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八条学園騒動記

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第九十九話 先生の顔その四


「科学と言っても色々あるぞ」
「この場合は眼鏡を使うわ」
「眼鏡をか!?」
「ええ、そうよ」
 静かにタムタムに対して述べる。
「赤外線付の眼鏡でね。見ていくわ」
「あっ、それがあったんだ」
 ローリーはそれを聞いてうんうんと頷いた。納得した顔になっている。
「確かにそれだと確かに素顔がわかるね。ただ」
「ただ?」
「ロシュフォール先生勘いいから」
 ローリーが危惧するのはそこであった。やはり伊達に学校内部の秘密警察的存在のトップを務めているというわけではないのである。ハイドリヒもまた手強い男であった。
「見破られないようにしないとね」
「それは任せて」
 プリシラは表情を変えずに答えた。
「こちらも下手なことはしないから」
「だったらいいけれど」
「最低素顔が男か女かまでわかればいいから」
「それだけ?」
「そう、それだけ」
 今度はジュデイに言葉を返した。
「それだけわかればいいのよ」
「何かそれだとあまり大した赤外線いらないね」
「そうね」
 ローリーとジュデイはそれを聞いて言い合うのだった。顔を見合わせて。
「まあそれはそれでいいけれど」
「まあとにかく」
 話が動く。
「それで行けばいいわね」
「そうね」
「これで大体絞られたか」
 タムタムは話を纏めるようにして述べた。
「ロシュフォール先生の謎の解明もな」
「後は動くだけ」
 プリシラは言う。
「やりましょう」
「ああ」
 こうして四人はまた動くのだった。そしてその結果遂に先生の正体がわかったのだった。
「ああ、本籍はあそこの先生だったんだ」
「そうだったわ」
 四人はまた学校の屋上に集まっていた。そこで車座になって座りめいめい牛乳やサンドイッチ、お茶にお握りといったものを食べつつ話をしていたのだった。空には青空が広がり美しい青を見せている。
「スポーツ科のね」
「スポーツ科かあ」
 ローリーはプリシラの説明を聞いて何処となく納得した顔を見せていた。八条学園高等部は様々な学科がある。彼等は普通科だが他にも商業科や工業科、農業科と様々な学科があるのだ。スポーツ科もそのうちの一つというわけなのである。
「あそこは遠いからついつい行かないからね」
「そうだな。迂闊だった」
 タムタムもそれについて言う。彼は玄米のお握りを食べている。
「あそこの先生だったか」
「意外にも変装はしていなかったわ」
 プリシラはこのことを報告する。
「だからすぐにわかったわ」
「じゃあ別にあれこれと調べる必要はなかったのね」
「そうなるわ」
 今度はジュデイに述べた。
「拍子抜けかしら」
「まあね。何だって感じ」
「けれど」
 しかし。ここで何かが変わった。
「けれど?」
「一つ気になることがあったわ」
「気になることって」
「何?」
「何なんだ、それ」
 三人はその気になることについて聞かずにはいられなかった。殆ど無意識のうちに身体を乗り出して彼女に対して問うていたのであった。
「あの先生はどうやらただ風紀部の顧問をしているだけじゃないわね」
「!?どういうこと?」
 ジュデイはそれを聞いて首を傾げさせた。 
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