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八条学園騒動記

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第百一話 博士の行いその五


「ここにな。それでどうして否定できるのじゃ」
「何でも非科学的だとか」 
 理由はこれであった。
「そう言っていますよ。科学で説明ができないと」
「科学は万能ではない」
 確かにその通りであるが一応科学者である天本博士の言うべき言葉ではなかった。それ以前にこの博士が持っている肩書きは科学者だけではないのだが。
「科学で説明できんことなぞ幾らでもあるわ」
「あの人はそう思っていないですよ」
「笑止」
 そうした考えを一笑に伏す博士であった。
「浅はかなり柳田算数!」
 その科学の本を書いている人のことである。
「所詮貴様はその程度!その程度の輩には!」
「どうするんですか?やっぱり」
「そうよ。天誅を与えてくれる!」
 実に手前勝手な言葉であった。そもそも自分が天誅を受けやしないかなどとは全く考えていない。なおこの博士の前科はそれこそ十万やそこいらでは効かない。
「その愚劣な考え、正してくれようぞ」
「だから家を破壊しに行くんですか」
「そうじゃ。その程度で済んで有り難いと思え」
 これまた実に手前勝手な言葉であった。
「命は取らんからのう」
「けれど家を壊すんですよね」
「そうじゃ」
 しれっとして野上君に答える。
「その通りじゃが。それがどうかしたのか?」
「あの人この前豪邸建てたばかりですよ」
 野上君はこのことをテレビで知ったのだ。
「本の印税で。全財産使ったとか」
「それがどうした」
 そんなことには全く頓着しない博士であった。
「そんなことはどうでもいいのじゃ」
「どうでもいいって。折角全財産使って家建てたのにですか」
「金は必要なだけあればよい」
 これまた実に手前勝手な言葉である。博士には他人への配慮というものが全くない。そんなものがないからこそ平然と改造手術を行うことができるのだ。朝目が覚めた暴力団員がクラゲと狼の遺伝子を埋め込まれた改造人間にされて連合軍に倒されたということすら日常茶飯事である。改造される方はたまったものではない。
「何時でも賢者の石で手に入るわ」
「それは博士だけですから」
「とにかくじゃ。それで済ませておいてやろう」
 やはり野上君の話を聞いてはいない。
「それだけでな。さて」
「エンペライザーマーク1000出撃ですか」
「邪魔する輩はエンペライザーの指先一つでダウンじゃ」
 話が何かの拳法伝承者になっていた。
「エンペライザーの指先からは破壊光線が出る」
「オーソドックスですね」
「ミサイルも出るぞ」
 かなりの重装備である。
「あのティアマト級巨大戦艦も一撃じゃ」
「一撃って連合軍の象徴ですよ」
 連合軍四千個艦隊のそれぞれの旗艦であり二十キロもある巨大な戦艦である。エウロパとの戦争においてもその威容を誇示しとてつもない攻撃力と防御力を見せつけた。そのあまりもの強さからまさに連合軍の象徴となりまた一隻も沈まなかったことから不沈戦艦とまで謳われているのだ。
「それも一撃ですか」
「何なら見てみるか?」
 軍を恐れる博士ではない。
「その光景を。あの男の家を破壊した後で」
「遠慮します」
 それはすぐに断る野上君であった。
「そんなことしたらそれこそ今度は異次元空間に隔離されますから」
「ふむ、面白くないのう」
 それを聞いてあからさまに詰まらなさそうな顔をする博士であった。
「異次元なんぞ何時でも脱出できるというのに」
「異次元人はかなり悪質らしいですから」
 これは特撮で得た知識である。
「ですから止めておきましょう」
「わかった。ではあ奴の家を木っ端微塵にしてやろう」
 それでもこれは行う博士であった。 
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