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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百二十九話 地獄元帥の陰謀

             第百二十九話 地獄元帥の陰謀
福岡を救ったロンド=ベル。だが三輪の言葉は彼等にとって不愉快なものであった。
「馬鹿者共が!」
いきなりそう怒鳴ってきた。
「遅いではないか!何をしておったのだ!」
「おい、このおっさん」
シンは彼を見て思わず眉を顰めさせた。
「いきなり何言ってるんだ?」
「そうよね」
ルナマリアがそれに頷く。
「いきなり馬鹿だなんて。何なのよ」
「あの、長官」
それにグローバルが言う。
「我々はベルリンからこちらに来たので」
「そんなことはわかっておるわ!」
三輪は彼にも言わせない。
「それだけの戦力があって!何をウロウロとしておったか!」
「おい、おっさん」
シンがそのあまりもの言い様に反論してきた。
「何だ貴様は」
「俺達だって遊んでいたわけじゃないんだよ」
そう言い返す。
「それで何だ、その物言いはよ」
「何か悪いのか?」
「ドイツからこっちにユーラシア大陸横断して来ているんだ。それでそんな言い草はないだろうが」
「貴様は誰だ?」
三輪はシンに問うた。
「俺か?俺はシン=アスカだ」
シンはそう名乗った。
「ザフトからこっちに入った。この赤い軍服を見ればわかるだろう」
「フン、貴様か」
三輪はそれを聞いてさらにぞんざいな声を向けてきた。
「コーディネイターか。それが一体何の用だ」
「俺達だって命懸けでベルリンの人達もステラも守って戦ってすぐにこっちに来たんだ。それが何だその言い草は」
「そうだ、シンの言う通りだ」
カガリもそれに賛成してきた。
「私達だって遊んでいたわけじゃない。それが何だ、遅いだの何だのと。それでもあんたは」
「負けた分際で偉そうに言うな!」
「何ィ!」
「貴様等オーブがだらしないせいで今こうして苦労しておるのだ!あそこには今バルマーの基地がおかれているのだぞ!」
「わかっている!」
「わかっているのなら黙っておれ!この小娘が!」
「小娘で悪いか!」
「負け犬に何も言う権利もないわ!」
「この!」
「まあカガリ」
「落ち着いて下さい」
後ろからユウナとキサカが来て彼女を後ろから掴んで制止する。
「離せ、こいつだけは!」
「よせ、カガリ」
一矢も彼女を制止する。
「今はな」
「しかし!」
「シンもだ。いいな」
「あ、ああ」
「クッ・・・・・・」
「とにかくだ」
三輪はこめかみをヒクヒクと奮わせたまま述べる。
「貴様達にはすぐに別の戦場へ向かってもらう」
「別のですか」
「コーディネイターには聞いておらんわ!」
タリアにすぐに怒鳴り返した。
「なっ・・・・・・」
「黙っておれ!」
言葉を失うタリアにさらに言った。
「わかったか!」
「・・・・・・・・・」
「まあ落ち着かれて下さい」
呆然とするタリアに未沙がそっと囁いた。
「いつものことですから」
「はあ」
「広島に向かえ。よいな」
「広島にですか」
「そうだ、今瀬戸内海にミケーネの大軍が姿を現わした」
彼は言う。
「それを叩き潰せ。よいな」
「わかりました。それでは」
「わしは東京で全軍の指揮をあたる。貴様等はその下に入ってもらうからな」
「いえ、長官」
それにはブライトが異議を呈する。
「何だ!?」
「我々は独立部隊ですのでそれは」
「五月蝿いわ!」
三輪はその言葉に対してまた怒鳴り返した。
「黙って命令に従え!わかったか!」
そこまで言うと自分からモニターを消した。反論を一切許さない、そんな有様であった。
「あいつ!許さない!」
カガリはまだ叫んでいた。
「私達が負け犬だと!」
「コーディネイターの何処が悪い!」
シンもその横で同じであった。彼はトダカとアズラエルが抑えていた。
「あいつだけはこの手でぶん殴ってやる!」
「そうだ!そのまま銀河の果てまで吹き飛ばしてやる!この左でな!」
「それは何のボクシング漫画ですか」
後ろから抑えているアズラエルがそれに突っ込みを入れた。
「全く。また変な漫画を読んで」
「あの漫画は変な漫画じゃないぞ」
シンはそれに反論した。
「あの人の漫画は名作ばかりじゃないか」
「まあ確かに」
意外にもアズラエルは漫画にも造詣が深いようである。
「あんただってあの機械の国が悪役の漫画読んでいたよな」
「あれは僕の愛読書ですよ。主人公がいいですね」
「待て」
だがそれにコウが注釈のようなものを付けてきた。
「あの人の漫画は主役は全部同じ顔じゃないのか?」
「そうだな。俺も好きだが」
アムロもそれに頷いてきた。
「特に天馬はな」
「何か意味深いお話」
エクセレンがそれを聞いて苦笑いを浮かべていた。
「私も無関係じゃない気がするし」
「私もなのよねえ」
レミーも同じであった。
「アムロ中佐やあんたともね」
「何でかしらね」
「私もだよ、マドモアゼル=レミー」
ブンドルまでそうであった。
「これも運命の赤い糸なのだよ」
「そんなこと言ったら際限ないんじゃないかな」
キリーがそれに突っ込みを入れる。
「俺だってそうだしな」
真吾が名乗りをあげた。
「どうにもあの漫画には他人に思えない奴がいる」
「確かにね」
沙羅もそれに頷く。
「私だって仮面がやけにね」
「あっ、俺も」
「俺もだ」
雅人に亮もそれは同じであった。
「俺羽根が好きだな」
「俺はブンドルと同じだな」
「俺もだな」
アランもであった。
「キリーと同じキャラクターをだ」
「お互いライオンが好きみたいだな」
「ああ」
「俺はあの六角形の剣が気に入ったぜ」
忍までもがそうであった。
「あれを持って暴れ回りたいぜ」
「何かあの人の漫画に妙な思い入れある人が多いんだな」
シンは改めてそれに気付いた。
「何だかな」
「ですからシン君」
アズラエルがまた言ってきた。
「ここは落ち着いて。後でゆっくりとサンドバックでも叩いて」
「カガリさんも」
「ああ」
カガリもアズラエルの言葉に頷いた。
「それにあの人はいつもああですから。怒っていたら身が持ちませんよ」
「いつもああなのか」
「その通りだ」
京四郎がそれに答えた。
「どうしようもないからな」
「あれでも今日は大人しい方じゃないかしら」
ナナが言う。
「酷い時なんかもう」
「銃殺だ、非国民だって凄いんだから」
ファが呆れた顔で述べる。
「もう手がつけられないのよ」
「そんなにか」
「だからだ。そんなに怒ってはいけないんだ」
カミーユがシンとカガリに言った。
「わかったな」
「あ、ああ」
「何となくな」
「タリア艦長もね」
フォウはタリアを気遣ってきた。
「あまり御気になさらずに」
「え、ええ」
タリアはそれに応えた。
「聞き流してもらえれば」
「わかったわ」
フォウのその言葉に気を取り直した。そしてようやく落ち着きを取り戻してきた。
「しかしよ」
シンはあらためて述べた。
「あのおっさんだけれど」
「ああ」
一矢がそれに応える。
「大丈夫なのか?あれでましだなんて」
「当然大丈夫じゃないわよ」
それにナナが答える。
「無茶苦茶なんだから」
「やっぱりな」
「あのおっさんには連邦軍も手を焼いている」
京四郎が言った。
「どうしようもない」
「そうだったのか」
「まあ御前だけじゃないさ」
豹馬がシンに声をかけてきた。
「あのおっさんをぶん殴りたいと思っているのはな」
「豹馬」
「俺だってそうだしな」
「わいの射撃で一思いにってな」
「十三さんは過激過ぎるでごわす。やっぱり絞め落として」
「駄目ですよ、やっぱり薬でこっそりと」
「小介、それもあれよ」
ちずるが彼に囁く。
「ばれるわよ」
「あっ、そうですね」
「何かあのおっさん」
コンバトラーチームの何時にない黒さを見てシンは気付いた。
「とことん人望ないんだな」
「あるわけないわよ」
ナナがまた言った。
「皆迷惑しているんだから」
「全くだ。本当に何とかならないものかな」
「本当にな」
一矢も京四郎もぼやいていた。彼等も三輪には迷惑しているのである。
「このままでは軍全体に支障が出ますよね」
「いえ、既に出ています」
ルリがユリカに突っ込みを入れた。
「それもかなり深刻に」
「やっぱり」
「というか何であんなのが太平洋軍のトップにいるんだ?」
神宮寺は顔を顰めさせて述べた。
「前からそれが不思議だったんだが」
「何ででしょうね、そういえば」
麗もそれにふと思った。
「やっぱりどう考えても」
「何でも相当変な話があったそうですよ」
猿丸がここで言った。
「変な話!?」
「はい、最初は岡長官にそのままして頂くかイゴール長官になって頂く予定でしたけれど」
「僕もそうなると思っていましたよ」
アズラエルがここで言った。
「あの人は幾ら何でも、と思っていました」
「そうなんですか」
マリがそれを聞いて言う。
「はい。ですが気付いたら」
「気付いたらって」
「なっていたんですよ。最初その話を聞いた時は耳を疑いましたね」
「私もだ」
大河もここで言う。
「まさかとは思った」
「前から色々と悪名のあった奴だしな」
火麻も言った。
「捕虜虐待やら民間人への無差別攻撃とかな。滅茶苦茶な話なら一杯あるぜ」
「あの」
キラがそれを聞いて唖然としていた。
「三輪長官って軍人なんですよね」
「そうだ」
「それで将校なんですよね」
「そうだが」
火麻は二度答えた。
「しかも司令官で。それでそんなのですか?」
「信じられねえか」
「それはまあ。幾ら何でも」
「だがこれは現実なのだよ、キラ君」
大河の言葉がやけに重い。
「その結果が今だ」
「はあ」
「まああの時ティターンズのこととかで強硬派がかなり五月蝿かったんですよね」
アズラエルがその時の状況を述べた。
「それで気付いたら」
「あんなのがトップになっていたのかよ」
「連邦軍も何やってるんだ」
カガリとシンが言う。
「言うならこいつをトップにするようなものだろ」
「おい、待て」
カガリはすぐにシンの言葉に反応してきた。
「御前今何て言った」
「聞こえなかったのか?御前を国家元首にするようなものだって」
「私はもうオーブの首長だ!」
「えっ!?」
シンはカガリのその言葉に目を点にさせた。
「今何つった!?」
「だから私はオーブの首長だ!聞こえなかったのか!」
「嘘だろ!?」
彼はその言葉を信じようとはしなかった。
「幾ら何でも御前みたいなのを」
「ああ、シン君」
ユウナがここで話に入ってきた。
「これは本当のことだよ。それで首相が僕で」
「その通りです。カガリ様はオーブの首長であられます」
キサカも述べた。
「確かな証拠もありますので」
「オーブもまた凄いな」
シンはそれを聞いてさらに驚きを深めた。
「こんなのをトップにするなんて」
「御前!言っていいことと悪いことがあるぞ!」
「していいことと悪いこともあるだろ」
「正論って言えば正論だけれど」
ミサトがシンの言葉を聞いて呆れていた。
「この場合まずいわよね」
「シン君ってどうしてもカガリちゃんと仲悪いわよね」
「全く」
リツコにも応える。二人はもう喧嘩に入っていた。
「御前やっぱり死ね!」
「五月蝿い、御前なんかが国家元首やってるなんてこの世の終わりだ!」
「そこまで言うか!」
「だからバルマーが攻めて来るんだろ!」
「そんなこと知るか!」
二人は取っ組み合いの喧嘩になっていた。それを例によって他の面々が抑えるのであった。何はともあれ彼等は広島へ向かうこととなった。
「全くよお」
ディアッカはミネルバのキッチンにいた。そこで何か料理を作っている。
「シンとカガリには何とかならねえのかよ」
「無理なんじゃないですか?」
それを手伝うリィナが言ってきた。
「あの二人って犬猿の仲ですよ」
「そうなんだよな。顔を合わせればそれで喧嘩だからな」
話しながら中華鍋を動かしていた。
「あっ、牡蠣はそのままな」
「はい」
リィナはそれに応える。
「火加減は程々で。おいシーブック」
「何だい?」
「パンはいいか?」
「ああ、ばっちりだよ」
シーブックはそれに応えた。
「そっちはどう?」
「ああ、いい具合だ」
ディアッカはそう答えた。
「これでよしだ。それでな」
「うん」
「具は俺の書いたレシピ通りで頼む。味付けもだ」
「わかったよ。それじゃあ」
「よし、サンドイッチはあれでいいな。あいつとセシリーで充分だ」
「そうですよね」
「それでリィナちゃんよ」
彼はさらに話を続ける。
「牡蠣はオリーブとレモンで味付けだ」
「あっさりしているんですね」
「それがいいんだよ。生牡蠣だからな」
彼は言う。
「あっさりと決めるぜ」
「わかりました」
「それでよ。おっと」
鍋を上手くひっくり返す。
「こっちはこれでいいぜ」
「海老は完成ですか」
「ああ、いい具合だ」
会心の笑みを浮かべている。
「これでいい」
「それにしても中華鍋なんですね」
「おかしいか?」
「フランス料理なのに」
「この料理はこっちの方がいいんだよ」
彼は答える。
「それに量もいるしな。それでなんだ」
「そうなんですか」
「とにかくこれで完成だな」
彼は言った。
「じゃあ後は盛り付けるだけだな」
「はい」
こうして彼等は生牡蠣のオリーブ風味と海老のソテーを出してきた。食べるのはガンダムチームの面々とブレンの面々、そしてミネルバのクルー達である。
「おっ、サンドイッチは」
「ツナサンド」
「ディアッカの言う通りに作ってみたんだけれど」
セシリーはビーチャとモンドにそう答えた。
「どうかしら」
「美味しいよ、これ」
「うんうん、病み付きになりそう」
イーノとエルがすぐに合格点を出してきた。
「それに海老のソテーも」
「いいだろ」
ディアッカは満面に笑みを浮かべてルーに応えていた。
「それは俺の自信作なんだよ」
「中華鍋で何作ってるのかと思ったがな」
「これはなかなか」
ナンガとナッセが舌鼓を打っていた。
「いい感じだな」
「そうね」
ヒギンズとカナンも満足していた。
「ディアッカってお料理上手いんだね」
「そうですね」
「人間何か取り柄はあるものだ」
「っておい」
ヒメとカントの言葉はよかった。だがナッキィの言葉は許せなかった。
「幾ら何でもそりゃねえだろ」
「悪い悪い」
「ったくよお。そういやシンがいねえな」
「シンならカガリの料理食べてるよ」
一緒に来ているアークエンジェルのクルーの中のトールが答えた。
「へえ」
「クサナギの面々はそっちにいるんだ」
「あとキラも」
サイとカズイが答えた。
「カガリのねえ」
ディアッカはどうもそれにピンとこない様子であった。
「どんなのなんだか」
「というかカガリって料理できるの?」
メイリンがふとそれを口にした。
「イメージ沸かないわよね」
ミリアリアも言う。
「意外と言いましょうか」
「何か想像つきませんよね」
フィリスとエルフィもである。
「いや、そもそもさ」
「まともな料理が出るのか」
ジャックとハイネの関心はそこであった。
「カガリのエプロン」
「想像できないよな」
勇はミゲルの言葉に応えた。
「案外似合うかも」
「ああ、それは絶対にないわね」
一緒にいるシンジにアスカが言った。
「絶対にね」
「まあそやな」
トウジも今回はアスカに賛成であった。
「何かイメージできんわ」
「だが興味を持てることではある」
レーツェルが言った。
「何かとな」
「興味、ねえ」
ジュドーがそれを聞いて顔を上に向ける。
「怖いもの見たさってやつだよな」
「うん」
レイは彼の言葉に頷く。
「少なくとも俺は参加したくはない」
「けれどよ」
サンシローがここで言う。ガイキングの面々も来ていた。
「そもそも人間が作るんだからよ」
「大丈夫じゃないのか?」
「そうですよね」
リーとブンタも言う。
「海兵隊なんか相当なもの出たしな」
「俺もちゃんこで相当なの食ったぜ」
ピートとヤマガタケの言葉は残念ながらあまり参考になりそうもないものであったが。
「何か気にはなりますね」
「そうだな」
ディアッカは今度はニコルに応えた。
「どんなのやら」
「それでもだ」
ムウが言った。
「マリュー艦長の料理よりはましだろうな」
「あとラクスのも」
アスランも暗い顔をさせていた。
「恐ろしいんだよ」
「何かよ」
ディアッカが暗い顔をして述べた。
「世の中とんでもねえ料理を作る人間っているよな」
「全くだぜ」
ジュドーがそれに頷く。
「御前クスハの料理食ったことあるか?」
「何か壮絶らしいな」
「壮絶なんてものじゃねえ。あれは兵器だぜ」
「兵器か」
「艦長の料理もな」
「ラクスの料理も」
「何かうちってあれよね」
カナンがここで言う。
「料理上手い人と下手な人の差が凄いわよね」
「凄いなんてものじゃないわよ」
アスカがそれに反論する。
「鉄人と殺人鬼が一緒にいるのよ、そのレベル越えてるわよ」
「で、俺はどっちなんだ?」
「まあ鉄人の部類じゃないの?」
「それは何よりだぜ」
ディアッカはその言葉を聞いて満足したように笑みを浮かべた。
「これでも精進してるんだぜ」
「中華だけじゃなかったのね」
「まあな。ところで綾波は何処だい?」
「ああ、彼女肉食べないから」
シンジがそれに答えた。
「それでね」
「そうかい。まあそれならそれでいいさ」
ディアッカはそれでも特に気落ちしたところはなかった。
「精進料理もできるしな」
「何でもできるのね、あんた」
「おうよ。料理と日舞はな」
「意外と芸術家ってやつ?」
アスカにとっては実に意外なことであった。
「ロックシンガーみたいな外見なのに」
「へへっ、そう言ってもらえると有り難いね」
「それでさ、ディアッカ」
今度はプルが声をかけてきた。
「デザートは何?」
「パフェがいいぞ」
「おうよ」
ディアッカはプルツーの言葉にも快く答えてきた。
「もう先に作ってあるぜ。それで冷蔵庫で冷やしておいたんだ」
「ああ、あれですね」
リィナがそれに応える。
「そう、あれだ。リィナちゃん」
そして彼もリィナに声をかける。
「持って来てくれ」
「わかりました」
そして持って来られたのはラビアンローズであった。かなり巨大である。
「どうだい?再現してみたぜ」
「いいわね」
「おろっ」
ここでレイが急に出て来た。
「何時の間に」
「お肉じゃないから」
それがレイの返事であった。
「それで」
「そうなのか。まあいいさ」
ディアッカも他の者達も快くそれを受け入れた。
「じゃあ皆でな」
「うわっはあ、凄い美味しいよこれ」
「ああ、最高の甘さだ」
護と凱が舌鼓を打つ。
「何か嫉妬しちゃうわ。こんなに料理が上手いと」
「何言っているんだ、命の手料理だってな」
「凱・・・・・・」
「何か急に熱くなってきたよ」
「そうですね」
ヒメとニコルがそんな二人を見て苦笑いを浮かべる。
「まあいいってことさ。にしても」
「にしても?」
皆ここでディアッカの言葉に注目した。
「シンの奴は今頃地獄だろうな」
「確かに」
皆彼が今どういった事態なのかは容易に想像がついた。
「でさ」
トールがアサギ達に尋ねてきた。
「カガリって料理とかの経験は?」
「そりゃ決まってるじゃない」
アサギがあっけらかんとして答えた。
「ないわよ」
「それも全然」
マユラも言う。
「いつも何か戦場みたいだったから、カガリ様」
ジュリも同じだ。三人共実に容赦がない。
「そんなのはねえ」
「ねえ」
「大体女の子らしいことはカガリ様には」
「まあ俺も男なんだが」
ディアッカはそう前置きしたうえで述べた。
「プリシラちゃんみたいにはいかねえか」
「それはないな」
サイが真っ先にそれを打ち消した。
「間違っても」
「そうだよな。じゃあシンは」
「御臨終ってやつだな」
クインシィが冷たく述べた。
「自業自得とはいえな」
「全く。口は災いの元だ」
ジョナサンとシラーの声は冷たい。だが彼等がディアッカの料理を堪能している間にシンは確かに地獄の淵にその身体を置いていたのであった。
「・・・・・・シン君」
ユウナが厳粛な顔でシンに声をかける。彼等は今クサナギの食堂にいた。
「わかっていると思うが」
「はい」
シンもまた蒼白の顔でそれに頷く。
「僕はカガリの料理というものは食べたことがないんだ」
「そうなんですか」
「私もです」
キサカも言った。
「ですから何が出るのか」
「怖いもの見たさっていうのはありますね」
アズラエルが引き攣った笑みを浮かべている。
「面白いと言えば面白いですが」
「けれどですよ」
何故か連れて来られているキラが抗議する。
「何で僕まで」
「道連れは多い方がいいじゃないか」
「なっ」
キラはユウナの言葉に絶句した。
「だって。僕達だけが地獄に落ちるのはね」
「全くです」
「貴方達はそれでも人間なんですか・・・・・・」
「皆捕まらなかったしさあ」
「聖戦士やポセイダルの面々は何時の間にか自分達でパーティーをはじめましたし」
「他の皆も何時の間にかいなくなっていたんだよ。それでたまたま君がいて」
「そんな・・・・・・」
「運が悪かったということですよ」
アズラエルは冷たい声で言った。
「ですから。観念することです」
「やっとベルリンでの戦いが終わったのに・・・・・・」
「それはそれ、これはこれだ」
和解した筈のシンが言い切った。
「御前も俺と一緒に地獄に落ちるんだ」
「元はといえばシンが悪いんじゃないか」
キラがそれに抗議する。
「カガリと喧嘩するから」
「まあそうなんだけれどね」140
ユウナがそれに同意する。
「けれどさ」
「あのユウナ様」
ここでキサカがそっと言う。
「カガリ様は料理をされたことはありますよ」
「あっ、そうだったの」
何か一気に光明が見えてきた。だがそれは儚い夢であった。
「野戦食ですが」
「ああ、そう」
明るくなりかけていたユウナの顔がまた暗くなっていく。
「それじゃあね」
「はい・・・・・・」
「まあとにかく待ちましょう」
アズラエルが一同に対して言った。
「何が出てもね」
「しかしだよ」
だがユウナはまだ言う。
「何でここにトダカ艦長がいないのかな。折角国家元首の手料理がいただけるというのに」
「若しもの時の為です」
キサカが言った。
「艦長までいなくなってはクサナギが」
「そうか」
「そうです。我々三人がいなくなってもまだ船は動きますが艦長がいなくなれば」
「仕方ないね」
「覚悟しましょう」
「うん・・・・・・」
「おい、出来たぞ!」
キッチンから声がした。
「野菜シチューとステーキだ。ほれ!」
そう言ってシチューとサラダが運ばれて来た。
「食え!」
「食えっておい」
シンがまず抗議してきた。
「何だよこの野菜シチュー」
「何だ?何処か変なところがあるか?」
「変も何もよ」
彼は言い返す。
「何だよこの訳のわからねえシチューは」
見れば皮が剥かれていない野菜がそのまま入り加奈いい加減な料理になっている。ステーキも焦げている。如何にも戦場で素人さんが作りましたといった料理である。
「ステーキだってよ。ミディアムつってもよ」
「それはレアだ」
「御前はもうちょっと肉の焼き方勉強しろ」
シンはカガリに言う。
「何処の兵隊さんが作った料理なんだよ」
「私が素人だというのか!?」
「そうだ!」
シンは遂に席を立った。
「こんなのを食堂に出すな!」
「五月蝿い!黙って食え!」
「ふむ」
アズラエルが既に食べていた。
「まあ食べれますね。塩気が強くて野菜にまだ芯が残っていますが」
「うん、そうだね」
ユウナももう食べていた。
「まあ何とか」
「普通にまあ不味いというレベルですね」
キサカとシンも言う。
「意外と」
「意外なのか」
「腕は上がっていますぞ」
キサカがそうカガリに言う。
「最初と比べると」
「そ、そうか?」
そう言われると顔をほんのりと赤くさせた。
「ええ。ですがまだ修行が必要ですな」
「そうか、わかった」
「修行しても無駄なモンは無駄だがな」
「御前は黙って食え!」
「ああ、食ってやるよ」
相変わらずこの二人は仲が悪い。そもそも二人の仲直りの為の食事なのだが皆それは忘れていた。
「しっかしよお、本当にまずい料理だぜ」
そうは言いながらも食べる。
「シチューに長ネギとかよ。普通玉葱だろうが」
「フン」
とはいっても三角巾にエプロン姿のカガリはわりかしさまになっている。まだ彼女は殺人鬼というレベルではなく単に経験不足であるらしい。
「まあいいさ。食えることは食えるからな」
「私だって女の子なんだぞ」
そう言い返す。
「料理位は。その、だ」
「まあ何かをするのはいいことですよ」
アズラエルがそれを珍しくフォローした。
「男でも女でも料理はね。するに越したことはないです」
「全くです」
キサカがそれに同意する。
「カガリ様もこれからは」
「ああ、わかったわかった」
何か小言になりそうなのでそれを遮った。
「中々作るのも楽しいしな。どんどんやっていくぞ」
「けれどよ」
ここでまたシンが不用意なことを言った。
「男の料理みたいだな」4
「五月蝿い!」
またカガリがそれに反応してくる。
「御前は料理が作れるのか!」
「インスタントラーメン位は作れるさ!」
「そんなものは作ったとは言わん!」
「御前のこのシチューやステーキよりましだ!」
「まだ言うか!」
「まあまあ二人共」
そんな二人をキラが止める。
「って御前」
「いたのか」
二人はここでやっとキラの存在に気付いた。並んで彼に顔を向けるがその顔はキョトンとしたものであった。
「さっきからいたよ」
「悪い悪い、ついこいつの料理が酷くてな」
「こいつがあんまり馬鹿なもんなんでな」
「何ィ!?」
「何だとお!?」
二人はまたいがみ合いをはじめた。結局この二人の和解は何処かへ吹き飛んでしまっていた。
「まあそれはともかくだね」
ユウナはそんな二人を無視してキラに話しはじめた。
「今度の戦いは広島だね」
「はい」
キラはそれに答えた。
「まあまた激しい戦いになるだろうけれど」
「そうですね」
ミケーネも必死である。それは容易に想像がついた。
「また新しい戦力が参加してくれることになったよ」
「誰ですか!?それって」
「うん、彼に所縁のある娘もいるんだけれど」
そう言ってシンをチラリと見る。もうカガリと取っ組み合いの喧嘩に入っていた。
「今はねえ。言えないよね」
「止めないですか」
「見たまえキラ君」
キサカが彼に声をかける。
「いい月だ」
窓を指差している。だがそこに見えるのは太陽であった。そもそも月なぞあろう筈もない。
「それ何の漫画なんですか?」
「イガグリ君だが。知らないか」
「はあ、全然」
「ううむ、古典だからなあ」
「いや、僕も知りませんでしたよ」
アズラエルも首を傾げていた。
「ええと、ストップ!兄ちゃんなら知っていますが」
「また古い漫画ですな」
「いや、イガグリ君の方が古いのでは?」
「まあ確かに」
「何か凄く古い漫画の話みたいですね」
「僕は両方共知らないなあ」
趣味人のユウナですらそうであった。
「僕の守備範囲はどちらかというと石ノ森先生だからね」
「009はいいですよね」
「そうだよね。今でも充分読めるよ。ところでだね」
話を戻してきた。
「まあ彼は今あんな状況だし」
「御前やっぱり死ね!」
「何を!」
相変わらずカガリと喧嘩をしている。その時胸に触れた。
「あらっ」
「な・・・・・・!」
二人はその瞬間固まった。
「カガリ、御前」
「き、貴様・・・・・・」
それから徐々に言葉を発する。
「意外と胸が」
「貴様ァ!やっぱり死ね!」
「う、うわ!」
「許さん!私の胸を触ったな!」
カガリの攻撃が異様なまでに激しくなってきた。
「今度という今度は!殺してやる!」
そして恐ろしいまでの攻撃がはじまった。もう誰にも手がつけられなくなった・
「その新しい戦力だけれど」
ユウナはそんな二人を無視して冷静な顔で述べる。だがキラは気が気ではない。
「あの、放っておいては」
「見たまえ、いい太陽だ」
「・・・・・・もういいです」
キサカの強引極まる話のはぐらかしに言うのを諦めた。そしてユウナの話を聞くことにした。
「ベルリンでこちらに来てくれたロウ=ジュール君とイライジャ=キール君なんだ」
「あの人達が」
「うん、愛機と共に参加してくれることになった。宜しく頼むよ」
「はいっ」
「そして後三人」
「まだいるんですか」
「うん、実はベルリンの戦いで面白いものが手に入ったんだ」
「面白いもの!?」
「三機のガンダムだよ。ほら、あの変形する」
「ああ、あの三機ですね」
話を聞いてそのガンダムがどんなガンダムかわかった。カオス、ガイア、アビスの三機である。
「あれが手に入ったんだ。それでね」
「ええ」
「デストロイに乗っていた三人も参加してくれることになっただよ」
「あの三人っていうと」
キラはそれを聞いて顔を驚かせた。
「まさか」
「そう、そのまさかだよ」
「何っ!?」
「えっ!?」
それを聞いてマウントポッジになってシンを殴り回しているカガリも殴られているシンもユウナの言葉に顔を向けてきた。
「おい、ユウナ」
「ユウナさん」
二人は彼に声をかけてきた。
「それは本当か!?」
「今言ったことは」
「うん、彼女達が志願してきたんだ。戦わせてくれって」
「そんな、ステラは」
「もうエクステンデッドじゃないよ」
ユウナはそう前置きした。
「だから戦っても壊れたりすることは」
「けれどステラは」
「そうだ!」
カガリも何故かシンを援護する形で言う。
「あいつはもう戦っちゃ駄目だろう」
「僕も止めたよ」
ユウナはあらかじめそう述べた。
「けれど彼女達がね」
「戦いたいっていうのか」
「そうなんだ。特にステラちゃんがね」
「ステラが・・・・・・どうして」
「君の側にいたいそうだ」
「俺の側に!?」
「うん、君の側で戦いたいらしい。君を守る為に」
「ステラ・・・・・・」
「詳しいことは彼女から直接聞くといいよ」
「ああ、わかった」
シンはユウナのその言葉に頷く。
「そうなのか」
「おい、シン」
カガリがシンに声をかけてきた。
「ステラを泣かせるなよ、わかったな」
「あ、ああ」
シンはそれに頷く。馬乗りになられたまま。何時の間にか喧嘩は終わっていた。
「それでユウナさん」
キラがまたユウナに声をかけてきた。
「大丈夫なんですよね、本当に」
「うん、もう薬や装置に頼らなくてもいい」
ユウナは答えた。
「ブロックワードも消えたしね」
「そうですか、よかった」
「けれど戦闘能力は殆どそのまま残っているよ」
「そのままですか」
「うん、元々かなりのセンスを持っていたらしい。コーディネイターにも匹敵する程ね」
「じゃあかなりのものですね」
「そうだね。また心強い味方が入ってくれたよ」
それは素直に喜ぶべきことであった。
「これから本当に激しい戦いになるからね」
「ええ」
「頑張ってもらいたいよ。当然君達にもね」
「はい」
「やってやるさ」
キラとシンがそれぞれ応えてきた。
「皆の為に」
「ステラの為にな」
「おい、待て」
シンにはカガリが突っ込んできた。
「家族の為じゃなかったのか?」
「あっ」
喧嘩はあったが何処か打ち解けていた。キラとシン、そしてカガリもその関係を徐々に親密なものとさせていっていたのであった。
食べている間に広島にやって来た。まだ街には誰もいない。
「何だ、ミケーネの奴等はまだかよ」
コスモクラッシャーの中からナオトが言う。
「逃げたってわけでもないだろうな」
「それはないだろうな」
アキラがそれに応える。
「奴等のことだ、いきなり出て来るぞ」
「そうだな」
ケンジがアキラの言葉に頷く。
「おそらくはもう来ている」
「隠れているっていうの?」
ナミダがそれに問う。
「それじゃあ」
「そうだ、そしてこちらを待っている」
「地中にでもいるのかな」
「そうかもな。ミカ」
ここでケンジはミカに声をかけた。
「レーダーに反応は?」
「今のところはないです」
ミカは返答した。
「ただ」
「ただ?」
「何か海の方に」
「来てるだわさ」
ボスが答えた。マリンスペイザーに乗っているからわかることであった。
「海から大勢」
「かなりの数でやんすよ」
「やはりな」
ケンジはヌケとムチャの言葉も聞いて頷いた。
「来たか。皆いいか」
「おう!」
ロンド=ベルの面々は彼の言葉に応えた。
「来る、海からだ!」
「総員迎撃用意!」
ヘンケンが指示を出す。
「海岸に防衛ラインを敷け!一歩たりとも街には入れるな!」
「了解!」
こうしてミケーネとの広島での攻防がはじまった。ロンド=ベルはヘンケンの指示通り海岸に沿って防衛ラインを敷く。その中にはあの三機のガンダムもいた。
「水中戦なら俺に任せとけって」
アウルが笑いながら海の中に入って行った。
「ミケーネの奴等には見つけねれえぜ」
「アウル」
スティングがそんな彼に言う。
「御前今の洒落か?」
「おっ、わかったか」
「かなり無理があるぞ。何なんだよ」
「まあ気にするな」
「・・・・・・ライバル登場」
イズミがそれを聞いて呟く。
「おい、御前等」
ロウがここで彼等に声をかけてきた。
「わかってるとは思うが真面目にやれよ」
「わかってますって」
「何か俺って信用ない?」
「今の駄洒落聞いた後で信用する奴がいるかよ」
ロウの言葉は実に辛辣であった。
「とにかくミケーネだ。しぶといから用心しろよ」
「了解」
「ロンド=ベルでの初陣だしな。気合入れていくか」
「よし」
彼等も前に出た。そこにはステラもいた。
「ステラ」
その彼女にシンが声をかけてきた。
「シン」
「大丈夫なんだね、もう」
「うん」
ステラは彼に答えた。
「ステラ大丈夫、もう戦える」
「そうか。けれど」
だがシンはここで複雑な顔をした。
「本当を言うとね。君には戦って欲しくないんだ」
「どうして?」
「君に何かあったらさ」
「あら」
ルナマリアがそれを聞いて眉を動かせる。
「シンってまさか」
「意外と純愛!?」
メイリンも言う。
「みたいね。結構意外」
「ふふふ、シンも可愛いところあるじゃない」
タリアもそんな彼を見て微笑んでいる。
「そういえば艦長って結婚してるんですよね」
「お子さんもいて」
「ええ、そうよ」
タリアはルナマリアとメイリンに答えた。
「プラントで元気にしていたらいいけれどね」
「何か意外ね」
「そうよね。艦長が母親なんて」
「何かそう言われると」
少し複雑な顔になる。
「そうなのかしらね、やっぱり」
「あっ、すいません」
「御気を悪くされました?」
「いえ。ただ」
「ただ?」
「私もお母さんなんだなってね」
「今そこにでっかい子供いますしね」
「そうね。シンも」
何故かシンを見る顔が母親めいてきていた。
「成長していくのね」
「俺、君のことが心配なんだよ」
シンはステラに話していた。
「だからさ。本当に」
「それ、ステラも同じ」
「えっ!?」
ステラのその言葉に声をあげる。
「どういうことなんだ、それは」
「ステラもシンが心配。だから」
「戦うっていうのか」
「うん」
そのうえで頷いてきた。
「シン、ステラ助けてくれたし」
「あの時か」
言わずと知れたベルリンでの戦いである。彼はキラの助けを借りてステラを救い出し今に至っているのである。
「あの時のこと、覚えていてくれたんだ」
「忘れない」
ステラはこうも言った。
「何があっても。だから」
「戦うんだね。俺の為に」
「ステラ。シン守る」
さらに言う。
「だから・・・・・・戦う」
「そういうことなのさ」
スティングがシンに声をかけてきた。
「俺達は止めたんだがな」
「こいつがどうしてもって言うから」
「そうだったのか」
「それで俺達もな」
「ステラだけ置いていたら危なっかしいしな」
「済まない」
「何、いいってことさ」
スティングはシンにこう述べた。
「俺達もこのまま孤児院に入ってもな」
「何もすることがないし」
アウルも言う。
「それならここで皆と一緒にいたいぜ」
「宜しくな」
「ああ、こちらこそ」
「シン、任せて」
またステラが声をかけてきた。
「ステラ、ずっと側にいるから」
「ああ」
「シン」
アスランがここでシンに声をかけてきた。
「あ、ああ」
「来たぞ、そっちにも」
「来たか」
「俺が援護する」
レイが通信を入れてきた。
「だから後ろは任せろ」
「わかった」
「行くか」
アスランはまたシンに声をかける。
「一気に仕掛けるぞ」
「それは駄目」
だがそれはステラに止められた。
「シンはステラと一緒にいるから」
「いや、そうは言っても」
アスランは困った顔で言葉を返す。
「今は戦争だから」
「戦争・・・・・・」
「そうだ、だからさ」
「ステラ、御前はスティング、アウルと一緒だ」
ロウが言ってきた。
「それでいいな」
「・・・・・・わかった」
ステラは残念な顔でそれに頷いた。
「じゃあ行く」
「ああ。じゃあシン」
ロウは今度はシンに声をかけてきた。
「またな」
「ああ。じゃあアスラン」
あらためてアスランに声をかける。
「行くか」
「よし」
二人は動きを合わせた。そしてミケーネの大軍に向かって突貫した。
既に戦闘ははじまっていた。海の中ではアウルのアビスガンダムが変形を繰り返しながら派手に暴れていた。
「遅いんだよ!」
右に左に泳ぎ回りながら海中のミケーネ軍をその戟で切り裂いていく。まさしく水を得た魚であった。
陸ではステラのガイアが獣に変形し上陸してくる敵を次々に屠り空ではスティングのカオスが敵を寄せ付けない。三人の戦闘力は見事であった。
「よし、あのエリアは大丈夫だ」
ブライトは三人の戦いを見て頷いた。
「上陸してくる敵はモビルスーツ、ヘビーメタルで叩いていけ」
彼は指示を出した。
「空から来る敵にはスーパーロボットだ。海で戦えるものは思う存分暴れろ、いいな」
「合点承知のすけだわさ!」
ボスがそれに応える。
「ヌケ!ムチャ!行くわよ~~ん!」
「ボス、大介さんはそっちですよ」
「方向が逆でやんす!」
ここでボスはどういうわけかダイザーと合体しようとはしなかった。
「マリンスペイザーにはならないの!?」
「それじゃあ何か」
「マリンスペイザーも強いだわさ!」
ボスは二人に対して言う。
「けれどボス」
「それだと大介さんが大変でやんすよ」
「あっ」
言われてやっとそれに気付いた。
「そうか」
「そうですよ」
「やっぱりここは」
「いや、いい」
だが大介はそれはいいとした。
「今は充分やっていける。だから」
「そうですか。じゃあ」
「ボス、頑張って下さいでやんす」
「わかってるだわさ!じゃあ」
マリンスペイザーも攻撃を開始する。
「雑魚はだけだわさ!」
彼もまた次々に攻撃していく。意外なまでに強かった。
「ボスも案外やるのね」
さやかはそれをダイアナンエースから見ながら述べた。
「強くなったって言うべきかしら」
「そうね」
ジュンがそれに頷く。
「長い間戦っているからね、彼も」
「そうですね」
「そしてそれは私達もね」
「ジュンさん」
ここでさやかはジュンに顔を向けてきた。
「じゃあ私達も」
「当然よ。来たわよ」
「はい!」
彼女達も上陸してきたミケーネの戦闘獣達をミサイルで屠っていく。マジンガーチームは果敢に敵を倒していた。
だがやはり彼等であった。トリプルマジンガーは海に空に縦横無尽に暴れていた。
「遅いっ!」
鉄也のグレートが海中から攻撃しようとしてきた敵にアトミックパンチを放つ。
それが敵を貫き爆発させる。その上からまた来るがそれはマジンガーブレードで斬り捨てた。
「このグレートマジンガーを舐めてもらっては困るな」
「鉄也さん、そっちは大丈夫なのか!?」
甲児が声をかけてきた。
「何なら俺もよ」
「甲児君、そっちには何かあるのか?」
「あいつが来てやがる」
「あいつ!?」
「ああ、ドクターヘルだ」
見ればそこには地獄大元帥のデモニカがいた。ミケロスもいる。
「あの野郎、また」
「そうか。だがここは落ち着くんだ」
「そうだ」
大介も言ってきた。
「僕もそこへ向かう。いいな」
「大介さん」
「俺もだ。もうこの辺りの敵はあらかた倒した」
鉄也も言う。
「いいな、甲児君」
「わかったぜ。じゃあそれまでは雑魚を相手にしておくぜ」
「よし」
「では行くぞ鉄也君」
「はい、大介さん」
彼等は頷き合い甲児のところへ向かう。そして丁度周りにいる敵をあらかた倒した甲児と合流したのであった。
「ふむ、また来たか」
「地獄大元帥、どうされるおつもりですか」
ミケロスにいるゴーゴン大公が地獄大元帥に問うてきた。
「既に戦いは趨勢が決まっております。そして今マジンガー達が目の前に」
「趨勢が決まったならば仕方がない」
地獄大元帥はそれに応えて述べた。
「撤退だ」
「はっ」
ゴーゴンは何も疑うことなくそれに頷いた。
「そして後詰だが」
「戦闘獣をどれだけ残すかですな」
「いや、戦闘獣は今後も使う。だから全て撤退させる」
「それでは全軍の撤退に支障が出るかと」
ゴーゴンはそう進言した。
「何、絶好の盾がある」
「絶好の?」
「そうだ。行くがいい」
「地獄大元帥、一体何を・・・・・・!?」
突如としてミケロスが前に出て来た。
「なっ、これは」
「では頼むぞ、ゴーゴン大公よ」
地獄大元帥は既に撤退に移っていた。そしてゴーゴン大公にそう言った。
「ミケーネの為に喜んで盾になるのだ」
「こ、これは一体・・・・・・」
「フフフ、ゴーゴンよ貴様には立派過ぎる墓穴になるな」
「な、何!?」
「ゴーゴン!」
地獄大元帥は突如として険しい声を出してきた。
「わしは貴様に受けた仕打ちを忘れてはおらぬぞ!」
「なっ・・・・・・」
「あの時貴様は最後の戦いに挑む我等の前から何の前触れもなく姿を消した」
バルマー戦役でのことである。あの時ゴーゴン大公は確かにドクターヘルの前から姿を消した。彼はそのことをはっきりと覚えていたのである。
「そして協力者を失い、戦力が整わないままに戦ったわしの軍団は壊滅したのだ!」
「うう・・・・・・!」
それを言われては言葉もなかった。呻いてしまう。
「わしの復讐の対象は兜甲児や剣鉄也だけではない」
地獄大元帥はさらに言う。
「裏切り者の貴様もその一人だ!」
「あれはアルゴス長官の命令で」
「言い訳は聞かぬわ。生き残りたくば見事ロンド=ベルを倒してみよ!」
「何かすげえことになってるな、おい」
忍がそれを見て呟く。
「まあ裏切り者の最後ってなあんなもんだろ」
勝平がそれに答える。
「因果応報ってやつさ」
「あら、難しい言葉知ってるじゃない、勝平」
恵子がそれに突っ込みを入れる。
「今まで碌に漢字も知らなかったのに」
「そうだな。これが確変か?」
「ええい、御前等うるせえ」
恵子と宇宙太に対して言い返す。
「俺だってこれ位は知ってらあ」
「だといいけれど」
「いつもがいつもだしな」
「ちぇっ」
何処までも頭のことでは信用のない勝平であった。その間にもゴーゴン大公の狼狽は続く。
「じ、地獄大元帥」
彼は勝手に突進するミケロスの中で地獄大元帥に問う。
「お、俺はどうしたら」
「生き残りたくばロンド=ベルを倒せ」
地獄大元帥は冷たい声でそう言い伝える。
「そうすれば御前を許してやろう」
「くっ!」
「グハハハハハ!残された時間は少ないぞ!」
最後に勝ち誇った声を立ててきた。
「死力を尽くせよゴーゴン大公!」
「お、おのれ!」
既に全ての戦闘獣は撤退していた。ミケーネ軍で残っているのはゴーゴン大公のミケロスだけとなっていた。
「哀れなもんだな、ゴーゴン」
甲児がそんな彼に対して言う。
「利用してきたヘルに裏切られるなんてな」
「だ、黙れ!」
だがゴーゴンにも生きたいという欲求があった。
「こうなれば貴様達を倒して生き延びてくれるわ!」
「ほお、じゃあ来やがれ!」
甲児はそれを受けて言う。
「俺のマジンカイザーが手前に引導を渡してやるぜ!」
「おのれ兜甲児!」
ゴーゴン大公はその挑発に激昂してきた。
「元はと言えば貴様の存在がこの状況を生んだのだ!」
そう叫びながらマジンカイザーに向かっていく。
「ヘン、逆ギレかよ!」
だが甲児はそれに何ら臆してはいない。
「結局悪党の考え方っていうのはそれもこれも同じだな!」
「ええい、黙れ!」
だがゴーゴン大公はそれでも叫ぶ。
「ミケーネ帝国の幹部であるこの俺を地獄大元帥と同じにするな!」
「そうかよ!だがな」
甲児はまた彼に言い返す。
「あいつも手前も落ちる地獄は同じだぜ!」
そう言いながら攻撃に入る。
「最後はせめて楽に死なせてやるからよ!」
カイザーブレードを出してきた。
「喰らえ!」
「こんなの屁でもねえぜ!」
まずはミサイルをその剣で全て切り払ってきた。
「これで終わりだ!ファイナルカイザーブレード!」
ミケロスを激しく切り裂いてきた。要塞が忽ちのうちにズタズタになっていく。
「うおおっ!」
「これで止めだ!」
そして最後に剣を突き立てる。それで全ては終わりであった。
「どうだっ!」
「ぬうおおおおおっ!」
最後の咆哮が聞こえたところで剣を引き抜いて離れた。
「ば、馬鹿な。俺が・・・・・・」
ゴーゴン大公は炎に包まれていくミケロスの中で呻いていた。
「この俺が負けるというのか!?」
「当たり前だ!」
甲児はそんな彼に言い放つ。
「何万年待っても手前等みてえな悪党に勝利はねえんだよ!!」
「お、おのれ・・・・・・だが」
それでもゴーゴン大公は言う。
「我が無念は闇の帝王が晴らして下さる!」
「何っ」
「闇の帝王!?」
鉄也と大介がその言葉にピクリと反応した。
「何しろミケーネ帝国の全能の支配者にして伝説に謳われた地獄の帝王なのだからな!」
「地獄の帝王だと!?」
宙もその言葉にはっとなる。
「まさか!」
「そうだ、そのまさかだ!」
ゴーゴン大公は断末魔の顔でニヤリと笑って言う。
「ヒミカが最期の力で封印を解いた地獄の帝王こそ我等の主、闇の帝王よ!」
「チィッ!」
宙はその言葉を聞いて思わず舌打ちした。
「あの時ヒミカは銅鐸の秘密を手に入れていたのか!」
「ハハハハハ!恐怖におののくがいい!」
ゴーゴン大公はさらに叫ぶ。
「貴様等が戦おうと闇の帝王の勝利は揺るぎない!」
「ゴーゴン!」
「グハハハハ!」
最早甲児の言葉も耳には入っていなかった。ただ笑うだけであった。
「ミケーネ帝国に栄光あれ!!」
それが最後の言葉であった。彼は遂に光の中に消え失せたのであった。
広島での戦いは終わった。だがロンド=ベルの面々に暗い影を落とした戦いであった。彼等は帰っても暗い顔を見せていた。
「まさかな」
最初に口を開いたのは宙であった。
「復活していたってのかよ」
「闇の帝王か」
鉄也がその名を呟く。
「まさかとは思っていたが」
「それならそれで戦うしかない」
大介が言った。
「そうだろう?どちらにしろミケーネとは決着を着けなければいけない」
「ええ」
鉄也はその言葉に頷いた。
「わかってますよ、それは」
「なら迷うことはない」
「ああ、そうだよな」
甲児がそれに応える。
「闇の帝王だか何だか知らねえけれどよ。ギッタンギッタンにしてやるぜ」
「そうよね」
アレンビーがその言葉を聞いて笑みを浮かべてきた。
「そうこなくっちゃ。じゃあまた戦いね」
「ああ、次は何処だ?」
「淡路らしいな」
隼人が甲児に答えた。
「淡路かよ」
「そうだ、そこで連邦軍とミケーネが対峙している。それを叩くことになるだろう」
「わかったぜ。じゃあよ」
「うむ、整備と補給が終わり次第淡路に向かう」
大文字は甲児の言葉を受けて述べた。
「それでいいな、皆」
「ああ」
「じゃあ行くか」
それでも彼等の戦意は落ちてはいなかった。意気も高く淡路へと向かうのであった。
その途中バサラがライブを行っていた。ファイアーボンバーの面々も一緒である。
「よし、皆!」
彼はギターを手に叫んでいた。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーっ!」
「おおーーーーーーーーっ!」
皆それに応えて歓声を送る。会場はもう熱気に包まれていた。
「連戦で疲れているけれどね」
「そんなものは吹き飛ばしていくぜ!」
ミレーヌとバサラが叫ぶ。
「それじゃあ」
ミレーヌがベースを構える。
「突撃ラブハート!」
「聴きやがれ!」
二人の演奏と歌がはじまる。それが疲れを感じようとしていたロンド=ベルの面々を奮い立たせるのであった。
「いやあ、凄かったですよね」
ライブが終わった後ニコルは満足した顔で語っていた。
「ファイアーボンバーのライブが直接聴けるなんて。ファン冥利に尽きますよ」
「あれっ、ニコル君ってファイアーボンバーのファンだったの」
「はい」
カトルに答える。
「実はそうなんですよ。CDも全部持ってますよ」
「そうだったんだ」
シンジはそれを聞いて意外といった顔であった。
「ニコル君っていうとクラシックってイメージがあるんだけれど」
「音楽は何でも好きですよ」
ニコルはそう語る。
「作曲もしますし」
「凄いね、それ」
「ピアノがあればいいんですが」
「ピアノ?あるよ」
シンジが答えた。
「マクロスに」
「そうなんですか」
「うん、それでよかったらさ」
「僕達もバイオリンとかしますし」
「いいですね、皆で」
「うん、演奏しようよ」
「はい!」
三人はにこやかに頷き合ってそのままピアノの方に向かって行く。アスカはそんな三人を見て何故か複雑な顔を見せていた。
「何かバカシンジも結構馴染んできたわね」
「おめえが一番馴染んでんじゃねえか」
「そうだよな。いつもギャーギャーと」
甲児と勝平がそれに突っ込みを入れる。
「最初っから何かずっといたって感じでよ」
「やっぱりそうか。そうだと思ったぜ」
「ええい、五月蝿い」
アスカは二人にそう言い返す。
「あたしはねえ、これでもおしとやかにしたいのよ」
「へっ!?」
皆それを聞いて思わず声を出した。
「今何つった!?」
「寝言か!?」
誰もそれを信じようとはしない。
「あたしはレディーよ」
「おめえ何冗談言ってるんだよ」
甲児がそれに突っ込みを入れる。
「一瞬何つってるかわからなかったぞ」
「あんたにわかってもらおうとは思ってないわよ」
やはり甲児にはきつい。
「デリカシーのかけらもない馬鹿にはね」
「何だってんだよ、一体」
「全く。あたしだってね」
そして言う。
「これでも社交ダンスとかやってるんだから。それなりにそうしたことは」
「そうだったのかよ」
トッドがそれを聞いて驚きの声を漏らす。
「じゃああれだな」
「そうだな」
ニーも言う。
「シーラ様のところでよ」
「レディーとして」
「うっ」
だがこういわれると言葉を詰まらせてしまった。
「い、いや。そこまではね」
「何だよ、嫌なのかよ」
「折角だと思ったが」
「それでもあたしもたまには楽器でも」
「それではマドモアゼル」
ジョルジュとマリアルイーゼが出て来た。
「私共と」
「華やかなダンスでも」
「いいわね」
人材には事欠かない部隊である。こうした面々もいるのだ。
「それじゃあお願いね」
「ええ」
「今宵は楽しく」
「何というかな」
真吾がそれを見て言う。
「アスカも寂しいのかもな」
「確かに」
キリーがそれに頷く。
「あれで結構寂しがり屋だしな」
「女っていうのは繊細なのよ」
レミーの言葉もいいタイミングで入る。
「いつも側に誰かいてくれないとね」
「それではマドモアゼル=レミー」
ブンドルまで出て来た。
「今宵は二人で心ゆくまで」
「けれどブンちゃんは先客がいるんじゃないの?」
「先客!?」
「おう、ブンドル」
「そこにいたか」
カットナルとケルナグールがやって来た。
「今日は三人で飲むぞ」
「よいな」
「・・・・・・むう」
二人の顔を見て言葉を詰まらせてしまった。
「そういえばそうだった」
「それじゃあそういうことで」
「仕方がない」
「シーユーアゲイン」
最後に言葉が決まった。ドクーガ三人は彼等は彼等で飲みに向かうのであった。
何だかんだで束の間の骨休みであった。だがグローバルはその間に淡路にいる大塚長官と話をしていた。
「そうですか、そちらは」
「うむ、膠着状態だ」
長官はグローバルにそう答える。
「残念ながらな」
「それでは長官」
グローバルはそれを受けて述べた。
「ではこれから予定通り」
「いや、それでだ」
だがここで長官は言ってきた。
「何か」
「工夫したいのだが」
「工夫ですか」
「我々は今阪神方面にいる」
「はい」
「君達は四国方面から来てくれないか」
「四国からですか」
「そうだ、敵の後方を衝く形でな。どうだ」
「そうですな」
グローバルはそれを聞いて考える顔を見せてきた。
「ではそれで」
「うむ、頼むぞ」
「淡路を抑えれば西日本での戦いは終わりですな」
「そうだな。これで完全に西日本は解放される」
長官も答える。
「だからこそ。頼むぞ」
「はい」
グローバルはそれに頷く。こうして次の作戦が決まるのであった。
ロンド=ベルの次の行動は決定した。そして四国から向かう。淡路への作戦は既にはじまっていた。

第百二十九話完

2006・12・9 
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