スーパーヒーロー戦記
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第61話 帰って来たウルトラマン
前書き
シャドームーン復活を急ぐ三神官。それに危機感を感じたビルゲニアは創世王から受け取ったサタンサーベルを手に仮面ライダーBLACK抹殺を画策する。
だが、先代世紀王の意志とキングストーンを封印した闇の書の力を受け継ぎ覚醒した八神はやての乱入。そして、復活したもう一人の世紀王シャドームーンの手によりビルゲニアは倒される事となった。
そのシャドームーンの正体こそ仮面ライダーBLACkこと南光太郎の親友秋月信彦その人であったのだ。
かつては親友であった二人が激しく戦いあう宿命を背負わされてしまった光太郎。果たして、彼は親友信彦を救う事が出来るのだろうか?
スーパーヒーロー戦記 始まります
守護騎士達との戦いはなのはの身を挺した妨害により守護騎士達を取り逃がす結果となってしまった。既に守護騎士達の反応は消えてしまい追跡は不可能となってしまった。その為アースラ隊のメンバーは一度アースラへと帰還する事を余儀なくされていた。
メンバーの気持ちはとても複雑な物であった。かつて、共に戦ったであろう仲間が今や犯罪者達の片棒を担ぐ事となっていたのだから。今度の戦いは以前の戦いよりも過酷な物となるのは確実な物でもあった。
***
「そうなの、それは大変な事になったわねぇ」
「はい、かつてジュエルシード事件に関わった何名かがあの守護騎士達と行動を共にしていたんです」
アースラに戻るなり、クロノは先の戦闘での経緯を説明した。そして、その中にかつて共に戦った仲間である甲児と、そしてなのはの姿を確認したのだ。
「甲児君となのはちゃん……あの二人が居ないのはこちらにとっては大きな痛手になるわね」
リンディが呟くのも無理はない。このアースラ隊の団結力を高めたのは甲児となのはの二人に他ならないのだ。その二人が今は此処には居らず敵として一同の前に立ち塞がった。
皆の心境は複雑な物であったのは確実だ。
「訳が分かりませんよ。なのはも甲児さんも、かつては共に戦った仲間なのに……何であんな犯罪者達に加担する様な真似をするんだ! 一体二人は何を考えているんだ?」
「クロノ、少し落ち着きなさい」
今のクロノには落ち着きが欠けていた。無理もないだろう。
最愛の恩師をその守護騎士達に殺されてしまったのだ。今の彼に落ち着けと言う事自体無理がある。
「すみません、艦長……取り乱してしまって」
「貴方が取り乱すなんて珍しいわね。まぁ、理解出来ない訳ではないわ」
リンディも分かっていたのだ。大切な人の死。それは彼女もかつて経験していた事だ。
そう、まだクロノが物心つく前にその悲劇は起こったのだ。
「それよりも今は……これから先の事について考えないとね」
「と、言いますと?」
「もし、また私達の前に二人が現れた時……どうするつもり?」
リンディの問いにクロノは黙り込んだ。顔を俯かせ、暫しの間口を閉じて黙っていた。だが、すぐに顔を上げリンディを見上げて口を開いた。
「話をつけます。そして、彼等の決意が固いようなら。多少遺憾ではありますが、拘束するつもりです」
「分かったわ。その旨を皆に伝えて頂戴ね」
「了解しました」
リンディとクロノ。母と子の重苦しい会話はそれで打ち切られた。
これ以上話していても逆に気が滅入ってしまうだけだからだ。今は気持ちを切り替えなければならない。でなければ、次に倒されるのは自分達なのだから。
***
「黒い、仮面ライダー!?」
フェイトは風見と結城からその言葉を聞き驚いた。
「あぁ、全身黒い甲殻の様な物で覆われていて、赤い目をしていた。そしてあの顔は間違いなく俺達と同じ仮面ライダーだった」
「間違いありません! あの時私を助けてくれた仮面ライダーです!」
「だが、その仮面ライダーはあの守護騎士達と行動を共にしていた。少なからず敵と見て間違いないだろう」
冷徹なまでの風見の言い分であった。彼は一切妥協はしない。敵であれば敵、そして、敵ならば倒す。それが今の風見志郎の考えなのだ。
「それで、次にその黒い仮面ライダーと出会ったら、どうするんですか?」
「当然倒す。奴が敵である以上戦う他に道はないんだからな」
「俺も同意見だ」
隣に居た結城丈二も同意見だと述べた。彼の右手は黒い皮の手袋で覆われている。その手袋が、彼の辛い過去を覆い隠してくれるからだ。
「どんな経緯があろうと、敵として前に出た以上は倒す。でなければ俺達が逆に倒されてしまうんだ」
「そうかも知れませんけど……でも、その人達と話し合うと言う事は出来ませんか?」
「無理だな」
あっさり一蹴されてしまった。以外と言えば以外だった。これがもし本郷や一文字であれば多少は拾ってくれただろう。だが、風見にそんな余裕などない。彼には今目の前の事で頭が一杯なのだ。
「フェイト、お前の気持ちも分からなくもない。だが、俺達が戦わなくちゃならない相手はあの守護騎士だけじゃないって事を忘れてないか?」
「わ、忘れてません! 忘れてませんけど……」
「お前も嘱託魔導師となったからには、その甘さは捨てろ! 敵はお前のその甘さを付け狙って来るぞ」
「特に奴等【デストロン】はな」
結城が念を押してそう言った。二人は言ってしまえばデストロンの被害者なのだ。
風見は家族を殺され、結城は同僚後輩を皆殺しにされた。
二人共激しいデストロンへの復讐心に燃えているのだ。あの時こそ一時復讐を忘れてはくれたが、今尚二人の中には復讐の炎が燃え上がっているのは間違いないのだ。
「奴等はほんの少しの心の隙にさえ容赦なく入り込んでくる。心を強く持っていなければ、奴等はお前を八つ裂きにするぞ」
「こ、怖い事言わないで下さいよ」
思わず身震いしだすフェイト。其処は年相応なようだ。だが、決して風見とて冗談でも脅しでもそう言った訳ではない。現実論でそう述べたのだ。
デストロンは女子供とて容赦せずに殺す。現に彼の家族もそうされたのだ。
***
ジュエルシード事件から半年。その間、多少の事件はあったが、それでも穏やかな時は過ぎていた。
だが、誰もが感じていた。その静けさが、嵐の前触れなのだと言う事を。
そして、その嵐は間も無く、突然訪れたのだ。
***
それは、けたたましいアラートと共にもたらされた。ブリッジに集まってみると、モニター一杯に映っているのは港町を襲撃する巨大な怪獣の姿であった。
「あれが怪獣か」
初めてその姿を見た鉄也がマジマジと感想を述べた。
「呑気な事言ってる場合じゃありませんよ鉄也さん! あのままじゃ町が破壊されてしまいますよ!」
「その通りです。私達アースラ隊はこの非常事態を見過ごす事は出来ません。直ちに出動して下さい!」
リンディが指令を下す。現状で怪獣に対処出来るのは自分達しかいない。もう、この地球にかつて怪獣と戦ってきた光の巨人は居ないのだ。
「グレートマジンガーとゲッターロボGは怪獣の対処を、フェイトちゃんとクロノ、アルフと風見さん達は付近の避難誘導をお願いします」
皆が頷き、出動に急いだ。正直、フェイトはリンディの采配に少し不満があった。
自分も出来れば怪獣の迎撃に当たりたかったのだ。だが、フェイトでも分かっていた。
今の自分に怪獣を倒す力はない事を。なのはの様に一撃で怪獣を葬れる力が今の自分には備わっていないのだ。
つくづくそれがフェイトは歯痒かった。今の自分ではなのはの代わりにもならない。このまま彼女に頼りきっていて本当に良いのだろうか?
「何してるんだフェイト。急げ!」
「は、はい!」
いつの間にか立ち止まっていたようだ。隣で風見の怒号が聞こえてハッと意識が戻った。
今は立ち止まってる暇などない。自分が代わりに戦わねばならないのだ。
でなければ、なのはの故郷は死の星となってしまう。
***
港町にたどり着いた一同が目の当たりにしたのは壮絶な光景であった。紅蓮の炎に包まれる町、そしてその中を闊歩する一体の怪獣の姿があった。全身球状で体に蛸の吸盤に似た物が張り付いた怪獣であった。
「ふん、宇宙怪獣の次はゴム鞠怪獣か? いい加減怪獣相手にも飽き飽きしてきたぜ」
「油断するなよ鉄也君。怪獣の強さは桁違いだ」
「肝に銘じておくさ」
竜馬の言葉をそう返す鉄也。彼とて怪獣の強さは知っている。以前マジンガーZが戦闘していたデータを元に怪獣との戦闘訓練を行ってきていたのだ。それ故に彼も怪獣の強さを知っている。
だが、それでも怪獣が戦っていたのはグレートマジンガーよりも性能の劣るマジンガーZ。ならばグレートでなら問題はない筈。そんな思いが鉄也の中にはあった。
「まずは俺が行くぞ!」
開始とばかりにグレートが怪獣に向かい拳を放った。しかし、怪獣の体は思っていたよりも堅くグレートの拳を全く遠さない。
「鉄也君! 退くんだ」
続けざまにゲッタードラゴンが掛かった。腕に取り付けられた回転する刃スピンカッターが怪獣に向かい叩きつけられる。
しかし、そのスピンカッターでも怪獣の体に傷を付けるには至らない。
「クソッ、外見に似合わず堅い体だ!」
目の前に居る怪獣の外見は言って見ればそれこそゴム鞠の様な体をしている。体のほぼ九割が球体であり、其処に手足と顔がついているような姿をしている。
そんな姿だと言うのに目の前に居る怪獣は堅い体をしているのだ。恐らく接近戦では分が悪いだろう。
「だったらビーム兵器で戦えば……」
「駄目だ、守護騎士達との戦いのダメージがまだ残っていやがる。武器の使用は出来ない!」
隼人が計器を見ながら言った。どうやら以前グレンダイザーとの戦いのダメージがまだ響いていたのだろう。武器の使用が二機とも出来ない状況であった。
今この状況では正しく絶望的な状況でもあった。
***
その頃、町の方では同時に出撃した風見と結城、そしてフェイトとアルフの四人が付近の人々の避難誘導を行っていた。
「こっちだ! 早くこっちに逃げろ!」
「急げ! グレートとゲッターが足止めしている間に少しでも遠くへ逃げるんだ!」
必死に手招きしながら風見と結城の二人が叫ぶ。その横では同様にフェイトとアルフの二人もまた同じように避難誘導を行っている。
ふと、フェイトは視線を海に向けた。其処には巨大な怪獣を相手に苦戦を強いられているグレートとゲッターが居た。
先の守護騎士達との戦いのダメージのせいで武器の使用が出来なくなっていたのだ。
そんな時にこの怪獣との戦いである。正直言ってかなり分が悪い。
フェイトは、ふと自分が行けば、と思ったのだが、駄目であった。あの時、なのはを切り裂いた時の事でフェイトは分かっていた。
以前のバルディッシュなら僅差で刃を止める事が出来た。だが、それが出来なかった。
フェイトは、今のバルディッシュ・アサルトのパワーに振り回されている状態なのだ。
桁外れのパワーアップを果たした代償がこれだったのだ。
そして、その為に自分はなのはを傷つけてしまった。大切な親友である筈の彼女を傷つけてしまったのだ。
自分を不幸と絶望の淵から助けてくれた親友を自分の手で傷つけてしまったのだ。
そんな自責の念がフェイトの足を止めていた。今自分が出て行ってもあの怪獣には勝てない。
そう思ってしまっていたのだ。
「何を恐れているんだ!」
「え?」
後ろから声がした。振り返ってみれば、其処には一人の青年が居た。見覚えのない制服とヘルメットを被った青年であった。その顔は何処か日本と外国の顔が混ざったような顔立ちをしていたのだ。
「あ、貴方は?」
「僕の事は良い! それよりも、何故君は戦おうとしないんだ!」
青年はフェイトに対し厳しい言葉を掛けた。青年は気づいたのだ。フェイトの心の内に眠る自分自身との葛藤と強くなりすぎた力への苦しみに。
「でも、私が行ったとしても……皆の足手まといにしか――」
「何故そうも決め付ける! まだ君は挑んでもいないのだろう? ならば何故そう決め付けるんだ!」
尚も青年はフェイトに言う。その言葉が全てフェイトの胸に深く突き刺さった。そうだ、自分の友達だってその恐怖と必死に戦い続けていた筈だ。
なのに何故自分だけそれから逃げようとしているのだ。
何故立ち向かわない。何故戦おうとしない。
「君は怪獣達と戦える力を持っている。だが、その力を君は恐れているんだ!」
「でも、私はその力を使いこなせないんです。今のままじゃ……」
「君自身が力を信じなければ力は応えない。大事なのはその力を恐れない心だ!」
「心……」
自身の胸を叩き青年は言う。フェイトは自分の胸に手を当てる。大事なのは心。青年が言っているのはそう言う事なのだ。
「そして、もう一つ……君に言っておく」
「もう一つ。それは一体何ですか?」
「ウルトラマンは……決してこの星を見捨てない」
そう告げると。青年は手を天高く振り上げる。すると青年を眩い閃光が包み込んでいく。やがて閃光は大空へと舞い上がり、その光の中から銀と赤の二つの色を纏った巨人が姿を表した。
その姿は、かつて地球の為に戦い続けた光の巨人その物の姿をしていたのだ。
「ウ、ウルトラマン!」
「あれが、ウルトラマンなのか?」
初めてウルトラマンを見た者達がその勇姿を見る。怪獣の目の前に雄雄しく立つその姿は正しく光の巨人その者であった。
赤と銀の二色のボディカラーに胸に青く輝くカラータイマー。
間違いなく、彼はウルトラマンだ。ウルトラマンは今、再びこの地球に帰ってきたのだ。
「何だ? あの巨人は」
「ウルトラマン! 帰ってきたんだな!」
竜馬がウルトラマンを見て歓喜の声を挙げる。彼は知っていたのだ。地球を守る為に戦い続けた光の巨人を。
そして、今その帰ってきた光の巨人が怪獣に戦いを挑む。傷ついたグレートやゲッターでは太刀打ち出来ない凶悪な怪獣に対し、ウルトラマンは果敢に戦いを挑んだ。
帰ってきたウルトラマンの強さは怪獣と同等であった。
【私はこの星を守る為に戦う! その為に私はこの星に来た! これがその力だ!】
怪獣を前に、ウルトラマンは腕を十字にクロスして構える。既にお決まりの構えであった。
十字に構えたその腕から空色に輝く光線が放たれた。
「スペシウム光線!」
誰もが知っていた。ウルトラマン必殺の武器であった。それを受けた怪獣は海へと倒れこんだ。
そして、轟音を上げて爆発した。爆発する怪獣を前に聳え立つ銀色の巨人。
その姿を誰もが見つめていた。誰もが知っていたのだ。地球の為に凶悪な怪獣や異星人と戦い続けた銀色の巨人の姿を。
「帰ってきた! ウルトラマンが帰ってきたんだ!」
側に居た誰かが叫んだ。その声を皮切りに誰もが叫んだ。
ウルトラマンが帰ってきた……と。
つづく
後書き
次回予告
地球へと再び戻ってきたウルトラマン。そんなウルトラマンの前に、次々と凶悪な怪獣が姿を現す。
それは、ウルトラマンの持つ全ての力が通用しない怪獣であった。
次回「決めろ! 必殺キック」お楽しみに
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