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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第百三十一話 エツィーラの真意

              第百三十一話 エツィーラの真意
「聞こえるか」
「その声は」
「またなのね」
 クォヴレーとセラーナが応える。
 彼等は今闇の中にいる。その中で声を聞いているのだった。
 その中でだ。クォヴレーがその声に問うた。
「御前だな」
「そうだ。汝等はだ」
 声はだ。彼等に言ってきた。
「使命を果たした」
「バルマーでの戦いからか」
 クォヴレーはその時期について指摘した。
「そうだな」
「確かその頃だったな」
「おい、俺達は生きているのか?」
 トウマが言った。
「今こうして」
「生きている」
 声はそうだと話してきた。
「それは確かだ」
「生きているのか」
「それなら銀河はどうなったのですか?」
 クスハがその声に問うた。
「宇宙怪獣達は」
「宇宙怪獣達は全滅した」
 声はこのことにも答えた。
「バスターマシンの縮退によりだ」
「そうですか。私達は生きていて」
「銀河も救われたのね」
 セラーナもこう判断した。
「そうなのね」
「汝等の戦いを褒め称えよう」
 声は祝福の言葉も贈ってきた。
「汝等こそはだ」
「俺達は」
「一体」
「真の剣なり」
 それだというのだ。
「その力を今こそ我に」
「力を?」
「それを」
「我は汝等の力を欲する」
 こう言うのである。
「汝等のその力を」
「あんた一体なんだ?」
 トウマがいぶかしむ顔で声に問うた。
「前から不思議に思っていたんだけれどな」
「まつろわぬ霊の王だ」
 クォヴレーが声に答えた。
「そしてあまねく世界の楔を解き放つ者だ」
「まつろわぬ霊?」
「あまねく世界の楔」
「それだっていうの?」
「そうだ、それだ」
 声はだ。それだと話すクォヴレーだった。
「この声はだ」
「全ての剣よ」
 その声がだ。また彼等に言ってきた。
「我の下に集え」
「!?この言い方」
 クスハが気付いた。
「あの娘と同じ言い方」
「かの者達の意思を」
 声はさらに言ってきた。
「その僕達をあまねく世界から」
「その世界を」
「どうするっていうの?」
「消し去らんが為に」
 こう言うのである。
「我が名は霊帝」
「おい、馬鹿を言え!」
「そうよ、そんな筈がないわ!」
 トウマとセラーナもここで叫んだ。
「あいつは死んだ筈だ!」
「あたし達が倒してシヴァーが止めを刺したじゃない!」
「我は霊帝」
 しかしまだ言うその声だった。
「全ての剣よ」
「また言うんですか」
 クスハも信じられなかった。声の自称にだ。
 しかし今はその言葉を聞くのだった。わからないこそだ。
「我の下に集え」
「霊帝・・・・・・」
「何故・・・・・・」
「はじまる」
 他の者達がわかっていなくともだ。クォヴレーは言った。
 そしてだ。闇から出てだ。
 彼等が出た先は。そこは。
「全艦ワープアウト!」
「ロンド=ベル各艦健在!」
「各機もです!」
「一機も欠けていません!」
 まずはだ。ロンド=ベルの者達がどうかというのだ。
「パイロット達もです!」
「皆います!」
「だが」
 しかしだ。その中でだ。タシロは二人を探していた。
「バスターマシン三号の中にいたタカヤ君とオオタ君は」
「まさか。あのまま」
「間に合わなかった!?」
「二人は」
 しかしだ。ここでだった。
 二人はいた。マシンと共に。
「あれは!」
「ガンバスター!ガンバスターだ!」
「じゃあノリコさん!」
「カズミさんも!」
「お姉様」
 ノリコもだ。カズミに言うのだった。
「見えます?」
「ええ、見えるわ」
 今も涙を流しながらだ。カズミはノリコに応えた。
「あれはエルトリムの灯よ」
「そして皆も」
「私達も」
「生き残ったのよ」
「そして銀河も」
 このことを確かめ合う。
「じゃあ本当に」
「終わったんだ」
「全てが」
「けれど」
 それもだとだ。ここでだ。
 彼等は周りを見てだ。こう話すのだった。
「ここは何処なんだ?」
「銀河系よね」
「何処かわからないけれど」
「一体ここって」
「何処なんだよ」
「少し待って下さい」
 ここでシュウが一同に言う。
「今分析しますので」
「ああ、頼むぜ」
 マサキがシュウのその言葉に応える。そして彼もだ。 
 サイバスターのコンピューターを使う。そうしながらだ。
 ふとだ。周りを見ながらクロとシロに言うのだった。
「ここって銀河か?」
「ううん、どうだろうニャ」
「何か違うかもな」
「そうだな。ひょっとしたらな」 
 どうかというのだ。
「銀河の外に出されたのかもな」
「だとしたら戻るのは」
「結構厄介だニャ」
「そうだな。まあこれまでの派手な旅を考えたらな」
「どうってことないニャ」
「そうだっていうのかよ」
「そう思うんだがな」
 彼等の話を聞いてだ。セニアも言うのだった。
「そうよね。もう何が起こってもね」
「別に不思議じゃねえだろ」
「ええ。例えここが」
「ここが?何だよ」
「過去か未来でもね」
 もう驚かないというセニアだった。
「びくともしないわよ」
「そうですね。ただ。銀河の外なら」
 ウェンディも落ち着いて話している。
「帰ることは充分可能ですし」
「落ち着いていけばいいわよね」
「宇宙怪獣は」
 モニカは宇宙怪獣について述べた。
「もう銀河に存在している筈がないとは言い切っていいのでしょうか」
「だから何が言いたいのかわからないよ姉さん」
 テリウスが苦笑いと共に突っ込みを入れる。
「つまり宇宙怪獣が滅んだっていうんだよね」
「ええ。それは」
「大丈夫だよ」
 微笑んでこう言うテリウスだった。
「もうそれはね」
「大丈夫と断言するに至る万全な根拠になり得るものは」
「だから。もう文体が訳わかんないから」
 セニアもたまりかねて言う。
「とにかくよ。あれだけの爆発が起こったから」
「はい、膨大なエネルギー反応は確認されています」
 ウェンディがエクセリオンのコンピューターを見て話す。
「破壊された数は約十兆です」
「つまりそれだけの宇宙怪獣がいたのかよ」
「まだそんなにいたの」
 誰もがその数に驚く。
「それで巣は?」
「奴等の巣は」
「同時に巨大なエネルギーの崩壊が確認されています」
 それもだというのだ。
「ですから。もう」
「そうか、それじゃあ」
「宇宙怪獣は本当に」
「滅んだんだな」
「俺達はアポカリュプシスを打ち破った」
「運命が下した審判を乗り越えた」
「遂に」
 誰もがこう言っていく。しかしだ。
 ここでだ。そのシュウが皆に話す。
「いえ、それは違います」
「違う?」
「違うっていうと?」
「だって。あれよ」
 ミサトもだ。きょとんとした顔でシュウに言う。
「神壱号作戦はこれで」
「うむ、現時刻を以てだ」
 タシロも話す。
「宇宙怪獣の殲滅を確認しだ」
「作戦終了となるけれど」
「今それを宣言しよう」
 実際にこう言うタシロだった。
「全ては終わった」
「そう、私達の銀河での戦いは終わりました」
 しかしだった。まだこう言うシュウだった。
「ハッピーエンドと言っていいでしょう」
「一体何が言いたいんだ?」
 マサキが鋭い顔になりシュウに問うた。
「ネオ=グランゾンのコンピューターには何て出てるんだ?」
「まず。ここはです」
「ここは?」
「この場所は」
「銀河から遥かに離れています」
 見ればだ。彼等から見て遥かにだ。
 銀河系があった。その中心に巨大な穴が空いている。
 それを見てだ。誰もが言う。
「あれが俺達の勝利の証か」
「そしてあそこが銀河」
「じゃあやっぱり私達って」
「銀河の外に」
「そうです。そしてあの銀河系はです」
 どうかとだ。シュウはさらに話すのだった。
「私達の時代から百万年後です」
「えっ、百万年後!?」
「っていうとあの爆発で皆」
「未来にタイムスリップした!?」
「そうだっていうのか」
「はい、そうです」
 まさにその通りだというシュウだった。
「そうなってしまったのです」
「じゃあどうやって帰ればいいんだ?」
 エイジが眉を顰めさせてシュウに問う。
「百万年後って。どうすればいいんだよ」
「遥か未来にまで来て」
「それで帰るって」
「どうすればいいのよ」
「御安心下さい。このネオ=グランゾンがあります」
 己のマシンを話に出すシュウだった。
「ネオ=グランゾンはあらゆる世界を自由に行き来できますが」
「時間でもそうだっていうんだな」
「その通りです。横の世界だけでなく縦の世界も行き来できるのです」
 つまりだ。時空を超えられるというのだ。
「過去や未来は変えるべきではないので滅多に使いませんが」
「極秘能力ってやつですよ」
 チカは誇らしげにこう話す。
「タイムマシンでもあるってことですから」
「そんな能力まであったんだな」 
 マサキもだ。そのことには驚きを隠せなかった。そのうえでの言葉だ。
「相変わらずとんでもねえマシンだな」
「そう仰いますか」
「言うさ。それでネオ=グランゾンの能力を使ってか」
「私達の元の時代の銀河に戻りましょう」
「じゃあ今から」
「戻るか」
「僕達の世界に」
「私達の時代に」
「そうです。今から戻ります」
 シュウもそのことは確かだと言う。しかしだ。
 ここでだ。彼はこうも言うのだった。
「ですがその前にです」
「その前に?」
「その前にっていうと」
「一体何が」
「何があるっていうんですか?」
「来ます」
 シュウが言うと同時にだった。彼等の前にだ。
 あのマシンが姿を現した。そのマシンを見て最初に言ったのはバランだった。
「馬鹿な、何故貴様がここに」
「あたしがいたらおかしいっていうのかい?」
「無論だ、今我等は百万年後の銀河の彼方にいるのだ」
「そうだね。とんでもない時間と場所だね」
「それで何故貴様がここにいる」
 ジュモーラを指差し言う。それに乗っているのは。
「エツィーラ=トーラー!」
「!?何だ?」
「この感触」
「悪寒が消えない」
「何だ、このプレッシャー」
「ゲッターの反応が」
 ゲッターチームの面々も気付いた。
「ビムラーも」
「イデもだ」
「何が起こるんだ?」
「一体」
「エツィーラ、答えよ!」
 バランはエツィーラに詰め寄った。
「貴様は何故ここにいる!」
「全てを知ったからさ」
「全てをだと!?」
「そう、まず言っておくけれどね」
 エツィーラはバラン達を明らかに見下す顔で言ってきた。
「アポカリュプシスは終わってはいないよ」
「馬鹿を言え!」
 リュウセイがすぐに言い返す。
「俺達が終わらせた!バスターマシンを爆発させてな!」
「そうよ、それは間違いないわ!」
 ノリコはガンバスターで銀河の穴を指し示してエツィーラに言う。
「あの銀河このが何よりの証拠よ!」
「また嘘を吐いてやがるのかよ!」
 トウマはこう見ていた。
「何処までも汚い女だ!」
「確かに宇宙怪獣は滅んださ」
 それは事実だとだ。エツィーラも言う。
「けれどね」
「けれど?」
「けれどっていうと」
「何なんだよ」
「何があるのよ」
「それだけじゃないのさ」
 こう言うのだったロンド=ベルの面々を馬鹿にしきった顔で。
「残念だけれどね」
「宇宙怪獣だけじゃない」
「っていうと一体何があるんだ」
「今度は」
「まさか」
 バランはエツィーラを見据えて問うた。
「貴様が我等と戦うというのか」
「そうさ。アポカリュプシスとしてね」
 その為だというのだ。
「あんた達には滅んでもらうよ」
「笑止!」 
 バランは即座にこう言い切った。
「貴様にとっては残念だがそうはならん!」
「死ぬつもりはないんだね」
「無論!貴様が立ちはだかるというのならだ!」
 如何にもバランらしくだ。高らかに言う。
「貴様を倒しそのうえで戻るだけだ!」
「無駄だね」
 エツィーラはバランの今の言葉を一笑に伏した。
「そんなことはね」
「無駄だと!?」
「そう、無理だね」
 こう言うのだった。
「最早ね」
「技術的にはできますがね」
 シュウはここでこう言ってみせた。
「ネオ=グランゾンの力なら」
「そう、技術的にはね」
 エツィーラはそのことはいいというのだった。
「けれどそれでもね」
「できないと仰るのですね」
「ああ、そうさ」
 シュウにも傲然と返す。
「絶対に無理だね」
「それは何故だ!」
 バランは怒った声で彼女に問うた。
「言え!言わぬというのならだ!」
「相変わらず単純だね」
「単純で結構!」
 バランも負けてはいない。
「少なくとも貴様の様に堕ちたわけではないわ!」
「言うもんだね。あたしが堕落したってのかい」
「そうよ、どう見てもそうではないか」
「生憎だが違うよ」
「ではどう違うというのだ」
「真実を知ったのさ」
 それでだとだ。バランに話すのである。
「それだけだよ」
「真実だと!?」
「そうさ、真実をさ」
「あれか」
 バランは己の知識の中で察してだ。こう言うのだった。
「ルアフのことか」
「あの坊やのことかい」
「そしてガンエデンのことをか」
「あんなのは些細なことだよ」
「些細だと!?」
「そうさ。全くね」
 それを聞いてだ。バランは今度はこう言った。
「ではアポカリュプシスか」
「だと言えばどうするんだい?」
「それはもう終わった筈だ」
 あくまでだ。バランはこう考えているのだった。
「宇宙怪獣は消えた。そうなってはだ」
「それと隕石雨だな」
「どちらもなくなった。それで何故そう言うのだ」
「じゃあ聞くよ」 
 レツィーラはそのバランに問うた。
「宇宙怪獣は突然出て来たね」
「だからそれがだ」
「アポカリュプシスの意志によってだね」
「ひいては隕石雨もだ」
「アポカリュプシスは誰が決めたんだい?」
 レツィーラが問うのはこのことだった。
「そしてあたしがどうしてここにいるのは。今それがわかってるのは」
 ロンド=ベルの面々を見る。そこで見たのは。
 シュウ、そしてクォヴレーだった。二人だけだった。
 その二人を一瞥してからだ。レツィーラはまた言った。
「これだけいてもそれだけかい」
「むしろ驚いていますね」
 シュウはそんなレツィーラを見透かした様にして返した。
「私が知っていることに」
「どうやって知ったんだい?あたしだって今まで知らなかったことを」
「まあ貴女とは違う経緯で」
「違う経緯?」
「このネオ=グランゾンはあらゆる次元、あらゆる時空を行き来できます」
「その中でかい」
「はい。あらゆる並行世界が崩壊の危機に瀕している現状」
 そしてさらにだった。
「時空の乱れ」
「あっ、そういえば」
 ここではっとなったのはトカマクだった。
「俺も気付いたら助かってたしな」
「俺が急にこちらの世界に来たのもか」
 シオンもふと気付いた。シュウの今の言葉で。
「世界が崩壊していて」
「それぞれの断絶が曖昧になってきているのか」
「その通りです。ですから」
「私達もか」
「この世界に来たのか」
 エリスとフォルカも気付いた。
「ヴェンデルの力だけではなく」
「そうした理由もあってか」
「ううん、デュミナスは気付いてなかったみたいだけれど」
「僕達の世界も崩壊に瀕していた」
「そしてこの世界に来たのも」
 ティス、ラリアー、デスピニスもそれぞれ言う。
「そういう理由があったのね」
「考えてみれば僕達の知っているどの世界も滅亡しようとしている」
「ちょっと。有り得ないんじゃ」
「そうです。全ての並行世界、全ての時空が崩壊する」
 シュウはその現実を話す。
「そんなことは本来有り得ないのです」
「それで気付いたっていうんだね」
「そうです。それで気付いた次第です」
「けれどその前に察してはいたね」
「ネオ=グランゾンの開発前にですか」
「そうさ。気付いていたね」
「僅かですが」
 それでも気付いていたのはだ。流石にシュウと言えた。
「それでネオ=グランゾンにそうした能力を備え付けたのです」
「そうだったのか、ネオ=グランゾンって」
「その為だったのか」
「アポカリュプシスに立ち向かう為の」
「その為のマシンだったのかよ」
「実はそうだったのですよ」
 シュウは微笑んで仲間達に話す。
「その力となるのがブラックホールなのです」
「ブラックホールの別次元まで追いやる力を使ったってんだな」
「そうです。だからこそ備えられたのです」
 シュウはマサキにもこう答えた。
「そういうことだったのです」
「成程な。よくわかったぜ」
「どうも。さて」
 マサキに話してからだ。シュウはあらためてだ。
 レツィーラに顔を戻してだ。そうして答えるのだった。
「そういう次第だったのですよ」
「ネオ=グランゾン。前から怪しいとは思っていたけれどね」
「全てを知っていますので、今は」
「あんたのことはわかったさ。そして」
 あらためてだ。レツィーラはもう一人を見据えた。そしてだ。
 そのうえでだ。彼にも問うのだった。
「あんたが知ったのはどうしてだい?」
「教えられたのだ」
 そのせいだと答えるクォヴレーだった。
「俺自身にな」
「あのキャリコのオリジナルかい」
「イングラム=プリスケン」
 自分からこの名前を出した。
「あの男にな」
「そっちはそういう事情だったんだね」
「そうだ。俺は新しい番人になった」
「番人?」
「他ならぬ貴様等に対するだ。それになった」
 こうレツィーラに返す。今知っているのは二人だけだった。
 だがその他の面々はまだ知らず。特にバランはレツィーラにさらに詰め寄らんばかりに問う。
「ではだ!言ってもらおうか!」
「あたしがここにいることと」
「アポカリュプシスとは何だ!」
 問うのはこの二つだった。
「言え!言わねばだ!」
「倒すっていうんだね」
「無理にでも吐かせてやろう!」
 脅しではなかった。明らかに。
 怒りの声だった。レツィーラ自身に対する。それを見せつつ問うたのである。
「このわしの手でだ!」
「そうだね。じゃああたしを倒したらね」
「吐くというのだな!」
「如何にも。じゃあ来るんだね」
 バラン達にだ。挑発までしてだ。
「倒してみな」
「言われずともだ!」
「さあ、出て来るだよ!」
 レツィーラが杖を一閃させるとだ。それと共に。
 彼女の周りに無数のマシンが出て来た。それは。
「バルマー軍!?」
「そのマシンを」
「ここで」
「パイロットはいないみたいだけれど」
「ああ、そういうのはいないよ」
 それはいないというのだった。
「ただね。戦えることは戦えるよ」
「手前が操ってか」
「それでか」
「悪いけれど操ってるのはあたしじゃないよ」
 それは違うというのだった。
「別の方さ」
「!?この気配」
「ああ、これってまさか」
「あれか!?」
「あのムゲ帝国の時の」
「近いね」
 レツィーラはムゲ帝国のことにも言及した。
「あの悪霊達だね」
「ああ、そうさ」
 忍がレツィーラに言い返す。
「あの連中そっくりだぜ」
「まあそうだね。まつろわぬ存在だからね」
「それがだってのか」
「さて。それも知りたければね」
「ああ、やってやるぜ!」
 忍も闘志を全開にしている。
「手前みたいないけ好かない奴は叩きのめしてやるぜ!」
「全軍戦闘開始!」
「こうなっては止むを得ない!」
 指示も出た。こうしてだった。
 ロンド=ベル全軍が戦いに入る。こうしてだった。
 レツィーラと彼等の戦いがはじまった。その中でだ。
 バランはだ。鉄球を振り回しながら言うのだった。
「妙だな」
「妙!?」
「妙ってどうしたんですか?」
 その彼にトウマとミナキが問うた。
「一体よ」
「何かあったんですか?」
「うむ。あの女はかつては徳の高い神官長だった」
 このことをここでも話すのだった。
「民衆から篤い敬意を受けていたのだ」
「それがどうして」
「ああなってしまったのでしょうか」
「知ったからだというのが」
 彼女自身の言葉を反芻して述べる。
「それは何だ」
「何を知ったんだ?」
「アポカリュプシスのことの様ですけれど」
「それがわからん」
 バランもいぶかしむばかりだった。
「ルアフのことを知ったのはわかったが」
「それにどうやって知ったのか」
「そのことも気になりますね」
「少なくともあの徳の高い者がだ」
 どうしてかというのだ。
「あそこまでの下種になったかだ」
「元々ああじゃなかったんだな」
「それは違うんですね」
「信じられんと思うがそうだ」
 かつては違ったというのだ。
「そうだったのだ」
「やっぱり何かがあったんだな」
「物凄いことが」
「それを知ったか」
 また言うバランだった。
「では何をなのだ」
「それを知りたければね!」
 どうするか。レツィーラの声が荒れてきた。
「あたしを倒すんだね!」
「そうすれば教えるというのか!」
「そうさ!」
 こうバランに返す。
「できればね!」
「笑止!そう言うのならば!」
 バランがだ。その彼に返す。
「わしが貴様に聞いてやろう!」
「聞けるものならね!」
 二人は睨み合う。しかしだった。
 二人の間にバルマーのマシン達、その邪な何かに操られた者達がいた。彼等はバランの周りに群がりそのうえで、であった。
「くっ、多いか!」
「さあ、あたしと戦う前にそいつ等にやられちまいな!」
 こうだ。レツィーラは既に勝ち誇ってバランに告げる。
「精々惨めにね!」
「そうはいくか!」
 バランは鉄球を縦横に振り回しそのマシン達を蹴散らす。しかしだ。
 その数は多い。あまりにも多さだ。到底ペミドバン一機では倒せそうもない。
 だがそれでもだ。そこにだ。 
 トウマ達が来てだ。そのマシン達を蹴散らすのだった。
「トウマ!」
「おっさん!あんたはだ!」
「先に進めというのか」
「そうだ。あんたがあいつを倒せ!」
 そのだ。ジェモーラをだというのだ。
「いいな、因縁を終わらせるんだ!」
「済まぬ!」
 バランも礼を言いだ。そのうえでだ。
 トウマ達が作った穴を抜けてレツィーラの前に来た。
 レツィーラはだ。そのドバンに対して言った。
「ちっ、来たってのかい!」
「そうだ、そしてだ!」
「そんな旧式機であたしを倒せる筈がないだろ!」
「できる!」 
 バランは傲然として言い切った。
「戦はマシンでするものではない!」
「じゃあ何だっていうんだい!」
「心だ!」
 それによってだというのだ。
「心によってだ。戦うものだ!」
「言うねえ。本当にあんたは」
「どうだというのだ?」
「化石だよ。生きる化石だよ」
 ここでもだ。侮蔑しきった言葉をバランに言うのである。
「時代遅れのね。どうしようもない奴だよ」
「ふん、それではその生きる化石がだ」
「あたしをかい」
「倒す!そしてだ!」
「ああ、あたしを倒せたらね!」
「教えてもらおう!アポカリュプシスの真実を!」
 こう言い合いだ。両者は。
 互いに前に突き進み激突した。まずはレツィーラが。
「受けるんだよ!」
 杖から雷を出す。それでだった。 
 ドバンのペミドバンを撃とうとする。しかしだ。
 ドバンはだ。その雷を。
「小賢しい!」
「何っ!?」
 何とだ。気迫で打ち消した。そうしてみせたのだ。
「あたしの雷を。まさか」
「この程度の雷何だというのだ!」
 こう言ってのことだった。
「今のわしにはだ。聞かぬ!」
「ちっ、それならね!」
 今度は念を出そうとする。しかしそれはだ。 
 振り回す鉄球に打ち消され。さらにだ。
 鉄球は横からだ。ジェモーラを直撃した。
 それを受けたジェモーラは大きく吹き飛ばされ。そしてだった。
「おのれ、もう」
「動けぬな」
「まさか。あたしのジェモーラに勝つなんて」
「言った筈だ、戦は心だ!」
 ここでもこう言うバランだった。
「レツィーラ!貴様の今の心ではわしには絶対に勝てぬ!」
「くっ、言うねえ」
「では教えてもらおう」
 勝利を収めだ。そのうえでの言葉だった。
「まずは貴様のことだ」
「あたしのことかい」
「何故そうなった」
 彼女の堕落、それについて問うのだった。
「そこまで腐ったのだ」
「だからさ。知ったんだよ」
「ルアフのこと以外にもか」
「そうさ。真の神がいてね」
「やはり」
 シュウはレツィーラの今の言葉に呟いた。
「それですか」
「それがどうしようもない力を持ってるんだよ」
「それを知りこの世に思うことをなくしたか」
「まああたしがこうなったのはね」
 それはどうしてなのかも話すのだった。
「ルアフのことを知ったからだけれどね」
「そしてアポカリュプシスを避けられないこともか」
「そうさ。それでだよ」
「貴様は所詮その程度だったか」
 ここでまた言うバランだった。
「それで絶望するとはな」
「ふん、何とでも言うんだね」
 悪びれずだ。こう返すレツィーラだった。
「今のあたしには痛くも痒くもないよ」
「腐るのはその程度の者だったからだ」
 バランはこう言うだけだった。
「貴様程の高徳の者でもな」
「言うね。あたしに過去を思い出させるのかい」
「それで貴様がどうなるかとは思えんがな」
 こう言ってだ。そしてだ。
 バランはだ。レツィーラにまた問うた。それは。
「貴様が今言った真の神とは何だ」
「それかい」
「そうだ。それは何者だ」
「おそらくアポカリュプシスと関係がある」
 そうだとだ。ルリアが察しをつけてきた。
「そうだな」
「そうだね。言うならね」
「では聞こう」
 あらためて言うドバンだった。
「その真の神とペミドバンのことを」
「いいさ、それはね」
 レツィーラは姿勢を正して言おうとする。だが。
 そこにだ。闇の矢が来てだ。ジェモーラを貫いたのだった。
「うっ!?」
「レツィーラ!?」
 誰も反応できなかった。そうしてだ。
 ジェモーラは爆発に包まれだ。レツィーラも。
 死んだ。炎の中に完全に消えてしまった。堕ちた女もこれで終わった。
 だが、だ。その闇の矢を見てだ。バランは言うのだった。
「誰だ!」
「そうだ、今のは誰だ!」
 トウマもここで叫ぶ。
「誰が放った!」
「彼女は喋り過ぎたのですよ」
 こう言ってだ。出て来たのは。
 孫光龍だった。その彼が出て来て言うのだった。
「それで不興を被ったのですよ」
「不興!?」
「というとまさか」
「その」
「まあそのことは置いておきまして」
 ロンド=ベルの問いに答えずにだ。そのうえでだった。
 孫はだ。こう言うのだった。
「次は僕が相手になるよ」
「貴方がですか」
「そう、僕の出番が来たからね」
 こうクスハ達に言葉を返すのである。
「だからね」
「では貴方もまた私達と」
「そう。そして」
「そして?」
「今まで隠していたことを話そうか」
 こうだ。ロンド=ベルの面々に言うのである。
「僕のことをね」
「そういえば君の素性は一切が謎だったね」
 万丈もだ。こう孫に言うのだった。
「少なくとも普通の人間ではないね」
「そう、僕はガンエデンの力で不老不死になった存在」
 それだとだ。自分で言うのだった。
「そして真の名前は」
「それは?」
「一体」
「アヴォット=アクラヴ」
 こうだ。己の名前を今言った。
「そしてこのマシンもね」
「真龍王機じゃない!?」
「何か。あれよりもまだ大きくて禍々しい気配がするけれど」
「あれは一体」
「何だっていうの?」
「応龍機」
 そのマシンの名もだ。ここで言うのだった。
「このマシンの本当の力さ」
「それでその本当の力で」
「俺達と戦う」
「そういうことなのね」
「そうだよ。それじゃあ」
 それまでの飄々とした笑みが消えて酷薄なものになり。そしてだった。
「はじめようか。君達の最後の戦いをね」 
 再び無数のマシン達が姿を現しだ。そのうえで孫との戦いもはじまるのだった。運命の最後の戦いはまだ続く。


第百二十一話   完


                     2011・6・22
 
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