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八条学園騒動記

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第百六十八話 お客は色々その一


                     お客は色々
 タチヤーナは繁盛していた。客がひっきりなしに来る。
「うわ、何か忙しいわね」
「予想以上にね」 
 ベンとレミがそれぞれお皿やカップをなおしながら話をしている。
「何かお仕事が次から次にやって来るし」
「食器を洗わないといけないし」
「お菓子も作らないといけないし」
 ベンは執事風、そしてレミはメイド風の格好である。そのうえでまずは食器を泡立つ容器の中に入れて洗いはじめていた。
「それでお菓子はどうなったの?」
「今タムタムが作ってるよ」
 ベンはレミに対して答えた。二人並んで食器洗いにかかっている。
「丁度今ね」
「そう。タムタムがいるの」
「だからそっちは大丈夫だと思うよ」
 こう述べるベンだった。
「そっちはね」
「わかったわ。じゃあそっちはタムタムに任せるわ」
「そうしたらいいよ。それでだけれどね」
「ええ」
「食器は」
 今洗っている食器の話をするのだった。
「アンネットが言うにはとにかく真っ白にしてってね」
「徹底的に洗えってことね」
「そういうこと」
 簡単に言えばそうなることであった。洗いものの基本である。
「そうしてくれってね」
「わかったわ。それじゃあ」
 レミは頷いてそのうえで洗い続けるのであった。その動きは実に手馴れたものである。
 一つ、また一つと洗っていく。そして洗ったものを水の容器に入れる。するとベンはそれを泡を落としさらに奇麗にしていくのであった。
「洗ったらだけれど」
「どうしたの?」
「このスポンジで泡を徹底的に落とさないとね」
 言いながら薄いスポンジで何度も水洗いしているベンだった。
「油とかが落ちないし」
「徹底してるわね」
「洗いものの基本だからね」
 だからだと答えるベンだった。
「これもね」
「確かにね。潜在って結構落ちにくいからね」
「そうなんだよね。それがね」
 問題だと話すのだった。
「お客さんにそういうの出さないわけにはいかないし」
「そうそう」
「ああ、そういえばだけれど」
 ここでベンはあることを言うのだった。それは。
「ほら、僕達こうして念入りに洗うじゃない」
「ええ」
「連合はね」
 連合という言葉を出してきたのだった。
「洗剤で丁寧に洗ってそれをちゃんと水洗いして洗剤を徹底的に落とすじゃない」
「そうじゃないと不衛生よね」
「ところがイギリスとかはね」
「イギリス!?」
「うん、あそこだと泡をそのままタオルで拭くだけなんだって」
 顔を顰めさせてレミに話す。
「それだけらしいよ」
「嘘でしょ、それ」
 まずはその話を信じようとしないレミだった。
「それは幾ら何でも」
「いや、これは本当らしいんだよ」
「マジで!?」
 思わずこう言ってしまったのだった。
「それって」
「そうらしいんだよ。シャワーを浴びてもね」
「泡を吹くのね」
「うん、それだけなんだって」
「信じられないわね」
 幾ら話を聞いてもこう言うレミだった。
「それってお肌荒れるでしょ」
「お皿だって」
「衛生に悪いってものじゃないじゃない」
「結局それがエウロパなんだろうね」
 これまた随分と馬鹿にした言葉だった。 
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