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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第百三十二話 孫光龍の正体

              第百三十二話 孫光龍の正体
 戦いがはじまる前にだ。孫はだ。
 こうだ。彼等に言うのだった。
「僕が中国人だと思っていた人はあまりいないようだね」
「そんな怪しい中国人がいるか!」
「御前金髪じゃねえか!」
 そこから突っ込みを入れる一同だった。
「御前はどっちかっていうとあれだろ」
「ヘブライだよな」
「その真の名前といい」
「そうだよな」
「そうさ。僕はガンエデンの僕だからね」
 それでだというのである。彼自身も。
「孫光龍というのは仮の名前の一つに過ぎないよ」
「日本の名前もありましたね」
 シュウがその孫に対して言ってきた。
「サブロー=スズキという」
「そうだよ。仮の名前は多い方がいいからね」
「気付いてはいました」
 シュウは再び孫に言う。
「貴方のことを」
「流石だね。君は何もかもわかっているんだね」
「知ったと言ってもらいましょう」
 そちらだというのだ。知ったとだ。
「貴方のことも。貴方が仕える存在のことも」
「いいねえ。話が早いよ」
「貴方は最初ナシム=ガンエデンに仕えていましたね」
「そうだよ」
 その通りだとだ。孫も答える。
「だが僕は」
「そう。遥か昔の戦いで傷を負い」
「長い間それを癒していたんだ」
「そして復活して」
「まさか君達がナシム=ガンエデンを倒すなんてね」
 このことは彼にとっても意外だったのだ。
「まあ僕としてはそれでもね」
「もう一つのガンエデンに従う道を選ばれた」
「当然さ。僕はガンエデンの使徒なのだから」
 それでだというのだ。
「そうしたんだよ」
「だからバルマーにいたのかよ」
「それでか」
「地球人なのに」
「ああ、地球ね」
 今度は地球にまつわる話だった。
「僕にとっては地球もね」
「大した意味はない」
「そう言うんだな」
「そうさ。僕はガンエデンの僕だから」
「地球に対する愛情もない」
「そういうことか」
「そうだよ。僕はそういう人間なのさ」
 自分でも言うのであった。
「そのことから話そうか」
「それではだ」
 ゼンガーが孫に問う。
「貴様の今の目的は何だ」
「これまでは真の力を取り戻す為だったけれどね」
「真の!?」
「というとそのマシンがか」
「手前の真の力だってのか」
「そうだっていうんだな」
「如何にも。この応龍機」
 誇らしげにだ。このマシンの名前を出す。
「これが僕の真の力なのさ。それに加えて」
「それに?」
「それにというと」
「このマシンは元々四霊獣以上の力があるけれど」
 それに加えてだというのだ。
「同じ階級にある他の三つの獣の魂も取り込んだのさ」
「何っ、それじゃあ」
「私達と同じ」
「その通りだよ」
 驚くブリットとクスハに対しても述べる。
「君達のマシンと同じさ。このマシンには今は四つの魂があるんだ」
「それじゃあその力は」
「これまで以上に」
「そうさ。君達のマシンもね」
 どうかというとだった。
「遥かに凌駕しているよ」
「その力を手に入れたというのか」
「貴方は」
「これも僕の主の助けさ」
「そのガンエデンのか」
「バルマーのあの」
「ははは、バルマーね」
 そのガンエデンについてだ。孫は嘲笑する様にして笑ってから述べるのだった。
「まさか僕がルアフに忠誠を誓っていると思うのかな」
「いや、それはないな」
「手前の発言や行動を見ていると」
「それは絶対にない」
「間違いない」
「そうさ、あの坊やに忠誠を誓ったことは一度もないよ」
 やはりだ。こう言うのだった。
「全くね」
「じゃあ一体」
「ルアフじゃないとすると」
「どのガンエデンなんだ?」
「それじゃあ」
「君達はそのことを知る必要はないよ」
 ここから先は言おうとしない孫だった。そうしてだ。
 そのうえでだ。彼は。
「じゃあ。はじめようか」
「やっぱり手前もか」
「戦うってんだな」
「そうだよ。君達を倒し」
 そうしてだというのだ。
「僕の主の目的を果たさないといけないからね」
「その主もな!」
「何者かわからないけれど!」
「引き摺り出してやるぜ!」
「はい、彼を倒せばです」
 知っていると思われるシュウの言葉だ。
「それで全てがわかります」
「アポカリュプシスのことが」
「遂にか」
「わかるんですね」
「その通りです。我々の戦いの真の目的」
 それもだ。わかるというのだ。
「全てがわかります」
「そういうことなら」
「どっちみち向こうも戦うつもりだし」
「やるか」
「そうだな」
 こう話をしてだった。ロンド=ベルは孫との戦いにも入った。 
 その中でだ。彼等はだ。 
 またしても邪な何かに操られているバルマーのマシンと戦いながら。こう言うのだった。
「何ていうかな」
「バルマーの奴等とはまた違って」
「妙にドス黒いこの気配がな」
「嫌な感じだな」
 こう言いながらもだった。
 彼等はその敵を倒していってだ。そのうえでだ。
 孫の応龍機に近付く。そしてだ。
 クスハとブリットがだ。互いに言い合う。
「じゃあブリット君」
「ああ、クスハ」
「行こう。あの人との戦いを終わらせに」
「そうだな、ここで」
「これまでね」
 これまでのことも思い出しながら。クスハは話すのだった。
「あの人とも色々あったけれど」
「その正体はわからなかったな」
「それでも。正体がわかったけれど」
「俺達とは考える主観が違い過ぎる」
 わかったのはだ。このことだった。
「ガンエデンに仕える存在」
「これまで。ガンエデンを倒してきたけれど」
「その二つのガンエデンじゃない!?」
 ブリットはこう考え自分でも妙だと思った。
「だとしたらそれは一体」
「イルイちゃん、霊帝の他にもう一人のガンエデンがいるの?」
「シュウさんの話ではそのことは」
「この戦いの後でわかるっていうけれど」
「何者なんだ、いるとしたら」
「もう一人のガンエデンは」
 こう話しながらだ。彼等は孫の前に来た。そうしてだ。
 その孫にだ。あらためて言うのだった。
「孫光龍!ここで!」
「全ての決着をつけます!」
「そうだね。僕にしてもね」
 孫自身もだ。ここでどうかというのだ。
「終わらせたいと思っていたんだよ」
「俺達との戦いをか」
「ここで」
「そうだよ。君達とは前世の因縁だったけれど!?」
「前世!?」
「じゃあまさか」
「そのまさかか。僕は遥かな過去に君達のご先祖様から攻撃を受けてね」
 そうしてだというのだ。
「顔を中心に大きな傷を受けてそれを癒していたのさ」
「その傷つけたのが俺達の」
「前世だったのですか」
「その生まれ変わりの君達に出会えた」 
 にこやかに笑いながらの言葉だ。
「まさに天の配剤だよ、僕にとってはね」
「それじゃあ俺達は!」
「ここで再び!」
「今度は僕も負けないさ」
 孫も言うのだった。
「一切手加減はしないからそのつもりでね」
「ああ、ここで!」
「終わらせます!」
 こう言い合いだった。そのうえで。
 お互いに激突する。まずは。
 応龍機の無数の鱗がだった。
「さあ、行くんだ!」
「くっ、来たか!」
「最初は!」
「そうさ。これはかわせるかな」
 攻撃を繰り出してからの言葉だった。
「以前とは比べ物にならないけれどね」
「何の!」
「この程度!」
 真龍王機は如意金剛を出してだ。それで。
 己の周りに来る鱗達を叩き落してだ。あらためてだった。
「これならどうだ!」
「こんなものではもうやられません!」
「そうだね。こんなのはお遊戯さ」
「やはりか」
「ほんの小手調べだと」
「その通り。それなら次はね」
 龍の口が開いた。そこからだ。
 白い気が放たれだ。そうして。
 クスハとブリットを襲う。だがそれも。
「今だ!」
「こうして!」
 攻撃をだ。紙一重でかわしてみせたのだ。
 そしてそれからだ。今度はだ。
「クスハ!」
「ブリット君!」
 その如意金剛をだ。応龍機に向かって放ってだ。
 そのうえで撃とうとする。しかしそれは。
「ははは、惜しいね!」
「何っ、かわした!?」
「そんな!」
「見ての通りだよ」
 笑って返す孫だった。彼は相変わらず余裕を見せている。
「この程度じゃやられないね」
「くっ、巨体なのに!」
「何て速さなの!?」
「だから。このマシンの力を甘く見てもらっては困るよ
 まだこう言う孫だった。
「何しろ。最高位の獣の魂が集ってるんだよ」
「それでか」
「それでだというのですか」
「その通りだよ。さあ、どうして僕を倒すのか」
 絶対の自信と共の言葉だった。
「思う存分見せてもらおうか」
「まだだ!」
「そうです、まだです!」
 二人もだ。諦めていなかった。
 それでだ。まだ攻撃を放ちだ。戦い続ける。
 そんな彼等を見てだ。シュウが言う。
「これはです」
「二人共まずいですか?」
「確かに劣勢です」
 このことは認めるシュウだった。チカに話している。
「しかしです」
「しかしですか」
「二人なら大丈夫です」
「手助けすることはしないんですか」
「本当に駄目なら既に動いています」
 そうしているというのだ。
「しかし。大丈夫だからです」
「動かないんですね。御主人様も」
「はい。ですが」
「ですが?」
「問題はこの戦いの後です」
 真剣な顔になって。そのうえでの言葉だった。
「最後の戦いです」
「あいつですか」
「今。闇から出ようとしています」
 そのことをだ。確信しての言葉だった。
「ですからそれをです」
「防いで、ですね」
「倒しましょう」
「ですよね。それが御主人様の目的でしたから」
「そうです」
 こうチカにも話すのだった。
「その時が来ましたね」
「ですよねえ。それにしてもですよ」
「どうしたのですか?」
「前から思ってたんですけれどね」
 チカはシュウに対して言うのだった。
「あの孫ってのはね」
「好きになれませんか?」
「はい、どうも」
 こうシュウに話すのである。
「そうなんですよ」
「確かに。貴女とは合いそうもないですね」
「御主人様もですね」
 シュウもそうではないかというチカだった。
「ああいう奴は好きじゃないでしょ」
「確かに。私と彼とでは考えが違います」
「ですよね。何ていうかね」
「足場が定まっていませんね」
「結局あれなんでしょ」
 チカの孫への評が今述べられる。
「強い方につきたい奴なんでしょ」
「見方によってはそうですね」
「ですよね。ですからどうも」
「好きになれませんか」
「そういうことです。あれだけの力を持っていて」
「この場合力の強さは問題ではありません」
 そういうことではないというのだ。
「本人がどう思うかです」
「どう思うかなんですか」
「そうです。どう思いどう動くかです」
「そうしていってですか」
「その通りです。それではです」
「あいつをやっつけちゃいますか」
「その時ですね。ただ」
 ところがだった。シュウは積極的に前に出ようとはしなかった。
 そのうえでだ。またチカに話した。
「それは私達がすることではありません」
「あたし達でなくですか」
「はい、彼等です」
 言いながらだ。クスハとブリットを見るだった。
「彼等がどうするかですよ」
「あの子達ならどうにかできるでしょうか」
「できます。必ず」
「だといいんですがね」
「確かに彼は強いです」
 そのだ。孫はだというのだ。
「ですがそれでもです」
「勝てるっていうんですか」
「そうです。勝てます」
 また言うシュウだった。
「今の彼等はより強いからです」
「けれど今のあいつは四つの最高位の獣を全部手中に収めてますけれど」
「はい、それはその通りです」
「で、あれだけのマシンを操ってますけれど」
「マシンだけが力ではありません」
 シュウもだ。この考えを持っているのだった。
「他のあらゆる力もです」
「そういうことですか」
「ですから。ここはです」
「あの子達に任せてですか」
「はい、そうしましょう」
 こう話してだった。彼等は今はバルマーのマシンを倒すことに専念していた。
 バルマーのマシンは今のロンド=ベルの敵ではなかった。しかしだ。
 その中でだ。彼等は話すのだった。
「やっぱり次から次にだな」
「出て来やがるな」
「こうして数で攻めるってのか」
「この連中も」
 見ればだ。敵は次々と援軍を出して来る。そうして数を増やしていく。
 それを見てだ。彼等は話すのだった。
「せめてクスハ達に近付けたら駄目だな」
「ここはしっかりするか」
「あの戦いは邪魔させたらな」
「駄目だから」
「ははは、その心配は無用だよ」
 その孫、クスハ達と戦っている彼が言うのだった。
「僕はそんなことはしないよ」
「どういうことだよ、それは」
「この連中がクスハ達に向かわない!?」
「何を根拠に言ってるんだよ」
「そんな言葉信じられるかよ」
「別に信じなくてもいいよ」
 そのことは別に構わないというのである。
「ただね。それでもだよ」
「この連中にクスハ達は襲わない」
「そうだったいうのかよ」
「二人は僕の相手だよ」
 だからだという孫だった。
「それで悪霊に倒されるっていうのは」
「!?こいつ」
「まさか」
「面白くないじゃないか」
 あの凄みのある笑みで笑ってだ。そのうえでの言葉だった。
「そうだろ?ゆっくりと楽しまないとね」
「やっぱりな」
「こいつは相当なワルだな」
「そうだって思ってたけれど」
「そういう奴だったのかよ」
「何度も言うけれど」
 孫は嫌悪の目を見せる彼等にまた言う。
「僕は君達とは違う考えだからね」
「それでだっていうのかよ」
「クスハ達を嬲り殺しにするってのか」
「そういうんだな」
「まあ嬲り殺しかどうかは置いておいて」
 その辺りはあえてぼかして言う孫だった。
「少なくとも楽しませてはもらうよ」
「やっぱりこいつは」
「好きになれないな」
「どうしても。何か」
「邪なものを感じる」
「闇にあるみたいな」
「闇ね。若しも僕の今の主がね」
 そのだ。主がどうかというのだ。
「闇なのならそうかもね」
「そうですね。貴方の今の主はです」
 シュウもだ。ここでこう言う。
「そうした存在ですね」
「相変わらず鋭いねえ」
「知ってはいるつもりです」
 シュウは孫に慇懃に返す。
「貴方がどういった方なのか。そして貴方の主も」
「何故それをはっきりと言わないのかな」
「必ずわかるからです」
 それでだというのだ。
「ですから」
「成程ねえ。つまり僕は君達に敗れると」
「それは運命です」
「そうなればいいね」
 実に素っ気無い返答だった。
「是非ね」
「そうだ、御前は!」
「私達が!」
 ブリットとクスハが応える。だがその間にもだ。
 彼等は応龍機と戦う。だがそのマシンは。
 あまりにも強い。その強さ故にだ。
 二人も防戦一方だ。鱗とブレスにだ。押されていた。
「ははは、僕を倒せるかな」
「くっ、この強さ!」
「確かに今までよりも!」
 強くなっていると。こう言ってだった。
 隙を窺うがそれでもだった。二人は孫に近づけなかった。
 それでどうしようもない時にだ。ブリットがクスハに言う。
「クスハ、考えがある」
「何なの、ブリット君」
「ここは真龍王機だけでも真虎王機だけでも駄目だ」
 こう言うのである。
「とてもだ。駄目だ」
「そうね。一種類だけれど」
「かといっても俺達は分けられない」
「じゃあここはどうすれば」
「一度に攻めなくても」
「それでも?」
「一気に攻めればいいんだ」
 そうすればいいというのだ。
「ここは」
「ということは」
「まず俺が攻める」
 そのだ。ブリットがだというのだ。
「そして次は」
「私が」
「それしかない!」
 ブリットは断言して叫んだ。
「今はもう!」
「そうね、この人とあのマシンには」
「それで決める!」
「いいわ、けれど」
 クスハはだ。あえて言った。
「それはかなり」
「難しい。けれど」
「けれどなのね」
「今の俺達ならできる!」
 彼だけではない。そうした言葉だった。
「今の俺達なら必ず!」
「そうね。今の私達なら」
「できる!」
「やれるわ!」
 二人でだ。そのことを確かめ合いだ。
 一気に応龍機に向かい。そのうえで。
「行くぞ孫光龍!」
「これで終わらせます!」
「おやおや、特攻かい!」
 孫はその彼等を見ても悠然としている。
「それじゃあ僕も」
「!?一体」
「何をするというの!?」
「僕も応龍機と一体化するよ」
 こう言ってだ。その身体を光らせてだ。
 応龍機の中に入り。その口から言うのだった。
「こうしてね」
「マシンと一体化した!?」
「そうしたことまで」
「できるんだよ」
 龍の口からだ。孫の声がする。
「僕にはね」
「じゃあその分だけ」
「マシンの力が」
「そうだ。只でさえ最高位にある四匹の獣の力に加えて」
「御前の力も」
「加わって」
「そうだよ。もう君達の勝ち目は完全にない」
 こうだ。自信に満ちた声で言うのである。
「今の僕にはね」
「いや、違う!」
「私達は勝ちます!」
 まだ言う彼等だった。
 そしてそのうえでだ。彼等はさらに進みだ。
「今の俺達なら!」
「貴方を倒せます!」
「たった二人でかい?」
 こうだ。二人を侮る様にして返す孫だった。
「今の僕に勝てるのかい?」
「二人じゃない!」
「六人です!」
 ブリットもクスハもだ。果敢に言い返す。そうしながらさらに突き進む。
「今の俺達は!」
「六人です」
「四霊獣かい?」
 孫は何故六人かこう察した。
「それだっていうのかな」
「そうだ、彼等がいる!」
「それに対して貴方は!」
 孫はだ。どうかというのだ。
「一人だ!」
「それならば負けません!」
「ははは、よくわかったね」
 一人と言われてだ。孫は笑顔になって返した。
「確かに僕は一人だよ」
「そのことをか」
「認めるっていうんですね」
「別に嘘を吐いて困るようなことでもないしね」
「だからだ!俺達は!」
「負けません!」 
 こう二人で言い。そしてだった。
 まずはブリットがクスハに告げた。
「クスハ!まずは俺が!」
「ええ、ブリット君!」
「行くぞ真虎龍王!」
 真虎龍王にも声をかけ。その剣を抜いてであった。
「真虎龍王最大奥義!」
「あの技でいくのね!」
「この男にはこれしかない!」
 そのだ。孫に対してはというのだ。
「だから!」
「そうね、そして私も」
「これで!」
 剣を構え。そのうえで。
 剣に四つの力が宿っていく。その力こそ。
「虎王!斬神陸甲剣!」
 真虎龍王、そしてブリットの全身を黄金の気が纏った。その気を纏ったうえで。
 一気に突き進む。そして。
「うおおおおおおおおおおお!」
 剣を一閃させたのだった。それでまずは一撃だった。
 そして次は。クスハだった。
「私も!」
「頼んだぞクスハ!」
「ええ、ブリット君!」
 真龍虎王に変形し。そのうえで。
「な、何だ。二人共」
「いつもよりもさらに強いぞ!」
「気が違う」
「あの気は」
「はい、四神の気もです」
 入っているとだ。シュウが驚く彼等に話す。
「彼等と共にいるのです」
「だからか」
「あれだけの力が二人からか」
「放たれているっていうのか」
「その通りです。そしてその力で」
 まさにだ。その力でだった。
「二人はその因縁を終わらせます」
「行きます!」
 クスハが叫んだ。
「百邪を討つ為四神の力今ここに!」
「龍虎河車!雀武周天!」
「主観!兜串八卦炉!」
 その八卦が応龍機の下を覆い。
 八文字の言葉と共に八卦が柱となり刻まれ。
「真龍虎王奥義!四神真火八卦陣!」
 黄金に輝くクスハが力を放ち。
 その八卦にこれでもかと炎となった気を放出する。それが応龍機、そして孫光龍を襲い。
 最後に印を封じた。するとだった。
 二人の攻撃を集中的に受けた孫も。遂にだった。
「くっ、まさかこの僕がここで」
「孫光龍、勝負ありだ!」
「私達の勝ちです!」
「そうだね。その通りだよ」
 忌々しげであるがだ。彼も二人の勝利を認めるのだった。
「まさか今の僕に勝つなんてね」
「早く脱出しろ」
 ブリットがその孫に告げる。
「そして何処か他の場所で生きるんだ」
「貴方も。もうこれで」
「ははは、僕がこれからも生きるだって?」
 孫はだ。彼等にこう返したのだった。
「馬鹿を言っちゃいけないよ」
「何っ、それじゃあ」
「貴方はここで」
「そうさ。僕はここで倒れる」
 そのことを二人に言うのである。
「そのうえで主のところに行くのさ」
「死ぬというのか」
「この遥かな未来で」
「そうさ。それもまた一興」
 こう言ってだ。それをよしとしている孫だった。
「それならそうさせてもらうよ」
「そう言うのか」
「貴方は本当に」
「さて、僕を倒したからには教えてあげるよ」
 孫は死にゆく状況でロンド=ベルの面々に告げる。既に彼が率いていた軍も全滅し残っているのは彼だけだった。その孤独の中での言葉だった。
「僕の主」
「ああ、本当に誰なんだ?」
「その今の主ってのは」
「一体」
「まあ既に知ってる人達もいるけれど」
 ちらりと。シュウとクォヴレーの方を見ての言葉だった。
「言おうか」
「それで誰だ?」
「あんたのその今の主」
「何者なんだよ」
「何処の誰なのよ」
「霊帝さ」
 それだとだ。孫は答えた。
「真の霊帝さ」
「真の霊帝!?」
「何だそりゃ」
「ルアフならバルマーで倒しただろうに」
「それで何で霊帝なんだ?」
「話が通らないじゃない」
「そのルアフも宰相のシヴァー=ゴッツォも」
 だが孫の話は続く。
「自分達が神であり神であろうとしたけれど」
「はい、その真の霊帝の存在には気付いていませんでした」
 シュウがここで話した。
「バルマーの殆んどの者がです」
「気付いていたのはバルマーでも一人だった」
 クォヴレーも話す。
「それはだ」
「ユーゼス=ゴッツォただ一人でした」
「ユーゼス!?あいつがか」
「その真の霊帝の存在に気付いていたっていうの」
「あの男が」
「そうです。しかしあの男は謀反を企てていた咎で粛清されました」
 シュウもこのことは知っていた。現場にいたからだ。
「それで知っている者はいなくなったのです」
「バルマーにはな」
「何故ならね」
 孫はその己の主について。さらに話す。
「真の霊帝はこの世界にはいないからさ」
「この世界にはいない!?」
「じゃあまさか」
「別の世界にいて」
「そこから俺達を」
「そうさ。アル=イー=クイスも」
 今度語られるのはこの神々についてだった。
「僕の主の創り出したものだったんだよ」
「俺達の世界を監視し破壊する為の」
「その為に生み出された神々だった」
「そうだったっていうのか」
「そうさ。そういう存在だったんだ」
 こう彼女達のことも話す孫だった。
「言うなら創り出された神々だね」
「あんなとんでもない強さの連中もか」
「そいつに創り出されたに過ぎなかったの」
「アル=イー=クイス」
「あの連中まで」
「その神は因果律の中にいる」
 孫はまた因果律を話の中に出してみせた。
「そしてアポカリュプシスを引き起こしていたのさ」
「それでか。全ての世界がか」
「崩壊しようとしていたのか」
「その真の霊帝の手によって」
「あらゆる世界が」
「そういうことさ。アポカリュプシスはこの世界だけのことじゃなかったのさ」
 孫は死にゆく中でも飄々とした顔で話す。
「あらゆる世界が。終わりそして」
「はじまる」
「その真の霊帝の意志によって」
「まあそれで様々な世界の歪が出てね」
 そしてだと。今度話すことは。
「君達の。様々な世界の同じ魂を持つ存在の記憶も混ざったね」
「!?じゃあ今まで」
「俺達が常に感じていた別世界の似た存在の声は」
「別世界の俺達自身」
「そうだったっていうの」
「心当たりのある人は多いね。実際に僕もね」
 孫自身もだった。それは。
「ある世界では邪悪な青い天使だったしね」
「ああ、そうだったな」
 孫のその話にカミーユが応えて言う。
「俺も。そいつとは」
「そうだったね。まあそういうことだったんだよ」
 孫の口に遂に血が流れ出てきた。だが彼はまだ話す。
「全ては崩壊に向かう中でのことだったのさ」
「じゃあその真の霊帝を倒せば」
「俺達は」
「アポカリュプシスを本当に終わらせられる」
「そうだっていうのね」
「それはその通りだよ。そしてね」
 どうかと。孫はまた言った。
「その主はもうすぐここに来るよ」
「そうですね。この気」
 シュウの目が鋭くなる。
「間も無く。この世界に」
「真の神には勝てないよ。決してね」
 孫は最後の笑みを浮かべて告げた。
「まあ。先に行っているからね」
「これでお別れですね」
 シュウがその孫に声をかけた。応龍機も遂にあちこちから火を噴き孫自身もその炎の中に消えようとしている。その中での言葉だった。
「貴方とも」
「そうさ。じゃあロンド=ベルの諸君」
 最後まで飄々とした態度を崩さず。
「御機嫌よう」
 こう言って帽子を取って一礼してから。彼は炎の中に消えた。
 大爆発が起こり応龍機も消えた。ロンド=ベルは再び勝った。
 だがその彼等の前にだ。今度は。
「来たな」
「その真の霊帝が」
「この気配、間違いない」
「まとわりつくみたいな闇のプレッシャー」
「これこそが」
「では皆さんいいですね」
 シュウが全員に声をかけっる。
「いよいよ最後の戦いです」
「俺達の正真正銘の」
「最後の戦いね」
「そうです。さて」
「そうですね」
 チカがシュウに言う。
「本当にここで負けたら」
「全てが終わりです」
「何かそういう戦いばかりですけれど」
「ははは、そう考えると気が楽ですね」
 シュウはチカの今の言葉に笑って返した。
「いつもだと思うと」
「そうなりますか」
「深刻に考えてもはじまりません」
 シュウはあえてこう話す。
「ここはです」
「そうだよね。もうな」
「かなりの悪寒を感じるけれど」
「それでも」
「ここで逃げても」
「何にもなりません」
 シュウはこうも話すのだった。
「深刻に考えず、逃げず」
「そうしてだよな」
「恐怖に支配されかねないけれど」
「それでも」
 しかしだ。誰もがこうも感じたのだった。
「心の中に何かが入って来る!?」
「これって一体」
「ムゲと戦った時と同じ」
「あの嫌らしい気配がまた」
「ここで」
 こうしてだった。彼等をだ。
 その怪しい気配が覆おうとしていた。そしてだ。
 ここでだ。彼等は察したのだった。
「そうか、これこそ」
「そのケイサル=エフェスとやらの力」
「その源なんだ」
 そしてだ。それこそが。
「人間の悪の怨念の集合体」
「まさにそれなんだ」
「つまり!」
「悪霊だ!」
 それだとだ。ここで看破したのだった。
「それがか!」
「そいつの力!」
「ケイサル=エフェスの!」
「つまりこういうことだな」
 コスモがここで言った。
「イデやアカシックレコードが」
「そうしたものがか」
「そうだっていうのね」
「そうだ。人の意志の集合体としたら」
 それならばだというのだ。
「そこから外れた奴等」
「人の意志の集合体から外れた奴等」
「そこから見放された悪意」
「それを持った連中の魂」
「それこそが」
「そうだ、そうした奴等の意志!」
 まさにだ。その意志がだと話すコスモだった。
「それが力を持ったとしても!」
「おかしくないな」
「そうだっていうんだな」
「それじゃあ」
「そうだな。そしてだ」
 今度言うのは大文字だった。
「反イデとも言える意志は」
「それがアポカリュプシスによってですね」
「宇宙の死と再生が繰り返される度に」
「この宇宙に満ちていった」
「それがか」
「ケイサル=エフェスの力の源」
「アカシックレコードと対になる悪しき力」
 こう気付いていくのだった。
「俺達が最後に戦う奴か」
「ケイサル=エフェス」
「それで何処にいるんだ?」
 次に問題になることはこのことだった。
「そのケイサル=エフェスは」
「この百万年後の宇宙の何処に」
「何処に潜んでやがる」
「そして何時出て来るっていうんだ」
「間も無くです」
 またこう言うシュウだった。
「私達の前に出て来ますよ」
「じゃあそれは一体」
「何処から?」
「俺達の前に出て来るんだ?」
「気配はしても」
 それでもだった。実体はだった。
「まだ出て来ない」
「まさか焦らしている?」
「俺達を」
「そう、出て来る」
 クォヴレーが言うとだった。
「この銀河の闘争の歴史」
「あの偽の霊帝に統一させようとしていた」
「奴に気付かれないようにしてよね」
 アラドとゼオラがそのクォヴレーに話す。
「他にも色々あったけれど」
「そうした全部の戦いも」
「ガイゾックもだ」
 ブッチャーがいただ。それもだというのだ。
「ガイゾック星人に気付かれぬうちにだ」
「手を回してそれでか」
「争わせていたのね」
「言うなら銀河の闘争、全ての生と死が」
 フェアリも話す。
「あの男によって仕組まれていたのね」
「そうだ。その霊帝ケイサル=エフェス」
 また言うクォヴレーだった。
「その男が歪めていたのだ」
「それでだったのです」
 シュウがここでまた話す。
「因果律の研究をしていた彼はです」
「そのユーゼス=ゴッツォが気付いたのか」
「真の霊帝の存在に」
「その中でか」
「私もまたそうでした」
 シュウもそれはユーゼスと同じだったというのだ。
「そのことにです」
「じゃあ今からそれがか」
「出て来る」
「いよいよ」
 ここでだった。遂にだ。
 何かが出て来たのだった。それは。
「何だ、今度は」
「あの黒い卵みたいなのは」
「一体何だ?」
「まさかあれが」
「そうです。あれがです」
 まさにそうだと話すシュウだった。
「あの黒い球体こそがです」
「真の霊帝ケイサル=エフェス」
「それが出て来るってんだな」
「あの中から」
「そうだ」
 そしてその球体からだった。
 あの声が聞こえてきた。その声を聞いてだ。
 最初にだ。トウマが言った。
「その声は。ここに来る時に聞いた」
「如何にも」
 こう言うその声だった。
「我の声だ」
「やはりそうか!」
「でははじめるとしよう」
 闇の声は言う。
「今からだ」
「!?あれがか」
「あの黒く禍々しい奴がか!」
「真の霊帝!」
「遂に出て来たか!」
 そしてだった。出て来たそれは。
 銀色の髭の老人だった。それが言うのである。
「我こそがだ」
「ケイサル=エフェス!」
「それか!」
「手前が!」
「その通りだ」
 こう言ってきたのだった。ケイサル=エフェスは。
「そして今からだ」
「何だ?俺達を倒すってのかよ!」
「そしてか!」
「この世界も終わらせるってんだな!」
「アポカリュプシスを!」
「まさか宇宙怪獣達まで退けるとは思わなかった」
 それは彼にとってもだ。計算外だったというのだ。
 しかしそれでもだとだ。こうも言ってだった。
 闇からだ。無数の者達を出してきたのだった。
「へっ、またか」
「またバルマーのマシンか」
「それを出してきてかよ」
「また戦うってのか」
「全てはここで終わりはじまる」
 また言うのであった。
「銀河の。全ての世界の終焉が」
「総員戦闘用意!」
 グローバルが命じた。
「これが最後の戦いになる!」
「ですね。ここで!」
「終わらせましょう!」
「こいつを倒して!」
「それで!」
 全員すぐに戦闘陣形に入る。そしてだ。
 全軍にだ。最後のそれが配られた。
「エネルギータンクですか」
「これを使ってですね」
「そうして整備も補給も済ませて」
「そのうえで」
 まさに最後の、本当の意味での最後の戦いがはじまろうとしていた。


第百三十二話   完


                                        2011・6・26
 
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