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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第百十二話 取り戻した仲間

              第百十二話 取り戻した仲間
 ルアフがだ。己の玉座からバランに告げていた。
 バランは彼の前で頭を垂れ片膝をついている。その彼へ言うのであった。
「ジュデッカ=ゴッツォ達は敗れたよ」
「その様で」
「彼等には本星に戻るように言っておいたよ」
 何でもないといった感じで言うルアフだった。
「いざという時の為にね」
「陛下、それはです」
「ならないというのかな」
「私がいます」
 だからだとだ。バランは顔を上げて言った。
「このバラン=ドバンがです」
「なら君も出陣したいんだね」
「なりませんか」
 こうルアフに対して問う。
「私の。近衛軍の出陣は」
「君の忠誠は知っている」
 ルアフはまずは答えずにこう述べた。
「その絶対の忠誠をね」
「有り難きお言葉」
「そうだね。おそらくエツィーラは敗れる」
 それはもうだ。察しているというのである。
「彼女は軍の専門家ではないからね」
「はい、残念ですが」
「なら仕方がない。君もだ」
「出陣して宜しいのですね」
「うん、頼むよ」
 バランにこうも声をかけた。
「彼等を食い止めてくれ」
「はい、それでは」
「君がいるだけでも心強いよ」
 出陣するそのバランにだった。労いの言葉もかける。
「帝国随一の忠臣がね」
「勿体ないお言葉」
「では。出陣するんだ」
 ルアフ直々の言葉だった。
「君も。近衛軍もね」
「御意」
 こうしてであった。バランの出陣が決まりだ。近衛軍は宇宙に出る準備に問いかかった。その時だ。
 ロンド=ベルはだ。ネビーイームの集まりを前にしてだ。エツィーラの軍と戦っていた。その中でだ。
「遠距離用の平気でネビーイームを狙え!」
「他は敵軍に向かえ!」
「役割を分担しろ!」
 こう言ってだ。戦いをしていた。そうしてだ。
 ネビーイームを一個ずつ撃破していく。その攻撃はだ。
 的確だった。まさに各個撃破であった。
「要領さえわかればな」
「ああ、幾らネビーイームでもな」
「どうってことないな」
「そうね」
 そのことがだ。わかってきたのだ。
「懐に入れば攻撃されないし」
「反撃もしてこない」
「狙うべき場所を攻撃すればいいだけだから」
「結果として楽な相手よね」
「確かに」
「それよりも」
 それがわかっても。まだだった。
 エツィーラの軍がいてだ。何よりも。
「アヤのいるネビーイームまであと少しだ」
「あそこまで行けば」
「やっと大尉を」
「あの人を救出できるんだ」
 アヤのことだ。彼女のことが気掛かりだったのだ。
 ネビーイームを一個ずつ撃破しながら進む。その中でだ。
 リュウセイがだ。敵のマシンを叩き落しながら言うのであった。
「どけっ!」
「くっ、この地球のマシン!」
「何という強さだ!」
「このマシンを只のマシンと思うな!」
 リュウセイは驚くバルマー軍の面々に告げた。
「俺達四人のだ!心なんだよ!」
「四人だと!?」
「心だというのか!」
「そのマシンが!」
「ああ、そうだ!」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「そしてだ!」
「そして!?」
「まだ言うか!」
「俺達を止められることなんざ誰にもできねえ!」
 サイコドライバーの力を出しながらだ。リュウセイは言う。
「今の俺達をな!」
「そうだ、今はだ!」 
 レビもリュウセイに続いて言う。
「私達の絆には誰も入られない!」
「言うものだね」
 エツィーラが彼等のその言葉を聞いて言った。
「地球人ってのは熱くなりやすいけれどあんたは特別だね」
「それがどうした!」
「行くといいさ」
 アヤの場所にだ。行くのはいいというのだ。
「けれどね」
「何だというのだ?」
「まあいいさ。行けばわかるよ」
 今はだ。エツィーラはこう言うだけだった。
 そのうえで積極的には動かない。そしてである。
 リュウセイ達が十一個目のネビーイームを撃破したのを見た。その彼等にだ。
「その場所に着いたね」
「大尉!今行く!」
 リュウセイはバンプレイオスを駆る。そしてさらに突き進む。
「やっと、やっとだ!」
「これだ!」
「俺達は取り戻せる!」
 ライも今は熱い。その彼等がだ。
 最後のネビーイームに来た。そしてだ。
「大尉!」
「来たなリュウ!」
「ああ、遂にな!」
 リュウセイとレビが言い合う。
「後はこの中にだ!」
「行くぞ!」
ここは俺と隊長に任せろ!」
 ライがその二人を行かせる。
「御前達はだ!」
「わかった、頼んだぜライ!」
「ここはだ!」
「任せろ」
 こう返すライだった。
「ここはだ」
「ああ、じゃあな」
 こうしてだ。二人は要塞の中に入った。
 要塞の中は意外とシンプルだった。通路の中には敵兵もいない。
「ここはどうなってんだ?」
「どうやら精神コントロールで動く場所らしい」
「だから人間が一人もいないってのか」
「その様だ」
 レビがリュウセイに話す。二人は今その金属の廊下の中を駆け進んでいる。
「ここはだ。そうした場所だ」
「そうだってのかよ」
「そしてだ」
 さらに言うレビだった。前を指し示してだ。
「アヤはこっちだ」
「このままか」
「そうだ、この先にいる」
「わかった。ただな」
「ただ。何だ」
「この中に入った時はな」
 その時はだとだ。リュウセイは駆けながらいぶかしみ話す。
「アヤを感じたんだよ」
「今はどうだ」
「何かな」
 首を傾げさせる。だが、だった。
 彼等は先に進んだ。そしてだった。
 そこはだ。暗い玄室だった。その中にだ。
 カプセル状の水槽が見える。二人が今見たのはそれだった。
「何だここは」
「アヤ!」
 レビが彼女を呼ぶ。
「何処にいるの!?」
「ここよ」
 ここでだ。アヤの声がした。
「ここにいるわ」
「!?」
「何処だ!?」
「全ては遅過ぎたのよ」
 またアヤの声が二人に聞こえてきた。
「残念だけれど」
「、あ。まさか」
「それは」
 水槽の中にある闇。それを見てだった。
 二人は驚愕を覚えた。悪寒と共に感じ取ったのだ。
「今のアヤの」
「姿だというのか」
「バルマーに捕らえられた私は」
 水槽の中からだった。アヤの声が聞こえてきていた。
「その念動力の素質を買われ」
「まさか、奴等」
「アヤを」
「そうよ。実験体となり連日の過酷な実験で」
「身体が」
「嘘だ・・・・・・」
「本当のことよ」
 また言うアヤだった。
「それでも私は死ぬことを許されず」
「くっ、そんな・・・・・・」
「こんなことになるとは」
「こんな姿になってもバルマーの為に」
「アヤ・・・・・・」
「何ということだ・・・・・・」
「どうして早く来てくれなかったの」
 アヤの言う言葉ではない。だが今の二人は気付かない。
「私は」
「済まない・・・・・・」
「こうなるとは・・・・・・」
「リュウ」
 そのアヤの声がリュウセイを呼んだ。
「貴方はどうしてあの時」
「ハザルに」
「そうよ。どうして無謀に挑んだの?」
「それは・・・・・・」
「貴方のせいで」
 やはりだ。アヤの言葉ではない。
「私はこんな姿になってしまった」
「すまねえ、アヤ」
 リュウセイは謝るしかなかった。
「俺は、俺は」
「幾ら詫びられても」
 アヤのふりをした何かはまた言う。
「私はもう以前の私には戻れない」
「アヤ・・・・・・」
「レビ、本当なら」
 それはレビにも言ってきた。
「本来ならこれは貴女の役目」
「そうだった、それは」
「貴女が地球に入ったから」
 それでだというのである。
「その役目が私に回ってきたのよ」
「済まない・・・・・・・」
「貴女は今はマイ=コバヤシ」
 このことについても言う。
「レビ=トーラーでいられれば」
「ああ・・・・・・」
「貴女はレビ」
 また言うそれだった。
「レビ=トーラーでなくてはならない」
「そう、それは」
「そうでないと私は」
「私が、私が」
 レビ、いやマイ=コバヤシは自責の念に覆われてしまった。
「私の存在がアヤを・・・・・・うわあああっ!」
「いいのよ、レビ」
 それがまた言う。
「もう全てが終わったのだから」
「ああっ、あああああっ!」
「くっ、駄目だ!」
 苦しむマイを見てだ。リュウセイは気付いた。
「このままじゃマイは自分の念で押し潰されちまう!」
「それがこの子の運命なのよ」
「それでもだ!」
 リュウセイはだ。決意したのだった。
 そしてだ。それ、アヤのふりをする何かに対して言った。
「詫びて済むとは思わねえが」
「どうだというの?」
「今の俺にはこうするしかできねえ」
 こう言うのである。
「今はマイを救う」
「その子を?」
「そうだ、俺達の仲間で」
 そしてだ。アヤに対して言うのであった。
「御前の妹だからだ!」
「でもその子は」
「マイ、しっかりしろ!」
 リュウセイは苦しむマイを肩に担いだ。そうしてだった。
 彼女にだ。あらためて告げた。
「こっから脱出するぞ!」
「アヤ、アヤ・・・・・・」
「待ちなさい」
 また言うそれだった。
「貴方達は」
「さよならだ」
 リュウセイは苦い顔で彼女に告げた。
「アヤ・・・・・・」
「リュウ・・・・・・」
 こうしてだ。彼は最後のネビーイームから出た。そのうえでバンプレイオスに戻った。
 その彼にだ。ライが問うた。
「どうした、大尉は」
「アヤはいたのか」
 ヴィレッタもそのことを問う。
「大丈夫だったのか?」
「姿が見えないが」
「それよりもだ!」
 リュウセイはその二人に対して言う。マイを彼女のコクピットに入れながら・
「マイが大変なんだ!」
「マイが!?」
「一体どうしたというのだ」
「あああああああっ!」
 ここでだ。そのマイが叫んだ。
 そしてだ。その念が撒き散らされた。それを見てだ。
「!?これは」
「この念は」
「暴走している!?」
 わかる者が口々に言う。
「マイの念がか!?」
「そしてバンプレイオス自体も」
「まずい!」
「このままじゃ!」
「リュウ!」
 ライもリュウセイに言う。
「ここは」
「だ、駄目だ!」
 リュウセイもだった。今はとてもだった。
「今のマイはとても」
「くっ、それでは」
「このままだというのか!」
「いかんな」
 リーがそのバンプレイオスを見て歯噛みした。
「あのままでは四人共だ」
「ではどうするのだ」
「戦局にも影響が出る」
 リーはブルックフィールドに対して答えた。
「だが。ここは」
「リュウセイ達は撃てないか」
「ここまで来て撃てるものか」
 だからこその歯噛みだった。
「あの四人がいなくてはだ」
「そうですね。これは参りました」
 ホリスもこう言うしかなかった。
「手の打ちようがありません」
「マイ、落ち着いて!」
 クェスがマイに叫ぶ。
「このままじゃあんたが!」
「死ぬぞ!」
 ギュネイも叫ぶ。
「それでもいいのか!」
「こんな世界なんか、私なんか!」
 だが暴走しているマイは言う。
「皆消えてしまえ!このまま全て!」
「!?いかん!」
 ギジェがイデのゲージを見て声をあげた。
「ゲージが上がっている!今までにない程にだ1」
「何だって!?ここでか!」
「そうなったっていうの!?」
「そうだ、大変なことになるぞ!」
 こうコスモとカーシャにも言うのだった。
「一体何が起こるのか」
「くっ、どうなるんだ!」
「このまま!」
「止めるんだマイ!」
 リュウセイはこの中でもまだマイを止めようとする。
「さもないとこのまま!」
「うわあああああああっ!」
 暴走が続く。そしてそれを見てだった。 
 エツィーラが一人呟いていた。
「そうだよ、レビ」
 こうだ。妖しい笑みで呟いていたのだ。
「御前の心は私のもの」
 こう言っていた。
「私に見せておくれ、この銀河の終焉を導くものを」
「そうか」
 だが、だがここで新しい声が聞こえてきた。
「この女狐!」
「むっ!?」
「させん!」
 爆発が起こってだ。それでだった。
 エツィーラはそれから逃れる。それを見てだ。
「!?マイの動きが止まった!?」
「あの女のところで爆発が起こるとそれで」
「ということはまさか」
「あいつが」
「させん!」
 ルリアが愛機と共に姿を現した。
「貴様の思うようにはだ!」
「ルリア=カイツだね」
「如何にも」
 その通りだとだ。ルリアはエツィーラに答えた。
「私だ」
「止めて、マイ!」
 そしてだ。本当の声がマイに告げたのだった。
「これ以上は!」
「!?」
 それを聞いてだ。完全にだった。
 マイが止まった。それでだった。 
「バンプレイオスが止まった」
「あの声は」
「まさかと思うけれど」
「そうだ、そのまさかだ」
 ルリアがロンド=ベルの面々に応える。そしてだ。
 すぐにバンプレイオスのところに戻ってだ。彼女をマシンの手からバンプレイオスに引き渡した。
「アヤ!」
「アヤなのかよ!」
 マイもリュウセイもだ。驚きの声をあげた。
「まさか、本当に」
「生きていたのかよ」
「ええ」
 アヤもだ。涙ぐみながら答える。
「マイ、リュウ」
 そしてだった。
「ライ、隊長」
「大尉・・・・・・」
「よく戻ってきた」
「本当にアヤなのか」
 レビはまだ驚きを隠せない。呆然とさえしている。
「アヤが、本当に」
「御免ね、マイ」
 アヤはコクピットに入りながら彼女に答える。
「心配をかけて」
「アヤだ!」
 彼女の姿を見た。開かれたコクピットの向こうに。
「本物のアヤだ!」
「そうよ、マイ。今日までよく戦ってきたわね」
「ちっ、いいところで」
 エツィーラはこの事態に舌打ちをした。
「こうなるなんて」
「悪が栄えたことはない!」
 もう一人姿を現したのだった。
「エツィーラよ、それがこの宇宙の摂理だ1」
「バラン=ドバン!」
「左様、このバラン=ドバン!」
 ペミドバンがだ。今戦場に姿を現していた。
「ここに見参!」
「これはどういうつもりだい!」
「どうもこうもない!」
 これがバランの返答だった。
「わしはロンド=ベルと戦う前にだ」
「どうするっていうんだい」
「義によって貴様を討つ!」
 これがバランの言葉だった。
「そうする為に来たのだ!」
「しかしこれは」
「一体何故」
「アヤが戻って来たんだ?」
「ルリアさんの手から」
「それは」
 ルリアが説明するのだった。
「姫様の命に従いです」
「アルマナさんの」
「あの娘の」
「アヤ殿は私がシヴァーの下から救出しました」
 そうだったというのだ。
「それがバラン様のご助力故です」
「そうだったのか」
「それでか」
「アヤさんが戻って来られたそうだったのか」
「左様、義は絶対のもの」
 まさにバランの言葉だ。
「それは守らなければならぬ」
「そうだな、それはな」 
 トウマがバランのその言葉に頷く。
「何度も言うがわしはバルマーの臣よ」
「忠義か」
「そして武人の義よ!」
 それもあるというのだ。
「その為にエツィーラよ」
「あたしを倒すってんだね」
「許さん!」
 こう言うバランであった。
「よくもシヴァーと共にだ」
「ふん、言うね」
「わしをたばかりロンド=ベルと戦わせたな!」
「最初から戦うつもりだったじゃないのさ」
「それは違う!」
 エツィーラにまた言い返す。
「戦うのはわしの意志で戦うのだ。操られてではない!」
「一緒だと思うがね」
「ドバン家の魂の宿る」
 バランは見得に入った。
「このペミドバンの鉄球で御主等の邪な悪事を打ち砕いてくれる!」
「!?どういうことなんだ?」
「バラン様とエツィーラ様が現れているぞ」
「どういうことだ、これは」
「一体」
 エツィーラの兵達は二人のやり取りを見ていぶかしみだした。
「何があるのだ?」
「バラン様のお話だとエツィーラ様は」
「そうだな、まさかと思うが」
「謀反か?」
「それを企てておられるというのか」
「聞けい!」
 バランは彼等にも言った。
「銀河を覆い尽くさんとしている危急の事態はだ」
「今のこの隕石雨か」
「それに宇宙怪獣もか」
「そういったものがですか」
「そうだ、それ等はだ」
 どうかというのである。
「最早バルマーだけの問題ではない!」
「!?そこまでだというのですか」
「今の危機は」
「バルマーだけではないと」
「この銀河存亡の危機に」
 バランもようやくわかったのである。
「銀河を生きる我等全てが一つにならなければだ」
「どうしようもないと」
「そう仰るのですか」
「バラン様は」
「そうだ、未来はだ」
 その未来はどうかというのだ。
「闇に閉ざされん!」
「ではです」
「我々はどうすれば」
「どうすればいいのですか?」
「御主等は退くのだ」
 彼等にはだ。そうしろというのだ。
「よいな、それではだ」
「は、はい。わかりました」
「バラン様がそう仰るのでしたら」
「では我々はです」
「そうさせてもらいます」
「全てはバルマーと陛下の為」
 その忠誠はだ。まさに絶対であった、
「この女は許せぬ」
「くっ、じゃああれだってんだね」
「貴様はわしが成敗する!」
 またエツィーラに告げるバランだった。
「よいな、覚悟せよ!」
「くっ!」
「いや、待ってくれ!」
 だが、だ。そのバランにだ。
 リュウセイがだ。叫んだのであった。
「おい、バランのおっさん!」
「むっ、御主は確か」
「ああ、リュウセイ=ダテだ!」
 己の名も彼に叫ぶ。
「こいつは俺達の手で倒す!」
「先程のあれか」
「こいつは許せねえ」
 怒りをだ。エツィーラに向けての言葉だった。
「さっきはよくもやってくれたな」
「エツィーラ=トーラー!」
 マイはリュウセイ以上に怒りを露わにさせていた。
「よくも私のここロイ入り込んでくれたな!」
「大したことじゃないと思うがね」
「御蔭で思い出したよ!」
 うそぶくエツィーラにさらに言った。
「帝国で御前にされた数々の仕打ちをな!」
「言うねえ。実験してやっただけなのに」
「この女、やはり」
 バランはエツィーラの今の言葉から全てを察した。
「その心が歪みきっておったか」
「地球人を実験にして何か問題があるのかい?」
「じゃあ手前がなってみろ!」
 リュウセイがエツィーラのその言葉に言い返した。
「その手前がな!」
「誰がそうなるものかい」
 傲然として返すエツィーラだった。
「バルマー人は宇宙を治めるべき存在なのだからね」
「その貴様にだ!」
 マイがまたエツィーラに言う。
「ここで全てを晴らす!」
「ふん、それならだよ」
 エツィーラもだ。そのマイに返した。
「私に跪くんだね」
「何っ!?」
「レビ=トーラー」 
 その名をだ。あえて呼んでみせてであった。
「御前のトーラーの名前はね」
「何だという!」
「あたしが与えたんだよ」
 その赤い目に邪なものを宿らせての言葉である。
「そのあたしに跪くのは当然だよ!」
「ううっ!」
「さあ、跪くんだよ!」
 マイに念を送りながらの言葉だった。
「このあたしにね!」
「うううっ!」
「いえ、違うわ!」
 アヤがだ。苦しむマイを横に見ながらだ。エツィーラに対して言った。
「黙りなさい、レビ=トーラー!」
「何だってんだい?」
「ここにいるのは私の妹」
「妹ねえ」
「マイ=コバヤシです!」
「アヤ・・・・・・」
 その言葉にだ。マイは顔を向けて言った。
「私を」
「私の大切な妹を苦しめた御前は」
 アヤの念がだ。エツィーラのそれを押していた。
「絶対に許さない!」
「!?馬鹿な」
 今の事態にだ。エツィーラは思わず声をあげた。
「アヤ=コバヤシは中途半端な念動力者だった筈」
「そうだというのね」
「そうだ。何故だ」
 こうだ。エツィーラは狼狽しながら言う。
「何故ここまでの念を
「マイと二人なら!」
 そのアヤの言葉だ。
「幾らでも頑張れるのよ!」
「二人の念がシンクロしているのか」
 エツィーラはアヤの今の言葉からそれを察した。
「相乗効果を生み出しているというのか」
「私も貴女も」
 アヤは妹に顔を向けて言う。
「この念動力のお陰で辛い目に遭ってきたかも知れない」
「それは」
「けれどこの力があったから」
 その念動力がだというのだ。
「私と貴女はこうして心でも」
「姉妹になれたのだな」
「そうだ、だからこの力は」
「この念動力は」
「絆よ」
 それだというのだ。
「私と貴女のね」
「私とアヤの」
「そうよ。そうしてね」
 ここでだ。アヤはだ。
 ライに顔を向けてだ。こう告げるのだった。
「ライ、いいかしら」
「はい、何か」
「トロニウム円陣のコアボックスを開けて」
「トロニウムの」
「ええ、それをよ」
 こう告げるのである。
「それを開けて」
「わかりました、しかし」
「何をするかというのね」
「はい、それは一体」
「セットするのよ」
 これがマイの返答だった。
「バルマーから取り返したものをね」
「まさかそれは」
「そうよ、そのまさかよ」
 また言うアヤだった。
「トロニウムよ」
「馬鹿な、それは!」
 エツィーラはだ。トロニウムと聞いて驚きの声をあげた。
「霊帝打倒の切り札となるものだ!」
 だからこそだ。驚いているというのだ。
「シヴァー、それを奪われたというのか」
 こう考えた。最初はだ。
 しかしすぐにだ。シヴァーがそうした男ではないと考えなおしてだ。 
 あらためて思索に入る。そうして言う言葉は。
「奴か」
 エツィーラの脳裏にある者の姿が浮かんだ。
「奴の差し金か」
「セットしました!」
 ライがアヤに報告する。
「出力上昇中!」
「ええ、わかったわ!」
「八十、九十、百」
 次々にあがっていく。
「百二十突破!」
「いったわね!」
「今バンプレイオスに本当の火が!」
「行くわよリュウ、ライ、マイ!」
 アヤは三人に告げた。
「念動集中」
「サイコクラッチ接続」
 マイも操作する。
「ティーリンクオーバードライブ」
「トロニウムエンジンフルドライブ」
 ライがまた言う。
「いけるぞ!」
「アヤとマイの二人のシンクロした念がだ」
 ヴィレッタはその四人を見て言う。
「トロニウムを得たバンプレイオスの真の力を引き出す。
「よし、これならだ!」
「いけるわ!」
「これまでの比じゃない!」 
 ライ、アヤ、マイが言う。それを聞きながらさらに言うヴィレッタだった。
「そしてその力を束ねるのは」
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 リュウセイからだ。凄まじいエネルギーが発せられた。
 それを発しながらだ。彼は言うのだった。
「いけるぜ!」
「くっ、この力は!」
「これでバンプレイオスは全力で戦えるぜ!」
「奴め、何を考えている」
 エツィーラはその真の力を発揮したバンプレイオスを見ながら忌々しげに言う。
「何故シヴァーの元からトロニウムを奪い」
「この力なら!」
 リュウセイがまた叫ぶ。
「何だってできる!」
「くっ、まさかその力で!」
「エツィーラ=トーラー!」
 リュウセイが彼女の名を言った。
「手前だけは許さねえ!」
「それなら来るっていうのかい!」
「ああ、やってやる!」
 まさにだ。その通りだというのだ。
「今ここでな!」
「あたしを倒せると思ってるのかい!
 身構えはした。
「このエツィーラ=トーラーをね!」
「無駄よ!」
 今叫んだのはバランだった。
「エツィーラ、御主では勝てぬ!」
「何でそう言えるだい!」
「既に心で負けている!」
 だからだというのである。
「貴様のその邪悪に満ちた心では正義には勝てぬ!」
「邪悪っていうんだね!」
「左様、今の御主はまさに邪悪!」
 それ以外の何者でもないというのだ。
「その貴様に、今のその者達に勝てる道理はない!」
「くっ、そんな筈が!」
「天上天下!」
 リュウセイがまたここで叫ぶ。
「天下無双の力今悪に見せてやるぜ!」
「やれ、リュウ!」
 ラウルがそのリュウセイに叫ぶ。
「大尉の復帰祝いだ!」
「景気よくね!」
 フィオナも兄に続く。
「どかんといっちゃって!」
「ああ、何としてもな!」
「もうバルマーは目の前なんだ」
「だったら何としても!」
「未来の為に!」
 全員でリュウセイに声をかける。
「ここは!」
「頼んだ!」
「ああ、これで!」
 攻撃を仕掛けようとする。しかしだ。
 エツィーラもだ。その全身からだった。
 無数の光の球を出してだ。そこから光を放った。
「これならどうだい!」
「こんなもの!」
 あっさりとかわされた。今のバンプレイオスは巨体からは想像もできない速さだった。
「どうってことあるか!」
「ちっ、今のオウル=アッシャーをかわしたってのかい!」
「言った筈だ!」
 また叫ぶバランだった。
「今の貴様には勝てん!」
「ちっ、それならだよ!」
 まだ諦めないエツィーラだった。それでだ。
 今度は杖を剣にして剣を立ててそこから白い光を放つ。だがそれもだった。
 あえなくかわされる。リュウセイは全てをかわしてみせた。
「どれもこれもかわすってのかい」
「既に見切った!」
 リュウセイがまた告げる。
「御前の攻撃はだ!」
「今の二撃が最初だったってのにかい」
「そんなものどうということはない!」
 マイも言う。
「御前に受けた仕打ち!まとめて返してやる!」
「操り人形が」
 エツィーラの本心以外の何者でもない。
「生意気な口を聞いてくれるじゃないか!」
「その糸はとうに断ち切った!」
 だがマイはもう負けてはいなかった。
「私はだ!」
「そうよ、今のマイは!」
 アヤも言う。
「私達と絆にほって結ばれている!」
「アヤ・・・・・・」
「だからもう」
「そしてだ」
 ライも言うのだった。
「御前の望んだ身勝手なステージはだ」
「どうなるってんだい?」
「もうすぐ終わる」
 ライもだ。エツィーラには明らかな嫌悪を見せている。
「貴様の敗北というエンディングを迎えてな!」
「ライ・・・・・・」
「行くぜライ、アヤ、マイ!」
 最後にリュウセイが叫んだ。
「四人揃ったSRXチームと天下無双のスーパーロボットの力!」
 その二つによってだった。
「あいつに浴びせてやる!」
「くっ、この力は!」
「まずはこれだ!」
 バンプレイオスの全身からだ。無数のミサイルを放ってジェモーラを襲う。
「くっ、これは!」
「テレキネスミサイル!」
「何て数だい!」
 その数はエツィーラとしても避けられなかった。幾つか受ける。
 さらにだった。
「次はこれだ!」
「どれでいく、リュウ」
「今ので動きは止めた」
 その為の攻撃だったのだ。
「今度はこれだ!連続攻撃だ!」
「ハイパームデトロイダー!」
「敵機捕捉!」
「テレキネシスミサイル発射!」
 またミサイルを放ってだ。次は。
「行け!ガウンジェノサイダー!」
 バンプレイオスから光を放ってだ。撃ったのであった。 
 それでまたダメージを与える。しかしまだだった。
「フィールド収束!」
「マイ、ツインコンタクト!」
「わかった!」
 二つの刃が出て合わさりだ。巨大な剣になった。
 それを手に取りだ。また叫ぶ。
「切り裂け!バンプレイオス!」
「今度は剣だってのかい!」
「流星斬り!」
 それで両断にした。それで決まりだった。
 ジェモーラは動きを止めた。完全にだった。
「ちっ、これは・・・・・・」
「勝負ありだ!」
 またバランが叫ぶ。
「エツィーラ、貴様は敗れたのだ!」
「あたしが、地球人に負けたってのかい!」
「その心に負けたのだ!」
 それでだというのだ。
「それがわかったか!」
「くっ!まだだ!」
 しかしだ。まだ言うエツィーラだった。
 マシンが大破しながらもまだ立ってだ。そうしてだった。
「ここは撤退して機を」
「させるか!」
 しかしだ。リュウセイは見逃さなかった。
「手前だけは!ここで!」
「ひっ!」
「アヤ!マイ!」
 リュウセイは二人にも声をかけた。
「やってやれ!」
「わかった!」
「ここは!」
 二人も頷きだ。そうしてだった。
「エツィーラ=トーラー!あの時の恨み!」
「私達の念で!」
「ここで全て終わらせる!」
「邪悪を!撃つ」
 今まさに攻撃を浴びせんとする。しかしだった。
 その前にだ。エツィーラは逃げてしまった。そのまま何処かに消えてしまったのだった。
「消えたかよ!」
「逃げ足の速い奴だ」
 リュウセイとライが忌々しげに言う。
「あそこまで追い詰めたってのによ」
「去るとはな」
「しかしだ」
 悔しがる彼等にだ。ヴィレッタが言う。
「最早あの女に何の力もない」
「じゃあ無理して倒す必要はないってのかよ」
「そうだというのですか」
「左様、その通りだ」
 バランもリュウセイ達に話す。
「最早あの女はバルマーの民ではない」
「じゃああのままか」
「もう何の力もないのか」
「そうだ。今の戦い見事だった」
 それは認めるバランだった。そのうえでだ。
 彼等の前に近衛軍と共に立ちだ。こう告げたのである。
「そしてだ。よいな」
「あんたも戦うってんだな」
「その通りよ」
 こうトウマにも答える。
「このバラン=ドバン本星の最後の護りとして御主等に戦いを挑む」
「ああ、わかったぜ!」
 トウマが最初に彼の心を受けた。
「ならだ!ここはな!」
「来い!正々堂々と勝負しようぞ!」
 バランはまた告げた。
「そのうえで御主等を防いでみせようぞ!」
「じゃあ俺達もだ!」
 トウマも言う。
「あんたを倒して、行ってやるぜ!」
「来るがいい!」
 こうしてだ。本星の最後の護りとの戦いがはじまった。それはまさに拳と拳、戦士と戦士の戦いであった。それが幕を開けたのである。


第百十二話   完


                                      2011・4・6
     
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