる筈】
【ならん! この宇宙に生命は不要なのだ! 生命を根絶やしにし、宇宙に生命の息吹を起こさてはならんのだ!】

 最初に生まれた太陽が更に輝きを放つ。その輝きを受け、大量のレイジングハート達の力は更に増大した。その増大した力を武器に大量のレイジングハート達は一斉に三番目の子に向った。

【貴方は間違っている。この宇宙に生命の息吹がなければ、宇宙は死と静寂の宇宙となってしまう。私は嫌だ! 折角生まれた命の芽を。優しい輝きを、失わせたくない!】

 最初の太陽の輝きに対抗するかの様に、ノアもまた強い輝きを発した。しかし、最初の太陽の輝きには遠く及ばず、レイジングハート達の侵入を許す結果となってしまった。三番目の子に入って行ったレイジングハート達はすぐさま生命の虐殺を始めた。レイジングハートから放たれる光弾は生命を焼き尽くし、肉を焦がし、命を刈り取っていく。ノアは涙を流した。自分の力は最初の太陽の力に、父の力に遠く及ばない。どうする事も出来ない。余りにも無力だ。

(そんな、ノアさんが……私達の星が死の星になっちゃうなんて!)

 なのはの目からでも明らかであった。三番目の星、即ち、その地球に住んでいた生命達に危機が迫ってきていた。だが、そんな時であった。突如、数十万と生まれたレイジングハート軍団の中で、たった一つのレイジングハートが最初の太陽の命令を逸脱し、果敢にもレイジングハート軍団に戦いを挑んだのだ。

【何? 我の生み出した物が反乱だと?】

 最初の太陽もそれには驚かされた。たった一つのレイジングハートは数十万にも及ぶレイジングハート達をその圧倒的な力で宇宙へと追い出していく。そして、地球に住む生命達を護りだしたのだ。

【有難う。私の子達を護ってくれて】
『礼には及びません。私は只、貴方の命令に従っただけの事です』

 ノアの言葉にレイジングハートは当然と言う風に答え、そして幾度となく押し寄せるレイジングハート軍団に果敢に戦いを挑んだ。結果は何時も同じであった。圧倒的物量差を物ともせず、レイジングハートは地球を守りぬいたのだ。だが……

【おのれ、我に逆らう愚か者がああああああああああ!】

 遂に業を煮やしたのか最初の太陽が自らやってきた。その圧倒的な死と破滅の輝きを放ち、地球の生命を焼き殺していく。ノアと、そしてレイジングハートは互いにその最初の太陽に挑んだ。だが、二人の努力も空しく、戦いに二人は敗れてしまった。
 地球の大地は焼かれ、生命は死滅し、地球は死の星へと変わってしまった。

【お父さん、貴方は間違っている。生命はこの宇宙に必要な光。それを失うことは愚かな行為だと、分かって欲しい】

 ノアは諦めなかった。何時の日か、優しき父へと戻って欲しい。そう想い、地球を蘇生し、再び生命の芽を生み出した。そして……

【今のレイジングハートと私では、父には勝てない。父の心を戻す為に、私の命をあの星へ……】

 太陽の中から、一筋の光が地球へと放たれた。その光は、やがて地球に生まれた一人の生命にへと入り込んでいく。
 だが、其処で映像は途切れてしまった。再び闇が辺りを覆いつくしていく。

(一体何だったんだろう? 太陽が沢山生まれて。その後に星が生まれて、訳が分からないよ。それに、何でレイジングハートがあんなに沢山?)
【それを君が知る必要はない】

 声がした。一体誰だろうか? 何処かで聞き覚えのある声であった。
 すると、なのはのすぐ側にその姿は現れた。それは、かつてなのはを地球の代表として招いたメフィラス星人であった。

(貴方は、あの時の……)
【久しぶりだね。高町なのはちゃん。私は君を迎えに来たのだよ】
(迎えに?)
【君はもう充分にあの星に貢献した。もう戦う必要はない。これ以上あの星に居続ければいずれは君は取り返しの付かない事になる。そうなる前にあの星を去ろう】

 そう言い、メフィラスはそっと手を差し出してきた。彼が何を言っているのか、それはなのはには良く分からなかった。だが、一つだけ言える事がある。

(メフィラスさん。貴方のお気持ちはとても嬉しく思います。でも、私はあの星を見捨てたくないんです!)
【だが、このまま居ても結果は見えている筈だ。君も見た筈だ。あの圧倒的な力を……】
(でも、諦めたら其処でお仕舞いです。私は、最後の最後まで諦めない! あのレイジングハートと、ノアさんの様に)

 なのはが先ほどの映像で戦っていた二人の名を口に出した。すると、突如メフィラスの顔が重く沈んでいく。まるで悲しむかの様に。その顔のままなのはを見ていたのだ。

【分かった。だが、私は諦めた訳ではない。必ず君を、あの星から連れ出して行く。もう見たくないのだ。私は……】

 その言葉を最後に、メフィラスの姿は消えて行った。そうして、またなのは一人ぼっちとなってしまった。一度に多くのことが沢山なのはの頭の中を駆け巡った。
 見覚えのある宇宙の光景。生命の誕生。そして、その生命を滅ぼそうとする巨大な太陽。そしてその太陽から生み出されたレイジングハート。そしてメフィラス。さっぱり訳が分からなかった。そうしている時、やがて漆黒の闇が光に満たされて行く。




     ***




「なのはちゃん? なのはちゃん!」
「う……うん」

 はやての目の前でなのはが微かに息を吹き返した。そして、ゆっくりと目蓋を開いた。光太郎に続きまたしても奇跡が起きたのだ。
 それを見てはやては嬉しさの余りにその目が涙で滲んでいた。

「は、はやてちゃん? それに、光太郎さんも……」
「ホンマ良かったわぁ、なのはちゃんが目を覚ましてくれて」

 目を覚ましてくれて? その言葉が、自分が今まで眠っていた事を裏付ける事であると知るには充分であった。

「なのはちゃん、動けるかい?」
「は、はい……なんとか」

 頭がぼうっとする中、何とか立ち上がってみせる。そうして、初めて今の自分の姿を見れた。どうやら戦闘の際にずっとそのままであったのだろう。今のなのはが身につけていたのはボロボロになってしまったバリアジャケットであった。

「あ、あれ?」

 そして、その中でなのはは気づいた。無い! 無いのだ。今まで力がない自分を支え続けてくれたレイジングハートが、今なのはの元には無かったのだ。

「どないしたんや? なのはちゃん」
「ない、レイジングハートがない! まさか、また落したんじゃ……」
「落したって、私たち此処に来る前はずっと海の中やったし、ひょっとして海の中に落したとか?」
「それじゃ探しようがないぞ」

 流石の光太郎もそれではお手上げであった。地球のほぼ七割は海なのだ。その広大な海の中からあれだけ小さなレイジングハートを探すなど事実上不可能でもある。

「ともかく、今は少しでも落ち着ける場所に行きたいんやけど、なのはちゃん何処か心当たりあらへん?」
「落ち着ける場所ですか? でしたら、私一応心当たりがあります」
「本当かい、其処を教えてくれないかい?」

 南光太郎、八神はやて、そして高町なのはの三名は直ちに移動を始めた。やっと芽生えた希望の炎。それを絶やしてはならない。だが、あの時なのはが見た光景、あれが意味する物とは? そして、メフィラスは一体何を知り、何をなそうとしているのか? 答えはまだ知らない。嫌、もしかしたら知るべきではない事なのかも知れない。
 そして、その答えを知る時は、まだ先の事である。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

 愛機を失い、戦う術を失くした少女。だが、少女の心にはまだ不屈の心が宿っていた。その時、赤き巨人同士が戦っていた。その巨人は少女にとって見覚えのある巨人であった。

次回「獅子の魂」お楽しみに 
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