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八条学園騒動記

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第百二十五話 鏡の間その八


「何かこの咆哮は」
「化け物のみたいね」
 そう感じずにはいられなかった。
「まあ考えてみればそうよね」
「ええ」
 アンはルビーの言葉に頷いいていた。
「魔界につながっているんだからね」
「だからね。こんな咆哮もね」
「当然って言えば当然ね」
 アンはまた言った。
「それもね。魔界だからね」
「しかも紫に輝いているし」
 鮮やかな紫だが今は不気味極まる色にしか見えなかった。その色を見て心中穏やかな人間なぞいる筈もない。状況がそうさせていた。今の状況がだ。
「鏡が魔物になってもおかしくないわね」
「そうね」
 だが鏡はそうはならなかった。しかし咆哮はさらに大きくなりそうしてそれが急に止まった。そのうえで鏡は割れて消え去ったのだった。
「消えた!?」
「破片が飛び散ってそれが」
 消えたのだった。鏡は完全に消え去ってしまったのだった。
 鏡は消えた。セーラの髑髏の蝋燭も完全になくなっていた。髑髏は蝋まみれとなりその異様な姿をさらに異様なものにさせていたのだった。
「終わりました」
 セーラはその髑髏を見下ろしながら皆に告げた。
「これで封印できました」
「できたのね」
「はい」
 こうも皆に答えた。
「これで。魔界の扉はなくなりました」
「それは何よりだけれど」
「けれど」
 それでも皆の心にはある疑念が残っていた。それは。
「何でここの鏡が魔界の扉に?」
「最初からそうだったとか?」
「最初ではありませんでした」
 セーラは皆に述べた。
「あの鏡もまた最初は魔界の扉ではなかったのです」
「そうだったの」
「ですがそれは変わるものです」
「変わるもの!?」
「鏡には元々魔力が備わっています」
 またこの話になった。何故こうなったのかというとやはりこのことが前提にあるのだった。
「だからこそ。人の姿を映し出しているうちに」
「鏡の魔力が強まり」
「そうです」
 また皆の言葉に応えるセーラだった。
「そうしてこの鏡は魔界の扉になったのです」
「じゃああれ?」
 アンジェレッタはその話を聞いて目を顰めさせた。
「それだとどの鏡も魔界の扉になっちゃうけれど」
「勿論そうはなりません」
 それは保証するセーラだった。
「普通の鏡なら」
「っていうとあの鏡は」
 アンジェレッタは今のセーラの言葉からまた一つ謎を解いた。
「普通の鏡じゃなかったのね」
「そうです。あの鏡は普通の鏡ではありません」
 セーラもそれを認めた。
「まさにこの世に一つあるかないかの」
「あるかないかの」
「そうした鏡だったのです」
 こうアンジェレッタだけでなく皆にも告げるのであった。
「元々魔力がかなりあったと思われます」
「元々ね」
「ごく稀に存在しています」
 セーラはまた言う。
「そうした鏡もまた」
「あるんだ」
「誰かが仕組んだものでなしに?」
「偶然によってのものであります」
 セーラはいぶかしむ皆にまた述べた。 
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