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八条学園騒動記

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第九十八話 ドードーの親子丼その六


「それって」
「しかも人間だけじゃなかったの」
 プリシラの話は続く。
「人間が持ち込んだ猿や猫がドードーを襲い」
「オーストラリアやニュージーランドと同じだな」
 タムタムはその話を聞いて顔をさらに顰めさせた。
「欧州の奴等が何も考えずに持ち込んだ動物で生態系が破壊されたか」
「その通りよ。鼠もいたし」
「鼠も!?」
「船の中にいたのよ」 
 こうローリーに説明するのだった。
「その鼠達が船から出て来てね。陸に上がって」
「それでドードーを襲ったの?」
「雛や卵を食べたのよ」
 そういうことだった。食べられるのは親鳥ばかりではないということである。むしろ子供や卵を失う方が種の存続に関して深刻な事態なのである。
「その結果。僅か百年で地球のドードーは」
「絶滅」
 三人の口から自然にこの言葉が出た。
「そういうことか」
「結局のところ」
「そうだったの。それでいなくなったのよ」
「酷い話ね」
 ジュデイはここまで聞いて溜息混じりに述べた。
「本当に。エウロパ人は」
「少なくとも今の連合ではない話だな」
 タムタムは確信している声で述べた。
「ここは種の存続や動物保護には五月蝿いからな」
「うん、そうだよね」
 タムタムの言葉にローリーが頷く。
「動物の持ち込みとかかなりね」
「種の保存は大事だ」
「その通りよ」
 プリシラは今のタムタムの言葉を静かに肯定した。
「生態系の維持もね」
「エウロパの奴等はそういうことにはお構いなしか」
「酷い奴等だよね」
「最低ね」
 完全にエウロパを悪者にしていた。連合においてはエウロパは紛れもない悪である。このことは自然に関することでも同じなのだ。
「おかげでドードーに会えたのは宇宙に出てから」
「他の多くの動物も」
 それだけかつて地球にいた動物が絶滅してしまっていたということだ。連合ではそれを殆どエウロパの大航海時代や帝国主義時代での蛮行としているのだ。
「出会えたっていうのは」
「エウロパの罪は重いな」
「けれど出会えたわ」
 プリシラはぽつりと呟いてみせた。
「そして今こうして」
「食べていると」
「親子丼パーティーの主役になってるってことね」
「ええ。だからいいと思うわ」
 これがプリシラの考えであった。
「これでね。それで」
「ええ」
「食べましょう」
 こう三人に言うのであった。
「話していて手が止まっているわよ」
「おっと」
「確かに」
 言われてそれに気付く三人であった。見ればプリシラは話の間も静かに食べていた。気付けば彼女だけかなり食べてしまっている。
「食べないとな。折角の親子丼だしな」
「そのドードーのね」
 ジュデイがタムタムの言葉に続く。
「内臓もあるしお味噌汁も」
「ああ、そうそう」
 ここでローリーが言ってきた。
「何?ローリー」
「メインを食べるのもいいけれどさ」
 ジュデイに応えて述べてきた。 
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