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八条学園騒動記

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第九十九話 先生の顔その五


「ただ風紀部の顧問をしているだけじゃないって」
「何か話がわからなくなってきたんだけれど」
 ジュデイだけではなくローリーも首を傾げさせていた。
「どういうことなの、それって」
「プリシラ」
 タムタムは表情こそ変えてはいないが目の光を怪訝なものにさせてプリシラの名前を出して問うてきた。
「何かあったな」
「あの先生はある人と対立しているわ」
「ある人だと」
「そう。学校の外にいる人だけれど」
 話がさらに大きくなってきていた。今度は学校の外にまで話が及んでいた。
「その人とね」
「誰、それ」
 ジュデイはすぐにそれを尋ねた。
「学校の外にいる人って」
「博士よ」
「博士!?」
「博士っていうと」
「天本博士」
 プリシラはある名前を出した。
「天本破天荒博士。知っているかしら」
「天本破天荒博士っていうと」
 この名前を聞いた一同の顔が急激に曇っていった。
「確か有名な科学者よね」
「科学者だっけ。あの人」
 ローリーはジュデイの今の言葉には懐疑的な表情を見せた。
「違ったんじゃないの?」
「マッドサイエンティストかしら」
「そうとしか思えないよね」
「ねえ」
「やっぱり知ってるのね」
 プリシラは二人のやり取りを聞いて静かに頷いたのだった。
「あの博士のことは」
「シャバキと並ぶ連合きっての危険人物」 
 タムタムの言葉だ。
「確かそうだったな」
「そうよ。その博士がこの八条学園のすぐ側にいるのは知ってるわよね」
「知りたくないけれどね」
「っていうかいないことにしたいわ」
 ローリーとジュデイの顔に不吉なものが漂う。
「何しでかすかわからない人だからね」
「そうだよね。この前だって」
 ローリーはここであることを話に出すのだった。
「ほら、人工衛星を発射してね」
「その人工衛星が無限増殖するやつだったのよね」
「そうそう、他の衛星を攻撃してね」
 実にはた迷惑な開発である。少なくともこの様な人工衛星の開発が連合中央政府の法でも日本の法でも禁止されているのは言うまでもない。
「そんなの打ち上げて大騒ぎになったよね」
「あの時軍が出てね」
「大変な騒ぎだったよね」
「あと一歩で大惨事だったわ」
 これが実際にあった話なのだから恐ろしいのだ。
「その博士よ」
「そうか」
 タムタムは今のプリシラの言葉に暗い顔になる。
「あの博士が今回の話に関わるのか」
「関わるというかね」
 プリシラは言葉を続ける。
「ロシュフォール先生は博士の監視をしているようね」
「監視ってちょっと」
 ジュデイは今のプリシラの言葉に顔を曇らさざるを得なかった。
「それってかなりやばいじゃない。っていうか」
「命の危険があるね」
「そうだな」
 ローリーとタムタムも言うのだった。
「何でそんなことを」
「事情は私にもわからないわ」
 プリシラは三人に対してクールに言葉を返したのだった。
「ただ」
「ただ?」
「どうやら話が余計に大きくなったみたいね」
「ああ、それはな」
 これについてはタムタムも異論がなかった。
「下手に関わるとこちらもまずいぞ」
「ええ。どうしたものかしら」
 ジュデイは言う。 
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