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東方守勢録

作者:ユーミー
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第四部
  第一話

霧の湖侵攻戦から5日が経過しようとしていた。

元革命軍の悠斗の体調はすっかり良くなり、軽い運動ならできるようになった。これも永琳特性の薬のおかげだろう。

しかし、チップであやつられていた椛はまだ目を覚ましていなかった。にとりによると、適性や状態によってチップとの相性が変わるのだとか。そのせいで副作用にも影響がでるんだろうと、にとりは悲しそうに言っていた。

しかしながら、永琳によれば回復に向かっているのは確からしく、目覚めるまでは時間の問題だろうとのことだった。


「はあ!」

「うわっ……あっぶね」


この日、俊司と妖夢は朝早くから中庭で特訓を行っていた。

身体能力がありある程度動ける俊司であれど、戦闘に至ってはまだまだ素人。そこで、2・3日前から妖夢にお願いし特訓を行うようにしていた。

妖夢は最初「私よりも強い人がいる」といって断っていたが、何度も頼みこんでくる俊司に負けたのか「自分の特訓にもなりますしね」といって承諾してくれた。だが、その表情はなぜか嬉しそうだった。


「まだまだですよ」

「分かってるよ。殺気を感じ取るだけでこんなに難しいなんてな……」

「慣れれば問題ありません。ですが、近距離戦の特訓ばかりでいいんですか?あいては遠距離から中距離がメインなんでしょう?現に俊司さんだって……」

「確かにそうだけど、相手が全員銃を使うなんてわからないし、それに殺気を感じ取るとか俊敏に動けるようになったら、どの距離でも通用するだろ?」

「それはそうですけど……」

「それに、今度剣の使い方も教えてもらおうかなって」

「剣ですか?」

「ああ。近距離の戦い用にいいかなって。あって損はないだろ?」

「そうですね……じゃあその時はその時で特訓しましょう」

「そうだな。さて、時間だしそろそろ戻るか」


二人はそのまま持ってきた道具を素早くかたずけ、朝食を取りに中に入ろうと中に入ろうとした時だった。


「俊司さん!」


そう言って中から走ってきたのは鈴仙だった。


「どうした鈴仙……何かあったのか?」

「いえ、そういうわけではなくて、椛さんが目を覚ましたので報告にきました」

「! よかった。すぐ行くよ」


三人はそのまま椛がいる部屋に向かった。




俊司たちが部屋に着くと、すでに数人が中で話しあったおり、その中央で椛は布団の上に座っていた。


「あら、はやかったじゃない」

「まあな。えっと……体調はどうですか?椛さん」

「まだ頭痛が少し残っていますが、全然大丈夫です。ご心配おかけしました。あと、もしよろしければ敬語はやめてもらえますか?慣れてないものでして…」

「わかった」

「ちょっと!私が聞いた時よりもずいぶん丁寧じゃないですか?」

「文さんは文さんですので」


椛は相変わらず上司に厳しい一言を口にしていた。


「まあ、これで一安心だな」

「そうだね。そうだ、ちょうどいいからこれ返しとくよ」


にとりはそう言うと、ポケットから銃を取り出し俊司に渡した。


「ああ、メンテナンス終わったのか」

「そこまで痛んでなかったからね。あと、少し機能を増やしてるよ」

「機能?」

「それは俺が説明するよ。ちょっと貸して」


悠斗は俊司から銃を受け取ると、ある部分を見せながら話し始めた。


「ここにモードセレクトがあるだろ?」

「はい。……あれ?セーフティ以外にもなにかありますね……」

「ああ。ここに切り替えたら、非殺傷の武器として使えるようになる」

「そうなんですか!それは楽ですね……」


俊司は、紫達が革命軍の兵士を殺さないようにしていることから、自分もそうするようにしていた。だが、持っていた銃は殺傷可能だったため、あまり思い切った行動はできていなかったのだ。


「ですが……どうやって?」

「ここに切り替えたら俺の能力が発動できるようにして、殺傷に鍵をかけるようにしたんだ。にとりさんに頼んでみたら実現できてね。大したものだよ」

「そんなことないよ。これで、気にせず使えるでしょ?」

「ああ。助かるよ」

「さて、話も一段落ついたところで、朝ごはんにしましょうか」

「そうですね。椛の分はあとで持ってきますから待っててくださいね」

「はい。ありがとうございます」


一同はそのままたわいない会話をしながら部屋を後にした。

その日の夕食後、俊司は文に呼ばれて中庭に来ていた。


「どうしたんだ文?」

「はい。次の作戦の前にしておきたいことがありまして、協力してもらいたいのですが……」

「協力?」

「はい。まずはこれを見てもらえますか?」


文はそう言っていつも書き込んでいる手帳を俊司に見せた。

そこには革命軍に対してのいろいろな情報や、今の幻想郷の状態が記されていた。


「これがどうかしたのか?」

「はい。ここにあるのは三ヶ月前くらいの情報です。つまり、古いんですよ」

「なるほどな……で?俺がやることって情報集めか?」

「話が早いですね。本来ならば情報収集するのは私のような烏天狗の役割なんですが……今の状況をみるとそんなこと言ってられませんので、手伝ってもらえたらなと……」

「ああ。いいよ」


情報は時には武器になる。過去二回の作戦も情報があってこその勝利だった。俊司は情報集めをすることでさらに良い結果を生み出せるのではと考えていた。


「ありがとうございます。では、明日出発しようと思うのですが……行先は別々でお願いします。その方が多くの情報を得ることができますので」

「わかった。でも、一人で行動するのはさすがに危なくないか?」

「大丈夫です。私の方は椛がついてくる予定になっていますので」

「椛が?大丈夫なのか……今日起きたばかりだぞ?」

「彼女が自ら申し出てきまして……私もそう言ったのですが、言うことを聞かないもので……無理はしないという条件で同行を許可しました」


そう言った文は少し心配そうな顔をしていた。


「それなら任せるけど……で?そっちはどこに行くんだ?」

「妖怪の山に向かう予定です。あそこは私達天狗のホームグラウンドのようなものですし。それに少し気になることもありますので……」

「わかった。俺は……もう一度霧の湖に行ってみるよ。基地の様子と…紅魔館にもいけるといいかな……」

「よろしくお願いします。あと、もし誰か連れて行くのでしたら二・三人でお願いします。なるべく隠密行動を心がけてください」

「ああ」

「用件は以上です。では、よろしくお願いしますね」


そう言って文は中庭を後にした。


「さてと……誰を連れていくべきか…でも、みんな疲れてるだろうしなぁ」

「あの……俊司さん」

「うわっ」


考え込んでいた俊司に声をかけたのは妖夢と鈴仙だった。


「あー今の話し聞いてた?」

「すいません。盗み聞きするつもりはなかったんですが……」

「たまたま……通りかかったものでして……」

「そうか……じゃあちょうどいいや。明日ついてきてもらってもいいかな?」

「私達二人ですか?」

「もちろん」


妖夢と鈴仙は顔をあわせて一瞬無言のやり取りをした後、同時にコクリとうなずいた。


「助かるよ。じゃあ今日は早めに寝て明日に備えるか……」

「そうですね。明日の特訓もなしにしますか?」

「そうしようか……じゃ、俺自室に戻っとくわ」

「はい。おやすみなさい」

「おやすみなさい俊司さん」


俊司はそのまま二人と別れると、部屋に入るなり布団を敷いてそのまま眠った。 
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