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八条学園騒動記

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第百六十八話 お客は色々その四


「そういうのよね」
「だからあるだろう」
 タムタムはまた言った。
「そういうのも」
「あるのね」
「だからそんなに気にすることでもないな」
 彼はまた言った。
「特にな」
「じゃあそんなに考えることじゃないのね」
「そうだと思う。それにしても」
 タムタムの言葉は続く。
「本当によくできてる仮装だな」
「ええ、確かに」
「お金もかかってるだろうし」
「手間隙も」
「よくあそこまでできたものだ」
 心から感心している言葉だった。
「作った人は誰かな」
「やっぱりうちの学校の人よね」
「それは間違いないな」
 やはり彼等はそう考えているのだった。
「特撮研究会だからな」
「そういえば特撮研究会も出し物あるのよね」
 彰子はふと言った。
「確か」
「ああ、確かな」
 タムタムは学校の壁にあった貼り紙の一枚をここで思い出した。
「上演とアトラクションだったな」
「その二つか」
「かなり派手にやってるらしいわよ」
 とにかく何でも本格的にやるのがこの学園であるがそれは特撮においても同じなのである。それこそかなりのものになっているのである。
「だからね」
「忙しいな」
「それの息抜きで来てるみたいね」
「じゃあ存分に息抜きしてもらうか」
「そうね」
 二人は好意で言うのだった。
「それじゃあ。サービスしましょう」
「そうだな。何がいいかな」
「サービスだったら」
 マスターでもあるアンネットが言ってきたのであった。
「いいのがあるわよ」
「いいのって?」
「何があるんだ?それで」
「ケーキよ」
 にこりと笑ってそれだというのである。
「ケーキがあるわよ」
「っていうとあれ?」
「ロシアンケーキか」
「そうよ、それよ」
 まさにそれだというのだ。やはり今もにこりと笑っている。
「それでいいじゃない」
「いいと思うけれど」
 しかしであった。ここで彰子は首を捻ってアンネットに言ってきた。
「アンネットって」
「私が?」
「うん。そればかりじゃないの?」
 ロシアンケーキばかりではないかというのである。
「何か。言うのって」
「だって美味しいじゃない」
 アンネット自身が言うにはそうなのである。
「ロシアンケーキって。それに食べやすいでしょ」
「食べやすいのはね」
 それは彰子もわかっていた。
「クッキーみたいで」
「大きさも手頃だし。それに手で食べられるじゃない」
 何処までもクッキーに似ている。それがこのロシアンケーキであった。
「それに一杯あるし」
「そんなにあるのか」
「そうよ。かなりあるのよ」
 タムタムにも答えるのだった。
「だからね。もうサービスもして」
「採算は?」
「取れてるわよ」
 それは大丈夫だというのである。
「サービスは普通の半額だけれど」
「それでもいけるの」
「充分よ。ロシア式勘定を甘くみないことね」
「それは駄目じゃないのか?」
 ロシア式勘定と聞いてすぐに突っ込みを入れるタムタムだった。なおこの時代においてもロシアという国もロシア人も商売や貿易が上手いという評価はない。 
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