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八条学園騒動記

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第七十五話 明香の願いその四


「明日二人でね」
「もっと多めに買わない?」
 明香は言ってきた。
「多めに?」
「お父さんやお母さんの分も」
 家族のことも忘れないしっかり者の明香であった。
「それに」
「兄さんの分もね」
 彰子もそれに気付く。彼女達にとっては家族はかけがえのないものだからだ。
「御免なさい、忘れていたわ」
「買う前に思い出してよかったわよね」
「そうね」
 考えればそうである。買う前に思い出して何よりだった。二人はそのことに笑顔を浮かべ合うのだった。ここでの動きは完全に合わさっていた。
「それは」
「じゃあ行きましょう」
 明香はここまで話したうえで姉にまた声をかけた。
「スーパーに」
「ええ。御飯も一緒に買わない?」
 ここで彰子はこれも提案してきた。
「明日の分。そうしたらお母さんが楽できるし」
「そうね」
 その通りだった。何気に細かいところに偶然的に気がつく彰子であった。そうしたところが何気に彰子らしいと言えば言えるものであった。
「一応何を作るのか考えてね」
「この前お魚だったわね」
「ええ」
 話が少し所帯じみたものになってきた。やはりお菓子と夕食では話す内容も違ってくる。砂糖だけではなくそこに醤油や胡椒も入るからである。
「じゃあ今日は鶏肉かしら」
「だと思うわ」
 二人の家の料理のメインはある程度ローテーションである。二人はそれに基いて明日の料理、今日買うものを考えているのである。これもまた女の子であった。
「じゃあ明日は」
「お肉ね」
 明香はそう考えた。
「何がいいかしら」
「羊かしら」
 彰子はふと言った。
「それとも鯨。あっ、これは」
 これはすぐに引っ込めた。
「お魚に入れてもいいわね」
「海や川にいるから」
 星によっては川にいる鯨もいるのである。何十メートルもの鯨が川にいたりする星もあるのだ。
「じゃあジュゴンとかマナティーもそうね」
「ステラーカイギュウも」
 どれも連合でよく食べられているものである。なお連合では一千年前と違い鯨も普通に食べられている。オーストラリアの鯨料理は名物の一つでもある。
「それじゃあ鳥は」
「ダチョウとかドードーとかもよ」
 地球で絶滅した鳥も他の星にはいるのだ。ドードーは養殖されて貴重ではあるにしろ愛玩用にも食用にもなっている。その卵を食べたりするので太った鶏のようなものになっている。
「だからここは」
「恐竜?」
 彰子はふと恐竜を出してきた。
「それだとどうかしら」
「味は鶏肉に似てるし」
 しかし明香はそれに難色を示す。
「それもどうかしら」
「じゃあ鰐とか蛙も」
 どちらも味は鶏肉に似ている。
「駄目なのね」
「そうなるわね」
「じゃあやっぱり羊かしら」
「それでどう?」
 こう姉に問い返すのであった。 
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