八条学園騒動記
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第百六十八話 お客は色々その八
「ひょっとして」
「まさかとは思うが」
「そうだったんだ」
まさに今更の言葉であった。
「アンってずっとギルバートのこと好きだったのね」
「って彰子」
「ずっと見ていただろうに」
二人は唖然としながら彼女に告げる。
「それでも気付かなかったの!?」
「あれは流石に誰も」
「そうだけれど」
やはり気付いていなかったのだった。
「それが何か」
「何かって。ちょっと」
「それはな」
流石に二人も言葉を失いそうになっていた。
「ううん、思いも寄らなかったわ」
「全くだ」
「それでアンもお芝居に出てるのよね」
「脚本も手伝ってくれたしね」
アンネットは何とか気を取り直して彼女の言葉に応えた。なお脚本は主に彼女が書いている。ストーリーを知っているからである。
「宣伝の紙のイラストもやってくれたし」
「頑張ってるんだ、じゃあ」
「ああ、それであんだだけれど」
アンネットはその彰子に言ってきた。
「魔女よ」
「魔女って?」
「だからお芝居の魔女の役になったから」
それだというのである。
「ファタ=モルガーナになったから」
「私魔女なの」
「それで魔法使いが管になったから」
このことも話すのだった。
「宜しく頼むわよ」
「うん、じゃあ」
おっとりとした調子で頷く彰子だった。
「わかったわ。それじゃあ」
「三つのオレンジは魔法のお話だから」
アンネットはこのことも彼女に話した。つまりファンタジーということである。
「だからね。頼んだわよ」
「わかったわ。じゃあ」
「何かキャラクターに合ってない気がするけれど」
その彰子を見ながらどうかな、という感じで首を捻るアンネットだった。
「どうにもね。彰子と魔女って」
「そうだな。それはな」
タムタムもそれは否定しなかった。彼も気を取り直している。
「どうにもな」
「そうよね。まあそれでもね」
「それでいくんだな」
「そういうこと。それでいいってなったから」
いいというのであった。
「もう動かないわ」
「わかった。じゃあ俺は店で」
「ええ、御願いね」
彼のメインはとにかくそちらであった。
「それでね」
「ああ。またお客さんが来たな」
「頼むわね」
今はそちらに専念する彼等だった。だがこの客達の正体が何かというと。これが実にとんでもないものであるのであった。そしてそれに挑むのは。
お客は色々 完
2009・11・19
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