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八条学園騒動記

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第十六話 物持ちはいいけれどその四


「これ全部アンジェレッタのだよな」
「そうよ」
「拳法薬か」
「ちょい待ち」
 ジミーの何気ない言葉にロザリーが突っ込みを入れてきた。
「どうした?」
「あんた今何て言ったのよ」
「だから拳法薬なんだろ、これ」
「何か勘違いに気付かない?」
「勘違い!?何処がだよ」
 彼はまだその間違いには気付いていない。
「だから憲法薬なんだろ」
「わざとはやってないわよね」
「馬鹿言え、大真面目だ」
 彼は真剣に主張する。
「だから剣法薬なんだろ」
「ああ、もういい」
「どういう耳してんのよ」
 ロザリーもジュディもいい加減呆れてきた。
「とにかくいい薬だな」
「それはね」
 アンジェレッタはジミーのその言葉には機嫌をよくさせた。
「うちのお薬はどれも最高のばかりだよ」
「それで建保薬だけなのか?」
「勿論他にも一杯あるよ」
 ジミーに答える。
「抗生物質も。ほら」
「これ何だ?」
 飴玉に見えるものが出て来た。これは正直何かわからなかった。ジミーも目をパチクリさせていたしロザリーやジュディも同じである。
「性病のお薬ね」
「ちょい待ち」
 またロザリーが突っ込みを入れる。
「幾ら何でもそりゃ学校に持って来たらまずいでしょ」
「そうかなあ」
「そうかなあって」
「不味いに決まってるじゃない」
 ジュディも言う。
「幾ら何でも」
「他にはコンドームだって」
「ああ、出したら駄目よ」
「ミンチンにでも見つかったらことよ。あとラビニアにもね」
「あいつ等そっから何してくるかわからないから」
「そうよ。何時か抹殺してやるけれどね」
「そうね。そっちはね」
 二人の目が光った。実は二人だけではなくこのクラスのかなりの数がミンチンとラビニアには敵意を抱いている。言うならば二年S1組の公敵であるのだ。
「やってやるわよ」
「とびきりの復讐でね」
「そういうお薬もあるよ」
 アンジェレッタはそこも抜かりがない。
「一錠で百人は死ぬっていう猛毒が」
「ああ、それね」
 ジュディがそれを聞いて頷く。
「農薬よね」
「うん」
「私も持ってるわよ、それ。それを何時かあの二人に」
「証拠が残らないもっといいのがあるんだけれど」
「そうなの。じゃあ今度ミンチンの糞婆のお茶にどっと入れて」
「地獄行きね」
「それって持ってるだけでやばいんじゃないのか」
 ロザリーは二人の剣呑な会話に目で苦笑いして額に汗を書きながら問うた。
「殆ど薬局じゃなくて軍の特殊な研究施設の持ち物だろ」
「気にしない気にしない」
「出来るだけ苦しむのがいいね」
「そうそう。とびきりの劇薬がね」
「まあ毒薬なんかどうでもいいよ」
 ジミーがここで言った。
「いいか?」
「あの二人を懲らしめるんならな。いいじゃないか」
 彼もまたあの二人が嫌いであった。
「俺もこの前ラビニアにはえらい目に遭ったから」
「そうなの」
「あの糞女だけは許しておけないんだよ。絶対にね」
「あんたも色々あるんだね」
「それでさっきのだけれど」
「ああ、これ」
 アンジェレッタが出してきたのはコンドームであった。
「これよね」
「そう、それ」
「それ早くしまいなって」
「本当にやばいわよ」
 ロザリーとジュディが横で囁くが話は続く。
「それどうやって使うんだ?」
「えっ!?」
「へっ!?」
 三人の少女達はその言葉に思わず眉を顰めさせてきた。
 
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