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国連宇宙軍奮闘記

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冥王星会戦(前編)

 
前書き
やっと第一話に追いついた。 

 
――2199年5月20日――


遂にここまで来た、それが地球残存艦隊の全員が思った事であろう。
 敵に見つかることなくこの冥王星まで来る事ができた、このことは奇跡と言って過言ではなかった。
 ただ敵に見つからなかったとは言え、出撃時は40隻を数えた地球残存艦隊であったが、アステロイドベルトまでに4隻が機関不調により引き返し、さらに囮艦隊として5隻を分離したため、今は31隻まで減っていたのだが…


――冥王星付近 国連宇宙軍・突撃艦『ゆきかぜ』艦橋――


「現在、冥王星軌道に20万キロの空間点。」
「戦闘配置!」
航海員の報告と同時に古代艦長が入ってくるのを確認した副官が戦闘配置を告げる。
「冥王星沖合に敵影無し!」
索敵員が報告する。
「凪いだ海です、怖い位だ。」
 状況は(嵐の前の静けさ)を思わせる静かさだった。
「発光信号送れ!」
 古代艦長の命令が静かに艦橋に響いた。


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「先遣艦『ゆきかぜ』より発行信号“ワレ作戦宙域に突入セリ。”」
通信士官が声を上げる。
「両舷原則、黒15。」
 操舵主が『ゆきかぜ』の進路に続く様に進路を変更する。
「索敵班より“敵艦見ユ、艦影多数、右舷4時ヨリ近ヅク。”」
「電波管制解除、艦種識別。」
「電波管制解除!」
 索敵班の報告を受け電波管制の必要が無くなったと判断した近藤副長が命令し、それを乗員が復唱する。
「超弩級宇宙戦艦3、戦艦7、巡洋艦22、駆逐艦68!」
艦橋にレーダー士官の声が響く。

「…敵戦力はこちらの3倍以上か…。」
近藤大佐がつぶやく。
「副長、そのような言葉を口に出しては部下が不安がるぞ。」
沖田提督がそのつぶやきを注意する。
「は!すみません、沖田提督!」
(この状況では仕方はあるまいか…。)
「全艦戦闘配備。面舵30。砲雷撃戦用意!」
 沖田提督が手で謝罪を制止しつつ命令する。
「おもーかーじ!」
操舵主の復唱と同時に戦闘配備を知らせる警報音が艦内に鳴り響き、その音を聞いた乗員たちは素早く戦闘配備を整えていく。
「距離7500、相対速度変わらず。」
「敵戦艦より入電、“地球艦隊ニ告グ、直チニ降伏セヨ”…返信はどうします?」
 通信士が沖田提督を見ながらどうするかと聞く。
「“馬鹿め!”と言ってやれ。」
 沖田提督がそのままの姿勢で言う。
「は?」
 通信員は思わず聞き直す。
「“馬鹿め。”だ!」
 今度は沖田提督が振り向き、通信士を見ながら言った。
「はい! 地球艦隊より返信、“バカメ”」
内容を理解した通信士は嬉しそうな顔をして通信機に向き直り通信した。
「敵艦隊、通信妨害を開始!」
長距離通信機は妨害電波のため異音を発し始める、しかし通信士は満足そうだった。

「戦艦3、巡洋艦7、駆逐艦22隻が敵艦隊より分離、砲撃距離に入ります。」
「その程度で十分という訳か!」
「目にもの見せてやる!」
レーダー士官の報告に砲術員たちがいきり立つ。
「目標!敵戦艦、砲撃用意!」
 砲術士官が攻撃する艦を指示する。
「目標右プラス4、修正誤差22。」
「2番砲塔、誤差02!」
敵の砲撃が『えいゆう』のすぐそばを掠めていく。
「提督!」
 近藤大佐が砲撃の許可を求める。
「まだだ、この距離では当たらん、落ち着いて狙え。」
 沖田提督がその求めを却下しつつ砲術員に言う。
「敵艦隊、射程圏内に入った。」
「照準よろし!」
そして全ての数値が揃い砲撃可能を知らすランプが光った。
「全砲門開け、撃て!」
地球艦隊の砲撃が開始された。

「本艦の砲撃、命中!」
よく狙った結果だろう、砲撃は初弾から命中した、しかし…
「くそ!敵の装甲に弾かれた!」
 その固い防御フィールドを前に国連艦隊の攻撃は弾かれた。
「上部甲板被弾!」
「『ゆうぎり』轟沈」
敵の砲撃も遂に国連残存艦隊を捉え始める。
「突撃艦『くらま』より入電!『ワレ、航行不能』」
突然艦に衝撃が伝わる。
「突撃艦『あさぎり』・・・、轟沈しました!!」


――冥王星付近 国連宇宙軍・巡航艦『あしがる』甲板・索敵班員室――


観測員は敵を目視で確認するため甲板に配置されていた。
装甲に守られていないそこに味方艦の残骸が飛び込んできた。
「しっかりしろ、怯むな!ボーズ!」
熟練の観測員は経験で避けることができた。
「お、おかあさ…」
 しかし20になったばかりの新人は避け切れなかった。
「チクショー!」
 熟練の観測員の叫び声が虚しく響いた。



――冥王星付近 国連宇宙軍・巡航艦『あしがる』艦橋――


「艦長、『しまかぜ』が!」
副長が声を上げる。
見ると『しまかぜ』が敵の攻撃を被弾した影響で徐々にこちらに近づいて来る!
「回避急げー!」
 艦長がすぐさま命令を出すが…
「ま、間に合わない!」
 操舵主が叫ぶ。
「うわー!」
 その瞬間『しまかぜ』が『たかつき』に激突した。


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「『たかつき』、『しまかぜ』と激突!」
「『あぶくま』撃沈!」
「『いそなみ』被弾、戦列を離れる!」
 通信士が艦隊の被害状況を報告していると、『えいゆう』に敵の砲撃が命中する。
「うわ!」
衝撃で席から放り出された乗員が悲鳴を上げる。
「各部損傷知らせ!」
近藤大佐が被害を調べさせる。
「艦尾損傷、シアンガス発生!」
「右舷第3デッキ被弾、機関水力低下!」
「3番荷電粒子砲、動力停止!」
次々に損傷が伝えられる。
「ダメージコントロール、隔壁閉鎖並び動力回路修復、急げ!」
近藤大佐が必死に艦を立て直そうとした。


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』右舷第4デッキ――


 右舷第3デッキが被弾した影響で艦内の固定されていない物が流されていた。
 固定されていない物とは移動式の補修材に破損した部品、そして人間だった。
 彼は被弾の衝撃で死ぬことは無かったため必死に流されまいとした。
「待ってくれー!」
 だがそんな彼の前で無情にも隔壁が閉じた。


――冥王星付近 国連宇宙軍・突撃艦『ゆきかぜ』艦橋――


“ワレ操舵不能、戦列を離れる!”
“こっちの主砲じゃ歯が立たない!”
“『あたご』がやられた。”
“う、うわー!”
 通信機から味方の悲鳴が聞こえる。
「敵は圧倒的なようです。」
 通信は敵に艦隊がボロボロにされていることを告げていた。
「待ち伏せを受けたのか、転舵反転!」
 状況を理解した古代艦長がすぐさま命令した。


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』機関室――


「消火班急げ!」
 機関員の声が響く。
「頑張れ、出力を維持させるんだ、プラズマ漏れに気をつけろ!」
機関長の徳川が全員に言う。
「親父さん、こっちは何とかしたよ。」
 すぐそばのハッチから出てきた機関員の薮が報告する。
「だけど出力低下が止まらないよ、このままじゃエンジンが…」
「大丈夫だ。」
 藪が弱音をはこうとすると徳川機関長がそれを遮り問題が無いように言う。
「え!」
 思わず藪が驚きの声を上げる。
「この艦は沖田提督の乗艦だ、沈まんよ。」
「それに、儂らが沈めさせるものか!」
「さあ、ぼやく為じゃなくどうするべきかのために頭を使え。」


――冥王星付近 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「沖田提督、味方艦艇の損耗率60パーセントに到達しました!」
「うむ。」
 報告を受けた沖田提督がうなずく。
「沖田提督、このままでは…。」
近藤大佐が複雑そうな顔をしながら言った。
(奴等にはこの船では勝てない。)
 
 

 
後書き
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