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八条学園騒動記

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第五十四話 門が開いてその四


「オードブルですよ」
「じゃあメインディッシュは何なの?」
 蝉玉は話がわからなくなりついセーラに尋ねた。
「まさか恐竜とは」
「それもあります」
「それもって」
 皆またしてもこの世のものとは思えない言葉を聞いてしまった。
「恐竜をどうしたんだろう」
「丸ごと煮てみました」
 よりによってとんでもない言葉であった。
「他にはステラーカイギュウの丸焼き」
「ステラーカイギュウ・・・・・・」
 地球ではもういなくなってしまったが他の多くの惑星には生息している。肉は柔らかく美味でかなりの人気の食材の一つである。
「それまで」
「あと鯨の活け造り」
「凄いんだ」
 彰子はそれを聞いても態度を変えない。おっとりしたままである。
「鯨まで」
「ゼウグロドンです」
 所謂昔鯨である。進化した鯨達よりも身体が細長いのが特徴である。
「それを特別に」
「美味しそう」
「いや、そういう問題じゃないよな」
「なあ」
 皆話を聞いているうちに何か途方もないことになっているのに気付きだした。
「何処で調理したんだろうな」
「それも誰が」
 そうした問題が出て来た。だがセーラはそんなことは全く気にはしていないようである。相変わらず優美な笑みを浮かべながら話を進めるのであった。
「さあ。まずはオードブルをどうぞ」
 バイキングを食べるように勧める。
「全てはそれからです」
「了解」
「それじゃあ」
 皆それに頷き食べることと飲むことを再開させた。まずは全て食べてしまった。
 それが終わるとそのメインディッシュであった。本当に来た。
「ううむ」
「圧巻だな」
 ブロントサウルスの丸蒸しにステラーカイギュウの丸焼き、ゼウグロドンの活け造りが。今運ばれてきたのであった。しかも一つの皿にだ。
「さあどうぞ」
 セーラはその優美な笑みで皆に勧める。
「我が家の自慢の料理です。さあ」
「本当に出て来たよ」
「マジでマウリアってすげえな」
 皆本当に出て来た料理を前に色を失っている。豪快と言うにはあまりにも壮絶なメニューであった。
 だがあれこれ言ってもはじまらない。食べてみないことには。それで実際に食べてみた。
「おや」
「これは」
 まずはゼウグロドンの刺身だ。生姜醤油である。
「いけるな」
「ああ」
「これは和食でしたね」
 セーラはにこりと笑って一同に問うてきた。
「お刺身ですから」
「ええ、まあ」
 彰子が彼女に答える。
「元々は中国の料理だったらしいけれどね」
「そうなのですか。中国の」
「けれど和食って考えていいわよ」
 横から蝉玉が答えてきた。
「大体はね」
「わかりました」
 蝉玉のその言葉にこくりと頷いてみせる。
「それではそのように」
「あとステーキはうちだよね」
 今度はアメリカ人のスターリングが尋ねてきた。
「やっぱり」
「はい、その通りです」
 やはり落ち着いてそのうえでしっかりした声で答えてきた。
「それを意識してみましたけれど」
「うん、いいよこのステーキ」
 スターリングは上機嫌でステラーカイギュウのステーキを食べていた。
「焼き加減もソースも。よく合っていて」
「そうね」
 蝉玉も恐竜を食べながら言う。
「タレの具合も。中華料理がわかってるじゃない」
「我が家のシェフはどちらもかなり修行してきましたので」
 そう二人に答える。
「どちらも十年ずつ」
「そりゃ凄い」
「本格的ね」
「あとタイとベトナムとロシアも十年ずつ」
 ここから話がおかしくなってきた。
「トルコもそうですね。メキシコも」
「何かまた話が妙になってきていないか?」
「なあ」
 クラスメイト達はセーラの話を聞くにつれ目を顰めさせてきた。理由はその歳月である。
「ブラジルには何年でしたっけ。あとパスタに和食にお寿司にデザートに」
「ちょっと待ってくれ」
 ここでギルバートが彼女に突っ込みを入れてきた。
「はい?」
「君の家のシェフは一体何年修行をしていたんだ?」
「そうよねえ」
「もう百年は越えてるんじゃ」
 ジュディとパレアナが彼の後ろで言う。聞いていれば滅茶苦茶な時間なのだ。なおこの時代の平均寿命は百歳を越えてはいる。
「よかったら教えてくれ。どれだけなんだ」
「確か三千年です」
「へっ!?」
 皆その数字にまずは言葉を失った。
「三千年!?」
「セーラの家のシェフは仙人か!」
 なおマウリアでは本当に仙人がいるという噂があり宇宙空間を人が歩いていただの何千年も生きている人間だのいう話が本当にある。少なくともそれは連合においては有り得ない話である。だがマウリアではあるのだ。 
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