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八条学園騒動記

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第百一話 博士の行いその四


「殺人罪と死体遺棄、危険物所持法違反に銃刀法違反、その他諸々のことで」
「今週は少ないのう」
 それだけの逮捕状を見ても平気であった。
「山羊の餌にもならんぞ」
「山羊の餌って博士」
「そうじゃ、また面白いことを思いついたぞ」
 早速とんでもないことを考えついたのであった。
「そこいらの暴走族なり不良を一匹捕まえてな」
「またですか」
 野上君の話は結局全く聞いていないのだった。
「それの首を切って口を改造してシュレッダーにする。それでどうじゃ」
「人間シュレッダーですか」
「当然身体は別に使う」
 無駄はしない博士であった。
「頭を爆弾にして人間爆弾にしてのう。それを仲間のところに潜り込ませてな」
「爆発させるんですね」
「これでまた暴走族が減るぞ」
 更正という言葉もこの博士の辞書にはない。
「どうじゃ、一石二鳥の改造じゃろ」
「もう何も言いたくないです」
 既に諦めに入っている野上君だった。
「本当にそのうち何があっても知りませんよ」
「国家権力には屈せん」
 一聴だけでは実に格好いい言葉である。だがテロリストを擁護する言葉に使われることも多い。国家権力に反対するのならいいと無差別テロを容認する店員を置いていた店は暫くして潰れたという話がある。巷ではあんな馬鹿を置いていたらそれも当然だと言われた。
「何度捕まってもな」
「何度も捕まっていたら普通反省しませんか?」
「反省?知らんのう」
 博士の頭には最初からインプットされていない言葉だ。
「何語じゃ、一体」
「それで終わりですか」
「だから何語なのじゃ」
 本当に知らないのであった。
「それは」
「知らないのならいいです。とにかくですね」
「うむ」
 野上君は少し強引に話を変えてきた。
「このロボットがメインですか、今回は」
「街を破壊する」
 やはりテロであった。
「今回はそれで行く。よいな」
「エンペライザーマーク1000でですね」
「うむ、マーク1000じゃ」
「一体どんな力があるんですか、これは」
「まず強い」
 最初にこれであった。
「光の巨人ですら倒せるのじゃよ」
「つまり五十メートルもある相手と喧嘩できるんですか」
「ついでに何処ぞの似非科学研究家も踏み潰せる」
「それは大した能力じゃないんじゃないですか?」
「これは重要じゃ。いや」
 ここで博士の考えが突然変わった。
「野上君、わしは考えを変えた」
「どういうふうにですか?」
「街を破壊するのは止めじゃ」
 それは止めたのであった。
「それはな。中止する」
「それはいいkとおですけれど」
「あの似非科学研究家を潰してくれる」
 だが破壊活動を行うことには変わりがないのであった。破壊衝動については最初から抑えることなぞ考えもしない博士なのであった。
「下らない本ばかり書きおって」
「まあ確かにあの人の本はつまらないですね」
 これについては野上君も認めるのであった。しかも全肯定であった。
「ああだこうだと屁理屈で自分の知ってるだけのことで全部決め付けてるだけですよね」
「左様」
 博士の顔が見る見るうちに不機嫌なものになっていっている。
「それであの特撮がどうとかあのアニメがどうとか。ではわしはどうなるのじゃ」
「博士も全否定していましたよ」
 こうした人種に対しては最もしてはならないことである。
「有り得ないとか言っていましたね。自分の本の中で」
「しかしわしは現にこうしてここにおる」
 これ以上はないまでに説得力のある言葉であった。本人が実在していてそれを否定するということは相当どころの無理ではない。 
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