スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第二十三話 解放
第二十三話 解放
ロンド=ベルはさらに進む。その中でだ。
「とりあえず中銀河方面軍については」
「何かわかった?」
「マーグさん、ロゼさん、知ってますか?」
二人に尋ねるのだった。
「どういう相手ですか?」
「メインの戦力は」
「ギシン家の兵器が主になっている」
まずはこう話したマーグだった。
「ギシン家のだ」
「っていうとロゼさんのゼーロンみたいなの?」
「そういう感じですか?」
「はい、そうです」
その通りだと答えるロゼだった。
「その通りです」
「じゃあ精神攻撃とか来るかな」
「そうよね」
「もう充分に」
「それで数は?」
次はその数も問われた。やはり戦いは数である。
「数はどうなんですか?」
「どんな感じですか?」
「ギシン家の兵器の数は多くはない」
マーグはそれはないという。
「しかしその他の兵器はだ」
「多量にあるんですね」
「例によって」
「そうだ、それは注意してくれ」
それを言うマーグだった。
「数は健在だ」
「何かバルマーも数で来るよな」
「というかそういう国よね」
「質より量って感じで来るからね」
「毎回毎回」
「だからそれには気をつけてくれ」
マーグの話は続く。
「数で来られるのは他のバルマー軍と同じだ」
「わかりました、それなら」
「これまで通りの戦いになりますね」
「対応も」
「それで敵は何処にいます?」
「これから二日行った場所にもう展開しているわ」
マリューが皆に告げる。
「惑星の前にね」
「そこはどういう星ですか?」
「どういった場所ですか?」
「この惑星ですか」
ロゼがマリューの指し示したその星を見て言ってきた。
「ここは」
「あれっ、どうしたんですかロゼさん」
「何かあったんですか?」
「私の生まれ故郷です」
そこだというのであった。
「まさかこの星で」
「ってロゼさんの生まれ故郷って」
「そこだったんですか」
「はい」
まさにそこだと答えるロゼだった。
「そうですか。今度はこの星での戦いになるのですね」
「ロゼさん、それなら」
「行きましょう」
「ロゼさんの故郷の解放です」
皆こうロゼに話す。
そしてロゼもだ。それに応えて言ってきた。
「そうですね。では私も」
「行こう、ロゼ」
マーグもロゼに注げてきた。
「ギシン家との戦いになるが」
「そのズールとの」
「ズールですか」
ズールと聞いてだった。皆またマーグに対して問うた。
「それでどういう相手なんですか?ズールっていうのは」
「ギシン家の人らしいですけれど」
「それでもマーグさんが御存知ないって」
「訳がわからないですし」
「私も知りたいが中々情報が入らない」
マーグも困っていたのだ。
「どういった者なのかな」
「それがわからないとなると」
「少し対応に困りますね」
「指揮官がわからないのなら」
「とりあえずは威力偵察の意味もあるかな」
ノイマンはかなり過激なことを言った。
「今は」
「威力偵察ですか」
「それもなんですね」
「まずは敵を知る」
ノイマンはまた言った。
「それを知る為の戦いだ」
「わかりました」
「じゃあその為にも」
「派手にやってやるか!」
こんなことを言って戦いに挑む彼等だった。すぐに殴り込みに近い形で攻め込む。かなり強引な威力偵察ともなったのであった。
その軍を率いているのは青い肌のいかつい大男だった。
「ロンド=ベルが来たか」
「はい」
「間違いありません」
部下達がその大男に対して告げる。見ればかなり独特のシルエットのマシンばかりである。
「それでゴッチ閣下」
「ここはどうされますか?」
「決まっている」
ゴッチと呼ばれた大男はすぐに答えた。
「戦う。それだけだ」
「はい、それでは」
「すぐにですね」
「全軍戦闘用意だ」
まずはこう述べたのだった。
「そしてだ」
「援軍ですか」
「それを呼びますか」
「そうだな」
意外と冷静なゴッチだった。
「それではワール司令に援軍の要請をせよ」
「そしてこの惑星からも」
「兵を呼びますか」
「そしてだ」
「はい、そして」
「どうされますか?」
「ジュデッカ=ゴッツォ達も呼べ」
彼等もだというのだ。
「あの七個艦隊もだ」
「あの方々もですか」
「御呼びするのですね」
「そうだ、誰でもよい」
誰かまではいいというのだ。
「来ればな。それでよい」
「ではあの方々も」
「すぐに御呼びしましょう」
方針がこれで決定した。そうしてだった。
自分達の惑星に来るロンド=ベルを迎え撃つ。彼等から見たロンド=ベルは正面から急襲してくる。その勢いはかなりのものだった。
「何だ、あの軍は」
「数は僅かだというのに」
「こちらに正面から来るだと!?」
「何を考えている!?」
「噂通りか」
だがゴッチはそれを見て言うのだった。
「ロンド=ベルは数以上の力を持っている」
「数以上のですか」
「そういえば常に何十倍もの敵を相手にして」
「それでも勝っていますが」
「そうだ、実際の数の百倍の強さがある」
まさにそれだけの強さがあるというのだ。
「だからこそか」
「では我々は」
「今は」
「包囲し叩き潰す」
ゴッチの言う作戦はそれだった。
「援軍が来ればその兵も足す」
「はい、それでは」
「その様に」
「では戦闘開始だ」
ゴッチはまた命じた。
「いいな、このままだ」
「全軍攻撃開始!」
「敵を包囲せよ!」
バルマー軍はゴッチの指示のまま動きはじめた。しかしであった。
ロンド=ベルの動きは速かった。彼等の予想以上にだ。
「何っ!?」
「敵の動きが!?」
「速い!」
それが言葉にも出ていた。
ロンド=ベルは敵が包囲するよりも先にだ。まずはその右翼を攻撃したのだ。
「右に来ました!」
「敵が一丸となって!」
「くっ、ではだ!」
悲鳴めいた報告を聞きながらだった。ゴッチは指示を出した。
「右だ!右に戦力を集めろ!」
「は、はい!」
「わかりました!」
「包囲するのを察していたか」
ゴッチは指示を出してからそうして言うのであった。
「おのれ、考えたな」
「ではどうされますか」
「ここは」
「包囲は止めだ」
それはもう放棄したのだ。
「だが」
「このままですね」
「戦力を右に集中させて」
「正面から押し潰す!」
変更させた作戦はそれだった。
「数を背景にだ。いいな」
「はっ!」
「了解です!」
こうしてだった。バルマー軍はその数を背景に正面からの攻勢に出た。そうしてそのうえでロンド=ベルを押し潰しにかかったのである。
ところがであった。ロンド=ベルはそれに対してだった。
「よし、敵は一つのポイントに集まったぞ!」
「かかったな!」
こうそれぞれ言うのだった。
そしてだ。間合いを計ってだ。その間合いに入ったところで。
「撃て!」
「全軍ありったけの攻撃を撃ち込め!」
「容赦するな!」
指示が飛ぶ。そしてである。
ロンド=ベルの最初の総攻撃が仕掛けられた。それがだった。
バルマー軍の動きは止まった。完全にだ。
「何っ、この攻撃は」
「何だこの火力は」
「まさかここまでとは・・・・・・」
はじめて見るロンド=ベルの火力に呆然となっていた。
「我等の動きが止まった」
「どうする?」
「閣下、ここは」
「どうされますか!?」
「怯むな!」
ゴッチが言ったのは積極策だった。
「いいな、怯むな!」
「ではこのままですか」
「攻めるのですね」
「そうだ、数は力だ」
真実ではある。
「そしてだ。このまま再びだ」
「包囲ですか」
「それをですね」
「方法は幾らでもある」
ゴッチは決して頭の硬い男ではなかった。柔軟性も併せ持っていた。だからこそ今すぐに戦術を変換させてだ。攻撃を仕掛けるのであった。
「いいな、また囲む」
「攻撃を受けているそこを重点として」
「そのうえで」
「そうだ、敵が攻撃を集中させているならば」
その場合はというのだ。
「それを逆手に取る。そしてだ」
「援軍が来たならば」
「さらなる攻勢をですね」
「ワール司令からはどう仰っている」
そちらを確認することも忘れない。
「そして惑星からは」
「はい、間も無く到着されるとのことです」
「惑星からの援軍はあと数分です」
「よし、ならばだ」
そこまで聞いてだった。ゴッチは決めた。完全にだ。
「攻める、いいな」
「了解です」
こうしてバルマー軍はロンド=ベルを囲もうとする。しかしであった。
ロンド=ベルはその包囲にかかる敵軍にさらに攻撃を仕掛けた。一点集中攻撃である。
「包囲には突破だぜ!」
「こうすればいいのよ!」
「その通りだ!」
エイブもゴラオンの艦橋から指示を出す。
「オーラノヴァ砲発射用意!」
「艦長、それをですか」
「はい、今こそその時です」
だからだとエレに対しても答える。
「ここはお任せ下さい」
「わかりました。ではここは」
「はい、やらせてもらいます」
こうしてゴラオンは敵の密集ポイントに艦首を向けてだ。その主砲を放つ。
「撃て!」
「わかりました!」
「では!」
艦の乗組員達が応える。そのうえで白い光の帯が放たれた。それで敵軍に大きな穴を開けてみせたのだった。
ゴラオンだけではなかった。グランガランもだ。ハタリは艦を敵軍に突っ込ませた。
「シーラ様、危険ですがお許し下さい」
「元より危険は覚悟しています」
シーラも厳しい顔で応える。
「ですから」
「有り難き御言葉。それでは」
「敵をあえて引き寄せてですね」
「そうです」
またシーラに答えるハタリだった。
「敵が来たところをオーラバルガンで斉射を仕掛けます」
「はい、それでは」
「敵が来るなら来るで戦い方があります」
これまでの戦いで身に着けたことだった。
「ですから」
「ではお任せします」
シーラも腹を括っていた。
「ここは」
「これより敵軍に向かう!」
ハタリは実際にグランガランに指示を出した。
「そしてだ。集まって来た敵を撃て!」
「はい!」
「了解です!」
艦のクルーもそれに応える。そうしてだった。
周りに群がる様にして来たその敵達にオーラバルカンを放つ。それで敵をまとめて撃墜するのだった。立体的な構造のグランガランならではの攻撃だった。
そして他の者達も果敢に突撃してだ。敵を薙ぎ倒していく。
「遅いんだよ!」
トッドがハイパーオーラ斬りを横薙ぎに放つ。それで敵をまとめて撃墜する。
「ダンバインはパイロットの能力に大きく影響するんだよ」
「そうだがな」
「あんたさらに強くなってるな」
その彼にアレンとフェイが突っ込みを入れる。彼等はズワースに乗っている。
「しかも波に乗ってきているな」
「いい感じにな」
「わかってきたんだよ」
トッドは二人にこう返した。その間も剣を振るっている。
「俺はな」
「俺は?」
「何だってんだ?」
「ショウとかどうとか関係ないんだよ」
言うことはこれだった。
「聖戦士ってのは何かを守る為に戦うものだってな」
「ほお、言葉通りだな」
「それがわかったんだな」
「ああ、何となくだがな」
わかったというのである。
「わかってきたぜ」
「そうだな。自分の為に戦うよりもな」
「誰かの為に戦う方が気分がいいしな」
実は二人もそれがわかってきていた。
「じゃあ俺達もだな」
「ロゼのお嬢ちゃんの為に暴れてやるか」
「一応俺も」
トカマクもいた。
「やらせてもらうしな」
「ああ、御前さんもいたな」
トッドは彼の声を聞いてやっと気付いた様に言葉を出した。
「そういえばそうだったな」
「おい、忘れてたのかよ」
「っていうか目立たないからな」
トッドの返事は身も蓋もないものだった。
「どうしてもな」
「幾ら何でもそりゃ酷いだろ」
トカマクはトッドの言葉に途方に暮れた顔になった。
「俺だってよ。これでも頑張ってるんだぜ」
「まあ専用のカラーのダンバインにも乗ってるしな」
「これ結構使いこなすの難しいからな」
「そうなのよね」
マーベルがトカマクのその言葉に頷いた。
「オーラ力がかなり影響するオーラバトラーだし」
「だろ?だから他のオーラバトラーに比べて操りにくいんだよ」
「そうね。確かにね」
「マーベルもトッドも凄く上手く乗りこなしてるけれどさ」
「御前さんも結構やってるじゃないか」
トッドはその彼に対してこう告げた。
「オーラもはっきりしてるしな」
「まあ慣れてはきてるしさ」
自分でもそれは感じていた。
「だから頑張ってるからな」
「もっと頑張ってくれよ」
「おい、もっとかよ」
「敵の数は多いんだよ」
言っているそばからもう来ていた。前にも横にも上にもだ。無論下にも。
「だからだ。いいな」
「わかってるよ。じゃあこのまま倒して」
「正面突破だな」
バーンもいる。
「この戦い、貰った」
「そういえば旦那も変わったよな」
トッドはバーンも見ていた。
「昔はそれこそギラギラして余裕なんかこれっぽっちもなかったのにな」
「あんたもね」
マーベルはすぐにトッドにも言った。
「かなり酷かったわよ」
「へっ、あの時の俺とは違うぜ」
「そういうことよ。バーンもそうなのよ」
「そういうことかよ」
「そうよ。わかりやすく言えばね」
そうだというのである。
「バーンもそういう意味で成長したのよ」
「本当の騎士殿になったのかね」
「騎士か」
バーン本人の言葉だ。
「その様なものにこだわっていた時もあったな」
「じゃあ今は違うってのかい?」
「いや、騎士は騎士だ」
今もそれは否定しなかった。
「だが」
「だが?」
「騎士とは何かだ」
バーンが今言うのはこのことだった。
「ただ意地や誇りだけのものではない」
「それがわかったのかよ」
「そうだ、わかった」
言いながらその剣を振るい敵を倒していく。
「騎士とは戦えぬ者の為に戦う者だ」
「へえ、キザなことを言うね」
「だが今はそう考えている」
否定しないのだった。
「私は最早誇りの為には剣を持たない」
「じゃあ今はなんだな」
「そうだ、今はあの惑星を解放する為だ」
ロゼの故郷であるその惑星を見ての言葉だ。
「その為にだ」
「よし、じゃあ俺もだ」
「そうね。それじゃあね」
トッドとマーベルも続く。彼等は一気に敵軍を突破した。
そうして反転してだ。その乱れた陣にさらに攻撃を浴びせる。そうしてその陣に合流する様に惑星から来た援軍も同時に叩くのだった。
「惑星の援軍まで」
「共に攻撃されています」
「予想外だったな」
これはゴッチも想定していなかった。
「まさかこう来るとはな」
「どうしましょうか、ここは」
「ワール司令からの援軍はまだ」
「ならばだ」
また戦術を換えるゴッチだった。
「守りに入る」
「防衛ですか」
「それだというのですか」
「そうだ」
まさにそれだというのだ。
「今はだ。いいな」
「はい、それでは」
「今はそうして」
「援軍を待つ」
ゴッチはこう判断した。
「いいな、それでだ」
「了解です。ではここは何とか」
「待ちましょう」
こうしてバルマー軍は援軍を待つ為に方陣を組んだ。そのうえで戦い続ける。そしてだった。
遂に来たのだった。援軍がだ。
「来ました!」
「援軍です!」
すぐにバルマー軍から歓声が起こった。
「何とか持ちこたえました」
「ではまたですね」
「いや、守る」
ゴッチは攻勢は否定した。
「今は守る」
「えっ、攻められないのですか」
「ここでは」
「そうだ、守る」
また言う彼だった。
「我等が敵を引きつけてだ。そうして」
「ワール司令の軍が攻める」
「そうするというのですね」
「その通りだ。だからこそだ」
守るというのであった。
「わかったな。そうするぞ」
「了解です、それでは」
「今は」
「全軍このまま方陣を組む」
あらためて指示を出した。
「そしてだ。敵を引きつけるぞ」
「勝利の為に」
「では」
こうしてゴッチの軍勢は守り続ける。そしてその彼の軍に向かうようにしてワールの軍が動いていた。
「司令、間に合いました」
「何とか持ちこたえています」
「ゴッチ閣下も健在です」
「うむ」
端整な顔の青年が応える。見れば彼も独特の艦に乗っている。
「そうだな。それではな」
「行きますか」
「すぐに」
「行く。しかしだ」
「何でしょうか、ワール司令」
「何か」
「確かに急行する」
それはするというのだ。
「しかしだ。気をつけるのだ」
「といいますと」
「何が」
「敵は必ずこちらに来る」
それをもう呼んでいるのだった。
「だからだ。それは覚悟しておくのだ」
「はい、わかりました」
「それでは」
部下達もそれに応えてだった。一直線にロンド=ベルに向かう。そしてだった。
ワールの読みは当たった。見事にだ。
「まずは彼等だな」
「はい」
「狙いましょう」
こう言ってそのうえで攻撃を仕掛けるロンド=ベルだった。
ゴッチの軍から離れてだ。そのうえで攻撃に掛かる。
「抑えは一部だ」
「主力は新手の援軍に向かう」
「それでいいな」
こう指示が出されていた。
「そしてそのうえで倒す」
「いいな」
「敵の援軍をだ」
「わかりました」
「それじゃあ」
全員それに応えてだった。そのワールの軍に向かう。ワールはすぐに陣を組んだ。攻撃用から防御用に即座に切り替えさせたのである。迅速だった。
「何っ、守るか」
「敵が守りに入った!?」
レイとハイネがそれを見て言う。
「そうか。それならだ」
「迂闊に攻めるのは危険だな」
「まずいな、これは」
アーサーはそれを見て困った顔になっていた。
「ここで守りに入られると」
「いえ、気にすることはないわ」
だがタリアはここでこう言うのだった。
「確かに迂闊に攻めるのは危険よ」
「じゃあ今は」
「それでもよ」
しかしここで言うのであった。
「立ち止まっても何にもならないわよ」
「じゃあ攻めるしかないんですか」
「そうよ、このまま攻撃よ」
これがタリアの指示だった。
「いいわね、今はね」
「攻撃って。守りに入っていてもですか」
「そうよ、二手に分かれるわ」
こうも言った。
「左右から同時に攻撃を浴びせるわ」
「積極攻撃なんですね」
「そうよ。それがどうかしたの?」
「いえ、艦長も過激だなと思いまして」
見ればアーサーの顔は少し驚いた顔になっていた。
「ここで積極攻撃とは」
「当然でしょ。ここは一気に倒さないと」
タリアは落ち着いた声で述べたのだった。
「駄目だからね」
「駄目なんですか」
「後ろにもいるのよ」
ゴッチの軍勢のことである。
「彼等はね。それだったらね」
「そうですか。後ろにですか」
「ええ、後ろよ」
そのゴッチの軍の話である。
「わかったらね。積極的に仕掛けるわよ」
「そして反転してまたあの軍もですか」
「戦術は素早く動いてこそよ」
所謂兵は神速を尊ぶであった。
「それが一番いいのだからね」
「その通りだな」
フォッカーがタリアのその言葉に頷いた。
「ここは一気に攻めてまた反転してだな」
「そしてまた反転するわよ」
再度だというのであった。
「今の敵をもう一度叩くことになるわ」
「何か忙しいですね」
「敵を翻弄させるつもりでね」
それも意図にあるのだった。
「わかったわね。そういうことよ」
「わかりました。しかし激しい戦いが続きますね」
アーサーはここまで話を聞いて呟いた。
「俺の天敵に似てますね」
「あの913の相手ね」
「何でかわからないですけれど狙われてるんですよ」
何故かこの話もするのだった。
「あいつ死んだと思ったのに。何でなんでしょうか」
「さあ。一つ言えることはね」
「言えることは?」
「彼、生きてるから」
言うことはこれだった。
「あのヒーローは何度死んでも生き返る運命なのよ」
「滅茶苦茶鬱陶しいですね、それって」
「まあ世界が違うから私にとってはどうでもいいけれどね」
「俺も関係なかった筈なんですよ」
実際にそうだったのだ。
「けれど何か。取り憑かれている感じで」
「難儀な話ね」
「そうですよ。そう思いますよね」
アーサーはここで金竜に対して問うたのだった。
「大尉も」
「ああ。しかしだ」
「しかし?」
「前から思っていたんだがな」
「俺もだ」
ヒューゴも出て来た。
「俺達も似ているな」
「そうだよな。そっくりだな」
「あっ、そういえば確かに」
言われたアーサーも気付いたことだった。
「俺達も似ていますよね」
「そうだな、日本にも愛着を感じるしな」
「いい国ではあるしな」
何故か話題は日本のことにもなった。
「あの国にもまた行きたいな」
「刺身でも食うか」
「うんうん、日本酒も美味しいしね」
「あんた達本当に同一人物じゃないの?」
タリアも三人に対して突っ込みを入れた。
「話を聞いていても誰が誰だかわかりにくいけれど」
「けれどそういう艦長もじゃないですか」
「そうそう」
出て来たのはレミーだった。
「似てるからね、私達って」
「確かにね。あとジオンの」
「わかるわ。キシリア=ザビだったわね」
「私も考えてみれば色々あるのよね」
「というかあり過ぎじゃないのか?」
真吾がそれに突っ込みを入れた。
「レミーにしても。俺もそうだけれどな」
「そうそう、そこで自覚を忘れたら駄目だからな」
キリーも言ってきた。
「俺もそうだしな」
「まあそれはいいことではあるな」
「その通りです」
今出て来たのはルリだった。
「孤独よりはずっといいです」
「そういえばルリちゃんはね」
「言わないで下さい」
タリアにこれ以上言わせなかったのだった。
「気にしています」
「そうなの。それじゃあこの話はこれでね」
「御願いします。それではです」
「ええ、それじゃあね」
「軍を二手に分けます」
素早くその話になった。そうしてだった。
実際に軍を左右に分けてだ。それぞれ斜め上から狙うのであった。
こうして敵軍に同時攻撃を浴びせてだ。一気に突き崩したのである。
「何っ、二手に別れた!?」
「まさか!」
「いや、そのまさかだ」
ワールは驚く部下達に対して告げた。
「見ればわかることだ」
「ではここはどうすれば」
「どうされますか」
「守るしかない」
こう言うワールだった。
「今更下手に動いても仕方がない」
「だからですか」
「ここは」
「そうだ、守る」
そしてまた言った。
「陣を整えてだ。いいな」
「わかりました。それしかありませんか」
「今は」
「大変だがだ」
それでもだというのである。
「左右それぞれに守りを固める」
「ではそうした方陣をですね」
「組みましょう」
「よし、ではだ」
こうしてだった。彼等はそのまま守りを固める。そのうえでロンド=ベルを迎え撃つ。
ロンド=ベルはそのまま突き進む。確かに目の前に方陣はある。しかしだ。
「急ごしらえか!」
「それなら問題ないわね!」
こう言ってだった。すぐに攻撃に入る。
まだ充分に備えが出ていない敵を撃つ。左右同時にだった。
「よし!」
「これで!」
「いけるわ!」
ワールの軍勢は一気に突き崩してだった。そのうえで戦闘不能寸前に追いやった。
だがワール自身は冷静だった。そのうえで言うのであった。
「一旦退け」
「えっ、ですが」
「ここは」
「いい、退くのだ」
あくまでこう言うのであった。
「わかったな。退くのだ」
「そして再編成ですか」
「そうされるのですね」
「その通りだ」
また言ってみせたのだった。そうしてである。
一旦退いた。だがここでワールは読み間違えた。
「いいか」
「!?」
「どうされたのですか、今度は」
「敵はこのまま来る」
こう読んでいたのである。
「それを引き擦り込むのだ」
「そうされるのですか」
「今は」
「そうだ、そしてだ」
ワールの言葉は続く。
「後方のゴッチの軍に伝えるのだ。今のうちに攻撃にかかれと」
「はい、それでは」
「その様に」
こうしてだった。ワールの軍はロンド=ベルを引き込もうとする。しかしだった。
ロンド=ベルは来なかった。それどころか反転したのであった。
「司令、敵が」
「反転しました」
「くっ、そう来たか」
ワールは彼等の動きを見て歯噛みした。
「まさか反転してか」
「後方に向かうようです」
「今動いたゴッチ閣下の軍勢に」
「そうだ。そうするというのか」
それを見ながらの言葉だった。
「まずい、これは」
「どうされますか、ここは」
「敵は既に」
ゴッチの軍勢に向かっていた。速さはかなりのものだった。
「向かっています」
「我等は」
「止むを得ん」
ゴッチはここでまた指示を出した。
「はい、ここでは」
「どうされますか?」
「進撃だ。追うぞ」
そうするというのだった。
「いいな、まずはだ」
「はい、それでは」
「ここは」
「敵の動き、速いな」
ワールの眉がしかめられていた。
「そして想像以上に強いな」
「はい、想像以上に」
「これは」
彼等はそのまま向かうがゴッチの軍勢は既に突き破られていた。そうしてだった。
ゴッチの軍はかなり数を減らしていた。ワールはその彼等と合流した。
「大丈夫だったか」
「はい、何とか」
ゴッチはこうワールに対して答えた。
「ただ。軍は」
「いい。だがあれがロンド=ベルか」
己の旗艦の艦橋での言葉だった。
「噂以上だな」
「はい、確かに」
「侮ったつもりはなかった」
彼もそこまで愚かではなかった。
「だが。戦術もかなりのものだな」
「迂闊でした」
「だからそれはいい」
謝らなくてもいいというのである。
「それよりもだ」
「それよりもですか」
「そうだ、戦うぞ」
こう言うのであった。
「今からな」
「わかりました」
ゴッチの返答も早かった。
「それでは」
「少し戦うがだ」
ここでワールはこうも言った。
「だが」
「だが?」
「劣勢ならば惑星に降下する」
そうするというのだ。
「それでいいな」
「そのうえでなのですね」
「そうだ。まだ戦う」
そこまでしてもだというのだった。
「最後までだ」
「また随分と粘られるのですね」
「ズール様の御命令だ」
ワールの表情が変わった。
「だからだ」
「ズール様のですか」
「そうだ、だからだ」
その強張った表情での言葉だ。
「戦う。いいな」
「わかりました」
それに頷くゴッチだった。
「それでは」
「うむ、それではな」
こうしてであった。ロンド=ベルと再び戦いをはじめた。
しかしであった。最早勝敗は決していた。
ロンド=ベルは激しい攻撃に出ていた。最早バルマー軍の相手にはならなかった。
「な、何っ!?」
「強い!」
「前線が突破されました!」
こう叫び声が上がる。
「敵が。まだ」
「来ます!」
「それだけではありません!」
「勢いがさらに増しています!」
ただ攻めるだけではなかった。
「ロンド=ベルの勢いがこのまま」
「激しく攻めてきます」
「このままでは」
「くっ、仕方がない」
ワールもその攻勢を見て決めたのだった。
「ここはだ」
「はい、撤退ですね」
「今は」
「そうだ、惑星に撤退する」
こう言うのだった。
「わかったな」
「わかりました。それでは」
「また」
こうして彼等は惑星に戻った。宇宙での戦いはロンド=ベルの勝利に終わった。
その降下を受けてだ。ロンド=ベルの者達も決めた。
「降下ですね」
「俺達も」
「その通りだ」
大河が腕を組んで一同の問いに答えていた。全員戦闘の直後でまだ展開している。
「各員それぞれの艦艇に戻ってくれ」
「さあ、久し振りの地上戦だぜ!」
ゴルディマーグがここで言う。
「激しくやってやるぜ!」
「そうですね。彼等が地上での戦いを望むなら」
ボルフォッグもだった。
「我々も向かいましょう」
「ああ、そうするぜ」
「よし!」
凱がここで叫ぶようにして言った。
「行くぞ!いいな!」
「了解です!」
「それなら!」
「全員で降下する!」
また言う凱だった。
「そしてだ。一気に勝負を決めるぞ!」
「この戦いで勝てば」
「次はですね」
氷竜と炎竜も当然ながらいる。
「ロゼさんの惑星の解放ですか」
「遂に」
「その通りだ」
「この惑星の戦いに勝てば」
風龍と雷龍もいる。
「一つの正念場だ」
「この戦いもまた」
「ねえ、ルネ姉ちゃん」
「いいでしょうか」
光竜と闇竜はルネに問うていた。
「ギシン家の戦力だけれど」
「兵器が大きいですね」
「そうね」
ルネもそのことははっきりと感じ取っていた。
「そしてあの敵の司令官の旗艦も」
「あれか」
ルネにマーグが応えてきた。
「あの戦艦か」
「ああ、あの戦艦はあんた達のとはちょっと違うね」
「ワールだ」
マーグはその敵の司令官の名前も言ってみせた。
「あれに乗っているのはワールだ」
「ワール?」
「誰ですかそれは」
「バルマー軍中銀河方面軍副司令官」
マーグは彼の役職も話した。
「そこにいるのだ」
「中銀河方面軍のですか」
「副司令官ですか」
「ロゼと同じだ」
マーグはわかりやすいようにこうも話した。
「ロゼとな」
「そうですね、ロゼさんも副司令官ですし」
「でしたら」
「そういうことだ。その権限は大きい」
マーグはこのことも話した。
「もう彼が出て来たのか」
「敵も本気ってことですね」
「つまりは」
「その通りだ」
まさにそうだというのである。
「彼等もだ。本気なのだ」
「本気ですか、向こうも」
「それだけ」
「そうだ、本気だ」
また言うマーグだった。
「間違いなくな」
「だからこそまだ戦う」
「そういうことなんですね」
「ロゼ、行こう」
マーグは今度はロゼに対して声をかけた。
「君の惑星を取り戻しにだ」
「はい」
ロゼもマーグのその言葉に小さく頷いた。
「それなら。今から」
「では各員いいな」
また大河が声をかけてきた。
「それぞれの艦に戻ってくれ」
「ええ、そうして」
「それからですね」
「降下する」
実際にそうするというのだった。
「そして彼等と雌雄を決しよう」
「兄さん、彼等はまだ」
「マーズ、これも戦いだ」
マーグは今度は弟にも告げた。
「最後の最後まで。戦うというのもだ」
「最後の最後まで」
「おそらくはズールの命令だ」
ズールの名前も出したのである。
「あの男のだ」
「ズールの」
「そうだ、ズールのだ」
彼はまた言った。
「あの男の命令で間違いない」
「そうですね」
テッサがマーグの今の分析に頷いた。
「副司令官でありながら前線に出てそのうえでここまで戦うとなると」
「ズール、捨て駒にするつもりか」
マーグの顔がここで曇った。
「己の片腕ですら」
「片腕とは思っていないのだろう」
宗介の言葉だ。
「若しくはだ」
「若しくはか」
「片腕は他にあるから」
こう言うのだった。
「だからこそ。副司令であろうともだ」
「過酷に扱えると」
「捨て駒の様に」
「そうだ、そういうことだ」
宗介は冷徹に分析していた。
「己しかない相手かも知れないがな」
「どっちにしてもいけ好かない相手だね」
メリッサは宗介の言葉を聞きながら顔を曇らせていた。
「それならばな」
「そうですね、確かに」
「だとすると」
「それにだ」
宗介の言葉は続く。
「犠牲も厭うことはないようだな」
「その通りだな」
彼の言葉に刹那が頷く。
「だからこそ撤退を許さずだ」
「戦わせ続けるということだ」
「それじゃあよ」
小鳥は眉をしかめさせて述べた。
「こっちはそれに対して殲滅戦を挑むしかないのね」
「ああ、そうだ」
「それしかない」
実際にこう答えた宗介と刹那だった。
「敵が要地にいてあくまで戦うというならだ」
「それしかない」
「ちっ、わかったぜ」
「だったら仕方ないわね」
皆これで意を決した。そうしてだった。
「早く戻って」
「それで降下ね」
「急いでくれ」
大河が急かしてきた。
「いいな、すぐにだ」
「はい、わかってます」
「それじゃあすぐに」
「よし、乗り込めばだ」
大河はその先も既に考えていた。
「一気に降下する。集結してだ」
「そしてそこで、ですね」
「また戦いですね」
「降下してすぐに戦いになるだろう」
こうも読んでいる大河だった。
「ならばだ。いいな」
「はい、じゃあ」
「それなら」
まずは艦に戻った。そうしてだった。
「全軍降下だ!」
「了解!」
「はい!」
こうして今度は惑星での戦いになるのだった。戦いはまだ終わらなかった。
第二十三話 完
2010・4・27
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