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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第九十二話 イングラムの心

              第九十二話 イングラムの心
 アルマナはだ。セレーナに声をかけていた。
「あの」
「何?」
「大丈夫ですか?」
 気遣いは見せていた。
「その、あれだけのことがあって」
「心配しなくていいわ」
 それはいいというのだった。
「ただね」
「ただ?」
「あんたのその心遣いだけれど」
「はい」
「そんなのはいいから」
 こう言うのだった。
「正直言ってね」
「えっ、どうしてですか?」
「そういうのは反吐が出るのよ」
 これがセレーナへのアマルナの言葉だった。
「あんた、私を哀れだとか思ってるでしょ」
「いえ、それは」
「自分で気付いていなくてもそうなのよ。そうして上から見られるのはね」
 どうかというのであった。
「好きじゃないから。いいから」
「じゃあ今は」
「もういいから」
 こう言ってアマルナを退けるのだった。
「これ位の怪我はね。自分でなおせるからね」
「そうですか」
「ええ、そうよ」
 きつい顔でアマルナを拒むのだった。そうしてであった。
 自分で実際に怪我をなおした。そうしたのであった。
 そんな彼女を見てだ。カガリが言った。
「何かな」
「嫌なものを見たっていうのかい?」
「私もああしたところがあったか」
 アマルナを見ての言葉だった。
「ああして。上からの哀れみは」
「そうだね。カガリもねえ」
 ユウナがだ。カガリに自分が思ったことをありのまま話した。
「ちょっとね」
「あったんだな」
「なかったとは言えないね。オーブの後継者だからってね」
「そうか、やっぱりそうなんだな」
「うん、誇りは大事だよ」
 ユウナはそれは必要だとした。
「けれど己を高みに立てて何かをするのはね」
「よくないか」
「驕りはね。いいものを生まないよ」
「それでなんだな」
「そういうことさ。まあカガリは最初からそうしたことはあまりなかったから」
「そうか」
「うん、今は全く気にしなくていいから」
 こう彼女に話すのだった。
「ただ。カガリはカガリで」
「私は。何だ」
「もう少しおしとやかになってくれないとねえ」
「そんなことはどうでもいいだろう」
 そのことは完全に否定するのだった。
「私はこれでもだ」
「けれどカガリって」
 ミネバが彼女に言ってきた。
「ちょっと」
「もう少しレディーとしてのたしなみが必要だな」
 ハマーン参戦であった。
「全く。そんなのではだ」
「そうですよね。僕もこれでは先が思いやられて」
 今度は溜息になるユウナであった。
「御婿さんが来てくれるやら」
「えっ、それもう決まってるんじゃないの?」
 ミネバはその話になるときょとんとした顔になって述べた。
「アスランなんじゃ」
「ああ、そうだったそうだった」
 ユウナはミネバのその言葉にすぐに明るさを取り戻した。
「彼がいたんだ。いやあよかったよかった」
「何か凄く嬉しそうだな」
「当然だよ。国家元首に伴侶がいないってお話にならないよ」
 だからだというのであった。
「アスラン君はオーブの救世主だよ」
「あの、俺一言もいいって言ってないですけれど」
 アスラン本人が出て来て言う。
「何でもう決まってるんですか?」
「国家の為には犠牲も必要でね」
「俺は犠牲なんですか」
「尊い犠牲だよ」
 何故か遠い目をしてみせるユウナだった。
「有り難う、君のことは忘れないよ」
「俺生きてますから。っていうかですね」
「うん、っていうか?」
「あの、ユウナさん達が勝手に決めてるんじゃ」
「いえ、ご安心下さい」
「そんなことはありません」
 今度はトダカとキサカが出て来た。
「しっかりとプラントとはお話しています」
「そのことはしっかりしていますので」
「えっ、プラントと!?」
 それを聞いてこれまで以上に驚くアスランだった。
「何時の間にそんなことが」
「いやあ、プラントも話のわかる人がいてくれてね」
「御蔭で我々もです」
「肩の荷がおりました」
 ユウナにトダカとキサカが続く。
「ああ、式を挙げる場所ももう決まっているからね」
「アズラエルさんも出席して下さいますし」
「華やかなものになりますね」
「そうですねえ。いい式になりそうですね」
 そのアズラエルもにこやかに出て来た。
「地球に戻った時が楽しみですよ」
「ですから何時の間にそんな話が」
「だから。君がうんと言うとは思えなかったんでね」
「私達が政治的に話を進めました」
「そういうことです」
 平気な顔で言う三人だった。
「よかったよかった」
「では戦争が終わりましたら」
「オーブはすぐに祝賀ムードですね」
「人の話聞いてないんですね」
 最初から聞くつもりのない三人だった。とにかく話はそれで進めていた。
 しかしそのユウナ達にだ。ロジャーが言うのだった。
「祝福の用意はいいのだがな」
「わかってるよ。まずはだよね」
「その通りだ。何とかして脱出しないとな」
「このままじゃ本当にね」
「終わってしまう」
 ロジャーはドロシーにも応えた。
「我々は今は篭の中の鳥だ」
「そうですね。まだ敵は来ますし」
 キラもそれを言う。
「何とか。生き残りながら脱出しないと」
「脱出の方法は必ずある」
 それはだとだ。ブレラも言う。
「絶望はこの場合はだ」
「何にもならないですね」
「そうだ。前を向かなければだ」
 ブレラはこうキラに話すのだった。
「どうにもならない」
「ええ、それじゃあ」
「まだ食いものはふんだんにあるぞ」
 グン=ジェムは皆にそれを言う。
「人間食えるうちは負けはしないからな」
「そうだね。まだまだこれからだよ」
「戦って戦ってな」
 ミンとガナンである。
「生き抜くんだよ」
「いいな、それで」
「あ、ああ」
「それしかないしな」
 ゴルとジンも言う。
「お、おで絶対に生き残る」
「生き残るからには奴等を倒すだけだな」
 これが彼等の考えだった。
「それしかないからな」
「結局はそうだな」
 アレンもグン=ジェム達のその言葉に頷く。
「生き残らないと脱出だっててきないしな」
「そうだな。しかしあれだな」
 フェイが言う。
「こんな状況にも慣れてきたな」
「毎回ピンチの連続だからなあ」
 ミシェルはそのことをこう話す。
「それじゃあな」
「全くだ。この部隊はこんなことばかりだ」
 クランも彼のその言葉に同意する。
「お陰で息が休まる暇もない」
「それで次はどの部隊が来るんだ?」
 今言ったのはヤザンである。
「俺の予想じゃ仮面の男の方だな」
「あの男がですか」
「次の相手ですか」
「ああ、さっきは女の方だっただろ」
 こうラムサスとダンケルにも話すヤザンだった。
「それじゃあ次はな」
「男の方だと」
「そう仰るのですか」
「あの胡散臭い龍の奴や髭のおっさんは後だな」
「孫光龍ですね」
 クスハがその彼のことを脳裏に浮かべた。
「彼が」
「そういえばあいつの行動もわからないことばかりだな」
「ええ、そうよね」」
 クスハはブリットに対して答えた。
「何か。謎だらけで」
「そもそも何者かすらわからない」
「地球人だというのにバルマーに協力しているし」
「あれは何故だろう」
「あれっ、そういえば」
 ここでふとシンジが言った。
「父さんも言ってたこととバルマーって何か似てるような」
「碇博士だね」
「はい、そうです」
 アキトに対しても述べる。
「冥王計画は人類補完計画が失敗した時の保険でしたね」
「うん。けれど僕もあの人の言っていることはね」
「そうですか」
「よくわからないところがあるね」
 実際にそうだというのだった。
「どうにもね」
「それに」
 シンジはここで難しい顔になって述べた。
「若しかしたらですけれど」
「若しかしたらって?」
「父さん生きているかも知れません」
 こうアキトに話すのだった。
「ひょっとしたら」
「まさか、そんな」
「はい、まさかと思いますけれど」
「そういえば碇司令はあの時」
 アキトもシンジの言葉に続いて言う。
「死んだということになっているけれど」
「死体は見つかっていないんです」
「そしてレイちゃんがいる」
「私はあの時の私と違うから」
 そうではないというのである。
「だからそれは」
「確証は得られないけれどね」
「それでもですね」
「うん、怪しいね」
 こうシンジに話すアキトだった。そんなことも思うのであった。
 そしてそんな話をしているうちにであった。
「敵が来たな」
「ああ」
「また」
 そうなのだった。敵の第三陣が来たのである。
 その指揮官はというと。
「やはりな」
「そうだ、俺だ」
 キャリコがだ。クォヴレーに対して言うのであった。
「俺が貴様を倒す」
「生憎だがそのつもりはない」
「貴様の意志なぞ関係はない」
 キャリコも負けてはいない。こうクォヴレーに返すのだった。
「ここでだ。倒してだ」
「どうするつもりだ」
「俺のこの存在を確かなものにするのだ」
 こう言ってであった。軍を進ませる。こうして戦いがまたはじまった。
「こうあれこれ来るとな」
「疲れるか」
「少しな」
 アポロはこうシリウスに返した。
「そっちはどうなんだよ」
「私はまだ大丈夫だ」
「そうか、タフってやつか?」
「私は第一陣との戦いでは殆ど出撃していなかったからな」
 それでだというのだ。
「だからそれ程はだ」
「そうなのかよ」
「御前も少しは休め」
「そうよ」
 シルヴィアもアポロに言う。
「たまには休まないとね」
「そういうのは俺の性分じゃねえんだよ」
「そんなこと言っていてもだ」
 だがシリウスはその彼にまた言う。
「疲れは蓄積する」
「この戦いまだ先は長いんだから」
「それで休めっていうのかよ」
「いい加減俺にも出撃させろっての」
 ピエールも彼に言ってきた。
「わかったな」
「ちぇっ、じゃあ俺は今回は休憩かよ」
「代わりは俺だ」
「俺も入ろう」
 グレンも出るというのだった。
「アクエリオンは乗り換えができるからな」
「こうした場合は楽だな」
 シリウスは二人にも述べた。
「では私も」
「待って、シリウス」
 その彼には麗花が声をかけてきた。
「次は私が」
「出るのか」
「ええ、出させて」
「わかった、それならだ」
 シリウスも真面目な顔で頷いた。
「私は今回は休ませてもらおう」
「ええ、それじゃあ」
 こうしてだった。彼等はそれぞれ乗り換えながら戦うのだった。皆それぞれ工夫して戦い続ける。そしてクォヴレーはというと。
 ベルグバゥで戦い続ける。しかしキャリコは。
 その彼に対してだ。戦いを優勢に進めるのだった。
「どうした。動きが悪いぞ」
「くっ・・・・・・」
「その機体では最早限界だな」
「いや、まだだ」
 クォヴレーもここで意地を見せようとする。
「まだ俺はだ」
「戦うというのか」
「少なくとも貴様には負けはしない」
 こう言うのであった。
「絶対にだ」
「ふん、それならばだ」
「意地を見せろとでも言うのか」
「そんなことは言うことはない」
 キャリコは仮面の下からクォヴレーを嘲笑して述べた。
「せいぜいあがくのだな」
「言うのはそれか」
「そうだ、あがいて死ね」
 これが彼の言葉だった。
「そして俺を楽しませるのだ」
「貴様がこの俺にこだわる理由」
 クォヴレーは戦いながらキャリコに言う。
「それは何故か」
「何故だというのか」
「俺を倒さなければ貴様自身の自己が成り立たないからだな」
「何っ!?」
「それは貴様自身が言っている」
 彼のその言葉からそれを見抜いているのだった。
「他ならない貴様がな」
「俺はイングラム=プリスケンではない」
 キャリコは言われる前から自分で言った。
「だからこそ貴様を」
「生憎だが俺もだ」
「何だというのだ」
「クォヴレー=ゴードンだ」
 己の名を言ってみせたのだった。
「そういうことだ」
「何が言いたい」
「言ったまでだ」
 多くは言わないのだった。
「それだけだ」
「ふん、強がりか」
「そう思うのは貴様がそう思いたいだけだ」
「何っ?」
「貴様はそう思わなければ生きていられないからそう言うのだ」
「まだ言うか」
「何度でも言う」
 戦いは劣勢だがそれでもだ。彼は負けてはいなかった。
 そしてそのうえでキャリコの攻撃を受ける。それで。
 大きく吹き飛んだ。それを見てだった。
「よし、今だ!」
「来るか」
「遂に貴様を倒す!」
 キャリコのヴァルク=バアルが分身した。そしてだ。
 集中的な攻撃を放つ。それは。
「ヤラー=イリュージョン、受けよ!」
「これで俺を倒すか」
「そうだ、死ね!」
 言いながらだ。キャリコは攻撃を放ち続ける。
「これで俺は自分自身を!」
「俺はまだ」
 だが、だった。クォヴレーはここで言うのだった。
 激しい攻撃を受けて機体は大破した。そして。
 意識が混濁していく。混沌に落ちていく。だがその中で。
「誰だ」
 クォヴレーはその混沌の中で何者かを見ていた。
「誰だ、そこにいるのは」
「俺だ」
 こう返すのだった。
「俺の名前は」
「イングラム=プリスケンだな」
 クォヴレーは自分からその名を言ってみせた。
「そうだな」
「そうだ。わかるか」
「わかる。あの時御前は俺と」
「俺は実体をなくしてしまっていた」
「そうだったな」
「しかしだ。俺のやらなければならないことを果たす為にだ」
「その為に俺と一つになった」
 クォヴレーはこうその男イングラムに言った。
「そうだな」
「その通りだ。御前には悪いことをした」
「いや、いい」
「いいのか」
「あの時の俺は只の人形だった」
 こう彼に述べるのだった。
「しかしあの時からだ」
「クォヴレー=ゴードンになったか」
「そうだ、そして俺は御前でもあるのだな」
「そうなる。俺と御前は同じだ」
「では俺のやるべきことは」
「因果律を守ることだ」
 クォヴレーはその因果律について問うた。
「因果律?」
「簡単に言えばあらゆる世界の秩序を守ることだ」
「それか」
「俺はバルマー戦役では何とか生き残った」
「そうだったのか」
「だが。ガンエデンとの戦いで実体を失いだ」
 そしてだというのだ。
「その意識だけをアストラナガンに残していた」
「そして俺と会ったのだったな」
「アイン=バルシェムだった御前にだ」
 その時の彼にだというのだ。
「そしてその御前と融合してだ」
「そして再び」
「因果律を守る為に意識がここにある」
「俺の中に」
「だからだ。クォヴレー=ゴードンよ」
 その彼に言う。
「御前は俺として。因果律の為に」
「戦えというのか」
「今御前に俺の最後の力を任せる」
「最後の力?」
「アストラナガン。それをだ」
 彼が意識を移していたそれをだというのだ。
「渡す。それで戦うのだ」
「だが俺の機体は今は」
「その機体にアストラナガンの力を移す」
 またクォヴレーに述べたのだった。
「その力で戦え」
「それが俺の運命か」
「受けるか」
 イングラムはクォヴレーにこのことも問うた。
「このことを」
「俺は心のない人形だった」
 クォヴレーはこのことからイングラムに話した。
「しかし今はある」
「そうだ、今言葉を出しているのが何よりの証だ」
「ならば俺は。クォヴレー=ゴードンとして」
 そしてだ。さらに言うのだった。
「イングラム=プリスケンとして」
「戦うのだな」
「そうする。御前のその最後の力も受けよう」
「わかった。それならばだ」
 こうしてだった。遂に。
 ベルグバゥの姿がだ。変わっていく。
 翼が生えだ。悪魔を思わせる姿になっていくのだった。
「な、何だ!?」
「ベルグバゥの姿が変わっていく」
「悪魔か、ありゃ」
「い、いやあれは」
「まさかと思うけれど」
 何人かがだ。気付いたのだった。
「アストラナガン!?」
「姿形は全然違うけれど」
「何か似ている」
「そうだよな、あれは」
「あのマシンが」
 そしてだった。その姿になりだった。
「アストラナガン」
「じゃああいつまさか」
「イングラムだったのか!?」
「ひょっとして」
「おそらくはな」
 ここでだ。クォヴレー自身も言うのだった。
「俺は。イングラム=プリスケンでもあった」
「でもあったって」
「何かそれって」
「どういうことかわからないけれど」
「いや、まさか」
 ここで言ったのはレイだった。
「俺と同じなのか」
「クローン!?」
「まさか、そんな」
「クォヴレーがって」
「いや、そうだ」
 本人がだ。こう言ってきたのだった。
「俺はバルシェムだった」
「じゃあ人造人間だった!?」
「つまりは」
「そういうことかよ」
「そしてだ。俺は地球圏に来た時にイングラム=プリスケンと融合した」
「その精神がだな」
 また言うレイだった。
「それがだな」
「レイはクルーゼのクローンだけれど」
「じゃあクォヴレーはその精神がイングラム少佐と融合してる!?」
「つまりは」
「そうなる」
 まさにそうだというのであった。
「それが俺だ」
「じゃあそのマシンは」
「アストラナガン?」
「形は違っていても」
「そうだ、イングラム=プリスケンの剣」
 クォヴレーはアストラナガンをこう表現した。
「それを俺もまた手にしたのだ」
「じゃあその剣は」
「まさにそのアストラナガン」
「その名前は」
「ディスアストラナガン」
 クォヴレー自身がその名前を言った。
「このマシンの名前だ」
「何か凄いことになってきたな」
 アラドも今は唖然となっている。
「まさかクォヴレーがイングラム少佐とな」
「そうね。けれど」
「けれど?」
「これでクォヴレーが誰なのかはわかったわ」
 ゼオラはアラドにこのことを話すのだった。
「そしてね」
「そして、かよ」
「彼、クォヴレーは信用できるわ」
 そのクォヴレーを見ての言葉だった。
「こうして。自分自身のとても言えないようなことまで私達に話してくれたから」
「だからこそっていうんだな」
「ええ、今の彼は仲間よ」
 はっきりとだ。ゼオラは断言した。
「私達とね」
「そうだな。俺達の仲間だ」
 アラドもだ。ゼオラのその言葉に頷いた。
「イングラム少佐である以上にな」
「ええ、じゃあアラド」
「わかってるさ、ゼオラ」
 二人は息を合わせた。そうしてだった。
 二人はそのままクォヴレーのところに向かう。そのうえで彼に言った。
「おい、クォヴレー!」
「私達も今から」
「好意は受け取っておく」
 クォヴレーは彼等のその言葉を背に受けながら述べた。
「だが」
「だが?」
「だがっていうと?」
「ここは俺にやらせてくれ」
 こう二人に言うのだった。
「ここはだ」
「じゃあそいつはか」
「貴方が一人で」
「そうだ、そうでないとこいつも満足しない」
「その通りだ」
 キャリコ自身もこう答えるのだった。
「俺は。貴様以外と今は戦うつもりはない」
「そうだな。だからこそだ」
「そうか。じゃあな」
「私達も今は」
 二人はクォヴレーのその心を受け取った。そうしてだった。
 クォヴレーの戦いに加わることは止めだ。別の敵に向かうのだった。
「敵が多いってのはな」
「この場合は有り難いわよね」
「ああ、それじゃあな」
「行きましょう、他の相手の前に」
 こうしてだった。二人は今はクォヴレーに任せた。そのクォヴレーは。
 キャリコに対してだ。こう言うのだった。
「貴様と俺は違う」
「それは言うまでもない」
「しかし貴様は俺がいなくては生きられはしない」
 告げるのはこのことだった。
「俺の中にあるオリジナルの貴様がいなくてはだ」
「俺はオリジナルを倒してはじめて俺になれるのだ」
 仮面の中でだ。こう言うのであった。
「だからこそだ」
「だから俺は貴様とは違うのだ」
「だからだと!?」
「俺は貴様がいなくとも生きられる」
 キャリコに対して告げる。
「その通りだ」
「ならばその証拠を見せてみるのだな」
 こう言って斬りつける。しかしそれは。
 ディスアストラナガンの鎌で受け止める。そうしてみせてだった。
「では見せてやろう」
「何っ!?」
「俺のその証拠をだ」
 言いながら一旦キャリコのヴァルク=バアルから間合いを離してだった。
 その胸を開き。そこからだった。
 エネルギーを蓄える。それと共に。
「か、髪が!?」
「クォヴレーの髪が!」
 ロンド=ベルの面々はここでまた驚くことになった。
 白い彼の髪が青くなった。その青こそは。
「イングラム少佐の髪だな」
「ああ、間違いない」
「一度あの髪になったけれど」
「ここでも!?」
「じゃあその力も」
 そしてだ。キャリコも驚きを隠せなかった。
「くっ、オリジナルの力か」
「俺と。イングラムの力だ」
 こう返すクォヴレーだった。そのうえでだ。
「エンゲージ」
 胸にエネルギーがさらに集められていく。
「ディス=レヴよ」
 まずはこう言ってだった。
「その力を解放しろ!;テトラクテュス=グラマトン!」
「!?それは」
「さあ、時の流れを垣間見ろ!」
 キャリコに対して言った。
「アイン=ソフ=オウル!」
 クォヴレーの身体にイングラムの精神が重なった。その表情も。
「貴様、やはり!」
「デッド=エンド=シュート!!」
 そしてその光が一直線に放たれだ。キャリコのヴァルク=バアルを貫いたのだった。
「くっ!」
「これで終わりだな」
 大破したそのヴァルク=バアルを見ての言葉だ。
「貴様もな」
「おのれ、まだだ」
「まだやるというのか」
「くっ、俺はまだ」
 実際にまだクォヴレーに向かおうとする。しかしだった。
 ここでだ。エイスが出て来た。そのうえでだった。
「撤退するのだ」
「しかし、今は」
「最早戦力の七割を失っている」
 気付けばそれだけなのだった。
「だからだ。いいな」
「くっ、止むを得ないということか」
「その通りだ」
「わかった、それではだ」
「戦略目的は達した」
 キャリコの仮面は何時しか割れていた。だがエイスはその素顔を見てもだ。全く動じずそのうえでこう彼に言うのであった。
「だからだ」
「わかった、それではだ」
「撤退するぞ」
「また会おう」
 キャリコはクォヴレーに忌々しげに告げた。
「それではな」
「その次に会った時代にだな」
「貴様を倒す。必ずだ」
 こう告げてだ。彼は自身が率いる軍と共に撤退した。第三陣との戦いもこれで終わった。それで、であった。
 皆クォヴレーに対してだ。口々に声をかけて言うのだった。
「まさかな」
「クォヴレーがイングラム少佐だったなんてな」
「そんなことになってたなんてな」
「これは考えなかったからな」
「俺も今わかった」 
 クォヴレー自身もこう話す。
「そのことがな」
「そしてアストラナガンの力も得た」
「そうなんだな」
「そうだ」
 このことについても答えるクォヴレーだった。
「だが。俺は今は」
「今は?」
「今はっていうと?」
「俺の為すべきことがわかった」 
 こんなことも言うのだった。
「それもだ」
「それもだって」
「それは一体何なんだ?」
「為すべきことって」
「つまりは」
「番人だ。俺はそれだった」
 こう仲間達に話すのだった。
「それがわかった」
「番人!?」
「番人っていうと」
「それって」
「それはまたわかる。だがあの男は倒す」
 キャリコのことである。
「必ず」
「ああ、それは頼んだぜ」
「本当にね」
 アラドとゼオラがその彼の言葉に応えてきた。
「それが御前のやらなくちゃいけないことの一つだろうからな」
「だから自分でね」
「そうさせてもらう」
 クォヴレーは二人に対しても表情を変えずに述べた。
「俺のこの手であの男は」
「あいつもやっぱり」
「イングラム少佐みたいだけれど」
「そうだ、あの男もだ」
 実際にそうだというのだった。
「そうした意味で俺と同じだ」
「やっぱりな。そうなんだな」
「クォヴレーと。だから」
「俺達は同じだ。だが違う」
 ここでだ。クォヴレーはこうも言った。
「俺とあの男は違う」
「その通りだ」
 レーツェルが彼のその言葉を認めてきた。
「君は確かに彼と融合した」
「それでもだな」
「しかし君は君だ」
 こうクォヴレーに話すのだった。
「それは間違いのない事実だ」
「だから俺は」
「君は君の意志で動くことだ」
 これがレーツェルの言うことだった。
「わかったな」
「わかった。それではだ」
「ああ、それじゃあ」
「またこれからもね」
「共に戦わせてもらう」
 クォヴレーからアラドとゼオラに述べた。
「それでいいな」
「ああ、勿論だよ」
「それじゃあね」
 こうしてだった。絆も深める彼等だった。
 そしてそんな話をしたうえでだ。今度はブリットが皆に話した。
「これで第三陣は退けて」
「あと三つ」
「それを倒せばいよいよ」
「あいつよね」
「ハザルね」
「嫌な奴だね」
 今言ったのはアレルヤだった。
「あのハザルという男は」
「何だ?嫌いなのか」
「近親憎悪みたいなのも感じる」
 アレルヤはこう話した。
「あの男には」
「まあそれはな」
「言うとややこしいから」
「自分の中で収めて」
「そうしていった方がね」
 皆そのアレルヤに言っていく。
「いいから」
「その通りだ」
 カミーユがここでアレルヤに言ってきた。
「俺も感じるがな」
「君もなんだ」
「そうだ。ウルベ=イシカワという男に対してもだったし」
 まずは彼だった。
「それに孫光龍にもだ」
「あっ、そういえばカミーユさんとあの人って」
 クスハも言われて気付いた。
「何処か」
「そうよね。似てるのよね」
 メイリンも言ってきた。
「不思議と」
「どうしてなんでしょうか」
「いや、あんた達もでしょ」
 アスカは二人に突っ込みを入れた。
「何かね」
「似てます?私達」
「まあ自覚はしてるけれど」
「そうよ。そっくりさんじゃない」
 こうまで言うのであった。
「違うのは外見だけで」
「ううん、自覚はしていても」
「こうしてお互いで見ると」 
 余計に自覚せざるを得ないのだった。
「そうよね」
「どうしてもね」
「それが敵と味方にいるってことよね」
 アスカはかなり単純に言ってみせた。
「つまりはね」
「そうなるね」
 アレルヤもアスカのその言葉に頷く。
「だから僕はあの男を」
「まあ気にしたら負けだな」
 ロックオンはそのアレルヤをフォローした。
「だからそんなことはな」
「意識せずにだね」
「戦うことだな」
 彼が言うことはアスカ以上に単純にしてみせたものだった。
「だから御前とあの男は違うんだからな」
「それでだね」
「ああ、それでだよ」
 まさにその通りだというのである。
「それじゃあな」
「うん、わかったよ」
「さて、それでだけれど」
 ティエリアが話を進めてきた。
「また次が来るね」
「第四陣か」
「敵の」
「今度は」
「次の指揮官は」
「!?」 
 ここでだ。クスハが何かを感じ取った。そのうえでの言葉だ。
「まさか、次は」
「ああ、間違いない」
 ブリットも言うのだった。
「あいつが来る」
「そうね。あの人が」
「孫光龍が」
「あの人が」
「今度はあいつかよ」
 それを聞いてだ。言ったのはカズマだった。
「嫌な奴が来るな」
「その氏素性も目的もわからない奴がかよ」
「来るってのか」
「今度はあいつが」
「はい、来ます」
 クスハは眉を顰めさせて述べた。
「あの人が」
「そういえばあいつは」
「そうだよな」
「そういえば」
 皆ここで孫についてこう言っていく。
「クスハとブリットに物凄くこだわってるし」
「何か執念めいたっていうか?」
「そんな感じだよな」
「表には出さないけれど」
「妙に」
「いや、それでも」
 ここでだ。言ったのはブリットだった。
「俺達の龍王機や虎王機にはそれ以上に」
「むしろそちら?」
「そっちにあるよな」
「その関心が」
「そういえば」
 皆ブリットの言葉にそれも気付いた。
「じゃあ一体」
「あいつはどうしてクスハ達にこだわるのか」
「それもちょっと気になるよな」
「どうしても」
「とにかく謎の多い奴だな」
 これはキョウスケが出した結論だ。
「それは間違いない」
「あと気になるのは」
 エクセレンは考える顔で述べた。
「彼の顔とか雰囲気ってね」
「何かあるのか」
「中国系のものじゃないのよね」
 こうキョウスケに話すのだった。
「孫っていうと中国人の名前でしょ?」
「ああ、そうだ」
「それで古代中国のマシンに乗っているけれど」
「それでもか」
「中国の趣きは全然感じないのよ」
 このことを指摘するのだった。
「っていうかむしろ」
「ヘブライか」
 キョウスケも言った。
「それか」
「そんな感じしない?何か」
「そういえば」
「あの二人って」
「そうよね」
「そんな感じあるし」
「何処か」
 他の面々もここで気付いた。
「少なくとも金髪だし」
「中国系じゃないよな」
「立ち居振る舞いといい」
「全くかけ離れてるし」
「あれは」
「はい、違います」
 その中国系のリオが言ってきた。
「彼の物腰は明らかに中国のものではありません」
「ええと、じゃあやっぱりヘブライ?」
「そっち?」
「つまりは」
「あの人って」
「何者なんだ、一体」
 孫についてかなりの疑念が出ていた。そしてだ。
 その孫はだ。電気鞭でキャリコとスペクトラを撃つハザルを見ながらだ。こう言うのだった。
「随分と厳しいねえ」
「役立たず共に容赦はしない」
 ハザルは二人を鞭で打ちながらこう返す。
「これは当然のことだ」
「人造人間だからじゃないのかい?」
「ふん、バルシェム達はだ」
 その彼等についてだ。忌々しげに言うのだった。
「所詮は人形だ」
「意識を持たないっていうんだね」
「そうだ、所詮はそうだ」
 こう言うハザルだった。
「俺の手駒に過ぎん」
「じゃあその手駒には、だね」
「使えなければ消す」
 ハザルは冷酷に言い切った。
「それだけだ」
「成程ね」
「だがもういい」
 ハザルはここで手を止めた。
「これ位にしておこう」
「そうだね。人形といえど」
 孫はハザルを見ながら言う。
「大切にしないとね」
「孫、貴様もだ」
「僕もっていうと?」
「若し手を抜けばだ」
 その時はというのだ。
「同じだぞ」
「おやおや、特例はないのか」
「俺の前にはそれはない」
 こう言ってそれを否定するハザルだった。
「このハザル=ゴッツォにはな」
「宰相の息子としてだね」
「そしてこの方面軍の司令官だ」
 こうも言うのであった。
「その俺の前にはだ」
「わかったよ。それじゃあね」
「第四陣は御前だ」
 ハザルはまた孫に告げた。
「すぐに出撃しろ」
「わかってるさ。それじゃあ」
「御前達はだ」
 鞭打ったキャリコとスペクトラにも言う。
「残してある予備戦力を全て呼び寄せよ」
「ここにですか」
「この次元に」
「そうだ。そのうえで俺の軍と合流させる」
 こうも話した。
「わかったな、今すぐにだ」
「はっ、それでは」
「今より」
 二人も応える。そうするしかなかった。そのうえでだった。
「呼び寄せて参ります」
「それでは」
「今は許してやる」
 ハザルは二人にも傲慢な態度を見せる。
「しかしだ。次はないぞ」
「・・・・・・承知しております」
「それは」
「ならばだ」
 ハザルはあらためて二人に告げる。
「すぐに予備戦力を集めだ」
「そのうえで次の戦いの用意を進めます」
「今より」
「奴等はどちらにしろ終わりだ」
 今度はロンド=ベルについて述べた。
「篭の中の鳥だ」
「それはその通りだね」
 また横から孫が言ってきた。
「何時でも殺せるね」
「その通りだ。楽しませてもらおう」
「それじゃあ僕が今からね」
「そうだ、行け」
「僕は僕でやることがあるし」
 飄々とした言葉であった。
「だからね」
「やることか」
「そうだよ。僕にもあるんだよ」 
 笑顔も飄々としている。しかしだ。
 一瞬だけ顔に凄みのある笑みを浮かべた。ハザル達が気付かないにしてもだ。
「何かとね」
「ふん、ならばそれをするのだな」
「そうさせてもらうよ」
 飄々とした仮面に戻った。
「ではね」
「さて、第四陣の次はだ」
「次は」
「第五陣はバラン=ドバンだ」
 彼だとだ。エイスに答えるのだった。
「あの男だ」
「既に彼は」
「出陣の準備に入っているか」
 エイスに応えながら述べた。
「伊達に武人を気取っている訳ではないな」
「では」
「奴にも好きにさせる」
 こう言うのであった。
「精々武人を気取るのだな」
「そうさせると」
「武人なぞ何になる」
 そうした存在にもだ。ハザルは侮蔑を向けるのだった。
「戦いは勝てばいいのだ。何をしてもな」
「手段は選ばない」
「そうだ、武だのそんなものにこだわるつもりはない」
 傲慢な笑みと共に言う。
「下らぬことだ」
 こう言ってだった。バランも嘲笑するハザルだった。彼は何処までもハザル=ゴッツォだった。それだけは確かなことであった。


第九十二話   完


                        2011・1・23
     
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