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八条学園騒動記

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第百六十九話 騒ぎにしてしまう二人前編その一


              騒ぎにしてしまう二人前編
 テンボとジャッキーは推理研究会の部室にいた。この文化祭においてこの部は古今東西の漫画や小説やアニメの探偵たちの分析を発表していた。
「それでホームズは」
「ポワロは」
「コロンボは」
 それ自体は至極推理研究会らしいものであった。しかし中にいるのがテンボとジャッキーだ。彼等はクラスの出し物の合間に部活に顔を出していたのだ。
 彼等の担当は自分達で強引に解説者であった。皆にそれぞれの探偵を説明しているのである。
「そう、このドルーリ=レーンは」
「目が見えないのよ」
 いきなり間違えていた。
「それでドフト何とかの喜劇の役者で」
「その台詞をよく引用するのよ」
 客達はそれを聞いてまずは唖然となった。誰もが間違いに気付いたのだ。
「レーンってシェークスピアじゃないの?」
「そうだよなあ」
 これは最早推理に興味のある人間なら常識の話であった。
「ドフトエフスキーって」
「しかも喜劇って」
 流石にこれは誰も間違えなかった。
「それで目が見えないって」
「耳じゃないの」
「最後は華々しく割腹自殺をして」
「劇的な最期を遂げるのよ」
 ここでまた間違えた二人だった。
「日本人らしくね」
「見事なものよね」
「名前でわからないのか?」
「しかも切腹!?」
 皆またしても唖然となった。
「何で推理もので切腹するのよ」
「相変わらずだな、本当に」
 皆テンボとジャッキーのことはわかっていた。しかしそれを超えたものがそこにあった。それで呆然となりながら話を聞いているのであった。
 しかし二人はそれに気付いていない。それで言い続けるのだった。
「ポワロは長身で髪の毛がふさふさで」
「怪人一億面相はね」
 あまりにも凄いのでかえって話題になっていた。とにかく繁盛はしていた。
 その繁盛の中でふと新たな客が入った。それに他の推理研究会のメンバーは怪訝な顔になるのであった。見ればその客達は。
「あれっ、あれは」
「仮装にしては出来過ぎてるな」
「そうだな」
 タチヤーナに来た彼等がここにも来たのである。何人もいる。
「あの布がひらひらしているのは」
「ラジコンにも思えないしな」
「そうだよな」
 そのひらひらいている布には小さな手があり顔もあった。
「一反木綿みたいだな」
「この国の妖怪だったな」
「そうだったかな」
 この部活も外国からの生徒が多い。だからこんな話になった。
「あとあの壁は」
「あれもおかしいよな」
「中に人が入っているようにはな」
「見えないな」
 今度は塗り壁だった。他にも色々といた。
 しかしであった。テンボとジャッキーはその彼等を見てこう言うだけであった。
「面白いお客さん達が来たな」
「そうね」
 本当にこう言うだけであった。
「何か楽しそうな」
「そんな人達よね」
「それだけか、こいつ等」
「それで終わらせるのか」
 部員達は今の彼等にあらためて唖然となった。
「怪しいとは思わないのか」
「あからさまだろうに」
「よくあんなの作ったよな」
「傘なんて特にね」
 から傘も見ている。見れば本当に日本の古い傘に一本足と両手、それと一つ目に口から赤い舌を出している。どう見てもあのから傘である。
「ろくろ首もいるし」
「一つ目小僧もね」
「鬼までいるぞ」
「本当によくできてるわね」
 その異様な顔触れを見てもこうであった。
「こういうイベントはやっぱりな」
「仮装よね」
 全く気付かないままである。 
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