八条学園騒動記
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第百一話 博士の行いその八
「その程度のことじゃ」
「だといいんですけれどね」
「さて、あの者の家を破壊するぞ」
既にそれは決定していた。
「木っ端微塵にな」
「まあ街を破壊しないだけましなんですけれどね」
これについてはよしとする野上君であった。
「あの似非科学者の家だけならまだ」
「何じゃ、君も嫌いではないか」
博士は本格的に動きだしたエンペライザーを見つつ野上君に声をかけた。
「あの男を」
「特撮やアニメが好きな人間であの人好きな人いるんですか?」
こう博士に問い返す。
「自分の知識だけで、しかも間違ってる知識でこんなことはないって言ってるだけじゃないですか。そこにあるのは高みから見下ろしている浅はかさだけで何の進歩も夢もないですよ」
「夢がなければ科学者ではないのじゃよ」
その夢が問題なのは最早誰も突っ込まない。
「あの男は科学がわかっておらぬ」
「ただの知識馬鹿ですか」
「そう、馬鹿じゃ」
実に辛辣な博士の言葉であった。
「所詮はな。馬鹿には馬鹿に相応しい報いを与えてくれようぞ。さあ、行くのじゃ!」
持っている乗馬鞭に酷似した鞭を振りかざしエンペライザーに命じる。
「あの男の家を木っ端微塵にするのじゃ。容赦はいらんぞ」
「遂にはじまるんですね」
野上君はもう諦めていた。
「また」
「またとは何じゃ」
しかし博士は期待に胸を震わせているようだった。目がまるで冒険を前にした少年のようになっている。実に輝かしい目であった。
「毎日のことじゃろうが」
「まあ毎日ですけれどね」
毎日悪事と言われることに励んでいるのである。
「結局のところは」
「それで博士」
野上君は話を変えてきた。
「今日の夕食ですけれど」
「シーフードがいいのう」
さりげなく注文する。
「生での。どうじゃ」
「じゃあカルパッチョにします?」
それを聞いてからメニューを提案する野上君だった。
「オリーブとペッパーを効かして」
「そうじゃな。後は」
「シーフードサラダで。他は」
「パスタがよいのう」
また注文が来た。
「スペインもいいがイタリアもいいからのう」
「じゃあシーフードパスタですね」
「フェットチーネじゃ」
幅の広いきし麺に似たパスタである。
「それで頼む」
「トマトソースにしますね」
「トマトは欠かしたら駄目じゃ」
これは博士のこだわりであった。
「スペイン料理にイタリア料理にはな」
「通ですね、やっぱり」
「そしてワインは赤じゃ」
これも忘れてはならないことであった。博士は何処までもよくわかっていた。
「よいな、そこは」
「そうですか。後は」
「パンは固いものをな」
パンにも注文をつける。
「赤ワインやパスタにはそれじゃ」
「パンですか」
「リゾットがいいというのかのう」
イタリアでのお粥である。米を使っている為連合においても非常に人気のあるメニューだ。パエリアもそうであるがイタリア料理やスペイン料理が連合に完全に定着しているのは米を使っているからだ。連合では第一の主食は米、第二が麦なのである。米は偉大である。
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