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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百十九話 オペレーション=スピットブレイク

オーブから帰って来たアスランはカーペンタリアにいた。そこからプラントに戻る予定になっていた。
怪我をしている左手に包帯を巻いた姿で港に向かう。そこで声をかける者がいた。
「御前なんかが特務隊とはな」
「イザークさん、そんな」
「イザークにシホなのか?」
「そうだ、待っていたぞ」
そこにはイザークとシホがいた。彼を待っていたのであった。
「御前がここに来るのをな」
「どうしてまた」
「フン、俺は反対したのだがな」
イザークはいつもの減らず口を叩く。
「シホがな。どうしてもというからな」
「イザークさん、何言ってるんですか」
だがシホがここで言った。
「イザークさんが行くぞっていうから私も」
「おいコラ」
その言葉に顔を崩す。
「黙ってろと言っただろうが。どうして御前は」
「そうか、待っていてくれたんだな」
アスランは彼等を見て微笑みを返した。
「本国で最新鋭機を貰うそうだな」
「ああ」
「俺はデュエルに乗る。あれが一番合ってきた」
「そうなのか」
「それでスピットブレイクに向かう。アラスカだ」
「今からだよな」
「ああ、俺とシホが行く」
イザークは言う。
「ミゲル達はここの守りだ」
「そういえばミゲル達は」
「あいつ等は当直でな。それで俺が来た」
「そうだったのか」
「もう隠しても仕方ないしな」
「ふふふ」
その言葉を聞いて笑みを零した。
「手柄を立ててすぐに追いついてやる。そして」
「そして?」
「今度は俺が部下にしてやる」
イザークは言った。
「死ぬなよ、いいな」
「ああ、わかった」
「ディアッカとニコルは残念だったがな」
「・・・・・・ああ」
彼等はまだ二人が死んだと思っていた。
「だがあいつ等の分まで戦う、いいな」
「わかった、じゃあな」
「ああ」
アスランはイザークと分かれてプラントに戻った。彼もまた運命の中に入ろうとしていた。
アラスカの上の宙域ではもうザフトの大軍が展開してきた。そこにはミネルバもいた。
「いよいよね」
「ええ」
アーサーがタリアの言葉に頷く。
「ここが正念場ね。ザフトにとっても」
「私達にとっても」
「四機のガンダムには待機命令を出しておいて」
「わかりました。そして降下したならば」
「すぐに出すわよ」
「敵はロンド=ベルですよね」
「そうね。彼等が来てるそうね」
「果たして上手くいくでしょうか」
アーサーは少し不安げな顔になっていた。
「ラクス殿やレイの言う通りに」
「いくのじゃない、いかせるのよ」
それがタリアの言葉であった。
「何があってもね」
「それでは」
「ええ。降下用意」
タリアは指示を出した。
「目標アラスカ」
ザフトは今攻撃に入ろうとしていた。その時アラスカではロンド=ベルが大急ぎで艦隊の修理を受けていた。
「何とか間に合いそうですな」
「整備員はできるだけ残しておきましたので」
サザーランドが大文字に応えていた。
「それだけでも大変でしたが」
「整備兵まで要求されていたのですか」
「はい、人員も兵器も全て日本に送れと。かなり強引なやり方で」
「やれやれ、あの御仁は相変わらずですな」
「これがタシロ艦長やレビル大将なら違ったでしょうが」
「まあ言っても仕方ありませんな」
「はい」126
むしろ三輪には言うだけ無駄であった。
「とりあえず修復が間に合っただけでもよしとしましょう」
「ええ、では」
「戦闘用意ですな」
「敵の大艦隊がアラスカに向かって来ています」
すぐに報告が入った。
「カーペンタリアから。かなりの数です」
「そうか遂に」
「宇宙からもです。複数に渡って来るようです」
「准将」
「はい」
サザーランドは三輪の言葉に頷いた。
「総員戦闘配置。持ち場につけ」
「了解」
「では私も大空魔竜へ」
「お願いします」
「健闘を祈ります」
「お互いに。では」
ロンド=ベルも連邦軍も配置につく。今海と空からザフトの大軍がやって来た。
「来たぞ!」
「撃て!撃て!」
対空砲座や戦車が口火を切る。彼等を援護するように展開しているロンド=ベルのマシンもまた。
「しゃらくせえ!」
京四郎がガルバーを旋回させる。その旋回の間の攻撃で二機のジンを撃墜した。
「まずは上の敵を狙え!」
シナプスが指示を出す。
「守りが薄いうちにだ!いいな!」
「了解!」
「このっ!このっ!」
キーすが上に向けてライフルを乱射する。
「落ちろってんだよ!」
まずは一機撃墜した。
「よっし!」
「まだだ!キース!」
だがコウがここで叫ぶ。
「まだやって来る!油断するな!」
「海からも来ます!」
クェスが水中から姿を現わすザフトの水陸両用モビルスーツに攻撃を仕掛けながら言う。
「こんな奴等!」
バーニィがその横でライフルを撃つ。それで一機。
「私だって!」
クリスが本気になった。それでもう一機。
「全員持ち場を離れるな!離れたらそれで終わりだ!」
バニングは自身の正体を率いて森の中で上から来る敵を狙い撃ちにしていた。
「戦車隊や守備隊をフォローしろ!いいな!」
「はい!」
皆それに頷き必死に戦う。その中にはアークエンジェルもいた。
「アルスター二等兵は!?」
マリューはその中でナタルに問うた。
「はい、予定通り艦を降りました」
「そう、それは何よりね」
それを聞いてまずは安心する。
「彼女は。やっぱり戦いには」
「ええ。この戦いはとりわけ激しいです。ですから」
「後方が大変なことになるし」
これはサザーランドの要望もあった。アラスカ基地は後方支持の要員を少しでも欲しかったのだ。出来るだけ長い間戦う為である。
「敵第二波来ます!」
「もう来たのか!」
サザーランドはその報告を聞いて声をあげる。
「はい!空からです!」
「弾幕を張れ!」
彼はすぐに迎撃を命じた。
「降下した敵はロンド=ベルに任せろ!いいな!」
「はい・・・・・・なっ!?」
「どうした!?」
「こちらの対空陣地が次々と破壊されています!」
「何っ、何があった!?」
「敵です、敵のガンダムです!」
「ガンダム・・・・・・デュエルか!?」
既に他の三機の撃破は聞いている。それしか思いつかなかった。
「違います!このガンダムは」
「インパルスか?ザフトの」
「それもいます!ですが他に三機」
「司令!」
モニターに額から血を流す兵士が姿を現わした。
「Gポイントの対空陣地壊滅です!これ以上の戦闘は無理です!」
「敵のガンダムか!」
「はい!何やらファンネルの様な攻撃を仕掛けてきまして」
「ファンネルだと!?」
サザーランドはそれを聞いてまずは目を瞠った。
「まさかザフトも」
「それに近いものと思われます。その攻撃により我々は」
「わかった、すぐに撤退しろ」
まずは撤退を命じた。
「そして後方で負傷者の手当てを行う。いいな」
「わかりました」
「そしてそこには」
「既にアークエンジェルが向かっています」
「そうか、速いな」
それを聞いてまずは安心した。だが。
「そこには四機の敵のガンダムがいます」
「四機か・・・・・・」
「どうしますか、司令」
部下達がサザーランドに顔を向けてきた。
「四機のガンダムとなると」
「手強いというものではない。では」
「回しますか、こちらから」
「そうしたいのはやまやまだが。戦力がな」
ないのだ。今のアラスカ基地の最大の問題はそれであった。ロンド=ベルの働きでもっているようなものであるのだ。
「ここはアークエンジェルに任せるしかない。彼等に伝えてくれ」
「はい」
「そこで守ってくれと。いいな」
「わかりました」
アークエンジェルへの援護は送れなかった。彼等はここで単独で戦うしかなかった。
「わかってはいたけれどな」
ムウはそれを聞いて苦い顔を浮かべた。
「四機のガンダム相手に戦艦一隻とメビウスだけじゃあな」
「少佐はそのファンネルを放つガンダムをお願いします」
マリューは言う。
「私達は他の三機の相手をします」
「いけるのか?」
ムウはそれを聞いて問う。
「三機のガンダムの相手なんてよ」
「やってはみます」
「そうか。辛いぜ」
「それでもやらなければなりませんし」
「わかった、じゃあ俺は俺の仕事をやるぜ」
そう言ってレイの乗るレジェンドガンダムに顔を向けた。
「あのガンダムに・・・・・・!?」
その時何かを感じた。
「この感触・・・・・・まさか」
「この感触は」
レジェンドの中のレイもまたムウに対して何かを感じていた。
「奴の感触と同じだ。これは一体」
「どういうことなんだ!?ラウと同じ」
二人は互いを見て言い合う。
「まさかこいつ」
「あのメビウスのパイロット、まさかラウの言っていた」
「まさかな・・・・・・むっ!?」
また同じ感触を感じた。そこにビームでの攻撃が来る。
「おっと!」
それをかわす。攻撃が来た方に顔を向けるとそこにはジンがいた。
「やっぱり来ていやがったか!」
「ふふふ、久し振りだなムウ=ラ=フラガ」
そこにいたのはクルーゼであった。彼は不敵な笑みを仮面の下に浮かべてこちらを見据えていた。
「どうした?私の顔に何かついているとでもいうのかね?」
「フン、いけ好かない顔だと思ってるのさ」
「おやおや」
それを聞いて声だけでおどけてみせる。
「それはまた。だがそれも今日で終わりだ」
「それはこっちの台詞だ!」
ジンに攻撃を仕掛ける。だがそこにレジェンドがやって来る。
「ラウ!こいつの相手は僕がする!」
「レイか」
「そして貴方も止める!いいな!」
「止められるものならな」
クルーゼはレイに笑ってそう返す。
「まあいい。ではここは君に任せよう」
クルーゼはすっと後ろに下がった。
「ではムウ=ラ=フラガ、また会おう」
「へっ、延期ってわけかよ」
「中止ではないことに感謝する」
そう言い残して別の相手へと向かう。戦いはムウとレイのものとなった。
「エンディミオンの鷹・・・・・・ならば手加減する必要はない」
レイは背中にあるドラグーンを放ってきた。それを一斉にムウのメビウスに向ける。
「この攻撃は・・・・・・」
それぞれのドラグーンが舞いメビウスに襲い掛かる。ムウはそれを見てすぐにわかった。
「俺と同じか・・・・・・ザフトめ、こんなものまで」
「まずはここで生き残ってからだ!」
レイは叫ぶ。
「世界を救うのも!だから!」
彼はムウに攻撃を仕掛ける。まるで何かを掴もうとするかの様に。彼は向かっていた。
その横ではアークエンジェルが三機のガンダムを相手にしていた。インパルスの他の二機もである。
中央にはハイネの乗るオレンジのガンダムがいる。そこから左右にいる二機のガンダムに指示を出す。
「ルナマリアはそのまま援護射撃だ」
「了解」
今インパルスにはルナマリアが乗っていた。彼女はそのコクピットから答える。
「俺は霍乱に徹する。メインの攻撃はシンがやれ」
「わかった」
光の翼を持つガンダムがそこにいた。ハイネの乗るセイバーガンダムと同じくザフトの誇る最新鋭機、デスティニーガンダムであった。レイの乗るレジェンドと並ぶザフトの切り札である。
「一撃で決めてやる!」
「ちょっとシン」
ルナマリアが彼に声をかける。
「幾ら何でも戦艦を一撃でってのは無理よ」
「俺は前にもそれをやった」
フレイの父が乗る船を沈めた時だ。
「今度もそれをやってやる」
「やるのね」
「このデスティニーで」
彼は言い切る。
「あのアークエンジェルを沈めてやる!そしてこの戦争を終わらせる!」
「その為にも俺達は勝たなくちゃいけない」
「ああ!」
ハイネの言葉に頷く。
「頼むぞ」
「わかった。ルナマリア!」
「おう、せっかちねえ」
ルナマリアはそれに応えて援護射撃をはじめた。それでアークエンジェルの砲台を潰していく。
「よし、次は」
ハイネが動いた。ガンダムを変形させ撹乱に向かう。
「任せたぞ、シン!」
「よし!」
シンは一直線に突っ込む。その手に光を宿らせながら。
「この腕で!アークエンジェルを沈めてやる!」
「敵の三機のガンダムが来ました!」112
サイが報告する。
「イーゲルシュテルンの砲台が次々と潰されています!」
「それでも構わん!残った砲台で弾幕を張れ!」
ナタルが命じる。
「二機です!うち一機が!」
「くっ!」
セイバーにバリアントを放つ。だがあえなくかわされてしまう。
「駄目です、速いです!」
「狙いを定めろ!うろたえるな!」
「は、はい!」
「そしてもう一機!」
ルナマリアが叫ぶ。
「正面です!」
「何っ、正面だと!」
「はい!このまま来ます!」
「しまった!そちらが本命か!」
読み違えた。咄嗟にセイバーを撃ったのが仇となった。ハイネの策に嵌った形となった。
「新型のガンダムです。は、速い!」
「かわして、すぐに!」
マリューが指示を出す。
「さもないと」
「駄目です、間に合いません!」
「何ですって!?」
ノイマンの言葉に思わず声をあげた。
「正面・・・・・・敵攻撃に入ります!」
「そんな・・・・・・このままじゃ」
「貰った!アークエンジェル!」
シンがコクピットの中で叫ぶ。
「これで・・・・・・・沈めええええええええっ!」
掌から光を放とうとする。アークエンジェルは沈む、そう確信した時だった。
キラは既にアラスカ上空にいた。ここまで誰にも怪しまれてはいない。
「よし、これで!」
シャトルから出る。そして地球に降下する。
「えっ、ガンダムかよあれ」
「また新型機の投入か。上も必死だな」
ザフトの将兵達はそのフリーダムを見ても不思議には思わない。自分達の兵器だからだ。
「頑張れよ」
それどころかエールを送る。
「地球に降りてからが大変だけれどな」
「宜しく頼むぜ」
「地球に・・・・・・今から」
キラはフリーダムのコクピットの中で呟いていた。
「皆を守る為に・・・・・・僕は!」
降下する。青い地球が赤くなる。そしてその先には。大天使がいた。
「アークエンジェル・・・・・・いた!」
キラはそのまま降下する。そして。
デスティニーとアークエンジェルの間に降り立った。大天使の前に自由の天使が降り立った。
「なっ、新しいガンダム!?」
「ザフトの兵器か!?」
マリューとナタルがそれを見て言う。その中に誰がいるのかはまだ知らない。
「何だ御前は!?」
シンは突っ込んだままキラに問う。
「俺の邪魔をする気か!なら!」
「アークエンジェルはやらせない!」
キラはシールドを掲げて突進する。そしてデスティニーに体当たりを敢行した。
「グハッ!」
「何があっても!」
「貴様、まさか!」
シンはすぐに今目の前にいるフリーダムのパイロットが誰かわかった。その動きで。
「あのストライクのパイロットか!何故!」
「僕は皆を守る!そして人類を守る為に戦うんだ!」
「何を戯言を!」
キラの体当たりで逆上して叫ぶ。
「貴様等にそんなことが出来るか!貴様等に!」
「やってみせる!何があっても!」
「そうか!なら!」
今シンの目が真っ赤になった。
「やってみせろ!そして!」
「こちらキラ!キラ=ヤマト!」
キラはアークエンジェルに通信を入れた。
「えっ」
カズイがそれを聞いて目を点にさせる。
「その声は・・・・・・まさか」
「戻って来ました!今から援護します!」
「嘘、こんな」
マリューは今の言葉が信じられなかった。
「どうしてここで・・・・・・しかも生きているなんて」
「詳しい話は後です!まだ二機のガンダムがいます!」
「そ、そうね」
インパルスとセイバーのことを思い出す。
「引き続き攻撃続行。敵機を近付けさせないで」
「了解!弾幕を張れ!」
「はい!」
すぐに残ったイーゲルシュテルンで攻撃が行われる。
「敵を近づけるな!いいな!」
ナタルが指示を飛ばす。その間にキラはシンと対峙していた。
既に彼もSEEDに入っている。目から表情がなくなっている。
「ストライク!生きていたのか!」
「僕はまだ死ぬわけにはいかないんだ」
キラはまた言う。
「もうナチュラルもコーディネイターも関係ないんだ。皆が幸せに暮らせるようになる為に僕は戦うんだ!」
「幸せ・・・・・・それは戦争がない世界だ!」
「違う!」
キラはシンに対して叫ぶ。
「戦争だけじゃない!そして今世界を滅ぼそうとしている人間もいるんだ!」
「それはナチュラルだ!」
シンは叫び返す。
「俺達の同胞を殺したナチュラルだ!ユニウス=セブンでも!」
「ナチュラルが皆そうじゃないんだ!もうコーディネイターやナチュラルで争っていては駄目なんだ!」
「何がだ!俺達を殺そうとして!」
「全部が全部そうじゃない!いい人達だっているんだ!」
「なら見せてみろ!」
シンはサーベルで切りつけてきた。キラはそれを自身のビームサーベルで受け止める。
「御前の言っていることが正しいって証拠を!」
「それは!」
「御前が正しいっていうのなら!」
シンはその目の表情を消した。
「俺を倒してみろ!」
「クッ!」
自由の天使と運命の天使がぶつかり合う。その戦いは熾烈さを増していった。
戦いにはイザークとシホも参加している。彼等はアークエンジェルに向かおうとしていた。
「シホ!後ろを頼む!」
「はい!」
シホはイザークに応える。
「足つきをやる!ルナマリア達と一緒にな!」
「あそこにはシンさんとレイさんもいますよね」
「フン、どうせ他の奴等に手間取っているんだろう」
イザークの読みは当たっていた。
「だがそれなら俺達がやるだけだ。行くぞ!」
「了解」
先に進もうとする。だがその前にエメラルドグリーンのメビウスがやって来た。
「!?メビウスだと」
「イザーク隊長、速いです!」
「な、何だこのメビウスは!」
恐ろしい速さで向かって来るメビウスを見て声をあげる。
「これがメビウスの動きなのか!」
「隊長、まさかこれは」
「知っているのか!?」
「キーェンス=バゥアーです!エメラルドの死神です!」
「あの死神か!」
連邦軍のエースの一人である。イザークもその名は知っていた。
「あいつまでロンド=ベルにいたのか!?」
「いえ、どうやらアラスカにいたのか援軍の様です」
「クッ、こんなところでか!」
そのエメラルドのメビウスは果敢にイザークとシホに攻撃を仕掛けている。コクピットの中にいる若い男が通信を入れてきた。
「デュエルはこっちで足止めします」
「よし、上出来だ」
中年の男の声が返って来た。
「それでいい。俺もそっちへ向かう」
「了解、じゃあ頼みますね」
「ああ。おい、ボーマン」
「はい」
後ろのバスターダガーのパイロットが応えた。
「行くぞ、いいな」
「了解。しかし流石は岡長官ですね」
「何がだ?」
「俺達をアラスカに派遣してくれたんですから。何よりですよ」
「正直できるとは思っていませんでした」
キースとボーマンがそれぞれ述べる。
「あの三輪長官から。しかも最新鋭機でね」
「まあ俺はいつものメビウスですけれどね」
「それだけここが正念場だってことだ」
アルフレッドは言った。
「アラスカがやられたら北太平洋がやばいからな」
「そうですね」
「多分プラントはそこで講和に持ち込みたいんだろうがこっちも事情があるんだ」
「プラントに協力を要請出来る形での講和ですか」
「そういうことだ。ロンド=ベルに連絡しろ」
「了解。こちらボーマン=オルセン中尉です」
ボーマンが連絡を取る。
「我々は今からそちらに合流します。宜しいでしょうか」
その話はすぐにロンド=ベルにも伝わった。ブライトがそれを聞いて考える顔をしていた。
「エメラルドの死神がか」
「岡長官が機転を利かせてくれたようですね」
「そうか。それは何よりだ」
「で、どうしますか」
トーレスが問う。
「この申し出受けますか?」
「願ってもないことだ」
ブライトはすぐにそう述べた。
「リンクス少佐もオルセン中尉も名うてのエースだ。是非来て欲しい」
「わかりました。それでは」
「ああ、すぐに了承の通信を入れてくれ」
「了解」
こうしてキース達三人が参加した。戦いは度重なるザフトの援軍を受けながらも一進一退の状況となっていた。
「戦いは今小康状態ですね」
「そうだな」
サザーランドは司令室で部下からの報告を聞いていた。
「さて、これからが問題ですが」
「今のところは耐えているがな」
「予備戦力がありませんし」
「そこもロンド=ベルに期待だな」
「はい」
「こら!」
そこでいきなりモニターが開いた。
「何を愚図愚図とやっておるか!」
「ちょ、長官」
モニターに出て来たのは三輪であった。いきなりサザーランド達を怒鳴りつけてきた。
「コーディネイター達なぞ皆殺しにしてしまえ!何をしておるか!」
「今はまだ戦闘中です」
サザーランドが彼に対して言う。
「それに捕虜ならばそれなりの」
「捕虜なぞいらんわ!」
これが軍人、しかも指揮官の言葉であるから恐ろしい。
「どいつもこいつも皆殺しにすればよかろう!奴等は普通の人間ではないのだぞ!」
「ですが我々の中にもコーディネイターが」
「そんなものは知るか!このままではラチがあかん!」
三輪はここでとんでもない行動に出た。
「貴様が何もせんのならわしがしてやる!」
「長官、一体何を!」
「これだ!」
「ま、まさか!」
「長官、それは!」
サザーランドも周りの部下達も一斉に驚きの声をあげた。三輪は目の前にある大きなボタンに拳を振り下ろしてきた。そしてそれを思いきり叩いた。
「サイクロプスだ!これでわかったな!」
「なっ・・・・・・」
「何ということを」
「わかったらとっととそこを去れ!これは命令だ!」
「一時間で撤退なぞできません!」
「そうです、今は戦闘中ですよ!」
「五月蝿い!コーディネイター共と共に丸焼けにならなければ逃げろ!それだけだ!」
そこまで言うと一方的にモニターを切った。後には真っ青な顔になってしまったサザーランドと幕僚達が残された。
「あの、司令」
「どうしましょうか」
「どうするもこうするもない」
サザーランドは何とか平静を保ちながらそれに応えた。
「この基地を放棄する。いいな」
「ですが間に合いません」
「一時間なぞとても」
「いや、方法はまだある」
「それは一体」
「ナデシコにつないでくれ」
彼はそう命じた。
「いいな、すぐにだ」
「はい」
「それでは」
ナデシコに通信が入った。すぐにユリカが出て来た。サザーランドは彼女に対して言った。
「大変なことになった」
「今よりもですか?」
「そうだ。この基地は後一時間で爆発する」
「えっ!?」
「そんな、嘘」
メグミがそれを聞いてまずはこう言った。
「一時間でなんて」
「今三輪長官がこの基地の下にあるサイクロプスのスイッチを押した。あと一時間でこの基地は完全に崩壊する」
「一時間だと!馬鹿な!」
一矢はそれを聞いて叫んだ。
「一時間で撤退なんて出来る筈がない!それじゃあ全滅だ!」
「三輪長官はここにいるザフトの殲滅を決められたのだ。それで」
「友軍は犠牲ということなのか!」
「チッ、あの親父相変わらず無茶苦茶しやがるぜ」
京四郎も舌打ちする。
「けれどどうするの?このままじゃ私達」
ナナが狼狽していた。だがここでサザーランドは言った。
「ボゾンジャンプだ」
「ボゾンジャンプ」
「そうだ、我々をカルフォルニアかシアトルにまで移動させてくれ。それ以外に方法はない」
ユリカを見て言う。
「全ての人員と兵器をな」
「わかりました」
ユリカはそれを聞いて真剣な顔で頷いた。
「ではすぐにも」
「君とホシノ=ルリ少佐、そしてテンカワ=アキト君の力ならあるいわ」
「やってみます。総員衝撃に備えて下さい」
ユリカは指示を出した。
「ルリちゃん、アキト」
「はい」
「話は聞いたよ」
二人もそれに応える。
「今から」
「ですが艦長」
ルリがここで言う。
「このままボゾンジャンプをするとザフトの人達も」
「構わん」
それにはサザーランドが答えた。
「基地がなくなっても人と兵器さえあれば戦える。まずは我々が生き残ることだ」
「わかりました。では」
「頼むぞ」
「ボゾンジャンプ開始」
ユリカが言った。
「目標はカルフォルニアへ」
「うむ、頼む」
今彼等はボゾンジャンプの用意に入った。その中には両軍の全ての者達がいた。
「な、何が起こっているんだ!」
イザークがその中で叫ぶ。
「これは一体・・・・・・!」
「隊長、地下から異常なエネルギー反応です!」
「何ィ!?」
「ですがその前に・・・・・・これは!」
「う・・・・・・うわあっ!」
「ボゾンジャンプ突入です」
ルリが言った。
「ただ、目標がずれました。パナマに向かいます」
「そうか。だが生き残れるならそれでいい」
サザーランドはボゾンジャンプの中で言った。
「これで我々は救われた。礼を言う」
「いえ。ただ」
「ああ、続きはパナマでだな」
彼等はパナマに飛ぶ。そこでは神の槍とさらに恐るべき超人が彼等を出迎えるのであった。

第百十九話完

2006・10・8  
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