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八条学園騒動記

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第七十七話 はじめてのサーフィンその四


「水着以外は。それでいいっていうから」
「勿論よ。じゃあ明日待ってるからね」
「朝からね」
「パレアナにも話しておくわ」
 七海はそれも忘れないのであった。
「だから明日来てくれるだけでいいから」
「わかったわ。朝からプールかあ」
 コゼットは心なし嬉しそうであった。見れば顔がにこにことしている。
「それも悪くないわね」
「そうでしょ?実は私もね」
 コゼットの声も機嫌のいいものであった。
「朝に泳ぐのも好きなのよ。特に」
「特に?」
「かなり飲んだ時なんか」
 連合各国ではアルコールの制限年齢はかなり低い。だから皆もこうしておおっぴらに酒を飲んでいるのである。ただし酒を飲んで馬に乗るのは禁止されている。
「泳いでお酒を抜いているのよ」
「それってかなり危ないわよ」
 コゼットはそれには賛成しない顔になった。
「お酒の抜き方としてはかなり」
「そうだったの」
「お酒を抜くのはスープよ」
 コゼットはいつもそうしているようである。
「それを飲んでからゆっくりよ」
「それも知っているけれどね。私はやっぱり」
「冷たい水の中で泳ぐのね」
「ええ、効くわよ」
 確かに効果があるのは間違いない。しかしどうにも賛成できないコゼットであった。
「お勧めはしないけれどね」
「当たり前よ。ひょっとしてあんた」
 ここでコゼットはふと思うのであった。その思ったことを実際に口にする。
「これから飲むつもり?」
「駄目かしら」
「・・・・・・駄目でしょ、普通に」
 そう突っ込まずにはいられなかった。
「明日が初日なのに。流石にそれは」
「初日じゃなかったらいいの?」
「最初と最後が何でも肝心じゃない」
 何故かお酒のことになると真面目になるコゼットと真面目にならない七海であった。
「やっぱりそこは」
「案外コゼットも厳しいのね」
「今日はとにかく謹んで」
 念を押してきた。
「いいわね、それで」
「わかったわよ。じゃあとにかく明日の朝ね」
「ええ、それはわかったわ」
 あらためて七海の言葉に頷くのであった。
「早速ね。はじめましょう」
「そういうことでね。それじゃあ」
「ちょっと待って」
 コゼットは電話を切ろうとした七海を呼び止めるのであった。
「どうしたの?」
「一応言っておくけれど」
 その言葉が少し剣呑な響きを持っていた。
「あまり飲み過ぎないようにね」
「何よ、信用していないっていうの?」
「あんたも二年S1組のメンバーでしょ」
 信用していない理由はそこにあった。
「それでどうやって信用できるっていうのよ」
「厳しいわね、それはまた」
「厳しいも何もわかってるのよ」
 彼女がこれからどうするのか。コゼットにははっきりとわかっているのであった。
「あんたのことが。だからよ」
「あら。言うわね」
「言うわよ」
 ここでは何故か不敵な笑みになった。
「わかってるから」
「まあ飲むことは飲むわ」
 結局のところそのつもりであった。今それを正直に答える七海であった。
「それでもね」
「大丈夫だっていうの?」
「そうよ。まあ任せておいて」
 何故か異様に自信に満ちた様子であった。コゼットはその自信の根拠が一体何であるかわかりかねた。それでそれを問わずにはいられなかった。
「どうしてそう自信たっぷりなのよ」
「酔ったら次の日残らない方法があるからよ」
 そうコゼットに答えてきた。
「ちゃんとね」
「お薬とか?」
「まあそれもあるけれど」
 だが他の方法であるらしい。それも話していることからわかるのであった。
「他のやり方を知ってるからね」
「何かよくわからないけれど」
 コゼットは話が見えなくなってきていた。電話の向こうで首を傾げるのであった。 
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