八条学園騒動記
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第九十八話 ドードーの親子丼その七
「大切なこと、忘れてないよね」
「大切なこと?」
「最後はあれじゃない」
にこりと笑ってまた述べた。
「デザート。忘れてない?」
「あっ、そういえば」
言われてそれに気付くジュデイだった。
「考えてみれば誰も作ってないんじゃ?」
「済まん、俺もだ」
タムタムもここで気付いたのだった。
「デザートのことまでは考えていなかった」
「そうよね。ドードーって目立つから」
「それにばっかり目がいっちゃったね」
「そうね」
ジュデイはローリーの言葉に対して頷く。
「失敗したわね、本当にね」
「ええ。けれど」
それでもジュデイは言う。
「買いに行けばいいわよね。何にする?」
「それなら心配はいらないわ」
しかしここでプリシラが口を開いてきた。
「心配はいらない?」
「そうよ。だってもうデザートはあるから」
「あるの」
「ええ」
三人に対して声だけで頷く。その動作が何ともプリシラらしく無表情で無機質なものに見えた。そのプリシラらしくクールに言葉を続けてきた。
「ゼリーがね」
「ゼリー」
「オーソドックスにオレンジのゼリーがね。あるわ」
こう述べるのであった。
「それでどうかしら」
「ゼリー。いいね」
「そうね」
ローリーとジュデイはそれに乗ってきた。二人共ゼリーが好きなようである。
「タムタムはどうなの?」
「俺もゼリーは好きだ」
そしてこれはタムタムも同じであった。
「それもかなりな」
「そう。じゃあ決まりね」
プリシラは三人の言葉を全て聞いたうえで納得した顔になるのだった。といっても表情が変わったようにはどうしても見えないのであるが。
「冷蔵庫にあるから」
「冷蔵庫になのね」
「ゼラチンで作ったゼリーよ」
プリシラはこうも述べる。
「だから弾力もかなりいいわよ」
「いいわね、それって」
ジュデイは弾力があると聞いてさらに顔を綻ばせる。
「ゼリーはやっぱりあれよね。弾力よね」
「寒天のそれもいいけれどね」
ローリーはそちらもお気に入りなようである。にこにことした顔で親子丼を食べながらの言葉だ。食事が自然に進みだしていた。デザートのことを聞いて。
「弾力のあるゼリーかあ」
「それじゃあまずはあれだな」
タムタムはクールに言う。
「この親子丼を食べ終えて」
「そうね。まずはそれからね」
「おかずもね」
ジュデイとローリーもそれに頷いて食べていた。
「それにしてもこの内臓って」
「これも美味いな」
ジュデイとタムタムは今度は内臓を食べていた。
「味付けもいいじゃないか」
「やっぱりお醤油よね」
ジュデイが言うのはそれであった。
「お醤油。最初はおソースにするつもりだったけれど」
「変えたのか」
「ええ。それがよかったみたいね」
「そうだな。親子丼だからな」
言うまでもなく和食である。和食を和食にしているものは何かというとやはり醤油である。これに関してはこの時代でも変わりはしないことだ。
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