八条学園騒動記
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第百二十五話 鏡の間その九
「何者かが邪悪な意図により作る鏡はこの様な場所にはありません」
「まあ確かに」
「こうした場所の鏡は企業の大量生産だからな」
考えてみればそうなのだ。企業の大量生産の鏡がどうして何者かのよからぬ意図が入って来るのか。それは有り得ないことである。
「それはないよな」
「じゃあやっぱりこの鏡は偶然に?」
「とてつもなく低い可能性ですが」
セーラが今度言うのは可能性だった。
「何千京の中に一枚だけ」
「そうした鏡がある」
「そういうことです。今の鏡はその何千京のうちの一枚だったのです」
話がより具体的なものになった。
「それがたまたまこのミラーハウスにあったのです」
「で、魔界の扉になったのね」
アンは話を全て聞いてからまた述べた。
「成程ね。聞けば聞く程凄い話ね」
「そうね。ところで」
ルビーはあることを思い出した。
「犯人もわかって事件の元も解決したけれど」
「このなくなった鏡のこと?」
「それはもう何とかなるでしょ」
ルビーはこうアンジェレッタに返した。
「それはね」
「何とかなるって?」
「今私が出しました」
ここでセーラが早速言って来た。
「こちらに」
「えっ、もう!?」
「何処から出したの?」
「こうしたことがあろうかと常に用意しているのです」
驚く皆に対してにこりと笑って述べるのだった。
「このようにして」
「そうだったのって」
「普段からそんな大きな鏡を用意してるの」
これはこれで驚くべきことである。
「鏡は魔術や呪術にも使います」
セーラは話す。
「そして妖術にも」
「妖術って」
「そんなのまで使えるの」
とにかく常識やそういったものとは全く無縁のセーラである。少なくとも連合の常識は全く通用しない、それがセーラでありマウリアであるのだ。
「使うので用意しています」
「成程ね、だからね」
「それでなの」
皆そのことには納得する。
「まあ何処にそんな大きな鏡を持ってるのかはいいけれど」
「それはまあいいわ」
流石にそこまでは考えないことにする一同だった。しかしであった。
「けれどよ」
またアンジェレッタが言う。
「その犯人は何処に?」
次の問題はこれであった。
「その鏡から出て来た白ドードー。何処に行ったのかしら」
「あっ、そういえば」
「何処に!?」
皆もそれに気付いたのだった。
「何処にいるのかしらね」
「落書きしてから」
「それよ」
アンジェレッタはここでも話す。
「それから何処に行ったのかしら」
「つまりだ」
ギルバートがそのアンジェレッタの話を聞いて考える顔になって述べた。
「犯人はわかりその元は解決しても犯人は捕らえてはいない」
彼はその顔で言う。
「そういうことだな」
「そうなるな」
タムタムがその彼の言葉に頷く。
「今回はな。その犯人の問題がまだ残っている」
「犯人見つける?」
ルビーが皆に問うた。
「やっぱり。ここは」
「見つけて何とかしないと駄目よ」
アンのルビーへの返答ははっきりとしたものだった。
「だって。犯人を捕まえて事件は全部解決じゃない」
「そうよね。それはね」
「確かに」
皆彼女の今の言葉に頷く。
「それに捕まえて何とかしないとまた落書きするわよ」
アンはこうも話す。
「だからね。やっぱりね」
「捕まえるわよ」
返答は決まっていた。
「絶対にね」
「これで決まりだな」
こうして次やることが決まった。その鏡から出た白ドードーを捕まえる。彼等の事件への行動は鏡を封じても続いていくのであった。
鏡の間 完
2009・2・26
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