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八条学園騒動記

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第七十九話 本番その一


                     本番
 遂にこの日になった。女子サーフィン部の顔見世である。
「いよいよだけれど」
「何か全然緊張しないわね」
 パレアナとコゼットはプールの更衣室でそう話し合っていた。もう既に水着に着替えて更衣室の椅子に向かい合って座って話をしている。
「今まで結構練習してきたしね」
「そうね」
「その度胸を買ったのよ」
 ここで七海が二人に言ってきた。見れば彼女も既に水着に着替えている。
「あんた達のその度胸をね」
「度胸を?」
「そういうこと」
 二人のところまで来てにこりと笑ってみせてきた。
「二人共たくさんの人達の前で何かをするのは慣れてるわよね」
「まあね」
「試合でも何でも」 
 パレアナは女子バスケ部、コゼットは女子テニス部である。大会経験も豊富だ。だから全然平気だったのである。そのうえで度胸も備えているのだ。
「だからよ。スカウトしたのは」
「ふうん」
「有り難いわね」
 二人はその言葉を受けてにこりと微笑んだ。
「頼りにしてもらってるなんてね」
「それじゃあ御期待に添えますか」
「それも頼りにしてるわよ」
 七海は今の二人の言葉も受けて微笑んだ。
「是非ね」
「ええ」
「ところでさ」
 ここでコゼットが七海に言ってきた。
「何?」
「その女子サーフィン部だけれど」
 二人が今協力している部活である。他ならぬ。
「部員はもういるのよね」
「ええ、いるわよ」
 こうコゼットの質問に答えてきた。
「部長入れて五人ね」
「いるんだ」
「しかも五人って」
 今度はパレアナがふと気付いた。
「あれじゃない。特撮ものでよくあるメンバーの数よね」
「そっちに話がいくのね」
 七海はパレアナの言葉にくすりとした笑みになった。
「まあ五人っていったらね」
「水着の色もそれぞれそうした色だったら笑うわね」
「何でわかったの?」
 七海はコゼットの今の言葉には思わず突っ込みを入れた。
「それが」
「それがって」
「本当だったの」
 二人は七海の言葉に呆然となった。
「じゃあ部長さんは赤で」
「ええ」 
 最早伝統になっていた。リーダーは赤、一体誰が決めたのかわからないが少なくともそうなっているのである。二十世紀からだ。
「メンバーの他の色は」
「私達が紫と橙で七海が銀だから」
 二人は今の自分達の水着の色を見ながら話をする。
「青、黒、黄、ピンクってところかしら」
「その通りよ」
 色まで同じであった。
「正解よ」
「ううん、何だか」
「ここまで予想通りだとね」
「けれど別に悪いことじゃないでしょ?」
 七海はあらためて二人に問うた。
「戦隊カラーでも」
「まあそうだけれどね」
「かえってわかりやすいし」
 二人もそれは否定しない。
「それでさ」
「ええ」
 パレアナはあらためて七海に尋ねる。七海もそれに応えて彼女に顔を向ける。 
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