八条学園騒動記
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第百六十八話 お客は色々その五
「ロシア式だと」
「ロシア人は細かいところにはこだわらないのよ」
この気質が地球にあった頃から全く変わっていないのである。
「それでもよ。大丈夫よ」
「大丈夫なの」
「大量に山みたいに買ってそれを売る」
一応商売の基本ではある。
「そうしてるし。大丈夫よ」
「お店の採算とかいけてるの?」
「それは大丈夫だ」
そういうことに強い頭脳派のタムタムが彰子に答える。店のそうしたことは彼がかなりの部分を請け負っているのである。適材適所であった。
「できている」
「だったらいいけれど」
「しかし。アンネット」
「サービス出してもいいわよね」
「それはいいがちゃんと勘定もしてくれ」
かなり無茶なことを言うタムタムだった。
「ロシア式じゃなくてな」
「ロシア式でいいじゃない」
「それをできるのはロシアだけだ」
まさにその通りだった。
「ロシアはそれこそだ。多少以上のことがあっても平気な国だな」
「まあね」
ここでついつい誇らしげにもなってしまうアンネットだった。
「ロシアはね」
「その国のやり方をこの学園に持ち込んでも」
「駄目なの?」
「無理がある」
こう表現したタムタムだった。
「どうしてもな」
「そうなの。無理があるの」
「ここは日本でしかも他の多くの国の人間が集まっているんだ」
八条学園の特徴である。
「それで何でもロシア式にいっても無理が出て当然だ」
「言われてみればそうね」
「だからだ。少なくとも採算については連合のオーソドックスでだ」
「とりあえずわかったわ」
この辺りは聞き分けのいいアンネットだった。
「じゃあそれでね」
「わかってくれればいい」
「ええ、それにしても」
ここで彼女は話を変えたのだった。彰子に対して問うてきた。
「ねえ彰子」
「どうしたの?」
「あそこのお客さん達だけれど」
また異様な客達に気付いたのである。
「あの人達って随分と精巧な仮装してるわよね」
「アンネットもそう思うの?」
「人間じゃないみたい」
彼女はこう言うのだった。
「何か」
「人間じゃないって?」
「あまりにもリアルじゃない?」
その客達を見ながらの言葉である。
「何もかもが」
「あれっ、そういえば」
ここで彰子も気付いた。
「目が」
「目が?」
「何か違うわ」
このことに気付いたのである。
「作り物じゃないみたい」
「作り物じゃない!?」
「ほら、見て」
その彼等を見るようにアンネットに告げる。すると。
目が動いた。その動きであった。
「あの動きって」
「そうね。何かあれって」
その目の動きはアンネットも見た。それを見るとだった。
「リアルよね、かなり」
「本物みたいよね」
「よくできてる・・・・・・って言うべきかしら」
こう言ったアンネットだった。とりあえずは。
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