| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第62話 決めろ!必殺キック

「本日付で怪獣攻撃隊MATから此処アースラ隊に転属する事となりました【郷 秀樹】です。宜しくお願いします」

 怪獣との戦闘が終わり、アースラ隊のメンバーは無事にアースラへと帰還した、そして、更に嬉しい事に補充要因として怪獣攻撃隊【モンスター・アタック・チーム】通称【MAT】から此処へ移ることとなった郷秀樹が加わった事だ。
 だが、普通なら補充人員一人増えただけで別に喜びはしない。だが、一同が喜ぶ要因は彼のもう一つの姿にあったのだ。

「すると、貴方もハヤタ隊員やモロボシ・ダン隊員と同じなのね?」
「はい、僕もまた、M78星雲からやってきたウルトラマンです。名前はジャックと言います」

 彼が変身したウルトラマンは今から半年前に地球を守ったもう一人のウルトラマンに酷似していた。その為なのかどうかは分からないが彼には【ウルトラマンジャック】と言う名前があった。
 そして、そのウルトラマンジャックが此処アースラ隊に加入してくれた事は現状で戦力不足となっているアースラ隊にとってはとても嬉しい報せでもあったのだ。

「しかし初めて見たがあのウルトラマンと言うのは凄い力があるんだな」

 率直な鉄也の感想であった。彼も一応ウルトラマンのデータは知っている。だが、戦闘データを見るのと実際の戦闘を見るのとでは話が違う。そして、それは怪獣も同じ事でもあった。
 今回戦ったあの怪獣。果たしてグレートが完全な状態であったとしても勝てたかどうか?
 考えたくない結論であった。グレートマジンガーは既に完成されたスーパーロボットの筈だ。現にグレートマジンガーはマジンガーZを戦闘不能に追い込んだ戦闘獣を圧倒する程の力を有しているのだ。
 だが、それが以前の戦闘ではどうだ。武器が使えないだけで怪獣を相手に苦渋を舐める結果となってしまった。

「ちっ、ウルトラマンが来た以上俺達は揃ってお役御免って事のようだな」
「そんな事はないさ、鉄也君」

 一人ダークになる鉄也に郷がそっと言い寄った。今の彼には郷のその言い方は何処か苛立ちを感じさせられる。
 それ以外なかったのだ。

「ウルトラマンだって万能じゃないんだ。第一、ウルトラマンが地上で居られる時間は極僅かなんだ」
「どう言う事だ?」
「ウルトラマンは、地球上ではエネルギーの消耗が激しくて、3分間しかその姿を維持できないんだ」

 ウルトラマンは確かに無敵の超人である。だが、それ故に弱点もある。
 ウルトラマンの活動源でもある太陽エネルギーは此処地球では急激に減少してしまう。その為この星でウルトラマンが戦っていられる時間は僅か3分間だけなのだ。
 ボクシングで言うならほんの1ラウンド分しかない。ハーフタイムなどない厳しい戦いなのだ。
 その限られた極僅かな時間でウルトラマンは怪獣と戦わねばならない。はっきり言ってグレートやゲッターよりも状況的には厳しいのだ。
 スーパーロボットならエネルギーが尽きたら補給すれば良い。だが、ウルトラマンはそう簡単にそれが出来ないから辛い所なのだ。

「だから、僕一人ではこの星を守れない。君達の助力が必要なんだ」
「言ってくれるぜ。要するに俺達は怪獣の時にはお前の補助をしろって事か?」
「鉄也君!」

 不貞腐れる鉄也の言い分に竜馬が即座に意見を出そうとした。だが、そんな竜馬の前に鉄也は手を翳す。

「良いぜ、どの道今の俺達じゃ怪獣相手に苦戦を強いられるのが現状なんだ。あんたの手助けってのをしてやるよ」

 半ば不機嫌ではありながらも鉄也は納得してくれた。そんな鉄也に一同はホッとする。

「やれやれお前さんのご機嫌取りには苦労するぜ」
「余計なお世話だ」

 隼人の愚痴に鉄也が意見する。どうやら自覚はしているようでもある。それと同時に辺りからドッと笑い声が響いたのは言うまでもない。




     ***




 フェイトは一人、待機状態のバルディッシュを見つめていた。今、フェイトのバルディッシュはかつてのそれとは段違いにパワーアップを果たしている。ミッドチルダで留学し、知識を身につけた甲児がフェイトのバルディッシュに新システムとして、カードリッジシステムを導入してくれたのだ。そのお陰により以前のよりも格段に強さを増したのだ。
 だが、その代償として以前のそれよりも使い辛さが増していた。強さを手に入れた代償でもある。
 そして、その為に大切な友達を傷つけてしまった。それが今のフェイトにとって深い傷を被る結果となってしまった。だが、何時までもその深い傷に蹲っていては駄目だ。前に進まなければならない。今は自分が戦わねばならないのだ。

「やっぱり、今のままじゃ駄目みたい」
「何が駄目なんだ?」
「バルディッシュです。パワーアップしたは良かったんですけど、私自身がその力を使いこなせていないんです」
「それは問題だな。俺もV3の能力を全て知らないながらもの戦いの時は苦戦を強いられたからな」

 自身の経験談を思い出しながら呟く志郎。彼の場合は改造した本人である1号と2号が揃っていなくなってしまった為に戦いながら自分自身の中に眠る力を手探りで探し出す事となってしまった。それはとても過酷な戦いでもあった。何せ相手はショッカー以上の組織デストロン。そんな奴等を相手にしながらなのだから当然と言えば当然でもある。

「でも、それにはどうしたら良いのか……」
「それには特訓するに限るな」
「特訓、ですか?」
「そうだ、俺もかつてそうして戦い抜いてきたんだ。お前がバルディッシュを使いこなせないのは、お前がまだ弱いからだ」

 風見の言い方は多少きついところがあった。しかし、言い分としては正しい。フェイトが今のバルディッシュを使いこなせない最大の理由は自分自身がそのパワーアップしたバルディッシュのパワーについていけてない事が挙げられる。
 ならばどうすれば良いのかは、自ずと見えてきた。扱えない代物なら扱えるようになれば良い事だ。理屈は簡単だった。だが、其処へ行き着くまでが大変なのだが。

「すぐにリンディさんに許可を貰って来ます。でも、何処で特訓するつもりなんです?」
「俺が昔柔道の特訓をしていた秘密の場所がある。其処でなら思い切り暴れられるだろう」

 何とも物騒な事を涼しげな顔で言う。暴れられるって……
 フェイトは思わず苦笑いを浮かべた。そんな言い方をされたら、まるで自分は何処かの暴君みたいではないか。もしくは何処かの白い魔王とか?
 等と危ない内容を頭の中で再生させながらも口に出さない所は流石でもあった。

「それじゃ、早速母さんに許可を貰いに言って来ますね」
「あぁ、それと他に行きたい奴等が居ないかどうか聞いてきてくれ」
「分かりました」

 頷き、フェイトは部屋を後にした。それから数分後、再び二人は合流した。リンディから許可は得られた。また、その他に特訓に付き合いたいと言うメンバーもまた居た。
 それはフェイトと風見志郎を中心にしてアルフ、クロノ、結城丈二達と言った魔導師と仮面ライダーメンバーが中心であった。
 逆にアースラに残るメンバーが剣鉄也、ゲッターチーム、郷秀樹と言ったスーパーロボットとウルトラマンのメンバーであった。

「これで全員か? よし、それならば早速移動しよう。場所は俺が案内する」

 風見の案内の下、一同はフェイトの特訓と各々の特訓も兼ねてアースラを離れた。移動はアースラの転移装置を利用しての事なので一瞬で行ける。その後は定時連絡を行いきりの良い所で拾いに来て貰えばそれで済む。
 だが、そうは問屋が卸さないのが物語の面白いところでもあり面倒な所でもあった。




     ***




 突如けたたましいアラート音が艦内全体に響く。その音に導かれるようにアースラに待機していたメンバーが皆ブリッジに集まる。

「全員揃ったようね、エイミィ」
「はい」

 頷き、エイミィがコンソールを操作し、モニターを映し出す。其処には一体の怪獣が映し出されていた。古代白亜紀に生息していた首なが竜を思わせる外観をしており、頭部には二本の角が生えている。

「何だアイツは? 恐竜時代から居た奴か?」
「ふっ、どうやら俺達は余程恐竜に縁があるんだろうな」

 隼人が笑いながら言う。彼が言っているのは間違いなく既に滅んだ恐竜帝国の事を言っているのだ。古代白亜紀に栄華を極めていた爬虫人類。だが、彼等は突如地上に降り注いだゲッター線の影響により地底に追いやられてしまった。
 それとは対照的にゲッター線を浴びた猿達は人類に進化し、今の文明が栄えていると言われているのだ。

「この怪獣は真っ直ぐに原子力発電所を目指しています。このままあの怪獣が原子力発電所を破壊してしまったら、東京の電力供給が出来なくなり大パニックになります」
「不味いな。電気が無くなったら東京なんてコンクリートで覆い固められた砂漠同然になっちまう。それだけは避けないとな」

 竜馬が言う。その通りだ。東京で電力が遮断されたらそれこそ東京に住む人々は皆砂漠に放り出された状態になる。そうなれば大パニックに陥ることは火を見るより明らかな事だ。

「大至急現場に急行して怪獣の進撃を阻止して下さい」
「分かりました」

 一同は直ちに現場に急行した。鉄也はグレートマジンガーを操り、ゲッターチームは各々のゲットマシンに乗り込む。郷もまたMATから拝借してきたマットアローに乗り現場へと急いだ。辿り付いた一同の前には映像で見た通りの怪獣が確実に原子力発電所までの道を歩いていた。

「リョウ、このままじゃ確実にあの野郎発電所を襲う気だぞ!」
「そうはさせるか! その前に俺達が叩きのめす」

 竜馬の号令と共に戦闘が開始された。余り時間を掛ければ怪獣はますます発電所に近づく。また、この騒ぎを聞きつけてミケーネの戦闘獣や百鬼帝国のロボットが来ないとも限らない。迅速に片付ける必要があった。

「一気に片付けるぞ。リョウ君、合わせろ!」
「分かった!」

 一斉に攻撃を放った。グレートからはサンダーブレイクを。ゲッターからはゲッタービームを。それぞれ眼下を移動し続ける怪獣目掛けて放つ。だが、その二つの攻撃が例の怪獣に命中する事はなかった。
 突如発生した不可思議な色の結界により放たれた攻撃は全て遮断されてしまったのだ。

「な、何だ? 攻撃が通らない」
「ちっ、バリアーか」

 厄介な相手であった。只でさえ怪獣の強さは半年前以上に強さを増している。その上にこのバリアである。こちらは時間を掛けたくないと言うのにそんな時に限ってのこれであった。

「不味いな。怪獣の出現は恐らく奴等も察知している。此処で手間取っていたら奴等が来るぞ」

 隼人が懸念しているのは当然ミケーネ帝国と百鬼帝国の存在であった。このまま戦いが長引けば奴等が更に襲ってくるかも知れない。そうなる前にケリを付ける必要があったのだ。
 そんな時、眩い閃光と共に郷秀樹がウルトラマンへと変身した。闊歩を進める怪獣の前に立ちはだかるかの様にその赤と銀の雄雄しき巨人は立っていた。

【これ以上先へは行かせないぞ!】

 その思いと共に怪獣に向かい拳を振り上げる。だが、そんなウルトラマンに向かい怪獣の角から超振動にも似た光線が放たれる。

【うっ!】

 諸にそれを浴びたウルトラマンが顔を抑えて下がる。どうやらあの角は防御だけでなく攻撃も出来るようだ。下手に近づけば角の餌食になる。かと言って遠のいての攻撃は意味がない。
 ふと、胸のカラータイマーが鳴り出した。ウルトラマンは地球上では三分間しか居られない。その残り時間が少ない事を告げている。時間的に後1分弱しかない。

【どうする? どうすれば奴のバリアを破れるんだ……】

 困惑するウルトラマン。もう時間がない。

「おいおいどうすんだよ? このままだとかなりやばいぜ!」
「かと言ってあのバリアには俺達のゲッタービームもグレートのサンダーブレークも通じない。どうすれば破れるんだ?」
「リョウ、見ろ!」

 隼人が指示する。その方に目をやる。それは怪獣のバリアであった。確かに怪獣の周囲は堅牢なバリアで覆われている。だが、反面上部は無防備となっている。しかし、その体は分厚い皮膚で覆われており今のままでは決定打にならない。

「あのバリアを作ってるのは怪獣の角だ。あれを破壊すればバリアが解けるんじゃないのか?」
「そうみたいだが、どうする?」
「俺達で奴等を引き付けるんだ! その隙にウルトラマンが角をへし折らせるんだ!」
「分かった。鉄也君……」

 竜馬が通信モニターを開き、鉄也にその旨を告げる。鉄也に呼応してグレートの首も縦に動く。どうやら了解してくれたようだ。
 グレートとゲッターがそれぞれ怪獣と同じ土俵に降り立つ。すると怪獣の狙いがウルトラマンから二体のスーパーロボットへと移り変わる。

「聞こえるか? 郷、嫌ウルトラマン! 俺達が怪獣の注意を引く。その間にお前は怪獣の角を叩き折れ!」
【鉄也君……分かった!】

 会話が終わり、グレートとゲッターが捨て身で怪獣に攻撃を仕掛ける。だが、その攻撃も全てが分厚いバリアに守られて徒労に終わっていく。それに対し、怪獣の放つ攻撃はどれも強力な物が多く苦しい戦いが続けられていく。
 怪獣の分厚いバリアにはグレートのマジンガーブレードもゲッターのダブルトマホークも効き目がないのだ。だが、それでよかった。怪獣の目をこちらに向けさせる事こそが竜馬と鉄也の狙いだったのだ。

「今だウルトラマン!」
「飛べ! 奴のバリアよりも高く空へ!」

 二人が叫ぶ。それに気づいた怪獣がウルトラマンの方を向いたが、その時には既に遅しであった。自分の頭上よりも高く飛翔したウルトラマンが其処に居る。迎撃しようにも突然の事の為反応が一瞬遅い。

【今がチャンスだ! この一撃に全てを賭ける!】

 半ば祈る思いでウルトラマンはその高さから急速に降下した。そして降下しざまに怪獣の角目掛けての蹴りを叩き込んだのだ。
 バキン!
 音がした。見れば怪獣の頭部に生えていた二本の立派な角がなくなっていたのだ。ウルトラマンのキックによりへし折られたのだ。これにより怪獣の周囲を覆っていたバリアが消え去る。

【今だ! 二人共協力してくれ!】
「任せろ!」
「これでトドメだ!」

 バリアを張れなくなった怪獣目掛けてウルトラマンのスペシウム光線が。グレートマジンガーのブレストバーンが。ゲッタードラゴンのゲッタービームが一斉に怪獣目掛けて放射される。それらを一斉に浴びた怪獣は断末魔の悲鳴をあげ地面に倒れこみ、遂には爆発して散った。間一髪の勝利であった。
 あと少し倒すのが遅ければきっと危うかった筈だ。

【有難う。鉄也君、ゲッターチーム】

 隣に佇むグレートとゲッタードラゴンに向かいウルトラマンが礼を言った。今回の勝利はウルトラマンだけではなし得なかった勝利だ。ウルトラマンと人類。その双方が互いに力を合わせる事により、どんな強大な敵にも対抗出来るのだ。
 その事実を一同は心底理解しえる事となった。

「礼なんざ良いさ。俺達はこの星を守る為に集まった仲間なんだからな」
「ふっ、お前さんの口からそんな事が出るたぁ以外だぜ」

 戦闘が終わるや否やまた何時も通りな感じの些細な会話が始まった。こんな些細な会話が出来るのも世界が平和な為だからだ。世界が侵略者の手に落ちれば平和な会話など出来る筈がないのだから。

「さぁ、帰ろう」
「そうだな。怪獣も葬った事だし、俺達が此処に居る理由もない」

 戦闘を終え、一同はアースラへと帰還する事となった。だが、彼等は気づかなかった。終始その戦いを遠くから観察する邪悪な存在に。そして、その邪悪な存在こそが、後に彼等を窮地へと叩き落とす事を。
 今はまだ、知りえなかったのである。。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

 更なるパワーアップの為特訓に励もうとしたフェイト達。だが、彼女達が訪れた場所にあったのはデストロンの秘密基地であった。
 更に、デストロン怪人の卑劣な罠に陥り窮地に立たされてしまう。

次回「卑劣なる罠!V3、死の弱点」お楽しみに 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧