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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第四十八話 崩れ落ちる邪悪の塔

       第四十八話 崩れ落ちる邪悪の塔
 ロンド=ベルはハイネル、リヒテルと共にボアザンに向かう。その途中はだ。
「迎撃はないな」
「そうね」
「一度も」
 それは全くなかったのである。そしてだ。
 ここでもだ。彼等を迎える者達がいた。
「来たぞ!」
「ロンド=ベルだ!」
「遂に来たぞ!」
 ボアザンの市民達だった。軍もいた。
「それでは我等も!」
「ああ、行こう。祖国の為に!」
「ボアザンの為に!」
「立ったか」
 ハイネルがその彼等を見て言った。
「ボアザンの者達もまた」
「キャンベル星と同じだな」
 剛博士がそれを見て言った。
「ここでもまた」
「ええ、そうね」
 妻が夫のその言葉に頷いた。
「皆が立ち上がったのね」
「自分の手で掴み取らなければ何にもなりはしない」
 博士はまた話した。
「そう、自由も全ても」
「俺達はその力添えでしかないんだな」
 それはよくわかっている健一だった。
「この人達の。立ち上がった人達の」
「そういうことだ。よいか健一」
 ハイネルが弟に告げる。
「ズ=ザンバジルを見よ」
「あの皇帝を」
「それでわかる筈だ」
 彼はゴードルの中から話していた。
「真とは何かをな」
「真が」
「逆の意味でだ。それを見ることになるだろう」
 こう話すのだった。
「わかったな。それではだ」
「よし、じゃあ見せてもらう」
 健一も兄のその言葉に返す。
「その真を」
「女帝ジャネラも醜かったけれど」
 ふと言ったのはちずるだった。
「あの皇帝もなのね」
「そうね。それは間違いないと思うわ」
 めぐみは彼女のその言葉に頷いた。
「あの皇帝も同じでしょうから」
「その通りだ。その醜さも見ることだ」
 その通りだと返すハイネルだった。
「余は既に覚悟はできている」
「へっ、もうその醜さには慣れてるぜ」
 豹馬は少し虚勢を張っていた。
「もうな。覚悟して行くぜ」
「そうだな。この戦いは醜さを見る為の戦いでもあるんだ」
 一矢も覚悟している顔だった。
「人間の」
「そうだったな。人間だな」
 今のはリヒテルの言葉だ。
「我々は同じ人間だったな」
「生物学的にもそうなっている」
 ヴィレッタがこのことについて話した。
「確かに角や翼があってもだ」
「それでもだな」
「そうだ。同じ人間から進化している」
 そうだというのである。
「そうした意味でだ。宇宙にいる人間は同じなのだ」
「それがわかっていない奴もいる」
「そういうことだな」
 一矢と健一が話した。
「ボアザンでもまたそれは同じだな」
「そうした人間が醜さを晒すんだな」
「あっ、そういえばですけれど」
 ラトゥーニが言ってきた。
「ハザル=ゴッツォも」
「ああ、あいつか」
「あいつもそういえば」
「選民思想の塊だよな」
「そうよね」
 皆このことに気付いた。
「バルマー十二支族の人間だからって」
「それで自分以外を徹底的に見下して」
「嫌な奴だよな」
「全く」
 こう口々に話す。そしてであった。
 その中でだ。ふと話したのはアレルヤだった。
「あいつは大嫌いだ」
「そうなのか」
「うん、生理的に受け入れない」
 こうティエリアにも話す。
「声が似ていることもあって」
「また声になるのね」
 今困った顔をしたのはスメラギだった。
「ううん、どう思うテッサちゃん」
「そうですね。羨ましいです」
 テッサもこう言うことだった。
「私達にとっては」
「そうよね。私達にとっては」
「二人でいても」
「いや、スメラギさんとテッサの二人もな」
 ロックオンが突っ込みを入れた。
「何か感じるよな」
「ああ、そうだよな」
 サブロウタがロックオンのその言葉に同意する。
「あれだろ。別の世界でな」
「そうだよ。俺とサブロウタの旦那とかラッセさんとかな。クルツさんとかな」
「ここにはいないけれどリュウセイもな」
 サブロウタはその名前も出した。
「無茶苦茶そういうのあるしな」
「御苦労、感謝するって言葉もだな」 
 ロックオンはこんな言葉も出した。
「これは別の世界での話か」
「そうだな。この言葉も好きだしな」
「何か強烈にわかる言葉だな」
 ヤザンが二人の今の言葉に突っ込みを入れた。
「俺も何か鬼だった奴と組んでたしな」
「あいつやっぱり鬼になれたのか」
「そりゃよかったな」
 ロックオンとサブロウタはそのことを素直に喜んでいた。
「鬼になりたかったからな」
「運動音痴だったからな」
「ああ、本当によかったぜ」
 ヤザンはそのことを心から喜んでいた。
「俺と組んでる時とはまた別の記憶だけれどな」
「そうだったわね。私も彼は知ってるわ」
 今度はセシリーが出て来た。
「もやしとかもんの話でね」
「確かそっちにも関係者出てなかったかな」
 今言ったのはマサトである。
「ええと、白鳥の」
「おい、あいつかよ」
 その名前を聞いて言ったのはオルガだった。
「俺あいつと因縁があったんだよ」
「ああ、あれだね」
「鏡の世界」
 クロトとシャニが述べた。
「そっちだよね」
「御前の知ってる世界は」
「あそこでよ。俺は弁護士でよ」
「こいつが弁護士かよ!」
 それに驚いたのは全員だった。
「一体どんな世界なんだ!?」
「無法世界かよ」
「冗談抜きでそんなのだったな」
 オルガもこのことは認めた。
「もうな、野獣みたいなキングコブラがいたりよ。どう見たっていかれてる虎がいたりよ」
「うわ、かなり嫌そうな世界」
「確かに」
 皆それを聞いて言った。
「そのキングコブラって絶対に会いたくなさそうな奴みたいだし」
「虎よ」
「おうよ、白鳥もな」
 その白鳥の話だった。
「俺をやたら敵視していてよ。大変だったんだよ」
「そりゃ日頃の行いのせいじゃないのか?」
 今突っ込んだのはエイジだった。
「御前そっちの世界でもガン使ってただろ」
「ああ」
「俺も何かそっちの世界じゃガン使ってたんだよ」
 こう話すのだった。
「だからわかるんだけれどな」
「その縁でかよ」
「御前かなりとんでもないことやってただろ」
「好きな言葉は濡れ手に粟だった」
 とんでもない言葉であった。実際にだ。
「だからな」
「それじゃあ恨み買って当たり前だよ」
「そうなるのかよ」
「そうだよ。しかしあっちの世界ってよ」
「色々あるからな」
 ブリットが応えた。
「俺もな。少しな」
「わかるよな」
「ああ、わかる」
 こうエイジに答えるブリットだった。
「面白い世界だがな」
「蝙蝠だったか。御前の相棒は」
「半分か。吸血鬼だった」
 ブリットはエイジだけでなく皆にも話した。
「そうだったな」
「それであれだったわよね」
「もう一人凄い人がいて」
「753だったっけ」
 この数字が出て来た。
「かなり奇想天外な人だったらしいけれど」
「その人は?」
「いや、無茶苦茶な人だったな」
 実際にこう言うブリットだった。
「もう何もかもが壮絶だったよ」
「その人死ななかったんだよな、確か」
「死にそうだったのね」
「ああ、結局最後まで生き残ったよ」 
 ブリットはその人についても話した。
「最初死ぬかなって思ったんだけれどな」
「ううん、しぶといなあ」
「あの人は特にそうだったし」
「ブリット君は死なないと思っていたけれど」
「俺が死んだらあいつが変身できないからな」
 ブリットは笑いながら話した。
「それはやっぱりな」
「そっちの世界もそっちで色々あるからな」
「だよな」
「こっちも世界もあるけれど」 
 ここで話が戻った。
「声が似てるとそれだけで」
「私何か最近というか前からですけれど」
 今度はユリカだった。
「ええと、ナタルさんとフレイちゃんとステラちゃんと。他にはフィルちゃんに後は」
「待て、何人いるんだ?」
 ナタルが突っ込みを入れた。
「私も前から気になっていたが」
「あんた達声似てる人多過ぎよ」
 二人に突っ込みを入れたのはミサトだった。
「次から次に増えてるじゃない」
「それとユングもね」
 メイシスも言う。
「私は一人なのね」
「それは私のことね」
 出て来たのはリツコだった。
「メイシスに会って驚いたけれどね」
「そうね。私達仲よくなれたのはね」
「似ているからね」
 二人で言い合うそのメイシスとリツコだった。
「まさかそうした人がいるなんて思わなかったから」
「そうよね」
「しかし。本当に多いよな」
 アキトはユリカを見ながら呟いた。
「ユリカに似てる人ってな」
「一番数多いんじゃないのか?」
「そうかもな」
 ダイゴウジがサブロウタの言葉に答える。
「俺達もだがな」
「まあそうだけれどな」
「ううん、私どういうわけかエマさんはわかるとして」
「私ですよね」
 リィナがハルカの言葉に応えていた。
「それって」
「そうよ。私達似てるわよね」
「そう思います」
 実際にそうだと返すリィナだった。
「それでなんですけれど」
「それで?」
「今度エマさんも交えて何か作らない?」
「お料理ですか」
「ええ。何か作りましょう」
 こうリィナに提案するのだった。
「それでどうかしら」
「そうですね。それじゃあ」
 こんな話をするのだった。そしてである。彼等は宮殿に向かうのだった。
 その宮殿ではだ。卑しい外見の男が喚いていた。
「何故だ!」
「何故かとは」
「一体?」
「何があったのですか?」
「何故軍がこれだけしかいないのだ!」
 男はこう周りに喚いていた。
「何故だ、これだけしかいないのか!」
「陛下、残念ですが」
「これだけです」
「集まったのはです」
 こう周りの者達が述べる。
「その他の者は皆反乱軍に加わりました」
「それで一万程度しか」
「その他は全て」
「何をやっておるか!」
 皇帝ズ=ザンバジルは遂に激昂した。
「皇帝たるわしの危機にだ!これだけだというのか!」
「陛下、大変です!」
 ここで家臣の一人が駆け込んできた。
「敵が」
「叛徒共か!皆殺しにせよ!」
「いえ、違います」
 そうではないと。その家臣は述べた。
「それだけではなくです」
「まさか、それは」
「はい、ロンド=ベルです」
 この名前が出された。
「あの者達が来ました!」
「おのれ、ならばだ!」
 皇帝はそれを聞いてすぐにまた怒鳴った。
「軍はいるな」
「はい、一万ですが」
「それだけがいます」
 臣下の者達が答える。
「ではその一万で」
「奴等を迎え撃つのですか」
「そうだ、そしてその間にだ」
 まだ言う皇帝だった。
「わしは逃げるぞ」
「えっ!?」
「陛下、今何と」
「何と仰いましたか?」
 今の彼の言葉にはだ。周りの者も唖然となった。
「陛下はボアザンの皇帝ですが」
「その陛下がボアザンを離れられるのですか」
「しかも今ですが」
「何と仰いましたか?」
 唖然とした顔のままで皇帝に問い返した。
「逃げられるとは」
「まさかとは思いますが」
「我等の聞き間違いでは」
「聞こえなかったのか、逃げるのだ」
 だが皇帝はまた言うのだった。
「そしてそこで再起を図るのだ」
「は、はあ」
「左様ですか」
「そうなのですか」
 最早完全に呆れ返ってしまった。どうにもならなかった。
 皇帝は実際に逃げた。部屋から去る。臣下の者達は最早何を言っていいのかわからなかった。
 その一万の軍がロンド=ベルに向かう。しかしであった。
 ハイネルが前に出た。そうしてだった。
「ボアザンの者達よ!」
「プリンス=ハイネル!?」
「まさか。ここまで来たのか」
「ボアザンに戻ってきたのか」
 その一万の兵が彼の姿を見て言った。
「そして何故ここに」
「我等の前に出て来た」
「何のつもりだ」
「知れたこと、汝等は何の為に戦う」
 こう彼等に問うのだった。
「それは何故だ」
「何故というと」
「ボアザンの為だ」
「違うというのか」
「そうだな、ボアザンの為だ」
 ハイネルもその言葉には頷いた。
「しかしだ」
「しかしだと」
「どうだというのだ」
「何が言いたい」
「皇帝ズ=ザンバジルは何だ!」
 彼のことを言うのだった。
「あの男は何だ!」
「皇帝ではないのか」
「そうだ、それ以外の何でもない」
「今更何を言うのだ」
「そもそも御前は逆賊ではないのか」
「いや、逆賊はズ=ザンバジルだ」
 また言い返すハイネルだった。
「あの男こそがだ。ボアザンに対する逆賊だ!」
「何っ、陛下が賊だと!?」
「それはどういう戯言だ!」
「正気なのか!」
「あの男は今まで何をしてきた!」
 言いながらだった。ゴードルの右手にある剣で前を指し示した。そこには宮殿があり異様なまでに高く聳え立つ黄金の塔があった。
「その塔は何だ!」
「何を言うか、ボアザンの誇りだ」
「ボアザンの塔だ」
「陛下が築かれたな」
「それはあの男が己の為に建てさせたものだ」
 塔を指し示しながらまた言うのだった。
「多くの民の血と汗と命を搾り取ってだ」
「それだというのか」
「あの塔が」
「そうだ、あの男は己のことしか考えておらぬ」
 そしてだ。こうも告げた。
「何故今この戦場に姿を現わさぬ!」
「!!」
「それは」
「そうだな。あの男は逃げた!」
 ボアザンの兵達に話す。
「そなた等を見捨ててだ。己だけが逃げたのだ!」
「まさか、そんな筈がない」
「陛下が国を見捨てるなぞ」
「有り得ないことだ」
 兵達はハイネルの言葉を信じようとしなかった。しかしだった。
 ここでだ。宮殿の中から臣下の者達が言う声が聞こえてきた。
「陛下、お一人だけ逃げられるとはどういうことですか!」
「一体何処に行かれるのですか!?」
「港も既に占領されております!」
「それではとても」
 この言葉こそが何よりも証だった。
 兵達もそれを聞いてだ。遂にわかった。
「俺達は。それでは」
「今まで何もわかっていなかったのか」
「ボアザンの真の敵は」
「やはり」
「これでわかったな」
 ハイネルはしかとした声で再び兵士達に告げた。
「ボアザンの真の敵が」
「はい。これで」
「それでは我々もまた」
「ボアザンの為に」
「では武器を捨てよ」
 ハイネルの今の声は穏やかなものだった。
「わかったな」
「・・・・・・わかりました」
「では。ボアザンの為に」
 こうしてだった。一万の兵も投降した。戦いはこれで終わった。
 かに見えた。だがここで無数の円盤がロンド=ベルの周りを囲んできた。
「伏兵か!?」
「まさか」
「案ずることはない」
 ハイネルはロンド=ベルの面々にも落ち着いた声で返した。
「無人機ばかりだ」
「無人なのか」
「そうなのね」
「すぐに倒せる。それよりもだ」
 ハイネルは視線を前にやった。そしてだった。
 塔に向かいだ。剣を一閃させた。それで塔は真っ二つになり崩れ落ちたのだった。
 無人の円盤達も一瞬で全て撃墜された。そしてだった。
 宮殿にだ。あの男が出て来た。身体に財宝をこれでもかと巻いている。
「ええい、何故誰も来ぬのだ!わしの危機に!」
「叔父上・・・・・・」
 ハイネルはその皇帝を見て流麗な顔を歪ませた。
「何をしておられるか」
「最早何も終わりじゃ!こうなったらどうとでもなれ!」
「それがボアザンの皇帝の姿か!」
 ハイネルは思わず叔父を叱り飛ばしてしまった。
「最期は皇帝らしく誇りを守られよ!」
「貴様、ハイネルか!」
 皇帝は彼の姿を見て言った。
「そうじゃ、貴様じゃ!貴様がボアザンを滅ぼしたのじゃ!」
「そう思われるのか」
「全ては貴様のせいだ!皆の者、ハイネルこそが全ての元凶ぞ!」
 皇帝の今の言葉を聞いてだ。流石に誰もが呆れた。
「あれが皇帝か?」
「どうだっていうんだ?」
「あれは」
「どうにもならないわね」
 呆れているのはロンド=ベルの面々だけではなかった。
 ボアザンの民も捕らえられている貴族達も投降した兵達も解放軍達もだ。誰もが呆れ果てていた。
 そしてだ。ハイネルもだった。
「ボアザンはこれまでこの様な蛆虫に蝕まれていたのか」
 苦々しげに歯噛みするとだった。ゴードルを出てだ。剣を投げた。
「うっ・・・・・・」
 剣は皇帝の喉を貫いた。これで終わりだった。
「せめて苦しまぬように死ぬのだ」
 ハイネルは皇帝だった男を見下ろして告げた。
 そしてだ。前に向き直りこの場にいる全ての者にだ。また剣を振るった。
「なっ!?」
「角を」
「右の角を切った!?」
「何故だ」
「皆の者、聞け!」
 ハイネルがまた告げてきた。
「これよりボアザンは貴族制を廃止する」
「貴族制を」
「だから角を」
「しかし」
 だが中にはだ。それでも疑問を口にする者がいた。
「何故右の角だけを切った?」
「左は残して」
「それは何故だ」
「正しきボアザン貴族の心」
 だがハイネルは言うのだった。
「それは忘れてはならん」
「正しきボアザン貴族主義の心」
「それをだというのか」
「そうだ!」
 まさにそうだというのだった。
「それを忘れない為にも。余波は左の角は置く!」
「そうか」
 健一もここで全てがわかった。
「兄さんはその為に左の角を」
「ハイネル、それでだな」
 剛博士も言った。
「だから御前は右の角だけを」
「誓おう、余はこのボアザンを正しく導く!」
 ハイネルの言葉は続く。
「階級を廃し誇りを忘れずにだ。導こう!」
「ハイネル様!」
「それでは!」
 その言葉を聞いてだ。ボアザンの者達も喜びの声をあげる。
「今こそ我等の真の主に!」
「その御心と共に!」
「そうだ、来るのだ!」
 ハイネルも彼等のその言葉に応える。
「正しきボアザンの為に!」
「ボアザン万歳!」
「ハイネル様万歳!」
 ボアザンの者達は次々に讃える言葉を口にした。
 こうしてボアザンでも戦いは終わった。ハイネルはボアザンの新しい皇帝となりこの星を導くことが決まった。そうしてであった。
「それではな、健一よ」
「ああ、兄さん」
 当然ハイネルはボアザンに残った。そうしてだった。
 ロンド=ベルの者達はまた旅に出ることになった。必然的に別れることになった。 
 だがその別れの場ではだ。誰もが明るい顔のままであった。
「また会おう」
「健闘を祈る」
 両者は互いに微笑み合いながら話をしていた。
「次にボアザンに来る時はだ」
「楽しみにしているよ」
 健一はこう兄に告げた。
「正しい姿に生まれ変わったこの星を見ることを」
「そうしてもらいたい。ではリヒテルよ」
「うむ」
 ハイネルは今度は盟友に顔を向けた。相手もそれに応える。
「余もこれで一旦火星に戻る」
「そうするのだな」
「そしてだ」
 さらに言うリヒテルだった。
「バームの者達をだ」
「導くのだな」
「それが余の役目だからな。また会おう」
「そうだな。我等は長い間道を誤っていた」
「だがそれも終わった」
 二人は互いに話していく。
「これからはだ。それぞれの民達と共に生きよう」
「そうしよう。互いにな」
「ではさらばだ」
 ハイネルの方から言った。
「また会おう」
「うむ、その時を楽しみにしている」
 こう言葉を交えさせてだった。両者は別れた。リヒテルも火星に向かった。こうしてロンド=ベルは再び旅に出るのであった。
「さて、キャンベル星もボアザン星も解放された」
「それじゃあ後は」
「ソール遊星かな、いよいよ」
「遂に」
 皆それぞれ話す。しかしだった。
 ここでだ。レオンが一同に言ってきた。
「それでだが」
「はい」
「何かあったんですか?」
「君達に頼みがあるのだが」
 こう言うのであった。
「またバジュラが何時来るかわからないな」
「あっ、そうですね」
「あいつ等のことがあったんだ」
「まだかなりいたよな」
「というか連中のこと全然わかってないし」
 皆このことも思い出した。
「あの連中のことですか」
「どうするかですね」
「それについてだ」
 また言ってきたレオンだった。
「君達に頼みがある」
「そうなのだ」
 ここで美知島も出て来た。
「是非君達の力が必要なのだ」
「是非って」
「そこまでなんですか」
「一体何をされるんですか?」
 こう疑念も持つのだった。
「私達全員ですよね」
「そこまでって」
「バジュラの殲滅ですか?」
「言うならばそうだ」
 まさにそうだと返す美知島だった。
「これからの我々の為にもだ」
「僕達の為ですか」
 応えたのは慎悟だった。
「それだからこそ」
「そうだ、君達の為でもある」
 レオンは慎悟の言葉にも応えた。
「結果としてそうなる」
「そうなんですね。それじゃあ」
 華都美もここで頷いた。
「私達も是非」
「そうしてくれるか。それではだ」
「はい、一体」
「何をされるんですか?」
「実はヒントを見たのだ」
 また言うレオンだった。
「リン=ミンメイ、そしてファイアーボンバーの諸君からだ」
「何だ?俺達かよ」
 それを聞いて声をあげたのはバサラだった。
「俺達の歌にかよ」
「かつて歌によって戦いを終わらせてきた」
「俺は戦い嫌いだしな」 
 バサラもレオンの言葉に応えて言う。
「だから歌うんだよ」
「バジュラにも同じだ」
「バジュラにも?」
「そうだ。歌で彼等を攻める」
 そうするというのである。
「それがこれからのバジュラへの作戦だ」
「倒すとかより歌で奴等との戦いが終わるんならな」
 バサラはいぶかしみながらもレオンの言葉を聞いていた。
「ただな」
「ただ、か」
「俺はバジュラを倒すことには反対だぜ」
「それはわかっている」
「わかってるっていうのかよ」
「だから君達ファイアーボンバーにはやってもらうことはない」
 それはないというのだった。
「別の歌手がすることになるだろう」
「別の歌手?」
「それって一体」
「誰?」
 皆そのことについても考えだした。
「それが問題だけれど」
「ええと、ファイアーボンバーじゃない」
「じゃあ一体」
「誰?」
「それじゃあ」
「既にそれは決めている」
 また言うレオンだった。
「こちらでだ」
「っていうと」
「ええと、フロンティアの人かな」
「そうなるかな」
 皆大体察したのだった。
「ってことはシェリルさん?」
「そうよね」
「多分だけれど」
「いや、彼女ではない」
 だがレオンはそれは否定した。
「シェリル=ノームではない」
「えっ、シェリルさんじゃないんですか」
「そうなんですか」
 皆それを聞いて今度は驚いた顔になった。
「それじゃあ誰なんですか?」
「シェリルさんじゃないとすると」
「一体誰が」
「誰が歌うんですか?」
「そうか」
 だがアルトだけはだ。ここでわかったのだった。
「あいつだな」
「君はわかったようだな」
「ああ、わかったぜ」
 実際にそうだとレオンに返しもした。
「ランカだな」
「そう、ランカ=リーだ」 
 レオンもまた彼女の名前を出した。
「彼女に歌ってもらうのだ」
「ランカちゃんがって」
「また急に」
「そうよね。確かに最近人気急上昇だけれど」
「何でシェリルさんじゃなくて」
「細かいことはまた後で話す」
 少なくとも今ではないという美知島だった。
「とにかくだ。それでだ」
「はい、ランカちゃんが歌う間」
「バジュラから彼女を守るんですね」
「そういうことですね」
「その通りだ。頼むぞ」
 また言う美知島だった。
「それでだ」
「直接の護衛はオニクスが務める」
「えっ!?」
 それを聞いて声をあげたのは卯兎美だった。
「またあれを動かすんですか」
「そうだ。この際は仕方がない」
 美知島はその卯兎美に答えた。
「だから真人君と神名君にはまた活動してもらう」
「けれどそれは」
「ええ」
 卯兎美だけでなく華都美も暗い顔になった。
「あの二人にとっては」
「今は」
「大丈夫だ、悪いようにはならない」
 レオンはその二人にも話した。
「治療やアフターケアの態勢も万全だ」
「だからなんですか」
「それで」
「そうだ、我々としてもその辺りは考えている」
 レオンはここで笑ってみせた。だが目は笑ってはいない。
「安心して欲しい」
「・・・・・・だといいんだがな」
 ここで言ったのはバサラだった。
「まああんたを信じさせてもらっていいんだな」
「是非そうしてもらいたい」
 レオンはバサラにこう返しもした。
「そうしてくれるか」
「ああ、わかったぜ」
 また頷くバサラだった。
「それじゃあな。協力させてもらうぜ」
「フロンティアの為だ」
 今度は真剣そのものの言葉だった。
「諸君、頼んだぞ」
「バジュラだろうが何だろうがな!」
 バサラがまた言う。
「俺の歌で戦いを終わらせてやるぜ!」
「あんたって本当に何時でもそうなのね」
 ミレーヌはここでもバサラに対して告げた。
「相手が誰でも」
「耳さえあればな、いや」
「いや?」
「何もなくても俺の歌は届くんだよ!」
 そうだというのである。
「俺の歌はな!耳がなくても聴かせてやるぜ!」
「無茶を言うわね」
「全くだな」
 ミレーヌだけでなくレイも呆れていた。
「そこでそんなこと言うなんてね」
「御前だけだぞ」
「俺はありきたりの方法じゃ止められねえぜ!」
 相変わらず人の話を聞かない。
 だがここでだ。ふとこうも言ったのである。
「しかしな」
「どうしたのよ」
「レオンさんだったな」
 そのレオンのことを言うのである。
「あの人妙だな」
「妙って何が?」
「何か考えてねえか?」
 こう言うのだった。
「妙にな」
「妙にねって?」
「だから。ただバジュラを何かしようっていうんじゃねえんじゃねえのか?」
 こう読んだのである。
「そんな気がするんだけれどな」
「そうなの?」
「何かそう思うんだよ」
 またミレーヌに話す。
「俺の気のせいか?」
「ううん、どうなのかしら」
 ミレーヌもバサラの言葉に首を捻った。
「それは。ただ考えてるのは間違いないでしょうけれど」
「それはってんだな」
「だって責任ある立場じゃない」
「まあそれはな」
「だからよ。他にも色々と考えてるんじゃないの?」
「だといいんだがな」
 こんな話をしてだった。バサラは今のレオンに首を傾げさせていた。そのうえで今度はだ。バジュラに対して再び戦うことになったのだ。


第四十八話   完


                    2010・8・14        
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