八条学園騒動記
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第七十九話 本番その二
「今度はどうしたの?」
「その部長さんだけれど」
話は何故か今まで為されなかったことに対して向かう。
「どんな人なの?」
「私達と同じ二年よ」
「あれ、同級生なの」
「ええ、そうよ」
七海はそうパレアナに答えた。
「意外だった?」
「意外っていうかな」
パレアナは彼女の言葉に少し首を捻ってから答えた。
「何かそれは思いもしなかったわ」
「そうなの」
「ええ。てっきり三年の人だと思っていたから」
部活の部長やキャプテンは三年である。これは学校の部活なら当たり前のことである。パレアナも今回もそうだと考えていたのである。
「違うんだ」
「三年生の女の人でサーフィンやってる人いないらしいのよ」
「ふうん」
これもまた初耳であった。
「一人も?」
「そう、一人も」
七海はまた答える。
「少なくとも部活でやろうって人はおられなかったのよ」
「じゃあ仕方ないわね」
「そういうことなのよ。だから彼女が部長になったのよ」
パレアナだけでなくコゼットに対しても話していた。
「わかってくれたかしら」
「ええ。それでね」
まだ聞くことがあった。パレアナはさらに七海に尋ねる。
「彼女の名前何ていうの?」
「ティコっていうのよ」
七海はまずは名前を答えてきた。
「ティコ=ウルブズっていうのよ」
「ティコね」
「そう。水産科の娘よ」
「水産科だったの」
「ええ」
八条学園には普通科の他にも商業科や工業科、農業科、その水産科、看護科等と様々な学部がある。巨大なだけはあるのだ。
「そうなのよ。そこの二年生ってわけ」
「それでどんな娘なの?」
今度はコゼットが七海に尋ねる。
「今日ここに来ているのよね」
「ええ、もうすぐ来ると思うわ」
七海がそう言うと早速更衣室の扉が開いた。そうして黒い髪と瞳を持つ白人の女の子がやって来た。白人だがアジア系の血も入っている感じだった。背はあまり高くなく均整の取れた身体つきをしている。黒い目が大きくそれがまず目に入る。
「あっ、彼女よ」
「彼女なんだ」
「そうよ。ティコ」
七海は今度はその彼女の名前を呼んだ。
「この二人よ。いつも話している」
「助っ人の二人ね」
「そうなのよ、この二人」
にこりと笑ってティコに話している。
「何かやっと紹介できるわね」
「そうね。はじめまして」
今度はティコがにこりと笑う。その顔で二人を見てきたのであった。
「ティコ=ウルブズよ」
「はじめまして。パレアナ=ホグマンよ」
「コゼット=ミナワ」
二人もそれに応えて名乗った。
「水産科で国籍はペルシャよ」
「ペルシャ人なの」
「ええ、そうなのよ」
にこりとした笑みのままでパレアナの問いに答えた。
「あまりそうは見えないってよく言われるけれど」
「それは別に」
「ねえ」
コゼットもそうは思わなかった。
「私だってエチオピア人には見えないって時々言われるし」
「私も。イロコイ人?って言われたり。ちなみに私はインドネシアよ」
「エチオピアにインドネシアなの」
「そうなの」
「宜しくね」
何気にかなり多国籍な状況になっていた。これもまた非常に連合らしいと言えるしそれと共に八条学園らしいと言えるものであった。
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