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八条学園騒動記

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第百一話 博士の行いその七


「そうすればまた屑が減ったのにのう。今度はそうしようか」
「人の話聞いてます?」
「じゃから。やってやるというのじゃ」
 聞いていないのだった。全く。
「今度いじめをしている奴を見つければな。そいつに爆弾を埋め込んでじゃ」
「暴力団の事務所に入れるんですか」
「そこで爆発じゃ」
 楽しげに語る。
「そうすれば無駄な人口が余計に減るじゃろうが」
「実験材料にはしないんですね」
「死んでいく人間の心理への研究にはなる」
 普通そういったことはあくまで分析をするだけだ。だがこの博士はそれを生身の人間を使って行う。それが普通の人間とは違うのだ。
「いつもな。わしは心理学者でもあるからな」
「心理学もやってたんですか」
「学問は総合的なものじゃ」
 これはその通りであった。
「一つの分野に特化してものう。それだけでは駄目じゃ」
「それで爆弾も埋め込むんですか」
「これもまた実験じゃ」
 平然と言い切る。
「爆弾の威力のチェックにもなるしのう」
「そこまで見ているんですね」
「爆弾といっても色々じゃろうが」
 博士の研究は何処までも細かいのであった。
「身体に埋め込む場所によっても違うからのう」
「違うんですか」
「一番面白いのは脳味噌に入れた時じゃ」
 語るその口が実に楽しげだ。
「電波を送ると激痛が走るようにすると特にじゃ」
「そんなことまでしていたんですか」
「脳味噌は神経の塊じゃ」
 誰でも知っていることであった。
「だからじゃ。そこにそういうことをしておくとな」
「気が狂う程の痛みでしょうね」
 考えただけでもぞっとするレベルの話であった。
「それって」
「気が狂わん程度の痛みにしておくのじゃよ」
 これが善意ではないのは自明の理であった。博士にはそんなものはない。
「何度も何度もそれをして最後の最後でじゃ」
「惨いですね」
「これも実験のうちじゃ」
 博士の実験は他人に優しいものでは全くないのである。
「屑をそれに使ってやる。いいことではないか」
「そんなナチスやソ連みたいなことをしてですか」
「人権を排除してこその科学じゃ」
 マッドサイエンティストそのものの考えである。
「そんな無駄なものを真っ先に排除してそれでやっていくのじゃよ」
「無駄ですか、人権が」
「安心せい、わしは嫌いではない人間を実験に使ったりはせん」
「けれどそれって」
 すぐにわかる言葉であった。野上君もすぐに突っ込みを入れる。
「気に入らないと」
「無駄な人口は増えんでいい」
 あくまで博士にとってである。
「ただでさえ百百年やそこいらで二倍だの三倍だのに増えるんじゃぞ」
「確かに人口は多いですけれど」
 四兆の人口を少ないという人間はいない。
「それでも。そんなことしたらそれこそ」
「国家権力には屈せぬが」
「逮捕状がとんでもない数になりますよ」
「そんな些細なことはどうでもよい」
「本当に些細なことなんですね」
「日本軍やら超時空天下人と争った時なんぞこんなものではなかったぞ」
 また訳のわからない存在と戦った経験があるようである。
「それに逮捕状は燃やすかシュレッダーにかければそれでよい」
「またすぐ決ますよ」
「そのうち新しい逮捕状が来て古いのは送らなくなるわ」
 それだけ法律上無茶苦茶な行動が多いというわけである。博士の日頃の行いが何よりも説明できる行動ではある。迷惑千万なことにだ。 
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