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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第百十話 バランの戦い

               第百十話 バランの戦い
 バルマー本星へ向かうロンド=ベル。まずは勝利を収めた。しかしであった。
 トウマがだ。ミナキに話していた。
「絶対に出て来るな」
「バラン=ドバンがなのね」
「そうだ、絶対に来る」
 こうミナキに話すのである。
「あいつは俺達の前に出て来る」
「そう。それならトウマ」
「またあいつと戦いたい」
 トウマは真剣な顔で述べた。
「絶対にな」
「わかったわ」 
 ミナキも真剣な顔でトウマの言葉に頷いた。
「トウマ、勝ってね」
「止めないんだな」
「わかったから」
 それでだというのだ。
「貴方のことが。それに」
「それに?」
「あの人のことも」
 バランのこともだ。わかったというのだ。
「だから。勝って」
「そうする。そして」
「あの人と語るのね」
「あいつは本物の武人だ。それならだ」
 トウマはバランを認めていた。明らかにだ。
「あいつと最後の最後まで話したい」
「いい考えだ」
 それを聞いたフォルカが言ってきた。
「トウマ、そうあるべきだ」
「あんたもそう言ってくれるんだな」
「修羅の世界は戦いの世界だった」
 まさにだ。それが全ての世界だったのである。
「その中で。俺達もだ」
「戦いの中でお互いを知ったんだったな」
「それを見てきたな」
 修羅界でのだ。その戦いをだというのだ。
「俺達のことも」
「ああ、見てきた」
 その通りだと答えるトウマだった。
「俺は修羅じゃない。だがそれでも」
「修羅でなくともわかる」
 また告げるフォルカだった。
「心と心だからだ」
「そういうことなんだな」
「修羅達も多くのことを知ったわ」
 メイシスの言葉である。
「多くの世界を巡り多くの戦いを経てね」
「修羅界以外の世界を知った」
 アルティスも話すのだった。
「最早修羅は戦いだけに生きる存在ではない」
「楽しみってやつもだな」
「それも知った」
 フェルナンドとアリオンもいる。
「けれどな。戦いからもな」
「得るものがある」
「だからね。トウマ」
 ミナキが再びトウマに告げる。切実な顔で。
「戦いに向かって。そして」
「ああ、語ってくるな」
「そうしてね」
 こんな話をするのだった。そうしてだ。
 偵察から帰って来たコウタとショウコが仲間達に話す。
「敵だ」
「前方にいるわ」
 そこにだ。彼等がいるというのである。
「数は前と同じ位ね」
「あのでかいヘルモーズもいる」
「ああ、やっぱりな」
「ジュデッカ=ゴッツォか」
「あいつかよ」
 皆それを聞いてそれぞれ言った。
「あいつが来るんならな」
「それならな」
「行くか」
「そうするか」
「どのみち戦うなら逃げる訳にはいかないし」
 こう話してであった。彼等はそのまま進む。そしてだ。
 遭遇予想ポイントになるとであった。
「よし、全軍出撃だ」
「総員戦闘配置」
 早速戦う陣形に入る。その彼等の前にだ。
 あの巨大なヘルモーズが出て来た。そしてだった。
「前回は不覚を取ったがだ」
「今度はどうだろうね」
 ジュデッカ=ゴッツォとレツィーラだった。彼等が言うのだった。
「今度はそうはいかん」
「こちらも援軍を呼んで来た」
「援軍!?そうか!」 
 トウマがその言葉にすぐに反応を見せた。
「あいつが来たんだな、やはり」
「むっ、わかるというのか」
「ああ、わかるさ」
 トウマはジュデッカ=ゴッツォに対して答えた。
「バランだな、バラン=ドバンだな」
「そうだ」
 まさにだ。その通りだと答えるジュデッカ=ゴッツォだった。
「読んでいたというのか」
「あいつなら出て来ると思っていた」
 ミナキに告げた言葉と殆ど一緒であった。
「必ずな!」
「そうか、それならばだ」
 ジュデッカ=ゴッツォは全軍を出撃させながら述べる。
「話は早いな」
「じゃあいいな」
 エツィーラも言う。
「バラン=ドバン、いいね」
「うむ!」
 こうしてだった。ペミドバンが戦場に姿を現したのであった。
 その姿を見てだ。と馬が言う。
「来たな、バラン!」
「黙れ!」
 しかしだ。ここでドバンはトウマに怒鳴るのだった。
「貴様にその名を呼ばれる筋合いはない!」
「何っ、どういうことなんだ!?」
「これは一体」
「トウマがわからない!?」
「まさか」
「わしはバラン=ドバン!」
 ドバンは名乗る。己から。
「陛下を御守りする近衛軍司令官よ!」
「それはわかっている!」
「わかっているならなぜわしの名を呼ぶ!」
「本当に俺を知らないのか!」
「知らん!」
 こう返すバランだった。
「貴様が帝国の敵だということはわかっておる!」
「くっ、まさか!」
「その様だな」
 ゼンガーが歯噛みするトウマに対して話した。
「あの男は今はだ」
「洗脳されているんですね」
「そうだ」
 まさにだ。その通りだというのである。
「今は御前の言葉も届かぬ」
「まさかあの女が」
「間違いないな」
 今度はレーツェルがトウマに答える。
「エツィーラ=トーラー、あの女がだ」
「くそっ、何て奴だ」
「しかしだ」
 ゼンガーは歯噛みするそのトウマに対して話した。
「その洗脳を解く方法はある」
「戦い、そして」
「勝つのだ。そしてその心をぶつけるのだ」
「それでバランはまた」
「行くのだ!」
 ここでゼンガーは確かな声で告げた。
「そして御前の心を見せるのだ!」
「わかりました、それなら!」
「だが覚悟するのだ」
 レーツェルはトウマに用心するように話した。
「今のバラン=ドバンはこれまでとは違う」
「確かに。この殺気は」
「その真の力を見せるだろう」
 バランのだ。それをだというのだ。
「わかっているならだ」
「前に突き進むのだ!」
「ああ、行くぜ!」
「行くぞ異星人共よ!」
 そのバランの言葉だ。
「これより先陛下には指一本も触れさせん!」
「なら来い!」
 トウマも受けて立つ。
「この大雷鳳でその鉄球を砕いてやる!」
「小童が!行くぞ!」
 こうしてだ。ここでも戦いがはじまるのだった。
 ジュデッカ=ゴッツォはだ。その中でだ。バランに対して声をかけた。
「バラン殿」
「何だ?」
「あの地球人の若者だが」
「知らんな」
 こうジュデッカ=ゴッツォに答えるバランだった。
「あの様な奴はな」
「そうか、知らないのか」
「うむ、知らぬ」
 また言う彼だった。
「誰か知らぬが馴れ馴れしい輩だ。しかし」
「しかし?」
「妙に気になる」
 その厳しい顔をいぶかしむものにさせての言葉である。
「わしが行くとしよう」
「貴殿が相手をするというのか」
「うむ、どうもだ」
 声もだ。いぶかしむものだった。
 そして目もだ。そうしたものでトウマを見て話すのだった。
「あの小童」
「地球人の様だな」
「妙に気になる」
 こうジュデッカ=ゴッツォに話す。
「だからだ。わしが相手をしよう」
「わかった。それでは私はだ」
「軍の指揮を頼めるか」
「承知した」
 こうしてだった。彼等は互いに役割を分担した。そのうえで戦いに向かう。
 そしてだった。バランはそのままトウマと激突したのであった。
「行くぞ小童!」
「ああ、俺のことを思い出せないのならな!」
 こう返すトウマだった。対峙し互いに突き進みながら言い合う。
「思い出せてやる!」
「貴様なぞ知らぬわ!」
「知らないってんならな!」
 拳を繰り出す。しかしそれは鉄球に止められた。
「強さは相変わらずってわけか!」
「この拳」
 バランは防いだその拳を見て言う。
「御主、できるな」
「ああ、強くなった」
 それでだというのである。
「あんたとの戦いでな」
「何度も言うがだ」
 今度はバランからの攻撃だ。トウマはそれを上に飛びかわした。
「わしは御主なぞ知らんわ!」
「だからこっちは知ってるんだよ!」
「何処で知った、わしを」
「戦場だ」 
 そこだというのだ。
「そこで知ったんだよ!」
「戦場でだというのか」
「ああ、そうだ!」
 こうバランに言う。また拳を繰り出す。
「あんたと何度も戦ったんだよ!」
「そういえばだ」
 拳をまた防いだ。しかしその拳を見てだった。
 バランは思った。その拳はだ。
「この拳の動きは」
「覚えてるっていうのか?」
「何処かで見たことがある」
 これがバランの今の言葉だった。
「見事な拳だな」
「そう言ってくれるんだな」
「小童、名前は何という」
「トウマだ!」
 その名を名乗ってみせた。
「トウマ=カノウだ!この名前も知らないっていうんだな!」
「むう、やはり知らぬ」
 こう言うだけのバランだった。
 だが、だ。ここで彼はこうも言った。
「しかしだ」
「しかしっていうんだな」
「その拳は何処かで見た」
 そのことは確かだと思えるのだった。
「何処であったか」
「じゃあ思い出せてやる!」
「ふん、それならばだ!」
 バランも受ける。トウマ自身を。
「わしに思いだせるのだ、トウマとやら!」
「ああ、やってやるぜ!」
 二人の一騎打ちだった。そしてその周りではだ。
 ロンド=ベルとバルマー軍が戦っていた。正面と正面でだ。
 ラーゼフォンが叫ぶ。その声を。
「ラアアアアアアアアアア!」
「!これは!」
「何だこの攻撃は!」
 それでだ。敵機が次々と粉砕される。
「これが地球人の力か」
「それだというのか」
「僕だって歌えるんだ!」
 こう言う綾人だった。
「バサラさんとは違うけれど。僕も!」
「そうよ、綾人君歌うのよ」
 遥がその綾人に言う。
「貴方も。貴方の歌があるから」
「だからですね」
「思えば。遠い場所に来たわよね」
 ふとだ。遥は微笑んでこんなことを話した。
「東京ジュピターから。他の世界の遥かな銀河まで」
「そうですね。確かに」
「そしてこうして戦って」
「何か凄い話ですよね」
「運命でしょうね」
 それをだ。運命だというのである。
「これもまたね」
「運命ですか」
「そう思うわ。それでね」
「それで?」
「最後はどうなるかわからないけれど」
 それでもだというのである。
「希望を忘れないでね」
「歌うんですね」
「ええ、そうしてね」
 こう綾人に話してだ。自分もだった。
 戦いを続ける。ロンド=ベルはバルマーの大軍を正面から受けそのうえで少しずつだが押していっていた。やはり彼等の力は強い。
 そしてだ。ジュデッカ=ゴッツォはだ。それを見て言うのであった。
「この者達の力は」
「前より強くなっているな」
「うむ、そうだ」
 こうエツィーラにも話す。
「さらにだ」
「戦えば戦う程ね」
「ここで食い止めなければならぬか。やはり」
「いや、それは違う」
「違うというのか」
「宰相殿の話ではだ」
 こう前置きして話すエツィーラだった。
「ここはまだ退いていい」
「いいというのか」
「本星まで退くことを許すとのことだ」
「馬鹿な、それではだ」
 ジュデッカ=ゴッツォはそれを聞いてすぐに言った。
「敵の侵入を許す。それでいいのか」
「その為のネビーイームではないのか?」 
 エツィーラは反論する彼にそれを出した。
「あの十二の護りはその為にあるのではないのか」
「あれか」
「あれが全てあればだ」
「そうだな。どんな軍でもだ」
「宇宙怪獣とて退けられる」
 彼等にとって今現在最大の脅威であるそれですらだというのだ。
「だからだ。この者達もだ」
「退けられるな」
「そういうことだ。だからこそだ」
「ここは退いてもいいか」
「わかったな、尚書よ」
「承知した」 
 ジュデッカ=ゴッツォは確かな言葉でエツィーラに返した。
「その時になればだ」
「撤退するといい」
「そうさせてもらう」
「本星防衛軍は我が帝国で最強の軍だ」
 そのジュデッカ=ゴッツォが率いる軍である。今のこの軍だ。
「他の四つの方面軍を合わせたよりもだったな」
「その通りだ。質、数共にだ」
 そのどちらでもだというのだ。
「上だ」
「その全軍とネビーイームで奴等を退けることは確実だな」
「できる。間違いなくな」
「ではだ。今はだ」
「危ういと見れば撤退していい」
「そういうことだ」
 こう二人で話をしていた。その中でだ。
 両軍は戦う。そしてトウマとバランもまた。
 トウマがだ。また拳を繰り出した。それは。
 バランとて防ぎきれなかった。あまりにも鋭い一撃だった。
 右肩に受けた。それでだった。
「くっ!」
「よし、決まったな!」
「この拳、まさか貴様は」
「トウマ、今よ!」
 ここでミナキがトウマに告げる。
「相手に隙ができたわ!」
「ああ、わかった!」 
 トウマもミナキのその言葉に応える。
「それなら!」
「決めて、ここで!」
「わかった、ここは!」
 叫び。そして全身から力を放って。
「飛べ!」
 まずはこう叫ぶ。
「雷よりも速く!強く!」
「ええ、その技で!」
「熱く!」
 光になった。そのうえでペミドバンにケリを繰り出し。
 それからだ。高く飛翔し急降下しその身体を掴み。
「超必殺!」
 何回も己を軸として振り回してから技の名前を叫んだ。
「ライジングメテオインフェルノ!」
 高く放り投げ己も再び飛び蹴りで貫く。それを決めたのである。
「これでどうだ!」
「ぬううっ、これは!」
「勝負あったな、バラン!」
「ぐおおおおおおおおおっ、まだだ!」
 だが、だ。ペミドバンはまだ立っていた。
 そしてだ。彼も己の力を振り絞った。そのうえでの言葉だった。
「わしは!わしは!」
「!!」
「何だ一体」
「どうしたってんだ!?」
「バラン=ドバンだ!」
 こう叫び己の全力を出して踏み止まる。そうしてだった。 
 再び立った。そしてそこでだった。
「むっ、ここは」
「ちっ、これは」
 エツィーラはそのバランを見て舌打ちする。
「シヴァーがバランに施した精神制御が解けたか」
「確かわしは」
 バランはいぶかしみながら呟く。
「本星に戻りシヴァーと」
「あんた、どうしたんだ?」
 トウマがそのバランに問う。
「急に静かになったけれどよ」
「むっ、トウマではないか」
 今気付いたといった言葉だった。
「何故わしはここにいるのだ?」
「あんた何も覚えてないのかよ」
「何故わしはここにいるのだ?どうやら御主と戦っていたな」
「それはそうだけれどよ」
「シヴァーめ、どうやら」
 戦場であることを察してだ。そこからだった。
 別のことも察した。そのうえで忌々しげに言うのだった。
「わしを洗脳しておったか、許さんぞ!」
「?バラン殿」
 エペソがいぶかしみながらそのバランに問うた。
「どうされたのだ、一体」
「ジュデッカ=ゴッツォではないか。御主もいるのか」
「いるも何も」
「何も?」
「今ここで本星への侵入を防ぐ為に共に戦っているのだが」
「何っ、本星にか」
「そうだ。ロンド=ベルが迫っているのだ」
 目の前のその軍に他ならない。
「知らぬというのか?」
「ううぬ、これはさらに許せん」
 バランは怒りに満ちた顔で言った。
 そしてだ。撤退しようとする。その彼にトウマが問うた。
「おい、待てよ」
「どうした、トウマよ」
「あんた今度は何処に行くんだよ」
 バランに対して問うのだった。
「本星に戻るのか?」
「そうだ」
 まさにその通りだと答えるバランだった。
「そしてだ」
「俺達のことか」
「左様、御主達は本星に向かっているのだな」
「ああ、そうだ」
 その通りだとだ。トウマは答えた。
「俺達の目的の為にだ」
「ならばだ」
「戦うっていうんだな」
「如何なる理由があろうとも」
 バランの言葉が強くなる。
「本星は陛下の治められる言わば聖地」
「だからだってんだな」
「何人たりとも侵入することはまかりならん!」
「どうしてもっていうんだな!」
「左様、トウマよ」
 彼の名を呼んでだった。
「このまま御主と御主の仲間達が進むならばだ」
「戦う」
「そう言うのね、あくまで」
「そうだ、わしが相手になろう」
 トウマだけでなくミナキにも告げる。
「わしは陛下を御守りする近衛軍の指揮官よ」
「バルマー人の誇りにかけて」
「あえてというのですか」
「わしはバラン=ドバンよ!」
 誇りをそのまま言ってみせるのだった。
「その名にかけて御主達を倒そう!」
「おい、待てよおっさん!」
「何だ、御主は」
「リュウセイ、リュウセイ=ダテだ!」
 その名前を言うのだった。
「ハザルの時には世話になったな!」
「そうか、あの時のか」
「あんたは自分の星さえ無事ならいいっていうのかよ!」
「それは違う」
「しかしそう言ってんじゃねえか!」
「わしはあくまでバルマーの臣」
 彼を彼たらしめているものだ。
「ならば陛下とその臣民を守るのが務めだ」
「そうだっていうんだな」
「まずがそれがある」
 こう言うのである。
「だからだ。わしはその為に戦うのだ」
「くっ、じゃあ結局は」
「仕方あるまい」 
 ライがそのリュウセイに話す。
「誰も同じだ。それはな」
「まず自分の星がってことはかよ」
「そうだ。俺達もだな」
「あ、ああ」
 そう言われるとだ。リュウセイも頷くしかなかった。
 考えてみればだ。彼もそうだからだ。
「それはな。やっぱり」
「誰もが同じだ、それはな」
「けれどよ、今はよ」
「それもその通りだ」
 今度はレーツェルがリュウセイに話す。
「その信念と志を返るにはだ」
「俺がやる!」
 またトウマが叫ぶ。
「バラン!あんたのその心をだ!」
「変えてみせるというか!」
「ああ、あんたならわかる筈だ!」
 こうそのバランに言うのである。
「今為すべきことがな!」
「面白い、ならば見せてみよ!」
 バランも受けて立つ。
「このわしにだ!」
「ああ、必ずな!」
 このやり取りが終わってだ。バランはだ。
 ジュデッカ=ゴッツォに対してだ。こう告げた。
「わしはこれでだ」
「撤退するのだな」
「済まぬ、急用故にだ」
 シヴァーのことは隠す。
「失礼する」
「わかった。それではな」
「武運を祈る」
「それではな」
 こうしたやり取りのうえでだ。バランは戦場を後にした。
 そしてだ。エペソはここで戦局を見た。見ればだ。
「損害が半数を超えたか」
「どうするつもりだ?」
「頃合いか。これ以上の戦いはだ」
「無駄に損害を出すだけだというのか」
「その通りだ」
 こうエツィーラに話す。
「だからだ。ここはだ」
「わかった。それではだな」
「全軍撤退する」
 機を見るに敏だった。彼は決断を下した。
 こうして撤退を開始した。その中でだ。
 エツィーラは姿を現しだ。ロンド=ベルの面々に告げるのだった。
「その力だ」
「その力だっていうのかよ」
「それが何だっていうのよ」
 ラウルとフィオナが彼女に返す。
「毎回出て来るけれどよ」
「それで訳のわからないことを言って」
「その力こそがアカシックレコードに見込まれたものの力よ!」
「!?こいつ」
「そうね」
 二人はエツィーラの今の言葉にあることに気付いた。
「言葉遣いが」
「普段と違うわ」
「まさかこれが」
「あの女の地だっていうの?」
「ハハハハハハハハ!」
 高笑いもするエツィーラだった。
「あんた達は戦えばいいんだよ!」
「戦うってね!」
「僕は最初からそのつもりだが」
「けれどそれが一体」
 ティス、ラウル、デスピニスが言い返す。
「急にテンションあがったけれど」
「何が言いたい」
「どういうことなのかしら」
「それが真実に近付く道だからね!」
 こう言ってであった。彼女はだ。
「本星で待ってるよ!」
「ここで倒してやる!」
「待ちなさいよ!」
 アラドとゼオラが追おうとする。しかしだった。 
 それより前にだ。間合いを一気に話してだ。エツィーラはまた言うのだった。
「その時に全ての鍵は開けられ」
「鍵だと」
 クォヴレーがその言葉に眉を動かした。
「鍵とは何だ」
「運命は私の前に姿を現すだろうさ!」
 最後にこう言って姿を消したのである。かくしてこの宙域での戦いは終わった。
 だが残されたロンド=ベルの面々はだ。狐に摘ままれた顔になってそれぞれ言うのだった。
「あいつ何なんだ」
「何か知ってるのか?」
「アカシックレコードについて」
「それは
「まさか」
 ここで話すのは華都美だった。
「この銀河を統べる無限の力?」
「絶対運命でしょうか」
 卵兎美も怪訝な顔で言う。
「それが」
「そしてサイコドライバーは」
「それを引き出す鍵なのでしょうか」
「じゃあ俺は」
 リュウセイが二人の話を聞いて呟く。
「その鍵だってことなのかよ」
「少なくともだ」
 クワトロが言った。
「この戦いにも勝った」
「じゃあまた整備と補給を受けて」
「本星に行く」
「そうするんですね」
「進路はこのままだ」
 ブライトが実際にこう話す。
「バルマー本星に向かう」
「距離は近くなっていますね」
 ユリカも今は真剣だ。
「いよいよです」
「銀河の中心にか」
「遂に辿り着くんだな」
「本当に」
 皆そのことに感慨も感じていた。かくして彼等はさらに進むのだった。
 その中でだ。シェリルがギジェの話を聞いていた。
「イデの力はだ」
「アカシックレコードと関係があるというのね」
「イデの力だけではない」 
 その他の力もだというのだ。
「ゲッター線やビムラー、Gストーン等もだ」
「そういったもの全てがなのね」
「この宇宙を統べる無限の力」
 それこそがだった。
「アカシックレコードが形を変えたものだ」
「イデもその一つ」
「そしてあの女」
「エツィーラ=トーラーね」
「あの女は我々をアポカリュプシスに導く者ではないだろうか」
 ギジェはこう仮説を述べた。
「さらにはアカシックレコードに見込まれた者と」
「言っていたわね」
「ではアカシックレコードこそはだ」
 何かというのだ。
「アポカリュプシスを発生させる力ではないだろうか」
「それならアポカリュプシスを回避するには」
「同時にその無限の力を解明しなくてはならないのではないだろうか」
「なら私がするべきことは」
「イデのさらなる解明を頼めるだろうか」
「そうね。ただ」
「ただ?」
 ギジェはシェリルのその言葉に問うた。
「何かあるのか」
「私もそれは続けているわ。けれど」
「進んでいないか」
「ええ、待っていて」
 こう言うのだった。
「時間がないこともわかっているけれど」
「ああ、それではだ」
「やっていくから」
 こう話してだ。そのうえでだった。
 シェリルもイデに向かうのだった。これまで以上にだ。
 そうした中でだ。ロンド=ベルの面々は。
 やはり酒を飲んでいた。その中でだ。
 フレイがだ。ナタルにステラ、それにユリカといった面々を見てだ。こんなことを言うのだった。
「私って似てる人多過ぎじゃないの?」
「そうだな。それはな」
「その通りですね」
 カナリアとユリカがそれに応える。
「一体何人いるのか」
「わかりにくい位ですよね」
「一矢さんもそうだけれど」
 彼のことも言う。
「本当に何人いるのかしら」
「いることはいいことだろうがよ」
 反論するのはアルトだ。
「俺なんていないんだぞ、一人もな」
「そうだったの」
「そうだよ。キラはいるけれどな」
「俺のことだな」
 ブレラが出て来た。
「似ていないんじゃないかと言われているがな」
「いや、似てるだろ」
「性格全然違うけれど」
「どう見たってなあ」
「雰囲気同じだし」
「誰がどう見ても」
 キラとブレラはだ。そうだというのだ。
「だからそれ言ったらな」
「それこそ誰がどう見てもな」
「アスランと蝿と同じだろ?」
「ディアッカとどっかの国とか」
「シンと洟垂れ小僧とか」
 何故かそちらに話が向かう。
「一緒じゃねえか」
「そっくりにしか思えねえよ」
「そうか。そうなのか」
 そう言われてだ。頷きはするブレラだった。そうしてだ。
 彼はキラを見てだ。こう告げた。
「ではだ。宜しくな」
「はい、御願いします」
 キラは微笑んでブレラに返す。
「御館様の為に」
「尽くすとしよう」
「だからどうしてそうなるんだ?」
「意味不明だがわかるにしてもだ」
 アスランとライが突っ込みを入れる。
「俺も。あの世界はわかるが」
「バサラだな」
「俺もわかるぞ」
 アレンも名乗りをあげる。
「その世界のことはな」
「そういえばアレンさんって何か」
「どっかの世界で乙女になってませんでした?」
「違いました?」
「自覚はしている」
 否定しなかった。できなかったと言っていい。
「そちらもな」
「何かその世界は凄いことになってないか?」
 突込みを入れたのはシローだった。
「俺も言えた義理じゃないけれどな」
「俺もそう思うぞ」
 何故か言う宗介だった。
「どうもな。そちらはな」
「そうだな。俺もあの世界はあまり好きではない」
 イザークも出て来た。
「偽者ではないというのにだ」
「そうですね。それを言いますと」 
 リリーナは少し気恥ずかしそうである。
「きりがないですし」
「関係者は多いわ」
 ドロシーもリリーナに続く。
「そうね、ヒイロ」
「俺なのか」
「そう思わないかしら」
「残念だが思う」
 その通りだとだ。ヒイロも言うしかなかった。
「しかし。人間とは色々あるものだな」
「そうだな。先の戦国の話はだ」
「気になって仕方がない」
 トロワーとウーヒェイはそちらの世界に反応していた。
「俺は緑色だったのか」
「何故片目になっていたのかわからない」
「僕は僕で恋とか姫の世界が気になります」
 カトルも縁がある話だった。
「アニメ版だけ出ていたのですけれど」
「で、俺はクライマックスなんだな」
 デュオだけがそちらだった。
「そうなんだな」
「クライマックスなあ。あの世界な」
 ヂボデーが笑いながら話す。
「俺はおかんになってたな」
「ああ、あれね」
 サイシーがそれを聞いて応える。
「あれ面白かったよね」
「とにかく皆が皆色々あるわよね」
 レインはそのことをしみじみと感じていた。
「私はまあ。何ていうか」
「勝てるわね、新条君」
 マサキがぽつりと言った。
「懐かしいよな」
「それ言うのね」
「俺何かぼろくそだったしな、扱いが」
「ああ、それね」
 ザズが出て来た。
「何かさ、不幸を一身に集めてたよね」
「何であんなに不幸ばかり集めてたんだよ」
「日頃の行いだったのではないのか?」
 ギャブレーがそのマサキに言う。
「違うか、それは」
「おい、あんたが言うかよ」
「何だ?私が言ったら駄目なのか?」
「あんたが一番おかしなことやってただろうがよ」
「そんなことは知らないが」
「いや、知らない筈がないだろ」
 いささかムキになって言い返すマサキだった。
「あれだけのことしておいてよ」
「あれは凄かったわね」
 マリューもだ。そのことは知っていたのだった。
「何ていうかねえ。絵に描いた様な変態だったし」
「全くだな」
 今度参戦したのはだ。ライだった。
「あれは壮絶なものだった」
「しかし。何かな」 
 ここでふと言ったのはだ。今度は宙だった。
「俺達の記憶がごちゃ混ぜになっているのは何かあるのか?」
「あれ、それに何かあるの?」
「何かそうした話皆言い過ぎじゃないのか?」
 こう美和にも話す宙だった。
「それが妙に気になるんだよな」
「少なくとも他の世界を行き来することが多いね」
 今言ったのはアイビスだ。
「こうも色々な世界を互いに行き来するのは。かなり」
「そうだ。それ自体がおかしい」
 それをだ。宙は指摘する。
「何かあるのか」
「考え過ぎではないのか?」
 スレイはこう宙に返した。
「幾ら何でもな」
「だといいんだがな」
「まあとにかくですね」
 ツグミは話を戻してきた。
「今から。バルマー本星ですね」
「ああ、そうだな」
 宙もこのことにはそのまま頷く。
「戦力も桁外れに多いだろうな」
「何か俺達の世界の戦いみたいな感じか?」
 黄金はこう問うた。
「ああいう感じになるか?」
「その可能性は否定できない」
 ヴィレッタが真剣な顔で話す。
「バルマーだけではないからな」
「バッフクランか」
「連中も来るか」
「それと宇宙怪獣な」
「奴等もな」
 それぞれだ。ロンド=ベルの面々は考えはじめた。
「それならな」
「相当ややこしい戦いになるよな」
「バルマーだけじゃなくて四つ巴」
「そんな戦いになるんだな」
「その可能性は否定できないわね」
 それをだ。話したのは小鳥だった。
「何かもう鬼が出ても蛇が出てもって感じになってきたわね」
「正念場ですね」
 テッサはその状況をこう評した。
「ですが。ここはです」
「何とかバルマーの霊帝と話し合って」
「事態を解決しないとな」
「アポカリュプシスをね」
 最後はこうした話になった。こうしてだった。 
 彼等はバルマー本星に向かう。アポカリュプシスの回避を目指して。


第百十話   完


                        2011・3・30
 
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