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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百二十一話 オーブの攻防

              第百二十一話 オーブの攻防
ミネルバを加えたロンド=ベルはアズラエルの勧めに従ってオーブに向かっていた。その中で早速騒動が起こっていた。
アークエンジェルにシンが来ていたのだ。彼はいきなりキラを探していた。
「あのストライクのパイロットは何処だ?」
「ってあんた誰よ」
「俺か。俺はあのデスティニーガンダムのパイロットだ」
フレイに対して答える。
「シン=アスカだ。覚えたか」
「覚えたかってあんた」
フレイはそのぞんざいな態度に眉を顰めさせた。
「それが人にものを尋ねる態度なの?何様なのよ」
「何っ、こうして何処にいるのか聞いてるだけだぞ」
シンも引かずに言い返す。
「それでどうして」
「その態度が問題だって言ってるでしょ」
フレイはまた言い返す。
「大体いきなりズカズカとやって来て」
「まあ待ってくれ」
間にレイが入る。
「こいつに悪気はないんだ。勘弁してくれ」
「悪気がないってだけで許されたら」
「まあフレイ」
サイもそこにやって来た。
「喧嘩しても仕方ないだろ。それよりキラのことだよね」
「あいつ、キラっていうのか」
「うん。あいつに何か用なのかい?」
「あいつに会う為に来た」
シンは言った。
「何処にいるんだ?」
「自分の部屋にいると思うけれど」
「案内してくれるか?」
「わかったよ。じゃあこっちだから」
「すまないな」
案内するサイに対して礼を述べた。
「わざわざ案内までしてくれて」
「いいよ。はじめて来たんならわからないだろうし」
サイは答える。
「それよりもさ」
「何だ?」
「その軍服だけれど」
「ああ、これか」
サイはザフトの赤服を見ていたのである。シンもレイもその服で来ていたのだ。
「随分と目立つね」
「まあな。結構気に入ってるんだ」
「ふうん」
「まあその話は後でな。それより」
「キラに会うね」
「そうだよ。悪いのかよ」
またフレイに返す。
「俺は一度あいつに会ってみたいんだ」
「ここだよ」
「あっ、もうか」
気付けば個室の前にいた。
「ここにいるから。キラ」
「サイ?」
「お客さんだよ。ミネルバの人達」
「ミネルバの?」
「ああ、この声だな」
シンはその声が戦闘中の声と同じなのを理解した。
「入ってもらっていいかな」
「うん、いいよ」
「わかった。じゃあ」
サイはあらためてシン達に顔を向けてきた。
「いいってさ」
「ああ」
こうしてシンはレイと共にキラの部屋に入った。するといきなりトリィが出て来た。
「トリィ、トリィ」
「これは」
「それ、友達からもらったものなんだ」
部屋の真ん中にはキラが立っていた。そしてシンに応えた。
「君がミネルバのクルーなの?」
「ああ。御前があのストライクのパイロットなのか」
「うん。あれっ、君は」
「御前は」
二人はこの時はじめてお互いの顔を見た。そして気付いた。
「あの時の」
「アフリカでの」
擦れ違った時を思い出した。その時のことをはっきりと思い出したのだ。
「そうか、御前だったのか」
「君だったの」
「ストライクのパイロットは」
シンにとっては意外なことであった。そして言った。
「まさかこんなに頼りなさそうな奴だったとはな」
「ちょっとあんた」
フレイが彼を睨んできた。
「何よ、その言い方」
「俺は思ったことを言っただけだ」
「それが悪いのよ。言い方があるでしょ」
「フン、しかし御前とはこれから仲間なんだな」
「そうだね」
「まあいい。御前には負けるつもりはないからな」
「えっ」
「そして御前に協力するつもりもない。あの時の言葉覚えているな」
「僕が正しければ」
「そうだ。御前は何時か絶対に倒す。そのことを覚えておけ」
「おい、仲間なんだぞ」
「それがどうした。俺はまだ決着をつけていないんだ」
シンはサイに返す。
「決着はつける。絶対にな」
「シン」
「レイ、帰るぞ」
それだけ言うと踵を返した。
「伝えることは伝えた。もう用は済んだ」
「わざわざアークエンジェルに喧嘩売りに来たの?」
「そう受け取るなら受け取れ。どちらにしろ俺は帰る」
そこまで言うと格納庫へと向かった。後にはレイが続く。
「何よ、あいつ」
フレイはそんなシンの後姿を見て怒りを露わにしていた。
「いきなり来て喧嘩売るなんて。どういうつもりなのよ」
「彼があのデスティニーのパイロット」
キラはシンのことを考えて呟いた。
「そうだったんだ、彼が」
これがキラとシンのはじめての直接的な出会いであった。二人は今は結び合わない。だがそのつながりは今はじまったのであった。
「何か船の中が騒がしいな」
「オーブに戻るのよ」
ディアッカは学習室に入れられていた。そこにヒギンズに付き添われたミリアリアがいた。念の為彼女が側にいるのである。
「オーブにか?」
「ええ、何か事情があって」
「詳しいことは私も知らないがな」
「そうなのか」
「ところであんたのガンダムだけれどね」
「ああ」
「こっちで使わせてもらうから。あんたは解放されるわ」
「それで収容所か?」
「それか迎えが来たらカーペンタリアに帰れるわよ」
「そうか。ところでな」
「何?」
今度はディアッカからミリアリアに尋ねてきた。
「その行方不明になった御前の彼氏だけれどな」
「ええ」
「何に乗ってたんだ?俺もあの時最後の方までいたけれどよ」
「スカイグラスパーよ。戦闘機の」
「そうか」
ディアッカはそれを聞いて呟いた。
「俺じゃない」
「えっ!?」
「それを撃墜したのは俺じゃない」
「あんた・・・・・・」
一つ真実がわかった。皆それぞれの出会いと真実の中でオーブに向かっていた。
「ロンド=ベルの艦隊が来ました」
「流石です、早いですね」
「おい、あんた」
キサカの声に応えて声をあげたアズラエルにオーブの礼服のカガリが声をかけた。
「何でここにいるんだ?」
「何でと言われましても」
「気が着いたらいたが。オーブはブルーコスモスとは関係がないぞ」
「おやおや、これは手厳しい」
「そもそもオーブはブルーコスモスのナチュラル至上主義とは違う。コーディネイターだって受け入れているんだ。大体ロンド=ベルはコーディネイターどころか」
「まあまあカガリ」
言いはじめるカガリをユウナが制した。
「ブルーコスモスだって色々な人がいるんだし」
「こいつは強硬派だって聞いているぞ」
「確かに僕はコーディネイターは嫌いですよ」
アズラエル本人もそれは認めた。
「彼等は異質な存在ですしね」
「ほら見ろ」
「ですが極端な排斥は望むところではないのです」
「どういうことだ?」
「あくまでビジネスというわけです。お金になればコーディネイターとも付き合いますよ」
「そうなのか」
「はい。それに世の中にはコーディネイターどころか人間かどうかすら怪しい人達がいますからね」
「誰だ、それ」
「白昼の残月ですか?」
キサカがアズラエルに問う。
「そちらには彼が来たのですか」
「ではそちらも」
「ええ。暮れなずむ幽鬼ですか。訳のわからない蟲使いか忍者かわからないのに工場を滅茶苦茶に破壊されましたよ。おかげでこっちは大損です」
「BF団のですね」
「はい。コーディネイターよりあっちの方が嫌いなんですよ。実害を受けましたし」
「あれは天災みたいなもんだろ」
カガリも彼等のことはよく知っていた。
「防げるのか、あれ」
「人間じゃ不可能じゃないかな」
ユウナが首を傾げて答える。
「あの時は大変だったよね」
「はい、国際エキスパート九大天王の大暴れ天童さんが来られるまでやられ放題でした」
「また濃い顔触れですねえ」
「そっちはどうだったんですか?」
ユウナはアズラエルに問うた。
「あんなの普通の兵器じゃ対処できないと思いますが」
「GGGに助けてもらいました」
アズラエルは答えた。
「けれどそれからもね。あのライオンロボ君と変態さんの戦いで。工場は全滅でしたよ」
「それはお気の毒に」
「で、GGGに文句言ったのがライオンロボ君との腐れ縁のはじまりですよ。それから何かと縁がありましてね」
「BF団とはそれっきりか?」
「見たくもありません」
アズラエルはきっぱりと言い切った。
「あんな物騒な連中は核ミサイルより危険です。どうやらバベルの塔の戦いで決着は着いたらしいですけれどね」
「ジャイアントロボも終わりか」
「終わって欲しいですよ、少なくともBF団はね」
「いやあ、まだわかりませんよ」
ユウナがここで言う。
「彼等はかなりしぶといみたいですから。不死身だっていうのも相当いるみたいですよ」
「不死身!?」
「はい。ですから」
「ぞっとしない話ですね」
「あの時はオーブの施設の一割が破壊されました」
「一割で済んだのですか」
「一人でですよ」
ユウナは言う。
「何か針は出すわ超能力は使うわで」
「こっちに来たのも一人でしたよ」
アズラエルは忌々しげに言った。
「最初はやけに顔色の悪い背広の男としか思いませんでしたけれど」
「顔を思い出して驚いたんだな」
「ええ。本当に死んでいて欲しいですね」
「全くです」
キサカもそれに頷く。
「ビッグファイアと三つの護衛兵団はそれ以上だったそうです」
「それを目の当たりにして僕はいささかコーディネイターに対する見方が変わりましたよ」
「皮肉だな」
「化け物でしたからね、本当の」
「だから宇宙人はいいのか?」
「宇宙人が誰でもあんな訳のわからない異常能力を持っていますか?」
「いや」
カガリはその言葉に首を横に振った。
「・・・・・・あれ、忍者なんだよな」
「はい」
キサカがそれに頷く。
「一応はそうらしいです」
「他には仙人に超能力者、妖術使いに体術だね」
「白昼の残月は違うそうですよ」
「じゃあ何なんだ?」
「全てが謎とのことです」
「おい」
アズラエルに突っ込む。
「それでわかるか」
「じゃあわかりたいですか?彼等のことが」
「・・・・・・いや」
だからといって理解したいわけでもない。
「奴等のことは考えるだけで頭が腐る」
「そういうことです。さあ、来ましたよ」
今十一隻の戦艦がやって来た。ミネルバもいる。
「迎えに行かないと。しかし」
アズラエルはロンド=ベルの艦艇を見て呟く。
「またこれは。かなり手酷くやられましたね」
「全くです。ところでアズラエルさん」
「はい」
「例の件、完成しましたので」
「おお、遂にですか」
「はい、後で私とキサカ一佐の三人で試写を」
「いいですね、ふふふ」
二人で何かを話していた。その間にロンド=ベルの艦艇は次々に入港するのであった。
キラ達も降り立った。するとカガリが彼を出迎えた。
「キラ、無事だったのか!」
「あっ、カガリ」
「馬鹿っ、心配させやがって」
「ご、御免」
「死んだかと思ったんだぞ、まさか生きているなんて」
「ちょっとカガリ」
「!?」
ユウナの言葉に顔を向ける。
「今抱きつくのは止めた方がいいよ」
「あっ」
気付けばキラを抱き締めていた。
「公の場だからね」
「す、すまん。つい」
「まあそこはこちらでフォローしておくけれど」
「済まないな」
「いいよ。それで」
ユウナはキラに顔を向けてきた。
「暫くぶりだったね、キラ君」
「はい」
「生きていて何よりだよ。けれど暫く見ないうちに晴れた顔になったね」
「有り難うございます」
「あれは完成したから後でね。一緒に観よう」
「完成したんですか」
「他のもね。楽しみにしておいてくれ」
「はい!」
「さっきからあいつは何を言っているんだ?」
カガリはユウナの様子に気付いた。
「何か私に隠れてやっていたのか?」
「気のせいです」
キサカがそれに対して言う。
「ですから御気になさらぬよう」
「あとアークエンジェルの皆に朗報だよ」
「朗報!?」
「何なんですか」
サイ達がユウナの言葉に顔を向ける。
「君達は士官待遇になることが決まったよ」
「士官にですか?」
「そうさ。カレッジにいるんだろ?つまり大学生だからね」
大学生、若しくは卒業者は士官待遇とするのは軍の伝統である。
「今までは志願兵という形だったけれどね。正式に決まったんだ」
「そうだったんですか」
「うん。それともう一つ」
「もう一つ?」
「来てくれ給え」
ユウナの声に合わせて一人の少年がその場にやって来た。
「あっ」
「ト、トール」
「皆、久し振り」
そこにいたのはトールだった。頭に包帯を巻いているが生きているトールであった。
「生きていたの!?」
「うん、何とかね」
ミリアリアに笑って答える。
「スカイグラスパーは撃墜されたけれど運良く脱出出来て」
「そうか、よかった」
「まさかって思ったから」
サイとカズイが笑みを浮かべる。
「そう、生きていたんだ」
「ああ、キラも無事だったんだな」
「何とかね」
「全く。生きているなら生きているで連絡を入れてくれればよかったのに」
ミリアリアはふてくされた声になっていたが顔は笑っていた。
「心配したのよ」
「御免御免」
「彼はずっと入院していたんだ。傷は深くなかったけれどね」
「そう」
「それで俺はまたアークエンジェルに復帰することになったから」
トールは答えた。
「皆また宜しく」
「ええ、またお願いするわ」
マリューが答えた。
「けれどスカイグラスパーはもうないから操縦をお願いね」
「はい」
「ノイマンだけじゃやっぱり負担が大きかったし」
「君は航海士になるな」
ナタルがここで言った。
「航海士ですか」
「そうだ。ノイマン少尉が昇進して航海長になるだろうからな」
「そうなんですか」
「その辺りはまた後での話しだ。何はともあれ無事でよかった」
「御心配おかけしました」
「いいのよ、生きていてくれたらそれで」
マリューは笑みを浮かべてこう述べた。
「お帰りなさい、トール」
「只今、ミリアリア」
トールはまたミリアリアに挨拶をした。
「ところでキラ」
それからキラに対して言う。
「何?」
「あのイージスのパイロットだけれど」
「うん」
「俺とキラに済まないって言っていたらしいよ」
「そうなの」
それを聞くとアスランのことを思い出さずにはいられなかった。
「・・・・・・あいつ、落ち込んでいたぞ」
カガリがキラに語った。
「・・・・・・・・・」
「もうここにもいないがな。それだけだ」
「・・・・・・うん」
「けれどトールが帰って来て何よりだぜ」
ケーンが場の雰囲気を変えるかのように能天気な言葉を出した。
「また仲間も増えたしな」
「ああ。今度はエメラルドの死神が登場とはね」
タップとライトもそれに加わる。
「まさに百人力」
「鬼に金棒ってわけだ」
「おう、任せておいてくれ」
アルフレッドがそれに応える。
「これからバルマーの奴等をどんどん倒していってやるからな」
「おっと少佐」
「おられたんですか」
「馬鹿、最初からいるぞ」
三人にそう返す。
「全く。今更何を言っている」
「ううん」
「何か恐い人も増えたような」
「ナタル中尉だけじゃなくて」
「こら、私が恐いだと」
ナタルはそれを聞いて三人を咎めた。
「私はそもそも君達が軽挙妄動に走らないようにだな」
「わかってますって」
「その生真面目さがねえ。もっとソフトに」
「それが持ち味なんだけれど、中尉の」
「お、大人をからかうな」
何故かムキになる。
「それに私は君達の上官なんだぞ」
「わかってますよ」
「ここは一つ穏便に」
「いい加減にしろ。大体君達は」
「まあ中尉殿」
ベンが宥めに入った。
「ここは落ち着かれて」
「軍曹の言う通りよナタル、折角ケーニヒ二等兵が帰って来たんだし」
「むむっ」
まだ言いたいがマリューにまで言われては仕方がなかった。ナタルも黙ることにした。
「それに。彼等だってこの場を盛り上げる為に言ってるのだし。わかるでしょ」
マリューはここでそっとナタルに囁いた。
「だからね」
「わかりました。では」
「じゃあ早速アークエンジェルでパーティーだ」
「おっ、いいねえ」
「ドレスはないけれどね」
キリーとレミーがそれに笑顔を向けた。
「まあいいじゃないか。トールとキラの復帰祝いに新しい仲間の参加を祝って」
真吾も来た。
「ここは皆でね」
「アークエンジェルで」
「いや、それだと狭いし」
ユウナが提案してきた。
「皆僕の屋敷に来てくれないか。それで派手に祝おう」
「いいんですか、セイランさん」
カミーユが真剣な顔でユウナに問う。
「そこまでして頂いて」
「ユウナでいいよ。何、皆連戦で参っているだろうし」
彼は言う。
「それに観てもらいたいものもあるしね。是非来て欲しいんだ」
「わかりました。じゃあ」
「御好意に甘えまして」
マリューが皆を代表して言う。
「後でそちらへ」
「うん、今夜は派手にね」
ユウナは笑顔で述べる。
「騒いでくれたらいいから。それでいいね、カガリ」
「私は別にいいぞ」
「これで決まりだね。じゃあ」
こうしてロンド=ベルの面々はユウナの屋敷で盛大に騒ぐことになった。そこには一人の変人もいた。
「やあ、ライオンロボ君」
アズラエルがグラスを片手に凱のところにやって来た。
「また会いましたね」
「相変わらず元気そうだな」
凱は苦笑いで彼に応えた。
「健康には気を使っていますんで」
「そうか」
「君も無事で何よりですよ」
「当然だ、俺はまだ死ぬわけにはいかないからな」
「勇気がある限り、ですか」
「そうだ、俺は原種を倒すまで負けるつもりはない」
「それで終わりだといいですがね」
「どういうことだ?」
「敵はまだまだいるということですよ」
アズラエルはいささかシニカルとも取れる笑みを浮かべて言った。
「今はこんな御時世ですからね」
「だったらそいつ等とも戦うしかないのか」
「ですね。その時は勇気を見せてもらいますよ」
「ああ、また見せてやる」
凱も言う。
「そして皆を守ってみせる」
「けれど巻き添えにはしないで下さいね」
工場での幽鬼との戦いについて嫌味を述べる。
「あの時みたいに」
「だが犠牲者は出ていない筈だ」
「僕が犠牲者ですよ。大変な損失でしたからね」
「あれは仕方ないだろ、相手が相手だ」
「けれど全壊させることもなかったでしょうに」
「人は誰も死んでいない、だから」
「まあ大河長官からは補償は頂きましたが。それにしてもあんなのは二度とないことを祈りますよ」
やはり嫌味であった。
「おい」
ここでアズラエルに声をかける者がいた。
「どういう風の吹き回しだ、御前がここにいるなんて」
「おや、これは」
キースを見てシニカルに笑う。
「そういえば君もロンド=ベルに参加しているんでしたね」
「そうさ、今回配属になった」
キーすはアズラエルにそう述べた。
「しかし。御前がいるなんて思わなかったぞ」
「僕も人類の為に色々と働いてくれている彼等を助けたいと思いまして」
「それが御前のビジネスにとって利益になるからか?」
「正直に申し上げますとその通りです」
アズラエルはそれは隠さなかった。
「ですが決して悪いことではないと思いますが」
「結果さえよければ、か」
「何事も結果が全てです」
アズラエルはこうも言った。
「違いますか?」
「相変わらずだな、そこんところは」
キーすはアズラエルの言葉を聞いてやれやれといった顔になった。
「貴方もブルーコスモスにいた頃から変わりませんね」
「悪いか?」
「いえ、別に」
それを別に悪いとは言わない。
「しかしまあ相変わらずみたいで安心しましたよ」
「御前は少し変わったかもな」
「まあコーディネイターよりもとんでもない方々を目の当たりにしましたからね」
「マスターアジアとかか?」
「うっ」
その名を聞いて黄色いドレスを着ていたアスカが急に真っ青になった。
「そういえばあの時忘れていたけれどあの変態爺さんがいたのよね」
「って今思い出したの?」
シンジがそれに突っ込みを入れる。
「あれだけ目立ってたのに」
「何かあの時一杯一杯だったから」
「また素敵だったわ」
白いドレスのレイが頬を赤らめさせる。
「ああした方だから」
「・・・・・・これってロミオとジュリエットなんか?」
トウジがレイがマスターアジアを慕うマスターアジアを見て言う。
「わい文学はよおわからへんねんやけど」
「さあ」
「あれっ、君達は」
アズラエルはシンジやアスカにも気付いた。
「確かエヴァの」
「アズラエルさん・・・・・・ですか?」
「うん。そうか、君達もいたんだったね」
「僕達のこと知ってるんですか?」
「まあ君達は有名だからね」
「はあ」
「僕もゼーレのことは知っていたし」
「じゃあバウドラゴンのことも」
「名前だけは知っていたよ。どんな組織かは詳しいことは知らなかったけれどね」
「そうだったんですか」
「アスカ君だったね」
「はい」
「君はマスターアジアは苦手なのかい?」
「あんなの認められません」
不機嫌を露わにした答えであった。
「あんな非常識なの。この前だって」
「凛々しくて素敵でした」
「彼女は違うみたいだけれど」
「ちょっとおかしいんです、人の好みが」
「ううん」
あまりにも率直な言葉に思わず黙ってしまう。
「とにかくあたし・・・・・・いえ私はあんなのは」
「コーディネイターとどっちが嫌いなんだい?」
アズラエルはアスカを見て問うた。
「えっ」
「彼とコーディネイター、君はどちらが嫌いなんだい?」
「私はコーディネイターは嫌いじゃないです」
「そうなんだ」
「そりゃキラの奴は鬱陶しくてイジイジしていますけれど」
「さっきシンとは喧嘩しとったな」
「あいつはあいつでムカつくわよ。けれどタリア艦長やレイやハイネさんはいい人よ」
彼女は言う。
「コーディネイターとかそういうのなんてあたしにはどうでもいいのよ。それにガンダムファイターでもね」
「よいのですか?」
「あの変態爺さんは別ですけれど。あと訳のわからない忍者も」
シュバルツのことである。
「けれどそれ以外は何でもないです。けれどキラのあのイジイジしたのは何か見ていると言わずにはいられなくて。あいつってほら、私がいてやらないと」
「成程、よくわかりました」
ついでにアスカが素直じゃないのもわかった。
「では君達にとってコーディネイターは別に恐ろしい存在ではないのですね」
「はい」
シンジが答えた。
「キラ君は僕達の仲間です。シン君達も」
「わかりました。そういうことですか」
アズラエルはそれを聞いて納得した。
「では敵は他にいると」
「僕はコーディネイターともわかり合えると思っています」
「キラ君は優しいです」
レイも言う。
「ですからきっとこの戦争も」
「終わります」
「そうですか。コーディネイターとも理解し合えますか」
「違うんですか?」
「僕は子供の頃コーディネイターに虐められたことがありましてね」
ここで自らのことを話した。
「それでコーディネイターは嫌いだったのですが。成程」
シンジ達の言葉はアズラエルにとっても考えさせられるものであったのだ。
「やはり人によりますか」
「違うんですか?」
「いえ」
アズラエルはそれを否定しない。
「そういう考えもありますよ。まあ僕はそう簡単には変わらないでしょうけれどね」
「そうか?あんたも結構変わってきているぜ」
「さて」
凱の言葉にはおどけてみせる。
「どうですかね」
「まあよく考えるんだな。だからティターンズには入らなかったんだろう?」
「ああした偏狭な考えでは限界がありますよ」
彼はティターンズを見切っていた。
「今更独裁を敷いて何としますか?ジブリール君達はそれがわかっていない」
「あいつは昔からそうだったしな」
キースは俯いて述べる。
「周りを見ない。あくまで純粋に考える」
「生真面目で正義感が強いのですがね。人間それだけでは駄目なのですよ」
「それだけじゃないんですか」
「君はそれがわかっていると思いますが」
シンジに対して述べる。
「そうですか?」
「そうですよ。まあそれは自信を持って下さい」
「はあ」
「あまり生真面目に過ぎると人間損をしてしまいますので」
「御前もそうだったがな」
「これは手厳しい」
またキースの突込みが来て言葉を返す。
「まあそれはいいでしょう。そろそろですよ」
「そろそろ?」
「映画の上演ですよ。ユウナさん、キサカさん」
「はい」
「何時でも」
二人がアズラエルに応える。
「では皆さん」
ユウナがマイクで放送を入れる。
「今回セイラン家が軍の協力の下製作した新作映画です」
「おおっ!」
「何だ何だ」
「待て」
カガリがそれを聞いて眉を顰めさせる。
「そんなもの何時の間に作っていたんだ?」
「まあこっそりと」
「映画ならおおっぴらに作ればいいじゃないか。それをどうして」
「まあそれは」
「我々は急用を思い立ちましたのでこれで」
「待て」
逃げようとする二人を取り押さえる。
「パーティーの主賓が逃げてどうするんだ」
「まあそれは」
「お気にになさらずに」
「御前等何か私に隠していないか?」
ユウナとキサカに問う。
「一体何をしたんだ?言ってみろ」
「それはキサカがせつめいしてくれるよ」
「ユウナ様、裏切られるのですか」
「裏切るだと」
余計に話が見えなくなった。
「一体何なんだ」
「それはその」
「まあこれから気持ちを落ち着けられて」
「さっきから何を・・・・・・んっ!?」
暗くなった部屋での映像に目を向ける。するとそこには。
黄金色の自分がそこにいた。何か派手に暴れ回っている。
「このっ!このっ!」
映像にはキラがいた。他にはジュリ達カガリの知っている顔がオーブのモビルスーツに乗って必死に黄金色の自分と戦っている。しかも何故か自分自身が巨大化していた。
「やらせない!オーブは!」
そのメカカガリに特攻する。そして何とかそのメカカガリをオーブの火山の中に叩き込む。メカカガリは派手な爆発と共に散った。
それを映像で見ていたユウナが出ていた。隣にはキサカまでいた。
「何とか助かったね、我々は」
「はい」
キサカがユウナの言葉に頷いていた。
「これでオーブの平和は守られました」
「やかましい!」
だがここは平和ではなかった。激昂したカガリがキサカとユウナを袋叩きにしていたのだ。
「何が平和だ!何時の間にこんなものを作った!」
「まあこっそりと」
「どうやら大好評だったようで」
「御前等見ない時期があったと思ったら!こんなものを作っていたのか!」
「けれど面白いだろう?」
「私も中々演技に力が入りました」
「そうか!じゃあ今度は入院患者の役をやれ!」
そう言って二人をさらに殴る。
「ここでそうしてやる!」
「何か大変なことになってるな、おい」
「しかし映画自体はよかったね」
カガリを見て呆れる宙と映画を楽しんでいる万丈はそれぞれ違う反応を見せていた。
その中でルナマリアは部屋の中を見回していた。誰かを探しているようである。
「どうしたの?」
エマが彼女に声をかける。
「誰か探しているようだけれど」
「シン見ませんでした?」
「シン?あの黒い髪の子?」
「そうです。何か何時の間にかいなくなって」
「あいつなら外に出て行ったぜ」
ビルギットがそれに答える。
「そうなんですか」
「ああ。今な、出て行った」
「あいつ、どうして」
「トイレか何かじゃないのか?けれど何かあるのかい?」
「ちょっと艦長が呼んでいるんで」
「わかったよ。じゃあ行きな」
「はい」
ルナマリアは部屋を出た。この時シンはセイラン家の屋敷の外で一人涼んでいた。
「ふう」
宴もいいが今は外の空気を吸いたかった。それで今ここにいるのだ。
「もうちょっとしたら戻るか」
そう思った時だった。不意に一人の少女が前に来た。
「え・・・・・・」
「あっ」
それはジブラルタルにいた少女だった。思わぬ再会であった。
「君はまた」
「ここにいるの?」
「うん、色々あってね」
シンはステラにそう返した。
「けれど君もここにいるなんて」
「旅行で」
「そう、旅行で」
「他にもいるけれど」
「連れがいるの?」
「うん」
ステラはこくりと頷いた。
「ステラ、友達いる」
「そう、それはよかった」
「けど」
「けど?」
「この前のこと」
「ああ、あれはいいよ」
礼なんかいいと思った。
「別にさ」
「けれど」
それでもステラは言う。
「ステラ、御礼したい」
「だからいいって」
「これ」
首にかけてあった貝殻のネックレスを渡してきた。
「これあげる。それで御礼」
「いいの?これ」
「いい」
「そう。じゃあ」
これ位ならいかと思って受け取った。
「有り難う」
「うん。これでおあいこ」
「そうだね。ところでさ」
シンは何故か少し大胆になっていた。
「この戦争が終わったらさ」
「?」
「一緒に何処か行かないかい?会ったら」
「何処か?」
「うん、遊園地でも。どうかな」
「ステラ遊園地好き」
少しにこりと笑った。
「一緒に行くのならいい」
「そう、じゃあ約束だよ」
シンの顔が綻ぶ。
「一緒にね。それで楽しく遊ぼうよ」
「名前何ていうの?」
「俺の名前?」
「うん、教えて」
「シンっていうんだ」
シンはそれに応えて名乗った。
「シン=アスカっていうんだ。覚えておいてね」
「シン?いい名前」
「そう言ってもらうと有り難いよ。じゃあまた会ったらね」
「うん、ステラシンのこと覚えた」
またにこりと笑った。
「だからまた」
「うん、また」
二人は別れる。だがまたすぐに出会うことになる。そして二人は数奇な運命を辿ることになる。それがシンとキラの運命をも変えてしまう。それを知っているのはまだ時を司る三柱の女神達だけであったが。
宴は今はカガリがキサカとユウナを袋にしていた。それをフレイが止めようとする。
「ちょっとカガリ」
「ええい、やらせろ!」
後ろから羽交い絞めにされてもまだ二人を殴ろうとしている。
「こいつ等、何考えてるんだ!」
「それは浪漫さ」
ユウナはボコボコになった顔で答えた。
「男はね、浪漫を追い求めるものなんだ。だから僕は」
「セイラン家の資産を使ってか!」
「浪漫の為には出費を惜しまないものなんだよ」
「やかましいわ!そんな暇あったら真面目に働け!」
「ユウナ様って仕事は真面目よね」
それを聞いていた金髪の少女アサギ=コードウェルが言った。
「そうよね。デスクワークもそつなくやって下さるし」
それに赤髪の少女マユラ=ラバッツが頷く。
「むしろ、ねえ」
そして青い髪に眼鏡のジュリ=ウー=ニェンが言った。
「カガリ様の方が」
「デスクワーク全然出来ないし」
「ああ、やっぱり」
フレイがそれを聞いて頷く。
「カガリらしいわね、それ」
「おかげでユウナ様とキサカさん大変なのよ」
「仕事が増えて」
「でしょうね。カガリだから」
「こら、納得するな!」
「けれど何かキャラクターが出ていていいわね」
エマがそう言って笑う。
「カガリらしくて」
「ははは、それには慣れていまして」
キサカが応える。彼の顔もかなりボコボコになっている。
「いつものことですから」
「僕なんかカガリが子供の頃からなので」
「ユウナさん、あんた漢だぜ」
リュウセイがそれを聞いて唸る。
「カガリと子供の頃から一緒なのか」
「うん、まあね」
「それに耐え切るなんて。俺なら絶対に無理だ」
「そうね。ゼンガーさんに匹敵するわ」
「大尉まで言うのか!」
アヤまで言うのでカガリも困る。
「だって、ねえ」
アヤは少し困った顔を見せる。
「カガリとは砂漠で一緒だったけれどその」
「お転婆どころじゃないからなあ」
「トール、御前折角助けてやったのに!」
「だから落ち着きなさいって」
フレイがまた言った。
「それにあの映画面白いわよ」
「おっ、そう言ってくれるかい?」
「それは何よりです」
ユウナとキサカはその言葉に嬉しそうに反応した。
「嬉しいね。あれはオーブの科学力を集結させたんだ」
「軍も全面的に支援致しましたし」
「そこまでやったのかよ」
「やるねえ」
男達はユウナに喝采を送る。
「まあセイラン家の資産だけじゃここまで出来なかったかもね」
「いやいや、出資した介がありましたよ」
「あんたかよ」
マサキがアズラエルの名乗りに引いていた。
「御前もか!」
「アズラエル財団は映画界にも進出していましてね。面白い映画を作る為に労力は惜しみません」
「糞っ、どいつもこいつも!」
「まあまあ」
「御前が言うな!」
宥めるアズラエルに言い返す。
「それでユウナさん」
リュウセイが目を輝かせてユウナに問うている。
「この映画DVDにはなるのかい?」
「うん、その予定だよ」
「まずは全世界で上映です」
「すげえぜ、それ」
「セイラン家とアズラエル財団のバックアップで」
「何か凄くなりそうだな、おい」
「好評だったら続編も作るから」
「また主人公は私か?」
「スーパーメカカガリとかスペースメカカガリとかそんなので」
「日本のプロダクションと協力して光の巨人と対決させてみてはどうでしょうか」
「いいね、キサカそれ」
「・・・・・・やっぱり御前等死ね」
フレイから離れてまた私的制裁がはじまった。アズラエルは既に逃げているが二人はそうはいかない。そして満身創痍になるのであった。
そんな宴も終わり朝になった。朝になると悪いニュースが入って来ていた。
「ティターンズが」
「うむ、こちらに向かって来ているそうだ」
カガリの父であるウズミ=ユラ=アスハがユウナとキサカに話していた。
「北極からですか」
「アラスカでの戦いで戦力が今手薄になっているな。そこを衝いてきたのだ」
「南方での拠点、そしてマスドライバーといったところですな」
キサカの目が鋭くなった。
「おそらくはな」
ウズミは答えた。
「もう話が来ている。協力を要請してきている」
「ですがそれは」
ユウナの顔が暗くなった。
「オーブにとっては」
オーブは中立を看板としている。それに反するというのだ。
「そうだ。だから我々は受けない」
「それを言うならばロンド=ベルのことを突かれますが」
「彼等には大義名分がある。アズラエル殿が資金を提供して下さっているのと彼等もまた民間人が多い」
「苦しくはないですか?」
ユウナはその説明に眉をひそめさせた。
「どうにも」
「だがそれで言い繕う」
「それでティターンズの申し出はどうしますか」
「無論断る」
それには他の考えはなかった。
「ティターンズの考えは我々のそれとは相容れないものだからな」
「では」
「臨戦態勢を整えよ」
ウズミは二人に命じた。
「よいな」
「わかりました」
「では」
二人は敬礼して頷いた。そしてウズミの執務室を後にした。そして廊下で歩きながら話をする。
「とんでもないことになったね。ティターンズとか」
「それにもう一つの勢力が」
「ザフト・・・・・・いやバルマーだね」
「はい。彼等は最近太平洋で活発な活動を見せています」
「厄介だね。最近カーペンタリアのザフトが大人しくなったと思ったら」
「カーペンタリアの方は撤退に入っています」
「スピットブレイクの失敗のせいだね」
「おそらくは。プラントへ部隊を返しています」
「まずはそれはよしだけれど」
「ティターンズは一般市民への攻撃も辞さないので」
「バスク=オム大佐だったよね。彼はどうにも」
「敵の規模がどれだけかわかりませんがバルマーのことを考えますと」
「我々の戦力だけでは心許ないね」
「どうでしょうか、ユウナ様」
ここでキサカは言った。
「バルマーがいるとなればロンド=ベルに協力を要請しますか」
「そうだね」
ユウナは顎に手を当てて考えを述べた。
「それがいいだろうね。一般市民の避難もあるし」
「それは今からはじめましょう。東南アジア方面に」
「うん、それまでの間持ち堪えないと」
「それもロンド=ベルに手伝ってもらいたいですし」
「一般市民のことをまず考えないとね」
「はい、それではすぐに」
「うん」
ウズミにバルマーのことを話しロンド=ベルの協力を取り付けた。ウズミは中立勢力であることを理由にそれを拒もうとしたがユウナとキサカはバルマーの存在とティターンズの戦術を出してそれを何とか認めてもらった。こうしてロンド=ベルは一般市民の避難に協力することになったのであった。
「ふう」
トールはアークエンジェルの艦橋で大きく息を吐き出していた。
「これでどれだけ送ったのかな」
「まだ三割にもいってないわよ」
ミリアリアがそれに答える。
「かなり往復しているのに?」
「それでもよ。オーブだって結構人がいるでしょ」
「確かにね」
「復帰したてで悪いけれど今は頑張って」
マリューがトールに声をかける。
「これが終わったら航海士になるから」
「士官、ですか」
「何かまだ信じられませんね」
「サイ君達もそうよ」
「ですか」
カズイはそれを聞いて今一つ浮かない顔をしていた。
「とにかく今は頑張らないと。ティターンズが来るのだから」
「ですね。発進」
ナタルが横で言う。
「シンガポールまで」
「了解」
ロンド=ベルの十一隻の艦艇とマシン達はその能力で一般市民の避難にあたっていた。やはりその力は大きく避難はオーブの予想を大きく越えて進んでいた。
「これで船は全部いったね」
「はい」
キサカはユウナの言葉に頷いていた。二人は今その船が一隻もなくなった港に立っていた。
「これで一般市民はかなり避難できたけれど」
「それでもまだかなりの数が残っています」
「間に合うかな」
もう夕刻になっていた。ユウナは時間を心配していた。
「ティターンズがここに到着する時間は?」
「明日の十時頃です」
「十時か。まずは早朝に避難を再開して」
「微妙ですね」
「ロンド=ベルにはもうちょっと頑張ってもらいたいけれど無理かな」
「夜もですか」
「そのかわり明日はここにいてもらう」
「ティターンズへの備えとしても」
「うん。勝手を言っているのはわかるけれどね」
「ですが致し方ありません」
キサカは応える。
「今は」
「市民の為だからね。市民を守らない軍は」
「ティターンズと同じです」
「そういうこと。だから無理にでも頼むよ」
「そして我々も」
「適時休ませながら移送は続けさせてくれ」
「はい」
「間に合えばいいんだけれどね」
ユウナはそう言って難しい顔をした。
「ティターンズの到着まで。あとバルマーも心配だし」
「ティターンズはブルーコスモスの部隊が主流のようです」
「ジブリール副理事のかい?」
「彼が直接来ている可能性もあります」
「彼か」
ユウナはそれを聞いてまた顔を変えた。
「相変わらず一本気みたいだね」
「そういえば御面識がおありでしたね」
「うん。何度か会ったことがあるよ」
だから全く知らないというわけではないのだ。
「人間としては生真面目なんだよ。難民の救済にも積極的だし」
「そうなのですか」
「ただね。あんまりにも生真面目なんだ」
ユウナはジブリールをそう評していた。
「そういう意味ではカガリに近いんだけれど彼はそこに偏見もある」
「厄介ですな、それは」
「それがコーディネイターや異なる存在に向けられているんだ。どうにもアズラエル理事みたいに柔軟な考えの出来ない人物でね」
「その彼がここに来るとなると」
「妥協しないだろうね」
「ですな」
「激しい戦いになるだろうからまずは一般市民の避難を優先させよう」
「戦闘開始までには」
「それからオーブを守り抜くけれどそれが果たせない場合には」
「どうされますか?」
「首長に提案してみるよ。撤退も含めてね」
「撤退、ですか」
「逃げるのは恥じゃないと思うけれど」
ユウナはキサカの顔を見て問う。
「それよりも一般市民を巻き添えにしたりする方がよっぽど恥ずかしいことさ」
「ええ」
これはキサカにもわかる。ユウナはいささか頼りないところもあるがそうしたことはわきまえている男であった。
「さて、そして我儘お姫様だけれど」
「そちらも何とかしますか」
「何とかなればいいけれどね」
「それが一番厄介かも知れませんな」
「全く。親娘でどうしてああ頑固なんだか」
ユウナはそう述べて苦笑いを浮かべた。
「子供の頃から」
「全くです」
「愚痴を言っても仕方ないけれどね。じゃあグローバル艦長達と連絡を取ろう」
「はい」
「明日のことをね。明日は大変な一日になるだろうね」
「正念場ですな」
「うん」
彼等は司令部に戻りグローバル達と話をした。そして翌日はロンド=ベルはオーブに留まることになったのであった。
「来るか、奴等」
シンは一人夜の基地の一室で待機していた。その目で海を見据えていた。
「ティターンズ。ザフトを攻撃して多くの人達を殺した奴等」
「そうだ、彼等だ」
レイが来た。そしてシンに応える。
「だが彼等だけではない」
「バルマーか」
「そうだ、彼等も来るだろう。激しい戦いになるぞ」
「なあレイ」
シンはレイに顔を向けて声をかける。
「何だ」
「クルーゼのことは聞いた」
「ああ」
「あいつがコーディネイターを滅ぼそうとしていることもな」
それははっきりとわかった。レイの示したデータは実際に検証してみても驚くべき正確さであったからだ。それからクルーゼの企みが彼にもわかったのだ。
「だから俺はここに来た。ロンド=ベルにな」
「家族を守る為にか?」
「そうだ、だから俺は」
「戦うのだな」
「悪いか?」
「いや、それでいい」
レイはそれは認めた。
「だが」
「だが。どうした?」
「人全体を守るつもりはないのだな」
「馬鹿を言え」
シンはそれは否定した。
「俺はコーディネイターだ。コーディネイター以外を守ってどうする」
「そうか」
「そうさ、俺は他の何でもない。ナチュラルのことなんかどうでもいいんだ」
それがシンの考えであった。彼は自分の仲間や家族のことだけしか考えていなかった。
「あいつみたいな考え、理解できるものか」
「それはキラのことか?」
「あんたは」
「カミーユ。カミーユ=ビダンだ」
「ロンド=ベルのエースの一人か」
「どうやら俺も有名人みたいだな」
「ああ、話は聞いている」
シンはカミーユにそう返した。
「前の戦いからのエースだってな。木星の戦いでも活躍した」
「その貴方がどうしてここに」
「俺も同じさ。明日に備えて待機をしている」
「そうなのか」
レイはそれを聞いて納得した。
「ふと声がしたんで来たけれど。君達がいたなんてな」
「話聞いたのか?」
「ああ」
カミーユはそれに答えた。
「君は家族の為に戦っているのか」
「悪いか?」
「いや、いいことさ」
シンの考えをまずは認めた。
「何かを守る為に戦うことはいいことだ。それだけ強くなれる」
「強く、そうだ」
シンはその言葉に反応を示した。
「俺は強くなりたいんだ」
彼は言う。
「父さんも母さんもマユも守る為に。だから軍に入ったんだ」
「そうなのか」
「そしてここにいる。何があってもマユ達を守る」
「マユってのは誰なんだい?」
「こいつの妹なんです」
レイがカミーユに説明した。
「ずっと大事にしているんですよ」
「そうなのか」
「そう決めたから。だからここにいるんだ」
「それでさっきキラのことを言っていたね」
「ああ」
その言葉にも答える。116
「あいつも何かを守ってるんだよな」
「友達をね」
「ナチュラルのか!?」
「ああ、その通りだ」
「ナチュラルなんか守って何になるってんだ」
シンはそれを聞いてこう呟いた。
「俺達とは違うっていうのに」
「いや、同じさ」
だがカミーユはそれを否定した。
「同じなものか、俺達とナチュラルじゃ」
「わかるさ、俺もナチュラルだから」
「けれどあんたは」
「ニュータイプだからって特別な存在じゃないんだ」
カミーユの声が強くなった。
「他の人間と変わりはしない、ただ勘がいいだけで」
「嘘だ」
「嘘じゃない、だからキラも皆を守れるんだ」
「あいつも」
「そうだ、皆と同じだってわかったから」
「あいつはコーディネイターなのに」
「コーディネイターも少し力が強いだけなんだ。皆同じなんだ」
「ロンド=ベルには他の星の人もいましたね」
「タケル達のことか?」
「はい、ダバ=マイロードさん達も」
「そうさ、エイジもな」
「それでも変わりないんですよね」
レイはさらに問う。
「俺達と」
「変わりはしないさ。いい奴さ、皆」
「そうなんですか」
「だからだ。コーディネイターだからって違わないんだ。同じなんだ」
「・・・・・・・・・」
「今はわからないか?そのうちわかる」
「わかるものなのか、それって」
「わかるさ。キラだってわかったんだからな」
「あいつも」
「考えるんだ、そして自分が何を守るべきなのか。よく考えてくれ」
そこまで言うと部屋を後にした。
「じゃあな」
「・・・・・・・・・」
シンは何も言えなかった。彼がそれを理解するのは運命によってであった。だがそれは今ではなかったのであった。
翌朝ロンド=ベルは臨戦態勢に入っていた。レーダーにはもう反応があった。
「ティターンズです」
「もう来たか」
ヘンケンはエレドアの言葉に応えた。そして前を見据える。
「早いな」
「かなりの数ですね、また」
「太平洋がガラ空きだからな。好きなだけ送れるのだろうな」
「やれやれってところですね」
エレドアはそれを聞いて溜息を吐き出した。
「太平洋を堂々と通過されるなんて」
「仕方ない、アラスカの基地はまだ復興に手をつけてすらいないそうだからな」
「どこは一体どうなっているのですか?」
ノリスがモニターに現われて尋ねてきた。
「このままでは制海権がティターンズのものになりますが」
「そこはサザーランド准将が考えて下さっているが何分戦力の再編中でな」
「左様ですか」
「相変わらず戦力は日本に集中させている。どうしようもない」
「ですか。残念ですな」
「だからこんなところで戦争というわけだが。ところで後ろはどうなっている?」
「はい」
今度はナタルがモニターに現われた。
「今のところ順調に避難が進んでいます。今最後の避難者が乗り込んでいます」
「そうか」
見ればナタルの後ろにその避難者達が見える。彼女はその誘導の指揮に当たっているのだ。フレイがその助けをしている。
「あの、ヘンケン艦長」
そこに私服のカズイが姿を現わす。
「すいません、俺」
「何、いいってことさ」
申し訳なさそうな彼に笑顔を返す。
「自分で考えた結果だ。胸を張れ」
「はあ」
「平和になったらまた会おう、いいな」
「わかりました」
「それでバジルール中尉」
「はい」
「アークエンジェルに収容していた捕虜は解放されたのか」
「はい、バスターはモルゲンレーテの工場に送られました」
「そうか、それは何よりだ」
「今工場ではフラガ少佐がストライクの調整にあたっておられます」
「今度は彼がストライクに乗るのか」
「そうですが」
「ふむ」
「それが何か?」
「いや、何か違和感があってな」
「違和感ですか」
「今までメビウスのパイロットだったろう」
「ええ、まあ」
「それがストライクに乗るとなるとな。前と違うからな」
「そうなのですか」
「それで調整は上手くいっているのか?」
「はい、そちらは」
返答は明瞭であった。

「御安心下さい」
「うむ、ではそちらは頼むぞ」
「はい・・・・・・んっ!?」
「どうした」
「警報です、敵です」
「何だとっ!?」
「三機のガンダムが!来ました!」
「いかん、すぐ迎撃を向かわせろ!バジルール中尉!」
「はい!」
「君は現場の避難の指揮にあたれ!いいな!」
「了解!」
「誰かいるか!」
ヘンケンはすぐにナタル達のいる港に向かわせるメンバーを探した。
「ミネルバの部隊が一番近いです」
「わかった、タリア艦長に連絡を取ってくれ」
「はい」
アドレアは応える。
「すぐに行ってもらう」
「わかりました。ですが」
「前からも来ているか」
「はい、予想より早かったですね」
「敵も馬鹿ではないということだな」
前方に展開するティターンズの軍勢を見て言う。
「来るぞ、派手な攻撃がな」
「少なくとも一般市民は避難させたいですね」
「ああ」
「オーブに伝えろ」
スードリの一機にジブリールが乗っていた。そこから指示を下している。
「大人しくそこを明け渡せば何もしないとな」
「それで聞くと思われるのですか?」
同乗しているジャマイカンがそれに問う。
「オーブの獅子が」
「おそらくは聞かないだろう」
その程度のことはジブリールも呼んでいた。
「仮にもオーブの獅子と呼ばれた男、この程度で屈するとは思えぬ」
「では」
「そうだ、実力で占拠する」
最初からそのつもりだった。だからこそ大軍を動員してきたのだ。
「全軍出撃だ」
「はい」
「しかしだ」
ジブリールは一言付け加えた。
「一般市民は攻撃対象から外す」
「何故ですか?」
「占拠した後すみやかにオーブの産業を復興させたい。その為には一般市民の協力が必要だからだ」
ジブリールは企業家でもある。そこからの判断であった。彼にとって一般市民もオーブも将来の顧客である。彼等なくして自身の理想もないことはよくわかっていたのだ。多分に原理主義的な理想であったとしても。
「我等に逆らう者なぞ共々始末してやればいいではないですか」
「それがコーディネイターや異星人ならばな」
ジブリールは冷徹な声で述べた。
「だがそれ以外の者に対しては攻撃をすることはしない。ましてや避難民に対しては」
「では何故あの三機のガンダムを港に行かせたのですか」
「脅しだ」
彼はむべもなくこう述べた。
「同時に陽動だ。これで敵の一部が港に向かった」
「むむっ」
「ロウ=ギュールとイライジャ=キールにも伝えよ。一般市民は無視しろと」
「わかりました」
「そして我等は正面から攻撃を仕掛ける。切り札も出すぞ」
「なっ」
「彼等をですか」
「ここで使わなくてどうする」
その場に居合わせたティターンズの者達やブルーコスモスの同志達に対して言う。
「ロンド=ベルを倒しオーブを手中に収める為だ、構わん」
彼は言う。
「叢雲劾に伝えろ、出ろと」
「はっ、はい」
「オーブを押さえ南北から太平洋に睨みを利かす」
今ジブリールの中で地球とその周りが浮かんでいた。
「そして宇宙ではあれを完成させる。そしてコーディネイターもバルマーも退けてみせる」
彼は己の戦略を実現させようとしていた。その為にオーブを攻撃しようとしているのであった。
「おいおい、何なんだよ」
解放されたディアッカはいきなり出て来たティターンズの軍勢を見て声をあげる。
「折角カーペンタリアまで帰られると思ったらこれかよ」
「おい、邪魔だ」
そこに大男達がやって来た。
「こっちは急いでいるんだ、邪魔するな」
「邪魔するなっておい」
「ちょっとすいませんね」
そして何か中性的な少年の声も聴こえた。
「今取り込み中ですから」
「っておいその声」
「えっ、まさか」
お互いその声の主に気付いた。
「ニコルか!?」
「ディアッカなんですか!?」
二人は思わぬ場所で再会した。驚いた顔で互いの顔を見やる。
「どうしてここに」
「御前こそ」
「何だ、坊主の知り合いか?」
ガナンが立ち止まってこう言う。
「ええ、まあ」
「ほう、中々男前じゃねえか」
「俺程じゃないがな」
「あんた、ギガノスのジン中尉かよ」
「知ってたか」
「生きてるって聞いていたけれどこんなところで会うなんてな」
「奇遇ってやつだな」
「お、御前誰だ?」
「俺はディアッカ=エルスマンっていうんだ」
ディアッカは名乗った。
「こいつとはザフトで同僚だったんだが」
「ほう、坊主のか」
グン=ジェムはそれを聞いて何かを閃かせた。
「わかった、おめえも来い」
「来いって何処にだよ」
「モルゲンレーテの工場ですよ」
「そこに行って何するってんだよ」
ニコルに問う。
「ちょっとブリッツの頭を」
「頭って」
「まあいい、おめえも来い」
いきなりグン=ジェムに腕を掴まれる。凄い力だ。
「俺もって」
「手伝え、いいな」
「場所とかはわかってるのかよ」
「目星はついている、モルゲンレーテの倉庫だ」
「モルゲンレーテ」
「何かあるのか?」
「今そこに俺のバスターも置いてある」
「そうか、なら都合がいい」
「じゃあ」
「来い、そして奪うぞ」
「何か泥棒みたいだな」
「トレジャーハンターらしいですから」
ディアッカ、ニコルはグン=ジェム隊と共にモルゲンレーテの倉庫に向かう。その頃既に戦闘ははじまっていた。
「またあの三機のガンダムか!」
シンはガイア、カオス、アビスの三機のガンダムを前にして叫んでいた。
「今度こそ倒してやる!」
「シン、あまり前には出るな」
「レイ」
「かなり手強い、用心しろ」
「わかった、じゃあ後ろは頼む」
「ああ」
レイーはそれに応えてドラグーンを放つ。ファンネルに似た動きで三機のガンダムに向かう。
「まずは一般市民の救出を優先させる、いいな」
「了解」
「おい、そこの二人」
ストライクがやって来た。
「避難民を守っているのか?」
「あんたは」
「ムウだ、今度からストライクに乗ることになった」
ストライクのコクピットからムウの通信が入る。
「宜しくな」
「ああ、わかった」
「それでフラガ少佐」
レイが彼に声をかける。
「どうした」
「少佐は他の敵の相手をして下さい。この三機の相手は俺達がします」
「いけるか?」
「大丈夫です。足止めだけですから」
「そうか。じゃあ丁度二機いるしな」
ロウとイライジャの機に目を向けていた。
「そちらに向かわせてもらう。頼むぞ」
「任せて下さい。では」
「ああ、バジルール少尉」
「はい」
ナタルにも通信を入れる。
「そっちの誘導は頼む。港には近付けさせないからな」
「わかりました。ではお任せします」
「了解、これで誘導は大丈夫だ」
「信頼されてるんですね、あの人のこと」
「堅物だけれどな、あれで結構可愛いところもあるんだぜ」
「可愛い、あんな女が」
「おいおい、そりゃレディーに対して失礼ってやつだぜ」
ムウはシンに対して苦笑いを浮かべて突っ込みを入れる。
「わからないか?あれで美人でスタイルもいいだろうが」
「そうか?」
「シン、御前のタイプではないんだな」
「俺は年下がいい」
シンはきっぱりと言った。
「おばさんはタイプじゃない」
「シン=アスカ」
「むっ」
ナタルがデスティニーにも通信を入れてきた。
「私はまだ二十五歳だ」
「あっ、そうだったのか」
「後で君には女性に対する言葉遣いを教えさせてもらう。楽しみにしていろ」
そこまで言うとモニターから消えた。何か殺気が立っていた。
「何なんだ、一体」
「御前も坊主と同じだな」
「!?」
「そのうちえらいことになるぞ」
「何のことなんだ?」
ムウの言葉の意味はわからなかった。しかも自分に死亡が立ったこともわかってはいなかった。
「後で殺す」
ナタルは頭に青筋を浮かべたまま通信を切っていた。
「私はまだ若いんだ」
「あの、副長」
「どうした?」
「避難民の救助が遅れています」
カズイが答えた。
「何だとっ」
「通信員が足りなくて」
「仕方ない、バスカーク君」
「はい」
もう軍属ではないので姓を呼んだ。
「はい」
「手伝ってくれ、いいな」
「わかりました」
「済まないな、軍を離れたのに」
「いえ、いいです。大変な時ですから」
「市民を船に誘導してくれ、いいな」
「了解」
「そしてアルスター二等兵は」
「あれっ、フレイは」
気付けば彼女は何処にもいなかった。
「何処に行ったのだ?こんな時に」
「まさか戦いに巻き込まれて」
「憶測は駄目だ、だが」
「えっ、ええ」
「今はそれよりも市民の避難誘導を優先させる。やるぞ」
「は、はい」
カズイはこのまま通信をはじめた。そして何とか避難民を誘導させていたのであった。
キラは前線でフリーダムを駆っていた。目の前に青いストライクダガーがやって来る。
「青いストライクダガー!?どうしてティターンズに」
「済まない、こちらのミスだ」
「ユウナさん」
ユウナがモニターに現われて謝罪してきた。彼はキサカと共に司令部に入っていた。
「実はストライクダガーの開発はブルーコスモスと協力してやっていたんだ」
「そうだったんですか」
「ところがブルーコスモスが分裂してしまってね。それでジブリール副理事達がティターンズに入ったから」
「それで」
「申し訳ない、君達には迷惑をかける」
「いえ、それは」
「ところでヤマト少尉」
「はい」
今度はキサカが出て来た。
「カガリ様はアークエンジェルにおられるのか」
「カガリですか!?」
「そうだ、司令部には姿を見せておられないのだが」
「カガリならこちらにはいませんが」
アークエンジェル艦長であるマリュー直々の言葉であった。
「何ですと」
「それが何か」
「キサカ、まさか」
「ええ、おそらくは」
ユウナも慌てはじめた。
「どうしたんですか、一体」
「どうしたもこうしたもないよ、重ね重ね済まない」
「はあ」
何か異様に狼狽するユウナとキサカに戦場らしからぬ違和感を感じていた。
「多分そっちに出撃している。フォローを頼む」
「頼んだぞ、ヤマト少尉」
「頼むって」
「おい、キラ」
そこに赤いモビルスーツが四体やって来た。その中の一機は赤いストライクであった。
「私も戦うぞ!」
「えっ、カガリ!?」
「何だ、私がいたら悪いか!?」
「いや、その」
「ああ、ヤマト少尉」
「ユウナさん、まさか」
「言っても聞かないから。宜しくね」
「宜しくってちょっと」
「健闘を祈る」
「キサカさんまで。待って下さいよ」
「大丈夫だ、私だってモビルスーツの操縦はできる!」
「けれどはじめてなんだろ!?相手はティターンズだよ」
「それがどうした」
「玄人ばかりなのに。危ないよ」
「そうですよね」
「私達も言ってるんですけれど」
アサギとマユラが言う。彼女達が後の三体のアストレイに乗っていた。ジュリもいる。
「御前等は後ろを頼む」
アルフレッドが彼女達に対して言う。
「俺達がメインでやるからな。流れてきた奴をやれ、いいな」
「了解」
「わかりました」
「おい、ストライクはメインで戦えるぞ」
「おいおい、えらく好戦的なお姫様だな」
キースがカガリの声を聞いて言う。
「何っ」
「カガリ、ここは人の話を聞いてだね」
「オーブの危機に手をこまねいていられるか!」
「だからそういう問題じゃ」
「ユウナ様、ここはリンクス少佐達に任せましょう」
「いいのかい?」
「仕方ありません」
「ううん」
ユウナも観念するしかなかった。
「じゃあ少佐、ここはお願いするよ」
「了解」
「敵が来ているけれどね」
「一般市民はどうなっていますか?」
「あと少しだ」
キースに答える。
「あと少しで撤退完了だね」
「それじゃあ」
「もっともそっちでも戦闘になってるけれど」
「ですか」
「とりあえずそっちはそっちで頑張ってくれ、いいね」
「了解」
「じゃあさっさと始末してやるぜ!」
アルフレッドがコクピットの中で叫ぶ。
「来やがれ!片っ端から始末してやらあ!」
ストライクダガーだけでなく他のティターンズのマシンもやって来る。だが見たところティターンズのエースパイロット達の機体はなかった。
「どういうことだ?」
カミーユが最初にそれに気付いた。
「ジェリドもヤザンもいないっていうのか?」
「多分北極に残っているのでしょうね」
フォウが答える。
「これからに備えて」
「これからか」
「それか今彼等に匹敵するパイロットが来ているか」
「あの三機のガンダムか?」
「それだけじゃないかも」
「ティターンズはまだ切り札があるっていうのか、それは一体」
「!?カミーユ」
ファが何かを感じた。
「今っ」
「むっ!?」
「これは」
カミーユとフォウもそれを感じた。
「何だこの凶暴な気配は」
「三人・・・・・・何これ」
「何だありゃ」
勝平がオーブに海上と空からやって来る三機のモビルスーツに気付いた。
「ガンダムに似てるな」
「あれガンダムかしら」
恵子がその三機を見て言う。
「それにしては変なカラーリングよ」
「外見もな」
宇宙太もその三機を見ていた。
「何なんだ、あのモビルスーツは」
「はぁっはっはっはっはっはっは!」
海上を進むあちこちに砲やライフルを持った青いガンダムに乗る金髪の男が異常な笑いをあげていた。
「殺るぜロンド=ベル!」
彼はコクピットの中で叫んでいる。狂った様な顔であった。
「どいつもこいつもな!」
「御前になんかできるかよ!」
それに空を変形して飛ぶ黒いガンダムに乗る赤い髪の男が声をかけた。
「僕がやるんだよ!抹殺してやる!」
「・・・・・・うざい」
緑のガンダムに乗る緑の髪の男が呟く。両肩に盾を持ち鎌まで持っている。
「おい、御前等」
三人の指揮を執っていると思われる劾が彼等に対して言った。
「わかってると思うが」
「あん!?」
「敵はロンド=ベルだ。いいな」
「わかってるぜ、そんなことはよ」
「あいつ等皆殺しにすりゃいいんだろ?」
「・・・・・・殺す」
「そうだ。じゃあ行け」
「うおおおおおーーーーーーーーーーっ!」
「撃滅してやる!」
「・・・・・・死ね」
「滅茶苦茶な動きしてるな、あの三機」
アルフレッドも彼等の姿に気付いた。既に戦闘に入っている。
「何だ、ありゃ」
「まずい」
それを見たブライトが呻く。
「あの辺りにはマシンがいない」
「じゃあ僕が」
キラが前に出て来た。
「行ってくれるか」
「はい、任せて下さい」
「俺も行けるぜ」
「少佐」
ムウが名乗り出てきた。
「何かよくわからねえが危なそうだな。そっちに行かせてもらうぜ」
「モルゲンレーテの方は大丈夫ですか?」
「今のところシン達が防いでくれている。一般市民への被害はない」
「そうですか」
キラはそれを聞いてまずは安堵した。
「バジルール中尉が的確な指揮を執ってくれているしな」
「わかりました。じゃあお願いします」
「ああ。数は不利だがいけるな」
「やってみます」
キラは応える。
「そんなこと言っていられる場合しゃありませんから」
「よく言った、その意気だ」
「はい!」
ムウが戦場に姿を現わし三機の異形のガンダムにキラと共に挑む。モルゲンレーテではシンとレイが三機のガンダムを相手どっていた。
「・・・・・・そこ」
黒いガンダムが獣の姿になる。そして獰猛な動きでデスティニーに攻撃を仕掛ける。
「!?この動き」
シンは分身でそれをかわした。だがそこに妙なものを感じていた。
「ナチュラルでもニュータイプでもない。何なんだ」
「立ち止まってると死ぬぜ!」
スティングが動きを一瞬止めたデスティニーに誘導ミサイルを放つ。だがそれはレイのドラグーンにより全て撃墜されてしまった。
「済まない」
「いい。だが」
レイは言う。
「この動き・・・・・・妙だな」
「御前もそう思うか?」
「ああ、この動きはナチュラルのものじゃない」
「ああ」
「コーディネイターの動きに近い」
「そうだな、これは一体」
「詳しいことはわからないが手強いのは確かだ」
「あの軽い少佐もいなくなったしな」
「そのかわり一機来ているがな」
アストレイが一機そこにいた。そして意外な程健闘していた。
「誰だ、あれは」
「オーブのパイロットか?」
「だと思うがな。しかしいい動きをしている」
「そうだな」
「よし、そこだ!」
今度はアウルが攻撃を仕掛けてきた。
「落ちろ!」
「そんなので!」
ビームはあえなくシンにかわされた。分身し、ビームをすり抜ける。
「こうなったら!」
「後ろは任せろ」
「わかった!」
三機のガンダムの真っ只中に突っ込む。その掌が今黄金色に輝いていた。
シンが三機のガンダムに向けて突っ込んでいるその頃キラは三機のガンダムの相手をムウと共にしていた。
「うおおおおりゃああああああああっ!」
海から上陸してきたガンダムが派手に砲撃を放つ。それは全てムウのストライクを狙っていた。
「おっと!」
右に舞ってそれをかわす。だがそこにまた攻撃が来る。
「遅えぜ、あんた!」
「なっ!」
その青いガンダムからであった。攻撃をしたばかりでまた攻撃を仕掛けてきたのだ。
「何て速さだこいつ!」
「はあっはははははははははは!どいつもこいつもスクラップにしてやる!」
空ではキラが黒いガンダムの相手をしていた。
「撃滅!」
黒いガンダムに乗る赤い髪の男が叫びながら鎖につながれた鉄球を振り回していた。
それでフリーダムを襲う。それはキラも避けるのには厄介な速さであった。
「くっ!」
かろうじて盾で受ける。そこにとんでもない攻撃が来る。
「なっ!」
ビームが曲がって襲いかかってきたのだ。その先にはあの鎌を持ったガンダムがいた。
「シャニ!手前!」
「はん・・・・・・」
そのガンダムに乗る男シャニ=アンドラスは仲間の言葉に表情を変えることなく静かな狂気をそこにたたえていた。
「うざいんだよ、クロト」
「何ィ!」
「チョロチョロしてたら御前も撃墜してやるぞ」
「そこか!」
キラはシャニのガンダムに攻撃した。ビームを放つ。
しかしそれは跳ね返された。何とビームを曲げたのである。
「なっ、ビームを・・・・・・」
「ちゃちだな」
「何て攻撃なんだ」
「間違いないですね」
モニターにアズラエルが出て来た。
「彼等です」
「彼等!?」
「はい、実は彼等はブルーコスモスで研究していた強化人間なんですよ。生体CPUといいますが」
「生体CPU」
「死刑囚や身寄りのない孤児を引き取って強化手術を施したのですよ。兵器としてね」
「ブルーコスモスはそんなことをしていたんですか!?」
「死刑囚をですよ」
アズラエルはキラの抗議めいた言葉にしれっとして返す。
「こうして命を助けているんですよ。まだいいじゃありませんか」
「そういう問題じゃなく強化人間なんか」
「僕がやったのはそこにいる三人なんですよ。僕だってそりゃ孤児を強化人間にするのはあれですしそれ自体もすぐに研究を打ち切りましたよ、その三人だけでね」
「どうしてなんだ、そりゃ」
「採算が合わないからですよ」
アズラエルはムウに答えた。
「強化人間というのは莫大なコストがかかりますからね。それで中止にしました」
「そうなのか」
「そこにいる三機のガンダムもね。しかしまさかジブリール君が彼等を持って来たとは」
「ジブリール副理事がティターンズに持って来たんですか?彼等を」
「はい」
今度はマリューに答えた。
「その通りです。ブルーコスモスが分裂した際に彼等はあっちに渡っちゃいまして」
「そうだったのですか」
「それで今ここにいるんでしょうね。厄介なことに」
「あいつ等何ていうんだ?」
「オルガ=サブナック、クロト=ブエル、シャニ=アンドラス」
アズラエルは三人の名前を口にした。
「ガンダムはそれぞれカラミティ、レイダー、フォピドゥンです」
「不吉な名前だな」
ムウが三機のガンダムの名を聞いて呟く。しかも三人の姓は魔界の魔王達の姓である。やはり不吉極まるものであった。
「そのかわりかなり強力ですよ」
「そんなにか?」
「はい、それこそ戦局に影響がある程です」
「そんなものまで開発していらのかよ」
「ですがコストの関係で」
「やっぱりそれか」
「しかしそれが来ているとなると」
「まずいってことか」
「乗っている三人もかなりの強さなので。注意して下さい」
「坊主が押されているからな。俺も・・・・・・おっと!」
スキュラを慌ててかわす。
「何て攻撃だ。あの状態で出すかよ」
「あと一般市民の避難はもうすぐ終わりです」
「そうか」
「バジルール中尉が頑張ってくれましたから」
「了解、じゃあそっちは安心だな」
「はい」
「ただ、レーダーにまた反応です」
ミリアリアが報告してきた。
「援軍か!?」
「いえ、これは」
「バルマーです」
サイが答えた。
「バルマーが南東に来ました!その数二千!」
「おい、そんなにかよ」
ムウだけでなく他のメンバーもそれを聞いて声をあげる。
「こんな時にか」
「やばいな、これは」
キースがそこまで聞いて呟く。
「二千も来られるとな」
「危険です、一般市民の船の方にも」
「すぐに援軍を向けろ!」
ブライトが指示を出した。
「じゃあ俺が!」
「俺も行くぜ!」
ショウとトッドが名乗りをあげた。彼等に続いて聖戦士達がそこに向かう。
続いてブレンパワードが。とりあえずは足止めであった。
「ティターンズの数は?」
「まだかなりです。九割が健在です」
「そうか、まだまだだな」
「ですがあちらもバルマーに攻撃を開始しています」
「バルマーにも?」
「彼等にとってはバルマーも敵ということだね」
ユウナがそれを聞いて述べた。
「けれどこれはこれで好都合だね」
「そうですな、乱戦になりますが」
それだけティターンズもバルマーも攻撃の目が分散されるということであるからだ。
「では陣を整えよう」
グローバルがそこまで聞いて断を下した。
「一旦後ろまで退きよりティターンズとバルマーが衝突するようにする」
「はい」
「それで戦局を見ていこう」
「了解です。それが終わってからは」
「頃合を見て撤退だ。ユウナ殿」
「はい」
「それで宜しいかな」
「ええ、こちらもそれで同意します」
ユウナは司令部として常識的な判断を下した。
「ただ、カガリは頼みます」
「わかりました、では」
「はい」
これで話はまずは終わった。だがユウナは浮かない顔をしていた。
「まずは市民のことは落ち着いたけれど」
「カガリ様ですか」
「何か最後までごねそうなんだよね」
彼はまた困った顔になっていた。
「覚悟はしているつもりだけれどね」
「いつものことですからな」
「やれやれ」
そしてまたぼやいた。
「暫くオーブは平和だったのに」
「抜け出しは許しませんぞ」
「やっぱり駄目?」
「駄目です」
キサカはそれだけは許さなかった。
「サハラでは私が苦労してばかりでしたから」
「こっちは平穏だったんだけれどねえ」
「ユウナ様はカガリ様の婚約者だったのでは?」
「そうだったっけ」
「確か」
「まあ僕はまだ独身だしセイラン家の跡取りとして奥さんを迎えなくてはいけないのだけれど」
「それでは」
「いや、僕はせめて家庭は」
「ユウナ様!」
「それに婚約はしていないよ」
「そうなのですか」
キサカの顔にそれだけで絶望が走る。
「だから僕はカガリとは一緒に」
「むむむ」
「キサカはどうかな」
「私は結婚しておりますので」
「そうだったの」
「仲人はお父上でしたが」
「いや御免、忘れていた」
「とにかくカガリ様のサポートにはユウナ様は欠かせませんので」
「子供の頃からずっとだなあ」
「諦めて下さい」
「とほほ」
「キサカ一佐」
カズイが通信を入れてきた。
「どうした、バスカーク君」
「大変です、ナタルさんが行方不明です」
「何だと!?」
「バルマーの攻撃に巻き込まれて」
「無事か!?」
「それがわからないんです。今何とか一般市民の人達は皆避難できましたけれど」
「そうか、それは何よりだ」
「指揮はオーブの人達がやってくれています。けれど」
「わかった」
キサカはそれを聞いて頷いた。
「私がそこに行く」
「いや、君はここに残ってくれ」
だがユウナがそれを止めた。
「しかし」
「トダカ一佐に言ってもらう。それでいいね」
「トダカ一佐ですか」
「そうだ、彼の方が近い。今は危急だから」
「わかりました」
これはユウナの判断が正しかった。キサカもそれに頷いた。
「そしてバスカーク君」
「はい」
「大変だろうけれど君はまだそこで連絡をしてくれないか」
「はい」
カズイもそれに頷く。
「君の通信の腕を買いたいんだ」
「俺のですか」
「うん、それでいいね」
「わかりました。じゃあ」
「一般市民になったのに悪いけれどね」
「あの、それですけれど」
「何だい?」
「俺、アークエンジェルに戻っていいですか?この戦いの後で」
「アークエンジェルにかい?」
「はい、やっぱり俺こうして役に立ちたいですから」
「うん、後でマリュー艦長に話しておくよ」
「すいません。あと」
「今度は何だい?」
「ティターンズと交戦していたオーブのモビルスーツが撃墜されました」
「そうか」
「それで今は・・・・・・なっ!?」
「何があった!」
キサカがその声の変化に只ならぬものを悟った。
「モルゲンレーテの工場から!メタルアーマーです!」
「メタルアーマーだと!?」
「はい!そしてガンダムも二機!」
「どういうことだ!?」
「ティターンズ!?けれど」
ユウナはそこに違和感を感じていた。
「メタルアーマーは」
「多分違いますね」
それまで引っ込んでいたアズラエルがまた出て来た。
「ティターンズはモビルスーツの軍隊です。兵器系統が違いますよ」
「ですね。じゃああれは一体」
「多分地上にいたグン=ジェム隊の生き残りでしょう」
その通りであった。
「しかし何故ここに」
「詳しいことはわかりませんがまあ敵ではないです」
「そうなのですか」
「しかし何故ここに」
「その秘密はあの二機のガンダムにあると思いますが」
モニターにはバスターとブリッツが映っていた。
「あの二機のガンダムに乗っているのは誰なんでしょうね」
「ううむ」
とりあえず工場から出たグン=ジェム達はまずは辺りを見回していた。
「さて、これからどうするんだい?」
ディアッカがグン=ジェムに問う。グン=ジェムはゲイザムに乗っていた。
「逃げるのさ」
「やっぱり」
「しかし御前等はどうするんだ?」
「俺達かい?」
「そうさ。ザフトに帰るのか?」
「ああ、そのつもりだけれどよ」
「今までお世話になりましたけれどやっぱり」
ニコルも答えた。
「まあそういうことなら仕方がねえ。じゃあこれでお別れだな」
「はい」
「んじゃあ大佐、またな」
「おう」
「いや、待て」
だがジンがここで止めた。
「何だい?」
「また来たぞ」
「バルマーかい?」
「違うな、カーペンタリアからだ」
「カーペンタリアから?」
「誰なんでしょう」
「まずは四機」
オレンジのゲイツRと三機のモビルスーツであった。
「あれは・・・・・・ミゲルか!?」
「僕達を迎えに」
「そこのバスターとブリッツ」
彼等に通信が入って来た。
「いるのはディアッカとニコルか!?」
「その声は」
「ミゲルですか!?」
「そうだ、無事だったんだな」
「ああ、まあな」
「何とか助かりました」
「そうか、それで頼みがある」
「何だ?敵中突破でもしてくれってか?」
「違う、俺達はロンド=ベルに入る」
「何っ!?」
「どういうことですか、一体」
「詳しい話は後です」
「今は一緒にお願いします」
フィリスとエルフィも述べた。
「お、おい。いきなり言われてもよ」
「何が何なのか」
「ロンド=ベルですか」
二人が戸惑っている間にジャックがロンド=ベルに通信を入れていた。
「ジャック=ライアン、フィリス=サイフォン、エルフィ=バートン、そしてミゲル=アイマン」
「俺達四人これからロンド=ベルに参加させてもらう」
「そうか、来たか」
「いいタイミングね」
事情を知るレイとタリアはそれを聞いて頷いていた。
「何がどうなっているんだ!?」
マサキはそれを聞いて目を白黒させていた。
「いきなりザフトの奴等が参加してきたなんてよ」
「タリア艦長と同じじゃないかしら」
テュッティがそれに応えた。
「タリアさんとかよ」
「それなら説明がつくんじゃ」
「その通りよ」
タリア自身がそれに答えた。
「彼等のことはもう知っていたわ」
「じゃあ」
「信頼出来るわ。援護お願いね」
「了解!」
四人はロンド=ベルに合流する。そしてバルマーとの戦いに入っていた。
だがディアッカ達はまだ事情が飲み込めていない。呆然と工場のところに立っていたままであった。
「な、何かよ」
「ええ」
ディアッカとニコルはモビルスーツで互いの顔を見合わせていた。
「いきなりとんでもないことになってるよな」
「そうでうよね、これは一体」
「まあ何だ」
ここでグン=ジェムが言った。
「ここは悩んでも仕方ねえな」
「そうだなお頭」
「どうせバルマーともティターンズとも対立してるしな」
「じ、じゃあ決まりだ」
「おう、ロンド=ベル!」
「この声は」
マイヨが最初に気付いた。
「大佐かい!?」
「おう久し振りだなミン!」
「元気そうで何よりだ!」
「ガナン!」
「奇遇だけれどな」
「ジン!」
「ひ、久し振り」
「ゴル!皆一緒かい!」
「おうよ!そしてこれからはずっと一緒だ!」
「何っ」
「まさか」
プラクティーズの面々がそれを聞いて顔を強張らせる。
「グン=ジェム隊四天王もロンド=ベルに協力してやるわ!」
「何だってえ!?」
ケーンがそれを聞いて顎が外れんばかりに驚いた。
「おっさん、あんた達がかよ!」
「そうだ!元気そうだな坊主!」
「あの時でピンピンしてたってだけでも信じられねえってのによ」
「そういやあのおっさん達あの時乗ってる機体爆発してんだよな」
「丈夫なことで」
「ははは!あの程度で人は死なんわ!」
グン=ジェムはタップとライトにもそう返す。
「これから宜しく頼むぞ!野郎共!」
「おうよ!」
三人はグン=ジェムの声に応える。
「手はじめにバルマーの連中を蹴散らす!いいな!」
「了解!」
「宇宙人だか何だか知らないが」
「お、おで達に適うもんか!」
「ははははははははははははは!」
グン=ジェムはいきなり手前にいた数機を刀で膾斬りにした。
「邪魔だ、邪魔!」
「どけどけえっ!」
「俺達の相手をするには百万年早いんだよ!」
「し、死ねっ!」
三人もそれに続く。瞬く間にバルマーの軍勢を叩いていた。
これで港が安全になった。船が安全な場所にまで退いていく。
「すげえ、おかげで民間人が助かったぜ」
「何だ、あのおっさん達また強くなってるじゃねえか」
「敵に回したら厄介だけれど味方なら違うんだな」
ケーン達三人はそれを見て口々に言う。
「あっちにいるティターンズはどうなっているのだ?」
三人にマイヨが問うてきた。
「とりあえずはシンとレイがあの三機のガンダムの相手をしてるぜ」
「そうか」
「他の面々で残った連中の相手をしているな」
「そうか。では問題はあちらだな」
マイヨはあらためてキラ達の方を見た。
「あの三機のガンダム、かなりのものだな」
「どうする?俺達は今目の前の敵だけで手が一杯だしよ」
「ショウ達もバルマーに行ったしな」
「頑張ってもらうって言いたいところだがあの三人滅茶苦茶だしな」
「そうだな、動きがおかしい」
マイヨは冷静にそれを見抜いていた。
「あの動き、正常な人間のものではない。あれは一体」
「はぁっははははははははははは!」
オルガが目蔵滅法に攻撃を放ちまくる。
「どいつもこいつも邪魔だぜ!」
敵味方関係なく撃つ。おかげで周りにはストライクダガーの残骸も転がっている。
「何て野郎だ」
ムウはその異様な攻撃をかわしながら呟いた。
「いかれてるのか?こいつ」
「弱い奴はいらねえんだよ!」
オルガはまた叫ぶ。
「どいつもこいつも俺の前にくたばりやがれ!」
「こいつ!」
「待てっ、来るな」
カガリがアサギ達と共に来ようとしたがムウはそれを止めた。
「何故だっ」
「今の御前の相手になる奴じゃない。これは化け物だ」
「化け物か」
「そうだ、見ろ」
上を指差す。
「あの坊主でも苦戦してるんだ。こいつ等、正気じゃないが確かに強い」
「必殺!」
クロトが叫びながら鉄球を振り回す。
「スクラップになっちまえよ、変なガンダム!」
「クッ!」
「死ね」
シャニがビームを曲げてかわしたところに攻撃を放つ。それを超人的な勘でかわすがそこにまたクロトが来る。
「しまった!」
「これで終わりだ!」
クロトは照準を合わせた。
「消滅!」
「くっ!」
流石にキラでも避けられない状況だった。だが。
そこに赤いガンダムが現われた。そしてレイダーに攻撃を浴びせる。
「ぬっ!」
クロトはそれを見る前に上に飛んでかわした。彼もまた勘でかわしたのだ。
「誰なんだよ!」
「何だこいつ」
クロトとシャニは同時にその攻撃が来た方を見た。そこには赤いガンダムがいた。
「イージス!?いや、違う」
キラはそのガンダムを見て言う。
「キラだな」
「その声は」
次に通信が入って驚きの声をあげる。
「アスランなの!?」
「話は聞いた」
「そう、君も」
「だから俺はここに来たんだ」
「アスラン・・・・・・」
「キラ、こんなことを言える立場じゃないのはわかっている」
彼は言う。
「だが・・・・・・一緒に」
「うん」
キラはそれを受け入れた。
「一緒に戦おう、アスラン」
「ああ。んっ」
ここで工場の方に気付いた。
「あのバスターとブリッツはまさか」
今度はそちらに通信を入れる。そして問う。
「ディアッカか!?それにブリッツに乗っているのはまさか」
「おい、その声って」
「アスランですか!?」
「ディアッカ、ニコル。生きていたんだな!」
「ああ、俺は悪運だけは強いみたいだからな」
「グン=ジェムさん達に助けてもらいました」
「そうか、皆生きていたんだな」
「けれどよ、アスラン」
ディアッカは言う。
「ミゲル達に変なこと言われてるんだよ」
「ロンド=ベルに入れって。タリア艦長もおられますし」
「詳しい話は後だ。協力してくれ」
アスランも二人を説得にかかってきた。
「御前もかよ」
「そうだ、とにかく今は生き残らないといけない」
「わかったぜ、どっちみち周りはバルマーにティターンズだ」
「倒すべき敵ですから」
「頼む。キラ」
またキラに声をかける。
「一機は任せろ!」
「頼むよ!」
「何なんだよこの赤いの!」
攻撃を邪魔されたクロトが激昂していた。
「僕の邪魔をするっていうのか!」
「・・・・・・あの赤いの、何かムカつく」
シャニも何か気に入らないものを感じていた。
「ウザい・・・・・・死ね」
「殺してやる・・・・・・うっ!?」
ここで三人に異変が起こった。急に動きが止まったのだ。
「何だってんだ?」
ムウがそれを見て呟く。
「今度は発作だってのか!?」
「いかん、タイムリミットか」
劾がそんな三人を見て呟く。
「ジブリール副理事」
すぐにジブリールに通信を入れる。
「薬が切れた。撤退する」
「わかった。では下がれ」
「ああ」
「他の機体もそろそろ限界か」
ジブリールは次に戦場を見て述べた。
「一旦下がる。全軍一時撤退」
「このまま押し切られぬのですか!?」
ジャマイカンがそれに問う。
「あの三人がいなくとも」
「そろそろ弾薬やエネルギーも心配だ」
だがジブリールはジャマイカンよりは現実を見ていた。
「まずは補給だ。攻撃は後でまた行う」
「・・・・・・わかりました。ではその様に」
「うむ」
ティターンズは素早い動きで北に引き揚げる。それと共にバルマーも兵を退いていった。
ロンド=ベルはとりあえずは虎口を脱した。一旦兵を集結させ応急修理、そして補給に取り掛かった。夕陽が彼等を包み込んでいた。
「また夜に来るだろうね」
ユウナは夕暮れの司令部でキサカに対して言った。
「幸い一般市民の避難は無事済んだけれど」
「後は我々がどうするかですな」
「どうする?残って最後まで戦うかい?」
「それは」
「いや、それは駄目だ」
「おや、貴方は」
アズラエルは端に座っていたが司令部にある男が来たのを見て声をあげた。来たのはウズミであった。
「バルマーとティターンズがいる。下手に戦っては我が軍もロンド=ベルも全滅してしまう」
「では撤退ですね」
「そうだ」
「わかりました。ではすぐに」
「残っている部隊を撤退させます」
「ロンド=ベルにも伝えてくれ」
ウズミは言う。
「夜になれば闇に紛れてシンガポール方面に落ち延びると」
「了解」
「それではその様に」
「頼むぞ」
応えるユウナとキサカにそう返す。戦いは次の局面に入ろうとしていた。
アークエンジェルにはアスランがいた。他のザフトの面々も一緒である。
「貴方達が来るとは思わなかったわ」
マリューが彼等を迎えていた。
「理由はタリア艦長と同じかしら」
「はい」
代表してアスランが答えた。
「人類の為に」
「人類の為って」
「何か大変なことなんでしょうか」
まだ事情を聞いていないディアッカとニコルは不安げな顔になっていた。
「それは後で話す」
アスランは二人に対して言った。
「二人の力も必要なんだ」
「そうなのか」
「じゃあ」
アスランの真剣な言葉に二人は黙ってしまった。そしてアスランは話を続けた。
「後でラクス=クライン嬢も参加します。もうナチュラルやコーディネイターだなんて言っている状況じゃないんです」
「けれどいいのかよ」
ムウが彼等に問う。
「この部隊はそうしてかっては敵味方だったってのが多いからそれ自体はいいんだけれどよ」
「御前等はザフトを抜けてるんだろ?それは」
「それでも」
アスランは今度はキースに応えた。
「やらなくちゃいけないですから」
「・・・・・・相当な決意があるみたいね」
「だからここに来たんです」
「私達だって人間ですから」
フィリスとエルフィが述べた。
「駄目ですか、やっぱり」
そしてジャックが問うた。
「コーディネイターは」
「いや、覚悟があるのならいい」
アムロがそれに応えた。
「だが。本当にいいんだな」
「ああ」
ミゲルが応えた。
「もう決めた」
「だから」
「そうか。なら俺はそれでいい」
「スパイとかは考えないんですか?」
アスランはアムロ達に問うた。
「俺達が」
「そんなに堂々としたスパイはいないな」
勇がそう返した。
「目がな」
「目が」
「そうだ。君達の目には曇りがない。スパイはどうしても疑いや不安が目に出てしまうものなんだ」
「そうなんですか」
「君達の参加を歓迎する。共に人類の為に戦おう」
「わかりました」
こうしてアスラン達はロンド=ベルに参加した。その後でアスランはキラと個人的に会っていた。
「キラ」
「アスラン、来たんだね」
「ああ。御前に顔を見せられる立場じゃないってわかっているけれど」
アスランは俯いていた。
「俺は御前の友達を殺すところだった」
「うん・・・・・・」
キラはそれに頷いた。
「僕は君の友達を」
「ニコルか・・・・・・生きている」
「彼が」
「そうさ、あの緑の髪のな」
アスランは述べた。
「生きているさ。そして今ここにいる」
「そうなの」
「けれど俺はあの時御前も」
「いいんだよ、僕も一緒だから」
「キラ・・・・・・」
アスランはその言葉に顔を上げた。
「色々あったけれど皆無事だったし。これからは一緒に戦おうよ」
「いいんだな、それで」
「うん、トールも君に会いたいって言ってたよ」
「あのスカイグラスパーのパイロットがか」
「そうさ、もうコーディネイターやナチュラルだって問題じゃないんだろ?」
「ああ」
「だったらさ。もういいじゃない」
キラは言う。
「アスラン、これからはずっと一緒にいよう。僕からもお願い」
「キラ・・・・・・」
アスランの顔が微かに綻んだ。そして二人は両手で握り合った。二人はようやくかっての親友に戻ったのであった。
二人の和解が終わってからアスランはディアッカとニコルに会っていた。ディアッカはミネルバにあった赤服に着替えていた。
「それでよ、アスラン」
三人はアークエンジェルの一室にいた。そこで座って話をしていた。
「さっきの話だけどよ」
「何なんですか?人類がって」
「バルマーならもう俺達とも交戦状態にあるだろ」
「それじゃないんですね」
「残念だがな」
アスランはニコルに応えた。
「違うんだ、それとは」
「残念、かよ」
「かなり深刻な話みたいですね」
それはわかった。詳しい内容はわからなくても。
「俺はここに来るまでにラクス=クライン嬢と会った」
「あの娘とか」
「それで何かあったんですか?」
「これを見てくれ」
アスランはここであのファイルを出してきた。
「そこに詳しいことが書いてある」
「?これにか」
「一体何が」
「中を見てくれ、まずは」
アスランは言う。
「そうすればわかる。どうして俺がロンド=ベルに入ったのかを」
「・・・・・・おい」
「これは・・・・・・本当なんですか!?」
ディアッカとニコルの顔が急激に曇っていく。
「クルーゼ隊長がこんなことを企んでいるなんて」
「このままだと本当にプラントも地球も」
「だからなんだ」100
アスランはファイルを見る二人に対して述べる。
「そういうことだったのか」
「だから貴方だけでなくタリア艦長達まで」
「ああ、このままだと取り返しのつかないことになる」
アスランは言う。
「だから二人にも力を貸して欲しいんだ。いいか?」
「ああ」
まずはディアッカが応えた。
「俺でよけばな」
「僕も」
そしてニコルも。
「どうやら連邦とは戦っている場合じゃないですから」
「そういうことだな。俺も同じ考えだ」
「頼めるのか」
「俺だって馬鹿じゃないつもりさ。それに」
「プラントがなくなったら元も子もありませんからね」
「それじゃあ今はイザークとシホがいないけれど」
「ああ、特務隊再結成だな」
「ロンド=ベルで」
アスラン達もロンド=ベルに入った。彼等もまたあらたな戦場に向かうこととなった。だがここで一つ騒動が起こっていた。
シンもアークエンジェルにいた。そしてキラと対峙していたのだ。
「アスランが来たのか」
「うん」
キラはシンに答えた。
「アスランは御前の友達だったそうだな」
「そうだけれど」
「あいつが何を言ったのか知らないがな」
シンはそれを聞いたうえで言う。
「俺はプラントを守るだけだ。御前みたいに誰でも守るなんて考えてはいないんだ」
「僕だって全部を守れるなんて思っていないよ」
「何っ!?」
「側にいてくれる皆しか守れないだろうけれど。それでも」
「ナチュラルでもか」
「ナチュラルとか関係ないから」
「ユニウス=セブンのことは忘れないからな」
シンはまた言った。
「何があってもな。いいな」
「それは同じなんじゃないかな」
「何だと!?」
「君みたいにそうして過去のことばかり言っているのって。結局はネオ=ジオンの人達なんかと」
「あんな奴等と一緒にするな!」
シンはキラのその言葉に激昂して叫ぶ。
「俺はあんなジオンの亡霊とは違う。俺は家族を守りたいだけだ!」
「けれどその為にナチュラルは皆そうだって言ってるじゃないか」
「違うのか!?」
シンは問い返す。
「弱いからそうして卑怯なことをするんじゃないのか!?ナチュラルは」
「それは誰だってそうなんだ。人間なんだから」
「ナチュラルは劣った人間なんだよ!」
シンはまた叫んだ。
「だからそんなことを平気でするんだ!ティターンズの奴等も!」
「確かにティターンズのやっていることは酷いよ」
「そら見ろ!それがナチュラルだ!」
「コーディネイターだって同じなんだ!」
キラは言い返す。
「皆同じ人間なんだ!いい部分もあれば悪い部分もあるんだ!」
「じゃあそれを見せてみろ、俺に!」
シンはキラを睨む。
「あの時アラスカで言ったな!御前が正しいのなら俺に見せてみろとな!」
「くっ・・・・・・」
「話はそれからだ」
そこまで言うとキラに背を向けた。
「そうでもない限り俺は御前を認めない」
そして彼はアークエンジェルから去った。アスランが加わってもキラとシンの対立は続いていた。それが大きな運命のつながりであったということは二人はまだ知らなかった。

第百二十一話完

2006・10・23


 
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