スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第百一話 安全圏まで
第百一話 安全圏まで
捕虜を解放したロンド=ベルはだ。
そのまま第四惑星から離れる。一旦であった。
「バロータから離れるんだな」
「とりあえずは」
「そうするんですね」
「そうだ、まずはだ」
ブライトが一同に話す。6
「彼等を安全な場所まで誘導しなければならない」
「そうしてですね」
「そのうえであらためて」
「バロータに入る」
「そうするんですね」
「その通りだ。一旦バロータから離れる」
また言うブライトだった。
「わかったな」
「了解です、それじゃあ」
「今は離れて」
「捕虜だった人達を誘導して」
「そして安全な場所で、ですね」
「御別れですね」
こう話しながらだ。彼等はその場所に向かう。その中でだ。
ガムリンがだ。こんなことを言うのだった。
「とりあえずはいいとして」
「追っ手だな」
「はい、彼等は来ますね」
こうリーに話すのだった。
「やっぱり。追ってきていますね」
「間違いなくな」
リーの答えはこうしたものだった。
「来ているな」
「そうですね、やはり」
「それで来てるのはやっぱり」
「あいつだよな」
「他に考えられませんね」
アルトの言葉にミシェルとルカが言う。
「あのいつも美とかいう奴な」
「それとデカブツだな」
「あの二人ですね」
「一応人間になるのか?」
クランはそのことを問題にした。
「一方は完全に怪獣ではないのか?」
「一応一心同体なるからな」
「そうなるんじゃないですか?」
グラビルについてミシェルとルカが話す。
「凄いあやふやだけれどな」
「はっきり言えないですけれど」
「まああの美野郎もな」
アルトが首を捻りながら話す。
「結構以上にな。わからねえ奴だからな」
「わかるのはあいつだけだな」
「バサラさんだけですね」
彼だけだというのだ。
「あいつはまた独特だからな」
「はい、あの人だけの世界を持っています」
「正直熱気バサラはね」
「私達にないものを持ってます」
それはシェリルとランカが見てもだった。
「けれど。あの何ていうか横紙破りなのがね」
「物凄く大きいと思います」
「あの早瀬大尉に勝てる数少ない人間だからな」
こう言って賞賛するのはエイジだった。
「いやあ、本当にすげえよ」
「だよな。あの年増の小言おばさんにも勝てるんだからな」
シンがまたしても余計なことを言う。
「俺には無理だぜ。そろそろ更年期障害のな」
「おい、シン」
クランがそのシンを咎める。
「また御前はそうして。いらぬことを」
「そうだよ。いい加減にしないと」
「また本人が来るぞ」
キラとブレラも彼を止める。
「いつもそのパターンで痛い目に逢ってるじゃない」
「だからだ。ここはだ」
「っていうか同じ声で言うなよ」
シンはキラとブレラにそこから突っ込みを入れた。
「どっちがどっちか全然わからねえだろうが」
「いや、そうは言ってもだよ」
ガムリンもそのシンを注意する。
「君はちょっと。本当に口が」
「おばさんなのは確かだろうがよ」
まだ言うシンであった。
「もうよ。見事なよ」
「死ぬな、こいつ」
クランはここでシンの行く末を確信した。
「こんなことを言うからな」
「そうね。ここはね」
「ちょっと離れるべきですね」
シェリルとランカもこれから何が起こるかわかった。
「もうすぐね」
「そうですね。いつものパターンだと」
「へっ、おばさんは今艦橋で当直だぜ」
シンはそれを知っているのだった。
「それでどうしてよ。ここまで来るんだよ」
「そう言うがだ」
オズマも一応シンを咎めはする。
「いつもそう言って後ろから来ているな」
「だから御前もう言うな」
アルトも真剣に言う。
「本当にどうなっても知らないぞ」
「じゃあ本当にあの更年期のヒステリーおばさんが来るか賭けてやろうか?」
シンだけが余裕だ。
「まあおばさんだけれど耳だけは凄いからな」
「駄目だ、こいつ」
「また死ぬな」
トールもサイも匙を投げた。
「いつもいつもこうやってな」
「自分から死にに行くけれど」
「馬鹿か?本当によ」
ロックオンも呆れている。
「俺こいつ程自滅する奴はじめてだぜ」
「久し振りに会ったけれどな」
リュウセイもであった。
「こいつは全然変わらねえな」
「本当にザフトのアカデミーで首席だったのか?」
ここまで言ったのは宗助だった。
「アスランより上だったのだな」
「だからパイロット能力と戦闘能力が凄いんだよ」
ディアッカはそれで首席になったと話す。
「ペーパーテストは。勘が凄かったからな」
「とにかく獣じみてるから」
ルナマリアもそれを話す。
「それで首席だったのよ」
「じゃあ人間としては馬鹿なのね」
小鳥はあっさりと切り捨てた。
「本物の馬鹿ってことね」
「否定しない」
イザークも断言であった。
「ザフトでも俺の母上に同じことを言ってだ」
「あの時は凄かったですね」
ニコルはその時のことを思い出していた。その顔が青くなっている。
「普段は静かなあの人が」
「延髄斬りの後ジャイアントスイングがはじまった」
レイがその状況を話す。
「そして龍虎乱舞から覇王至高拳が三発放たれた」
「おい、死ぬぞそれ」
全員が突っ込みを入れた。
「何だよ、それ」
「っていうかそこまでやられてたのかよ、ザフトでも」
「それでこれなんだな」
「全然反省しないんだな」
皆あらためてシンに呆れる。
「何処まで馬鹿なんだ、本当に」
「毎回毎回残骸になってるのに」
「こうしている間にも絶対に」
「来るっていうのにな」
「まああれだよな。おばさんって嫌だよな」
その懲りないシンはまだ言う。
「肩凝りやら何やらでよ。ストレス溜まってるんだよな」
「あっ、これって」
セシリーがここで感じ取った。
「まずいわね」
「よし、恒例行事か」
「じゃあまあやばいから離れて」
「そろそろだし」
皆シンから距離を置くするとだ。
まだ言っているシンの後ろにだ。黒いシルエットが現れた。目だけが異様に赤く輝いている。
そしてだ。後ろから手を伸ばしだ。
彼の頭を掴む。そのまま握り潰さんとする。
「や、やっぱり出た!」
「予想してたけれど怖いぞおい!」
「た、大尉!何時からそこに!?」
「いらしてたんですか!?」
「今来たばかりよ」
未沙であった。シンの頭を掴みながら言う。
「けれど。会話は全部ね」
「聞こえてたんですか」
「あの、ここシティなんですけれど」
「マクロスの艦橋じゃないですけれど」
「それでもなんですか」
「ええ、全部聞こえていたわ」
宇宙空間を隔てていてもであった。
「全部ね」
「そ、そうだったんですか」
「す、凄い耳ですね」
「何か超能力者みたいですけれど」
「そういう話は全部聞こえるのよ」
あまりにも超絶的な未沙の耳である。
そしてだ。そのシンに対して言うのであった。
「さて、誰がおばさんかしら」
凄みのある笑みでの言葉だ。
「聞きたいわね。誰かしら」
「そんなの決まってるだろ」
しかしシンも負けない。
「俺の頭を今掴んでる人だよ」
「そしてその名前は?」
「早瀬未沙ってんだよ」
最後まで言った。これで全ては決まった。
シンはその場で残骸にされた。後にはボロ雑巾の様になったその残骸が放っておかれていた。
皆それを見てだ。呆れながら言うのであった。
「だから止めたのになあ」
「何でいつも言うかねえ、こいつは」
「予想通りの展開だけれど」
「本当に進歩ねえな」
「全く」
とはいっても誰もシンに同情しない。本当に自業自得だからだ。
だがそんな話をしている間にもであった。彼等はバロータ星系からの離脱を進めていく。その中でだ。
美穂がだ。サリーに尋ねるのであった。
「ねえ。これでね」
「ええ。プロトデビルンの予備戦力よね」
「もう。殆ど残ってないわよね」
サリーに尋ねるのはこのことだった。
「捕虜の人達は全部解放したから」
「そうよね。今はね」
「じゃあ安全圏まで誘導して解放したら」
それからのこともだ。美穂は話すのだった。
「それからいよいよ」
「プロトデビルンともね」
「決着をつける時なのね」
「そうなるわね」
「はい、そうです」
二人にエキセドルが話す。
「いよいよその時です」
「来ていますか」
「あのプロトデビルンとも」
「本当に」
「ただしです」
ここでエキセドルの言葉が引き締まる。
「予備戦力がなくなってもです」
「それでもですね」
「手強いですね」
「やっぱり」
「はい、油断は禁物です」
まさにそうだというのである。
「それは気をつけて下さい」
「そうですよね。予備戦力がなくなっても」
「それでもですよね」
「まだ彼等の戦力はありますから」
「ですから」
「はい、そうです」
また言うエキセドルだった。
「おそらく。百万以上います」
「百万以上ですか」
「まだかなりの勢力ですね」
「それだけの数だからこそ」
「それで、ですね」
「気を引き締めていきましょう」
エキセドルの言葉は真剣そのものだ。
「では。今は」
「はい、それでは」
「追っ手に警戒しながら」
彼等は安全圏に向かう。その中でだ。
遂にだ。後方からだった。
「レーダーに反応です!」
「えっ、やっぱり来たの!?」
メイリンの声を聞いてだ。アーサーが声をあげた。
「来ないで欲しかったのに」
「けれどレーダーに反応が」
「あるんだね、そうなんだね」
「はい、そうです」
まさにその通りだというのである。
「レーダーは嘘はつきません」
「そうだよね。じゃあ」
アーサーは溜息を吐き出す。それと共にであった。
仕方なくだ。こう話すのだった。
「じゃあ。迎撃だね」
「それしかないわね」
タリアもここで話す。
「戦わないと捕虜の人達も私達もね」
「同じですね。じゃあ」
「ええ、行くわよ」
「では」
アーサーは表情を元に戻していた。戦う時の顔だ。
その顔でだ。彼は言うのだった。
「総員出撃」
「よし、わかった」
「それではだな」
金竜とヒューゴがアーサーのその言葉に応える。
「では行くか」
「そうするか」
「うん、何か君達に言われると元気が出るよ」
二人に言われてはだった。アーサーも元気を出す。
「それじゃあ。頑張っていこうかな」
「よし、その意気だ」
「行くぞ」
「何かアーサーさんも」
メイリンは二人の言葉に元気になったアーサーを見て呟いた。
「雰囲気が関係あるんですね」
「そうよ。同じ感じの相手がいればそれだけでね」
タリアも心当たりがある様に話す。
「元気が出るものよ」
「そうなんですよね。本当に」
アーサーは今度はタリアににこやかに返す。
「いや、雰囲気が似てるのっていいですよね」
「そうね。本当にね」
「私もそれは同意ですけれど」
実は彼女もなのだった。
「クスハちゃんを見てると」
「ですよね。私達も何か」
「気が合うのよね」
「それなら気が合う者同士仲良くね」
どうするか。タリアはさらに話す。
「ここは戦うわよ」
「了解です!」
「それなら!」
こうしてだった。ロンド=ベルは捕虜達を護る陣になってだ。そのうえで追撃してきたプロトデビルン達を迎え撃つ。彼等をだ。
その指揮官はというとであった。
「またまたこいつか」
「続くな、おい」
「次から次に」
「よくもまあ」
ガビルだった。今回もなのだった。
当然グラビルもいる。彼等はここでも一緒であった。
「行くぞグラビル!」
「ガオオオオオオン!」
グラビルがガビルのその言葉に応える。
「仕掛ける。これこそだ!」
「これこそ?」
「何だってんだ、それで」
「今回は何の美だ?」
「何だってんだ?」
「強襲美!」
それであった。今回の美は。
「そのうえで捕虜達を奪い返させてもらうぞ!」
「よし、来るな!」
「それならだ!」
「防いでやる!」
「絶対に!」
こうしてだった。彼等はだ、敵を迎え撃つのであった。
ただしだ。今回もであった。
「いいな、諸君」
「はい、今回もですよね」
「攻めるんじゃなくて」
「退く」
「そうしながら戦うんですよね」
こうジェフリーに対して述べるのだった。
「ここはそうして」
「そのうえで捕虜の人達を安全な場所まで、ですね」
「誘導する」
「それが目的ですよね」
「その目的を忘れないことだ」
また言うジェフリーだった。
「わかったな」
「了解です」
「それなら今は」
「何とか安全圏まで」
「下がりましょう」
「っていうか」
ここで敵軍を見る。そのガビル達をだ。
見事なまでに一直線にだ。ロンド=ベルに向かって来る。そこに戦術はなかった。
「突撃!突撃美!」
「ガオオオオオン!」
「ゲペルニッチ様の為に、捕虜達を取り戻すのだ!」
「連中考えなしにきますし」
「ここは仕掛けますか?」
「そうしませんか?」
「そうだな。確かにな」
ジェフリーも彼等のその言葉に頷く。
「それがいいな」
「じゃあ機雷出しますか?」
「それを撒布しますか?」
「それはどうでしょうか」
「いや、それよりもだ」
だが、というのだった。ジェフリーは考える顔で述べた。
「ここはネットを仕掛けるとしよう」
「ネットですか」
「それで足止めをしてですか」
「そのうえで」
「そうする。ここで大事なのは彼等の動きを止めることだ」
まさにそうだというのである。それだとだ。
「だからだ。ここはだ」
「そうですね。機雷よりもここはネットの方がいいですね」
「じゃあそれを仕掛けて」
「それで防ぎますか」
「連中を」
「よし、決まりだ」
ジェフリーはまた言った。
「ネットを用意する、いいな」
「了解です」
「それならすぐに」
「ネットを用意しましょう」
こうしてだった。彼等はネットを放った。それにだった。
ガビル率いるプロトデビルンの大軍をだ。それで止めたのだった。
「くっ、これは!」
「よし、かかったな!」
それを見てだ。ロンド=ベルの面々は喜びの声をあげた。
「これで足止めができる!」
「捕虜の人達も撤退させられる」
「今のうちにな」
彼等の撤退も急がせる。そのうえでだ。
ネットを脱出した彼等にだ。総攻撃を仕掛けるのだった。
「いいか、諸君!」
「はい!」
「ここはですね!」
「戦うのは三分だけだ!」
また指示を出すジェフリーだった。
「そして三分が終わればだ」
「捕虜の人達と合流して」
「そのうえで、ですね」
「安全圏まで」
「そうだ、退く」
そうするというのだ。
「それでいくぞ」
「ただしです」
ここでだ。エキセドルも言うのだった。
「敵の数はできるだけ減らしておきましょう」
「追撃の敵は少ない方がいい」
「そういうことですね」
「はい、そしてです」
さらにであった。エキセドルが言うのはこのこともあった。
「これからの戦いの為にもです」
「敵の数を減らす」
「それもありますね」
「戦いはここだけじゃありませんから」
「そうです。今は敵の数をできるだけです」
減らすというのであった。戦略的な目的でもだ。
「ここの敵は七割です」
「七割を減らせば」
「後がかなり楽だからこそ」
「そうしますか」
「そうしましょう。それが目標です」
こうしてだった。ロンド=ベルはその三分の間にだ。プロトデビルンの軍勢と懸命に戦うのだった。
一斉攻撃が続く。お互いにだ。
「突撃だ!突進美!」
「今度はその美かよ!」
「美っていっても豊富なんだな!」
「それは褒めてやるぜ!」
「しかしな!」
ガビルに言い返しながらだ。その中でだ。
ロンド=ベルは攻撃を続ける。エネルギーも弾丸も気にしない程だ。
それを放ってだ。彼等は戦うのだった。
バサラはだ。ミレーヌと共に飛びだ。
ここでもギターを鳴らして歌う。その中でだ。
ミレーヌはだ。バサラに対して釘を刺していた。
「いい、三分よ」
「一曲あるかどうかだな」
「ええ、一曲で終わりよ」
こう彼に言うのであった。
「わかったわね」
「わかったさ。三分を過ぎたらな!」
「ライブは終わりよ!」
バサラにわかりやすいようにとの言葉だった。
「わかったわね!」
「ああ、わかったぜ!」
バサラもミレーヌに応えてだ。それでだ。
派手に歌う。敵の中を飛び回りながら。
その歌を聞いたプロトデビルン達はだ。動きを止めていく。それはかなりの効果があった。
それを見てだ。グラビルが自然にだ。
前に出ようとする。しかし。
そのグラビルにだ。バサラは単身向かうのだった。
「よし、俺の歌を聴きに来たな!」
「ちょっと、バサラ!」
そのバサラをだ。ミレーヌが止めようとする。
「まさかあいつに」
「ああ、聴かせてやる!」
ここでもだ。やはりバサラはバサラだった。
「あいつにもな!」
「相変わらず無茶ね」
ミレーヌはここでも呆れてしまった。
「武器持たないで突っ込むんだから」
「武器?そんなのいらねえからな」
「あんたの武器は歌ね」
「ああ、そうだ」
まさにその通りだとだ。自信に満ちた笑みで言い切る。
「これだよ。これがな」
「あんたの武器ね」
「その通りだ。だからやるぜ!」
激しいテンションで言う。
「あのデカブツにもな!俺の歌をな!」
「じゃあ三分よ!」
もうミレーヌも止めない。時間を告げるだけだ。
「三分で。歌ってよ!」
「ああ、歌ってやるぜ!」
バルキリーをドリルの如く回転させながらだ。そのうえで言う。
「俺の歌を聴けーーーーーーーっ!」
彼も歌う。そしてだ。
シェリルとランカもだ。ステージにいた。
そのうえでだ。シェリルが隣にいるランカに告げる。
「いい、今回はね」
「三分ですね」
「短いわ。けれどそれでも」
「はい、歌いましょう」
こうだ。ランカもシェリルに言う。
「ここは。絶対に」
「そうよ。いい、皆!」
「聴いて!」
「あたし達の歌を!」
「ここでも!」
二人もだ。マクロスから歌う。それでプロトデビルン達に聴かせる。
彼等の歌がだ。次第にだった。
プロトデビルン達を止めだ。そこに。
ロンド=ベルの攻撃が来る。それでだった。
ロンド=ベルはだ。彼等に対して。その目標を達成した。
「七割です!」
「よし、いったな!」
「目標達成か!」
「それで時間は!?」
「それは」
「三分です」
述べたのはエキセドルだった。
「今で三分です」
「丁度か」
「じゃあもうこれで撤退か」
「そうするか」
「そうしようか」
「はい、既に捕虜の方々も安全圏に達しようとしています」
彼等もだ。そうなっているというのだ。
「目的は達しました。それならです」
「よし、撤退だな」
「もうこれでな」
「戦うことはないし」
「それなら」
「全軍撤退します」
イーグルが指示を出した。
「速やかに艦艇に戻って下さい」
「急ぐのじゃぞ」
アスカは彼等に急ぐように話した。
「敵は待ってはくれぬぞ」
「はよ帰ってくるんやで!」
「待ってますね」
タータとタトラも彼等に声をかける。
「時間はないで!」
「帰ったらお茶にしましょうね」
「何かあの姉妹ってな」
「そうよね。いつも思うけれど」
ロンド=ベルの面々はその二人を見てだ。戻りながらこう話すのだった。66
「正反対だよなあ」
「見事なまでに」
「タータさんの声ってそういえば」
皆ここで遥を見た。彼女をだ。
「似てるしなあ」
「そうよね。何気に」
「そっくりだったりするし」
「否定できないわね」
その遥も苦笑いであった。
「タータちゃんとはね。不思議な縁を感じるわ」
「そやそや。うちもそう思うわ」
そしてそれはタータもであった。
「ほんまよお似てる思うわ。自分でもね」
「そうよね。何かね」
「そうなんだよなあ」
「この二人もなあ」
「本当に似てるな」
「ちょっとな」
そしてだ。タトラもであった。彼女もだ。
「アイナさんやテュッティさんもだけれど」
「十七歳の声?」
「全力で否定したいけれど」
「それよね」
「そんな声だから」
「はい、私は十七歳なんですよ」
タトラもにこりと笑ってこう話す。
「永遠の十七歳なんです」
「まあ十七歳と何ヶ月?」
「それでいいか」
「本人もああ言ってるし」
「それなら」
無理矢理納得する彼等だった。そんな話をしながらの撤退だった。
そしてだ。バサラもだ。
グラビルが大きく揺れ動いていた。バサラのその音楽を受けてだ。
それを見てだ。バサラも言うのであった。
「よし、俺の歌が届いてるな」
「もう一押し?」
「ああ、いけるぜ!」
言いながらギターを持ちなおすのだった。
「もう一曲!いくぜ!」
「悪いけれどそれは無理よ」
しかしだ。そのバサラにだ。マヤが告げる。
「バサラ君もミレーヌちゃんも帰って」
「んっ?三分か?」
「もうですか」
「ええ、そうよ」
まさにだ。その三分だというのだ。
「三分になったから。それじゃあね」
「ああ、ミレーヌちゃんいいか?」
「少しいいかな」
シゲルとマコトがここでミレーヌに話す。
「バサラをだけれど」
「絶対に連れて帰ってね」
「絶対にですか」
「いや、バサラはわからないから」
「急に突拍子もない行動に出るからね」
彼等から見ればだ。バサラの行動はそうしたものに他ならなかった。
「だからね。ここはね」
「宜しく頼むな」
「いい?バサラ君」
マヤも心配そうにバサラに声をかける。
「今回は絶対に戻って来てね」
「何か俺全然信用ねえな」
「常識に捉われなさ過ぎるのだ」
今言ったのはイリアだ。
「全く。常にだからな」
「いや、そう言うイリアさんの格好もかなり」
「軍人の軍服かな」
「違うだろ、あれ」
「ロック歌手のステージ衣装だろ」
「そうだよな」
多くの人間がそれではというのだった。
「ちょっとなあ」
「あれはないよな」
「軍服にはとても」
「洒落にならないから」
「私のことはいいだろう」
イリアは彼等にたまりかねた口調で返した。顔もそうなっている。
「アクシズはそれでもいいのだ」
「軍服に統一ないんだ」
「それもまずいよな」
「ザフトも結構怪しいけれど」
「軍服改造してた奴もいるから」
「正確に登録はされてるわよ」
今度はルナマリアがたまりかねた口調になっている。
「それに今はタイツはいてるから」
「タイツなあ」
「スカートの下にタイツか」
「何気に多いよな」
「確かに」
今度はタイツの話にもなる。
「エマさんもそうだし」
「ハマーンさんもタイツ好きだし」
「女の人のタイツはいいよな」
「だよな」
「男のタイツは駄目だけれど」
それはしっかりと否定される。そんな中でだ。
彼等は撤退していくのであった。バサラもあらためて言われる。
「で、いいわね」
「ああ、撤退だよな」
「いい?ここは絶対に撤退するわよ」
ミレーヌが彼に釘を刺す。
「わかったわね」
「わかってるさ。それじゃあな」
こうしてであった。バサラも今回は素直に頷いてであった。
そのうえでだ。彼も戦場から離脱する。だがその時にだ。
グラビルに目をやってだ。そうして彼に言うのだった。
「おい、そこのでかいの!」
「ガオッ!?」
「まただ!また俺の歌を聴かせてやるからな!」
「ガオオオオオン!」
グラビルも彼の言葉に応える。そうしてだった。
バサラは一気に戻ってだ。マクロス7に着艦した。その時にはだ。
捕虜達もだ。安全圏に入っていた。その彼等がロンド=ベルに言う。
「まさか敵に救われるとは」
「地球人にな」
「予想外だ」
「本当にな」
彼等は口々にだ。こう言うのだった。
「しかし本当にな」
「あんた達に救われたんだな」
「今こうしてな」
「そうなんだよな」
「地球人も」
そしてだ。彼等はだ。このことに気付いたのだった。
「悪い奴等じゃない」
「劣ってもいない」
「そうなんだな」
「人間か」
「人間なんだな」
このこともだ。わかってきたのだった。
「俺達と同じな」
「人間なんだな」
「生まれた星は違っても」
「同じなんだな」
「それは俺達もわかったことだ」
彼等に応えたのはコスモだった。真剣な顔だ。
「あんた達も。俺達と同じだったんだな」
「人間だったのね」
カーシャも話す。
「そうだったのね」
「姿形が多少違ってても」
「別の銀河にいても」
「同じか」
「そうだったのか」
御互いにだ。それを理解したのだった。そしてだ。
捕虜達はそれぞれの場所に戻っていく。彼等はこうして元の場所に帰った。そしてだ。
別れの後でだ。再びであった。
「じゃあ。あらためてな」
「ああ、バロータにまたな」
「殴り込みだな」
「そして今度こそな」
今度こそ。何をするのかも言い合う。
「プロトデビルンとの戦いも終わらせるか」
「奴等、ぶっ潰すぜ」
「本当に今度で」
「何があっても」
「ああ、ちょっと待ってくれるか?」
意気あがる彼等にだ。バサラが声をかけた。
「ぶっ潰すっていうのはな」
「それは?」
「駄目っていうの?」
「ひょっとして」
「ああ。プロトデビルンともな。和解できるからな」
それでだというのだ。彼は潰すというのには反対なのだった。
「倒すとかそういうのは止めておくか」
「それはか」
「止めてか」
「じゃあ一体?」
「どうやって話し合うんだよ、連中と」
「それなら」
「話し合うんじゃねえよ」
そうではないというバサラだった。
「言葉よりもずっといいのがあるからな」
「ああ、歌かあ」
「それだよな、やっぱり」
「歌だよな」
「ああ、その通りだ」
まさにだ。その歌だというのである。
「あのでかいのも俺の歌を聴いたんだ。だから絶対にな」
「そんなことができるのだろうか」
それに異議を呈したのはシリウスだった。
「歌で。本当にプロトデビルン達との戦いを」
「正直難しいと思うけれど」
シルヴィアも信じていなかった。
「幾ら何でも」
「しかしだ。私達も今までバサラを見てきた」
「そうなのよね、それよ」
しかしだ。ここで二人はこうも言うのだった。
「若しかしたら。本当にだ」
「それができるかも知れないわね」
「少なくともやってみる価値はあるよな」
アポロは乗り気だった。彼はだ。
「実際にな。歌でな」
「よし、それじゃあ行くぜ」
バサラは威勢よく言った。
「連中との戦い、俺の歌で終わらせてやるぜ!」
「本気で言うから凄いのよね」
ミレーヌはこう言いながらもバサラの傍にいる。
「けれど。ここまできたらね」
「ああ、やるぜ!」
また言うバサラだった。
「じゃあ今はな」
「今は?」
「飯にしないか?」
それはどうかというのである。
「殴り込んで歌う前にな」
「ああ、食事か」
「そういえば第四惑星に突入して脱出するまで」
「全然食ってなかったよな」
「そうだったよな」
皆このことに気付いた。そうしてだった。
不動がだ。豪快にこの料理を出してきた。
「ならばちゃんこだ!」
「何でちゃんこなんだ?」
「この人いつもいきなり言うけれど」
「どうしてちゃんこなんだよ」
「意味がわからないけれど」
「ちゃんこは身体にいいからだ」
それでだというのである。
「それに皆でたらふく仲良く食べられる」
「それでちゃんこなんですか」
「じゃあ。お野菜に」
「鶏肉に魚も用意して」
「それで食べるか」
「そうしようか」
皆何だかんだで乗る。そしてだった。
全員でそれぞれ鍋を囲んだ。そのうえでだ。
材料を次々と入れて食べていく。その中でだ。
皆でだ。鍋をつつく。バサラが鶏肉を食べながら言う。
「こうした鍋もいいよな」
「あれ、そういえばバサラって」
「いつも滅茶苦茶食べてるけれどスタイルいいよな」
「俺達もそうだけれど」
「バサラもだよなあ」
「もう如何にもシンガーって感じで」
「すらっとしてるな」
皆バサラのそのスタイルを見ながら話していく。
「やっぱり歌か」
「歌うからか」
「それでカロリー消費してるんだな」
「だからか」
「ああ、そうだろうな」
自分でもそれに頷くバサラだった。
「俺も実際な。歌った後かなり腹減るからな」
「だからか」
「歌ってカロリー消費するんだな」
「じゃあダイエットにもいい?」
「そうなんだな」
「そういえば私も」
ミレーヌもここで言う。
「ライブの後はお腹減るわね」
「ファイアーボンバーのライブは凄いのよね」
小鳥もそれを見て知っていた。
「跳んだりはねたりだし。暴れ回るし」
「バサラもミレーヌもテンション高いんだよな」
「凄い勢いだからな」
皆もそれを話す。
「だからか。歌った後って」
「カロリー消費するんだな」
「そういうことなんだ」
「そうだろうな。まあ俺は別に食事制限はしていないけれどな」
実際にそうだというバサラだった。
「というか食わないとな。身体がもたないからな」
「そうそう。とてもね」
ミレーヌもだった。
「食べないと死ぬんだよ」
「体重の半分はね」
「それは嘘でしょ」
アクアがすぐにミレーヌに突っ込みを入れる。
「体重の半分はモグラじゃない」
「まあそれは誇張ですけれど」
「それだけ沢山食べてるってのはわかるけれどね」
そしてだ。アクアはこんなことも言った。
「私は食べても。背は変わらないのよね」
「じゃあ何が変わるの?」
プリメーラがそのアクアに尋ねた。
「食べて」
「胸なのよね」
連邦軍の軍服の上からもだ。それがはっきりわかった。
「そっちが大きくなるのよ」
「胸か」
「そういえばアクアさんの胸ってな」
「日増しに大きくなるよな」
「いつも派手に動くし」
「というか動き過ぎ」
「そっちが大きくなるのよ」
少し困った顔で話すアクアだった。
「何でかしらね」
「私はそういうのないのよね」
プリメーラは残念そうに話す。
「胸って大きくならないのよ」
「プウ」
「モコナもらしいわよ」
プリメーラはモコナのその言葉を翻訳して話した。
「というかモコナ何も食べないのよね」
「それはそれで恐ろしい話ね」
アクアはそれを聞いて述べた。
「どういう身体の構造なのかしら」
「それが私にもわからないのよ」
こんな話をしながらだ。皆でちゃんこを食べるのだった。
そして食べ終わってからだ。それからだった。
「最後はどうする?」
「おうどん?それともお餅?」
「で、雑炊」
「どれにしたものかな」
「それぞれの鍋で分けていい」
刹那が話す。
「それでだ」
「ああ、それだと皆好きなの食べられるな」
「別に統一することないしな」
「じゃあそれぞれの鍋でうどんなりお餅なり入れて」
「雑炊もな」
「そっちも入れるか」
雑炊のことも話すのだった。
「鍋の後は。そういうのを食べないとな」
「食べた気がしないからな」
「じゃあ。最後は最後で」
「そうしようか」
こう話してだった。そのうえでだ。
彼等は最後の最後までちゃんこを楽しんだ。そうしてだった。
腹ごしらえを済ませてだ。あらためて戦いに向かうのだった。
第百一話 完
2011・2・28
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