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八条学園騒動記

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第百六十七話 酒のないロシアその六


「美味しいじゃない」
「あっ、確かに」
「いけるね」
「そうだね」
 皆もそれを食べて頷く。
「結構以上に味もいいし」
「物凄く甘いし」
「そうそう」
「ロシアのお菓子は徹底的に甘いわよ」
 アンネットはここでは誇らしげな顔になっていた。
「もうね。本当に徹底的にね」
「やっぱり寒いから?」
「それでなんだ」
「そうよ。寒いからカロリーがないとね」
 皆の予想通りそこに理由があった。
「それとウォッカで。それかその紅茶で」
「ロシアンティーで」
「そういえばこのジャムも」
「凄く甘い」
 ジャムもなのだった。
「滅茶苦茶甘いけれど」
「これもロシアの」
「ええ、ロシアのジャムよ」
 また胸を張って述べる彼女だった。
「今回料理の素材は全てロシア産よ」
「っていうと何もかもが」
「本場ロシアを再現なのね」
「ロシアを味わって」
 こうも言うアンネットだった。
「よくね」
「ううん、それを言われると」
「かなり怖かったりするけれど」
 またロシアという国についての言葉が出る。
「それでも確かに」
「美味しい」
「優しいし素朴でそれでいて」
「しっかりとした味」
 皆それぞれ評価を述べる。
「何か思ったよりも上品だし」
「いいじゃない」
「満足してもらってるわね」
 アンネットも彼等の言葉を聞いて微笑んだ。
「よかったわ。こっちもね」
「よかったの」
「美味しくて」
「当たり前でしょ。私がプロデュースしてるのよ」
 確かにその顔は満足そうなものだった。
「それで嬉しくない筈ないじゃない」
「そういえば確かに」
「僕だってそう思うし」
「私も」
 自分が今のアンネットの立場だとどう思うか。答えはそこで出るものだった。
 そうしてであった。皆こう言った。
「それじゃあだけれど」
「またくれるかな」
「お茶とお菓子おかわり」
「あら、いいのね」
 今の皆の言葉を聞いてさらに微笑むアンネットだった。
 そしてその顔でその皆に問うのであった。
「お金は別よ。それでもいいのね」
「うん、それでもね」
「御願い」
「おかわりね」
 それでもだというのだった。これで決まりであった。
 喫茶店は好調な滑り出しだった。そしてそのままの勢いで進んでいく。まずは商売繁盛となるのだった。


酒のないロシア   完


               2009・11・13 
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