| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百十八話 思いだけでも、力だけでも

             第百十八話 思いだけでも、力だけでも
「おいおい、こりゃまた酷いな」
ロンド=ベルから話を受けたオーブはすぐにキラ達の捜索をはじめた。彼等がそこで見たものは破損したモビルスーツや戦闘機の残骸であった。
「スカイグラスパーなんか真っ二つじゃないか」
「こっちの赤いガンダムは・・・・・・自爆か?」
オーブの将兵達は残骸を見ながら言っていた。既に生存者の捜索、救出も行われている。
「生存者はいるのか?」
キサカが彼等に問う。
「はい、今一人発見しました」
「誰だ?」
「多分スカイグラスパーに乗っていた少年です。脱出ポッドの中で意識を失っていました」
「そうか。だが生きているんだな?」
「はい、全身を強く打っていますが命に別状はありません」
「そうか、それは何よりだ」
キサカはそれを聞いてほっとした顔になった。
「やはり生きているに越したことはないからな」
「全くです」
「それでもう一人だが」
「あっ、ちょっとカガリ」
キサカの横にいたユウナが飛び出したカガリに声をかける。
「単独行動はよくないよ」
「そんなこと言ってる場合か!」
カガリは制止するユウナに対して叫ぶ。
「キラがどうなったかわからないんだぞ!」
「確かに気持ちはわかるけれどね」
困った顔でカガリに言う。
「それでもまだ敵が潜んでいるかも知れないし迂闊な行動は」
「いたら私が倒してやる!」
一向に話を聞き入れない。
「それよりも早くキラを!」
「やれやれ困ったものだね」
ユウナはそんなカガリを見てふう、と溜息を吐き出した。
「そういうところは昔から変わらないんだから」
「まあカガリ様らしいといえばらしいですな」
「まあそうだね」
キサカの言葉に頷く。
「ああしたところが彼女のいいところだな」
「ですがね」
キサカも困った顔になった。
「私達の苦労はより一層」
「私達?」
ユウナはそこに危機を感じて逃げようとしてきた。
「それは一体誰のことかな。僕にはわからないんだが」
「ユウナ様、誓った筈です」
キサカもキサカで事情がある。何気なく距離を置こうとするユウナの肩に手をやってきた。
「一人ではなく二人でと。ですから」
「わかったよ。まあ僕も昔から彼女の相手をしているわけだしね」
「そうです。ですからここは」
「しかしまあ何だね」
ユウナは言う。
「これからも僕達は苦労し通しなんだろうね」
「それが運命です」
二人がそんな話をしている間にも捜索は続けられる。カガリはストライクのコクピットの中を見ていた。
「な・・・・・・これは・・・・・・」
コクピットの中は焼けただれていた。キラの姿はない。
「これはどういうことだ!?」
「おそらく熱で消滅したのでは?」
側にいた兵士がそれに答えた。
「かなりの高温だったと思われますので」
「いや、それはないね」
そこにユウナが来て言った。
「それでも骨とかは残るものだ。けれどここには骨の欠片さけないね」
「そういえば」
「つまりこのストライクのパイロットはここで死んではいない。それにコクピットを自分で開けたみたいだから」
扉を見ても言う。
「とりあえずはストライクが破壊された時には生きていた。かなりダメージを受けていただろうけれど」
「そうなのですか」
「じゃあユウナ、キラは」
「けれど楽観視はできないね」
だがカガリにはそう述べた。
「これだけの熱だったんだ。それで生きているのはコーディネイターでも」
「そんな・・・・・・」
「カガリ様、ユウナ様」
ここにキサカもやって来た。
「どうしたんだい?」
「生存者をもう一名発見しました」
「キラか!?」
「いえ、どうやら違うようです」
キサカはカガリにそう答えた。
「ザフトのパイロットですが。どうされますか?」
「ザフトの?」
「保護するしかないだろうね」
ユウナは現実的な案を述べた。
「僕達は中立勢力なんだし。ザフトのパイロットでもね」
「わかりました。それでは」
「うん。カガリ、それでいいね」
「ああ、それは御前に任せる。だが」
カガリは暗い顔をしていた。
「後でそのパイロットに会いたい。いいか」
「まあそれはいいけれど」
ユウナはそれには反対しなかった。
「くれぐれも穏便にね」
「フン」
こうしてアスランとトールが保護された。破損したストライクやイージス、スカイグラスパーも回収され彼等は海と空から飛行挺と船で帰ることになった。
アスランは空にいた。気付いた時にはカガリが側にいた。
「えっ、ここは」
「気付いたな」
「君は確か・・・・・・」
「カガリだ。覚えているか?」
「ああ。あの時の」
アスランは彼女のことを思い出してきた。
「何でここに」
「キラを探しに来たら御前がいた。御前が撃墜したスカイグラスパーのパイロットもな」
「そうか。生きていたんだ」
「だがキラは」
「・・・・・・生きている筈がない」
アスランは俯いて言った。
「イージスの自爆に巻き込まれたんだ。それで生きているなんて」
「・・・・・・何でだ」
カガリはアスランに問う。
「何でキラを殺したんだ!あいつは・・・・・・」
「知り合いだったのか?」
「ああ、友達だった」
カガリは答えた。
「引っ込み思案だけれどいい奴だった。何でいい奴が死ぬんだ!」
「・・・・・・俺と同じなんだな」
「えっ!?」
カガリはアスランの言葉に動きを止めた。丁度彼の喉に掴みかかろうとしていたのだ。
「俺もキラの友達だったんだ。子供の頃」
「そんな・・・・・・」
「優しくていい奴だった。気が弱いけれど」」
「じゃあ何で」
「戦争だからだ!」
アスランは叫んだ。
「あいつは俺の友達を殺した!だから!」
「友達って」
「ニコルだ!いつも俺と一緒に戦ってくれていた!そいつをキラが殺したんだ!だから!」
「あいつを殺したのか!?」
「何度も誘ったんだ!一緒に来いと!だけどあいつは!」
「それで殺したのか!」
「敵だからだ!」
「!!」
アスランは泣いていた。泣いてどうしようもなく叫んでいた。
「敵だから殺すしかないだろう!それが戦争なんだからな!」
「馬鹿!」
カガリはそんなアスランに対して叫ぶ。
「そうやって殺して殺されてかよ!それが何になるんだ!戦うにしろ他に何かがあるだろう!」
「何かって」
「御前の言っていることは少なくとも平和なんかもたらさないんだ!そんなのじゃ御前だって・・・・・・」
カガリも泣いていた。二人は泣きながら話をしていた。泣いて泣いて。子供の様に泣きながら話し、そして叫ぶのであった。どうにもならなくとも。
オーブに着いた。すぐにトールは病院に収容されアスランにはカーペンタリアから迎えが来ていた。キサカが連絡したのである。
「迎えが来たぞ」
「もうか、早いな」
「ああ。立てるか?」
カガリはアスランを気遣って声をかける。
「大丈夫だ。それよりあのスカイグラスパーのパイロットは?」
「もう病院に入った。だが怪我は思ったより軽くてすぐに退院できるらしい」
「そうか。彼に伝えてくれないか?」
「何をだ?」
「君にもキラにも済まないことをしたって。頼めるか」
「ああ、いいぞ」
カガリはアスランに頷いて答えた。
「じゃあ伝えておく。それでいいんだな」
「頼む。それじゃあ」
「待て」
部屋を出ようとするアスランを呼び止めた。
「何かあるのか?」
「これをやる」
カガリはそう言うと懐から何かを出した。それはネックレスであった。
「それは・・・・・・」
「ハウメアの護り石だ」
カガリは言った。
「御前危なっかしいからな。少しは護ってもらえ」
「いいのか。俺にこんなものを」
アスランはカガリに対して問う。
「ああ、いいんだ」
カガリはそれに答える。
「もう誰にも・・・・・・死んで欲しくないからな」
「・・・・・・そうか」
「・・・・・・ああ」
二人は目を合わせられなかった。だが心は合わさっていた。アスランはその石を受け取った。そしてカーペンタリアへと帰るのであった。
「サザーランド准将」
アラスカにいるサザーランドのもとに急報が入った。
「どうした?」
「アッツに敵出現です」
「何っ、こんな時にか」
「はい、相手はバルマーです。どうしますか」
「どうしますかと言われても今の我々には最低限の戦力しかない」
「はあ」
「迎撃に向かうべきだが今はな」
「ああ、それなら心配はいりませんよ」
そこでモニターに金髪に青いスーツを着た男が現われた。
「理事」
彼がブルーコスモスの理事でありアズラエル財団の総帥であるムルタ=アズラエルである。人間としてはかなり癖のある人物として知られている。
「そちらにはもうロンド=ベルが向かってくれています」
「そうなのですか」
「ええ、その中には彼もいますしね。安心していいでしょう」
「彼ですか」
それが誰なのかサザーランドも知っている。
「あのライオンロボ君がね。だからそちらは大丈夫ですよ」
「ですが」
「何、要はアラスカに間に合えばいいのでしょう」
「ええ、まあ」
「それも大丈夫ですよ。ただ、北ですが」
「北極ですか」
「ジブリール君はどうやらヨーロッパ制圧を狙っていますね」
「欧州を」
「そのことをミスマル司令にお話したところ今あちらも戦力が手一杯のようで」
「まだ砂漠の虎の残党が、ですか」
「それとミケーネのゲリラ戦ですね。ネオ=ジオンもいますし」
「兵が足りない、ですか」
「そういうことです。そのたっぷりある筈の兵は日本に集結していますしね」
「あそこまで集める意味があるのでしょうか」
「ないでしょうね」
アズラエルはきっぱりと言い切った。
「まああの長官です。言っても無駄です」
「はあ」
「とりあえずここは彼等に頼るしかありません。僕はそう思いますがね」
「勇者王達にですか」
「あのライオンロボ君とは色々ありますがね」
アメリカで何度も本気で喧嘩をした仲である。どういうわけか彼は凱と無性に仲が悪いのである。
「ですが頼りにはなるのは事実です。あの勇気でね」
「勇気で」
「まあ他にも色々と濃い面々がいるようですし。期待しておいて下さい」
「わかりました。では」
「あとサイクロプスのスイッチですが」
「はい」
「くれぐれも慎重にね。頼みましたよ」
「了解」
こうしてアズラエルとサザーランドの話は終わった。話が終わるとサザーランドは部下に対して問うた。
「そういえばサイクロプスのスイッチは日本にもあったな」
「ええ、そういえば」
「あの三輪長官が何もしなければよいのだがな」
「不安ですね、それは」
「ああ、全くだ」
そんな話をしながらアラスカを守っていた。その間ロンド=ベルはアッツに急行していた。
「ミリィ」
サイがミリアリアの部屋に入って来た。その手には食事を持っている。
ミリアリアは部屋の中にいた。ベッドの上で膝を抱えてうずくまっている。
「少しは食べたらどうだい?ずっと食べていないんだろ」
「・・・・・・いらない」
ミリアリアは俯いたままそう答えた。
「そう、いいの」
「ええ、今は」
「じゃあ医務室に行かないか?」
「医務室に?」
「そこで栄養剤でも貰おうよ。それでどうかな」
「・・・・・・そうね」
ミリアリアはそれに答えた。
「じゃあ」
「うん、行こう」
サイはとにかく彼女に気分転換させたかったのだ。何とかそれに成功して内心ほっとしていた。
二人は医務室へ向かう。そこにフレイがやって来た。
「あっ、サイ」
「フレイ、どうしたんだい?」
「キラとトールは何処?」
彼女は尋ねた。
「戦闘が終わってまた出撃だっていうのに何処にもいないのだけれど」
「あっ、それは・・・・・・」
ミリアリアをチラリと見てから応える。
「ミリィ、ちょっと先に行ってて」
「え、ええ」
ミリアリアはそれに従い中に入る。サイはその間にフレイに話をはじめる。
医務室の中に入るミリアリア。その顔は沈んだままであった。
「何だこの船は女の子も乗ってんの?」
「!?」
聞き慣れない声だった。見れば縛られたザフトの捕虜がそこに寝かされていた。ディアッカである。
「貴方は・・・・・・」
「ああ、俺がその捕まった間抜けな捕虜さ、コーディネイターのな」
ディアッカはミリアリアにそう答えた。
「俺が珍しいか?それとも怖いか?」
ディアッカは皮肉な笑みをその口に浮かべて悪態をつく。
「安心しな。手も足も縛られてるからな」
「どうしてここに」
「だから捕虜なんだよ」
彼はまた答えた。
「ドクターはいねえから。さっきナースに呼ばれたからな」
「そう・・・・・・」
「んっ!?」
ディアッカはミリアリアの顔を見て気付いた。
「何あんた泣いてるの?泣きたいのはこっちだよ」
また減らず口を叩いた。
「捕虜になってどうなるかわからねえんだからな。それとも」
ついつい喋り過ぎた。
「馬鹿で役立たずなナチュラルの彼氏でも死んだか?」
「!!」
ミリアリアの目が思いきり開いた。
「図星かい?へっ、ザマァねえな」
「クッ・・・・・・」
ミリアリアの心に何かが起こった。咄嗟にディアッカの食事にナイフがあるのが目に入った。
「なあフレイ」
サイはその間フレイに話していた。
「今キラとトールはどうなったかわからないんだ」
「どうなったかって」
「行方不明なんだよ。敵にやられてな」
「そんな、二人が」
「だからここにはいないんだよ。生きていてくれたらいいけれど」
「そんな、コーディネイターに」
「その言い方は・・・・・・!?」
医務室の方で音がしたのに気付いた。慌てて二人がその中に入るとそこにはいつもとは全く違う顔のミリアリアがそこに立っていた。
「なっ、ミリィ!」
彼女はその手にナイフを持っている。それでディアッカを刺そうとしていた。既に彼は左のこめかみから血を流している。
「おい、何するんだよ!」
ディアッカはミリアリアに対して叫ぶ。
「いきなり」
「ううう・・・・・・」
ミリアリアの目は普段と全く違っていた。それは夜叉の目であった。
「うわあああああああっ!」
その目のまままたディアッカに襲い掛かろうとする。その彼女をサイは後ろから羽交い絞めにして止めた。
「やめろ!何をしているんだ!」
「放してよ!」
ミリアリアは泣きながら叫ぶ。
「トールもキラもいなくなったのに何でこんな奴が生きているのよ!」
彼女は言う。
「何でこんな所にいるのよ!こんな奴が!」
「・・・・・・・・・」
ディアッカはそれを聞いて何も言えない。戦争というものの一面を見てしまったからだ。
「キラを殺したコーディネイターがここに」
それはフレイも聞いていた。
「パパを殺したコーディネイターが」
彼女の心が壊れた。
「何で、何でよ!」
その間ミリアリアはヒステリー状態になって泣き叫んでいる。
「何でなのよ!」
最早完全に我を失っていた。ディアッカはそれを見てもやはり何も言えなくなっていた。
だがここで。フレイはとんでもない行動に出た。
「おい、フレイ!」
何と銃を出してきたのだ。
「何で銃なんか!」
「黙っててよサイ!」
フレイの目は完全に狂気のそれとなっていた。その目でディアッカを睨んでいた。
「パパを殺したコーディネイターが!今度はキラも殺して・・・・・・!」
ディアッカに照準を合わせていた。
「キラはコーディネイターをやっつけて死ぬ筈だったのに!コーディネイターなんかがいるから」
「フレイ、それは・・・・・・」
「それは・・・・・・」
ミリアリアはフレイの言葉に我に返った。そしてキラや彼がコーディネイターでも普通に付き合ってきたトールのことを思い出した。
「コーディネイターなんか皆死んじゃえばいいのよ!」
「・・・・・・違う」
だがミリアリアはそれに対して言った。
「えっ・・・・・・」
フレイはその言葉を聞いて動きを止めた。
「・・・・・・それは違うわ、フレイ」
「何でよ、あんただって」
「コーディネイターが悪いんじゃないんわ。そういう問題じゃ」
「どう違うのよ!あんたも私も」
「違う、私違う」
彼女は言う。
「コーディネイターが憎いんじゃない」
「あんた・・・・・・」
「だから私」
「おい、何があったんだ?」
そこにジョナサン達がやって来た。
「医務室では静かにしな。ここには捕虜もいるしな・・・・・・っておい」
ジョナサンは彼等を見て顔を顰めさせた。
「どういうことだよ、これは」
「説明しろ」
クインシィがきつい目で彼等を詰問する。この話はすぐにマリューにも伝わった。
「銃は護身用にアルスター二等兵が持っていたものでした」
「そうだったの」
マリューはナタルからの報告を聞いていた。
「すぐにその銃は没収し、アルスター二等兵とハウ二等兵は学習室に収容しました」
「わかったわ。じゃあそこで当分頭を冷やさせておいて」
「はい」
「けれど。捕虜の扱いも慎重にするべきだったわ」
「捕虜への虐待なぞあってはならないことです」
ナタルの声は厳しかった。
「今回のことは今後のことを考えますと」
「ええ。私の責任ね」
「私は個人的感情で艦長を非難しているわけではありません」
ナタルはこう述べた。
「ただ軍にとって規律は重要なものです」
「そうね。本当に」
マリューも今回のことはかなりこたえていた。
「彼女達にも言っておいて。よくね」
「はい」
「あとアッツの敵だけれど」
「何か」
もうすぐアッツに向かう。話はそちらにも向かった。
「赤いマシンがいるらしいわ」
「赤いマシンですか」
「バルマーのね。大佐じゃないわ」
「あの人はこちらですしね」
「まあ誰でもわかってることだけれど」
「ただ艦長」
「何?」
「あれは・・・・・・変装なのでしょうか」
ナタルは真顔でクワトロについて言う。
「というと?」
「私は一目でわかったのですが。あの人のことは」
「皆そうよ。けれど言っても仕方ないのよ」
「そうなのですか」
「確かにシャア=アズナブルではないのだから。クワトロ=バジーナなんだから」
「変わった理屈ですね」
「まあそれは置いておいて。それよりあの赤いマシンだけれど」
「はい」
「何でもかなりの力を持っているそうだから。注意していきましょう」
「わかりました。ヤマト少尉も抜けていますし」
「一層の注意がね」
「無論です。では戦闘用意に入ります」
「それにしても」
マリューはここで難しい顔になった。
「ケーニヒ二等兵もいないし。辛い戦いになりそうね」
「仕方ありません。では私はこれで」
「ええ」
戦いへの準備に入っていく。キラ達がいなくなった後もロンド=ベルは戦っていたのであった。戦いが終わることはなかった。
ニコルは生きていた。気付いた時には屈強というよりは柄の悪い男達に囲まれていた。最初彼等を見た時はかなり驚いた。だが話を聞いているうちに落ち着いてきた。
「そうですか、あのギガノスの」
「し、知ってるのかおで達のこと」
「ええ、お話は聞いてます」
もう夜になっていて火を囲んで話をしていた。ニコルはパイロットスーツからザフトの赤服に着替えていた。ブリッツのコクピットに入れているものである。
「グン=ジェム隊四天王とその指揮官のグン=ジェム大佐ですよね」
「知ってるなら話は早いぜ」
ガナンがそれを聞いて述べる。
「もっとも俺達のは悪名だろうがな」
「それで御前の名前はニコルか」
「はい、ニコル=アマルフィです」
ジンに答えた。
「宜しくお願いします」
「見たところまだ若いな」
「十五です」
今度はグン=ジェムの言葉に答えた。
「アカデミーから出てすぐに戦場に出てそれで」
「今ここにいるってわけだな」
「はい、そうです。あの時死んだと思ったんですけれど」
「人間そう簡単には死なんものだ」
「はあ」
何かコーディネイターとはまるで違う異様な雰囲気と巨体に飲まれていた。ニコルも実際はナチュラルにいささか偏見を持っていたがそれが恐怖に変わる程だった。
「コーディネイターでも何でもな」
「そうなんですか」
「人間なら誰だってそうだ」
グン=ジェムは言う。
「わしだって何度も死にかけてるしな」
「何度も」
「一番危なかったのはロンド=ベルとやり合った時だ。わし等全員あと一歩で死ぬところだった」
「僕も死ぬところでしたし」
「それで生き残ったんだ。まずはそれに感謝するんだな」
「はい」
「しかし坊主」
グン=ジェムは今度はニコルの顔をまじまじと見た。
「何でしょうか」
「御前はあまり戦争に向いてはいない顔だな。優しい顔をしとる」
「はあ」
「何で戦場にいるのかわからねえな。まあそれが戦争てやつだが」
「プラントを守る為です」
ニコルは強い表情になって答えた。
「その為に僕は戦ってるんです」
「プラントの為か」
「はい」
ニコルはまた答えた。
「だから。ブリッツがなおったらすぐにでも」
「ああ、あのガンダム首がねえな」74
ガナンがニコルの言葉を聞いてふと思い出した。
「あれをどうにかするのはちょっと時間がかかるぜ」
「そうですか」
「まあガンダムの首だったらな。オーブに行けばいいか」
「ああ、あのガンダムオーブのやつだったな」
ジンもそれに気付いた。
「じゃあそこに行けばだな」
「す、すぐにかっぱらう」
「かっぱらうってそんな」
「奇麗事だけじゃ世の中はやっていけねえ」
グン=ジェムはニコルにそう述べた。
「時にはそうしたことも必要なんだ」
「ですが」
「御前育ちがいいな」
あくまで反対しようとするニコルの態度を見て言った。
「顔立ちといい。やっぱり御前は戦争には向かないな」
「けれど」
「わかってる。それでも戦うんだろう」
「はい」
強い顔で頷く。
「何があっても。プラントを守らないと」
「そのプラントだけどな。大丈夫なのか?」
ガナンがここで言った。
「あれだけ洒落にならない物量差があるのによ」
「俺達だってそれで結構苦労したな」
「ああ、ロンド=ベルにやられたけどな」
「や、やっぱり数が大事」
「けれど僕達は」
「コーディネイターとかそんなのは問題じゃねえぞ」
グン=ジェムはニコルに機先を制した。
「それで戦争はできねえ」
「コーディネイターでもですか」
「じゃあ御前は一度に十人に囲まれて戦えるか?それで勝てるか?」
「それは」
「そういうことだ。まあわしなら大丈夫だがな」
「俺は十二人相手にしたことがあるぜ」
ガナンは釘を舐めながら不敵な笑みを浮かべていた。
「俺もそれ位はあるな」
ジンも不敵な声であった。
「お、おで十五人。大したことなかった」
「皆さん凄いんですね」
「何、大したことはない」
グン=ジェムは口を大きく開けて笑ってそう述べた。
「わし等なら簡単なことだ」
「まあコーディネイターも結局は普通の人間とあまり変わらないな」
「そういうことだな」
「じ、十人相手にできないと駄目だ」
「はあ」
後の三人の言葉にも呆気に取られた。
「とにかくな」
「はい」
グン=ジェムの言葉に応える。
「まずは一仕事してからだ」
「何かあるんですか?」
「ここの近くに財宝が眠っている。それを頂く」
「俺達は今トレジャーハンターやってるんだよ」
「狙った獲物は外さない」
「お、御前も付き合うか?」
「僕もですか」
「どうだ、分け前もやるぞ」
グン=ジェムも誘ってきた。
「まずは金がないとな。何もならんだろう」
「はあ」
「暫くわし等が面倒を見てやる。心配するな」
ニコルはグン=ジェム隊と一緒に時間を過ごすこととなった。ここで彼はナチュラル達と直接触れ合い、その生活も知ることとなったのであった。そして彼はナチュラルもコーディネイターも結局変わらないことを理解するのであった。
アッツの戦いはもうはじまっていた。ロンド=ベルは得体の知れないバルマーの植物型マシンを相手に攻撃を仕掛けていた。
「くっ!」
「落ちろ!」
アポリーとロベルトがビームでそのマシンを貫く。だが撃墜しても後から次々と現われロンド=ベルを悩ますのであった。
「何かラチがあかないわね」
エクセレンはそんな状況を見て言う。
「やっぱりあの赤いマシンをどうにかしないと駄目かしら」
「じゃあ何とかするか」
隣にいるキョウスケが一歩前に出た。
「エクセレン、後ろを頼む」
「って本当にやるの」
「アラスカのこともある。時間は長くかけられない」
「それもそうね。それじゃあ」
エクセレンも時間が少ないのはわかっていた。ここは悠長なことは言ってはいられない。
「任せて、後ろは」
「私も援護します」
アクアも来た。
「俺はあんたと一緒に行くぜ」
ヒューゴはキョウスケの横に来た。
「それでいいな」
「ああ、頼む」
「それじゃあ一気に」
「仕掛けましょう」
まずはエクセレンとアクアが攻撃に移る。二人の身体がコクピットの中で揺れる。
「オクスタンランチャーシュート!」
「さあ、これならどう!?」
広範囲に乱れ撃ち気味に攻撃を放つ。狙いはあまり定めずに敵への広範囲なダメージを狙った攻撃であった。
だがそれが効いた。それを受けて敵が怯んだからだ。
「よし」
「今だ!喰らえ!」
キョウスケとヒューゴが突進する。ダメージを受け怯んでいる敵を薙ぎ倒しながら正面に突き進む。そして敵の赤いマシン、ベルゼイン=リヒカイトの前にまで達した。
「来ましたね」
ベルゼインに乗るアルフィミィは二人を見て言った。
「また」
「何か戦う度に変な感じになっていやがるな」
ヒュー後はリヒカイトを見てそう呟いた。
「こいつは一体何者なんだ?」
「少なくともまともな奴じゃない」
キョウスケはそれに応えて言う。
「正面からは危険か」
「そうだな、ここは」
ヒューゴもそれに頷く。
「また挟み撃ちだ。それで」
「よし」
「いや、この女の相手は俺だ」
「!?」
「あらら、真打ち登場ってわけね」
空間が開きそこから黒いマシンが姿を現わした。アストラナガンであった。
「アインスト、バルマーに入り込み何を企んでいる」
「アインスト?」
アルフィミィはイングラムの言葉にもこれといった反応は示さなかった。
「それは何ですか?」
「そうか、傀儡か」
イングラムはそんな彼女を見て何かを悟ったようであった。
「またしてもか」
「おい、イングラムさんよ」
ヒューゴが彼に声をかける。
「どうした」
「今アインストって言ったな」
「ああ」
「それは何だ?はじめて聞く名前だが」
「新しい組織なのか」
キョウスケも問う。だがそれに対するイングラムの返事は少なくとも彼等の期待に沿ったものではなかった。
「それもいずれわかる」
「いずれって」
「少なくとも今はこうして話している状況ではない。来るぞ」
「ムッ!?」
「それじゃあ行きます」
リヒカイトの全身からビームが放たれる。それは四方八方に拡がりキョウスケ達を襲う。
「ヌウッ!」
それは彼等といえど完全にかわしきれるものではなかった。キョウスケもヒューゴも少なからずダメージを受けた。
「ちょっとヒューゴ、大丈夫なの!?」
アクアがそれを見て声をあげる。
「フン、この程度」
「この程度って右腕潰れてるのにそんなわけないでしょ」
見れば肩が完全に破損していた。動かせるものではないのは明白だった。
「下がりなさいよ、ここは」
「大丈夫だと言っている」
だがヒューゴはそれを聞き入れようとはしない。
「この程度で」
「あんた、ちょっとは人の話聞きなさいよ」
そんな彼に対して業を煮やしてきた。
「大体いつもあんたは。そんなんだからね」
「あら、何か痴話喧嘩めいてきたような」
「そ、そんなのじゃないですけれど」
エクセレンの言葉に顔を赤くさせる。だがそれでも言う。
「とにかくここはイングラム少佐に任せて母艦に戻って。アラスカじゃまた大きな戦争があるんだし」
「そうだな、アクアの言う通りだ」
キョウスケもヒューゴに言った。
「俺も下がる。だからヒューゴ、御前も」
「クッ」
「まあ再戦の機会もまたあるわよ」
エクセレンが悔しさを滲ませる彼を宥めてきた。
「だからね。ここは引き下がって」
「わかった。イングラム少佐か」
「ああ」
「ここは任せた。頼むぞ」
「わかった。ではアインストよ」
再びアルフィミィを見据える。
「このアストラナガンが教えている。貴様達はこのまま放っていてはいけないと」
「どうするんですか?それで」
「倒す。俺の相手は貴様達でもあるのならば」
その漆黒の翼が大きく開いた。そして力が集まっていく。
「行けっ、ガン=ファミリア!」
まずはそれで攻撃を仕掛ける。それで動きを止める。
続いて。接近し剣を抜いた。Z・O・ソードであった。
「これならば」
「凄いですね」
アルフィミィはそのアストラナガンの動きを見て言う。
「流石です。お話はマーグ司令から御聞きしています」
「そのマーグを操っているのもまた因果だ」
イングラムそう言いながら剣を振りかざす。
「そして貴様もまた。俺はその因果律を解き放つ!何があろうともだ」
「じゃあ私はその因果の中にいるのですね」
「!?」
「人を滅ぼすという因果に」
「何処まで知っている!?」
動きを止めた。間合いを離して問う。
「貴方と同じ位には」
「むう」
イングラムはその言葉により攻撃を止めた。そしてそれはアルフィミィも同じであった。
「それだけです。けれど今はまだお話しません」
「何故だ!?」
「私が動く時になってから。またお会いしましょう」
「待て、何処へ行く」
「ここでの戦いはもう意味がないです。ですから」
去ろうというのだ。そして実際に黒い空間を宙に作ってそこに入っていった。
「御機嫌よう」
「去ったのか。そしてまた」
イングラムは呟く。彼としてもこれ以上ここにいる理由はなかった。
「グローバル准将」
「うむ」
マクロスのモニターに姿を現わし声をかける。
「邪魔をした。ではこれで」
「また何処かへ行くのか」
「そうだ。ではまた」
「そうか。健闘を祈る」
「礼を言う」
彼は何かを追うように姿を消した。それはまるで黒い風のようであった。
「彼もまた何かを探しているか」
万丈はそんなアストラナガンとイングラムを見送って言った。
「それが何かはわからないが。彼もまた世界の為に戦っている。それは間違いないな」
「それはわかりますね」
洸が万丈のその言葉に対して言った。
「アストラナガンも。何かを追っています」
「どうやらこの宇宙にはまだ僕達の知らない脅威がいる」
「それと戦っていると」
「どうやらね。さて、艦に戻ろうか」
洸に声をかけた。
「早くアラスカに行かないと大変なことになるしね」
「ええ」
ダイターンとライディーンも母艦に戻る。そしてロンド=ベルはすぐにアラスカへと向かうのであった。
プラントではこの時最高評議会議長が交代していた。選挙の結果国防委員長であるパトリック=ザラが議長に選ばれたのである。
「ふむ」
パトリックは議長室の椅子に座った。その前には前議長であるシーゲル=クラインがいた。
「どうだ、議長の椅子は」
「座り心地はよくないな」
パトリックはその質問に対してこう返した。
「色々と重みを感じる。わかっていたことだが」
「その言葉を聞いて安心した」
シーゲルはその言葉を待っていたのだ。
「ここで御前が座り心地がいいと言っていたら私は暗澹たる気持ちになっていた」
「安心してくれ、シーゲル」
パトリックはその言葉に笑みを見せてきた。
「私とて国家を預かる者としての重みは知っているつもりだ。ましてや今は危急存亡の時だからな」
「ああ」
「オペレーション=スピットブレイクを発動させる」
パトリックは言った。
「攻撃目標はアラスカだ」
「アラスカ!?パナマではないのか」
当初の予定ではパナマの筈であった。パトリックもそう思っていた。だが彼はここに来てそう言ったのであった。パナマであると。
「まずは謝っておこう」
「パトリック、どういうことだ」
「敵を欺くにはまず味方からだ。だから私は今まで真の攻撃目標を隠していた」
「そうだったのか」
「アラスカを陥落させる。そして連邦に講和を迫る」
「それを圧力にしてか」
「これならば問題はあるまい」
そう述べたうえでシーゲルに問う。
「プラントの独立もな。どうだ」
「確かにな」
シーゲルもそれに頷くものを見ていた。
「それならば。講和も可能だ」
「この戦いにはプラントの未来がかかっている。何としてもやり遂げる」
「そうか。では頼むぞ」
「ああ、任せてくれ。ではすぐに作戦を発動させる」
「うむ」
「プラントの為に」
その目が強く光った。パトリックもまたプラントの為に動いていた。だがパトリックも、そしてシーゲルも気付いてはいなかった。彼等が愛するプラントの中にそのプラントを滅ぼそうとする者がいることに。気付いているのはラクスだけであった。
「そうですか。ニコル=アマルフィは生きているのですか」
「まだ未確認情報ですが」
ラクスは自室のノートパソコンでマルキオと連絡をとっていた。
「シュウ殿のお話ですと今は南方の島にいるようです」
「それは何よりです」
ラクスはそれを聞いて顔をにこやかにさせていた。
「彼もまた必要な人材ですから」
「はい、プラントを救う為に」
「そしてその後のプラントの為に」
ラクスはプラントの将来のことも考えていた。だからこそニコルの生存を喜んでいたのである。
「ところでラクス様」
「はい」
話は変わった。
「オペレーション=スピットブレイクがいよいよ発動されます」
「はい」
それを聞いて顔が引き締まる。
「攻撃目標はアラスカ、ミネルバも参加するのですね」
「ええ。シン=アスカもまた」
彼女は答える。
「運命と共に」
「そうですか、遂に」
「レイ=ザ=バレルもまたそこにいます」
「彼は伝説と共にですね」
「はい、そして私は」
「彼に自由をですか」
「既に地球に向かうシャトルも用意しています」
「左様ですか」
「時は来ました」
その強い顔で言う。
「自由と運命が巡り合う時が」
「ですがその自由と運命は」
「おそらく簡単には分かり合えないと思います。しかし」
「必ず何時かは」
「そうです。では今からキラ=ヤマトと会います」
「真実を話し、自由を渡す為に」
「はい、プラントの為に」
意を決した顔であった。
「今から」
「わかりました。それでは」
マルキオはそんなラクスに賛同した。
「お任せします。そしてプラントを」
「人類を救う為に」
彼女は立ち上がった。そして自宅にいるキラのところにやってきた。
シュウにプラントまで連れて来られたキラは怪我はなおっていた。シュウにより治療されたのである。
だが心は沈んでいた。分かれることになった友人や仲間達のことを考えていたのだ。
「トール・・・・・・」
目の前で撃墜された親友のことを。
「シンジ君、アスカ・・・・・・」
そして何かと世話を焼いてくれた二人のことを。他の皆のこともあれこれと考えていた。
「キラ様」
そんな彼のところにラクスがやって来た。
「貴方にお渡ししたいものがあります」
「僕にですか?」
「はい、こちらです」
それはファイルであった。キラの前に差し出す。
「御読みになって下さい。そして考えて下さい」
「はい」
「これから貴方がどうするのか。それを御覧になってから考えて下さい」
「これは・・・・・・プラントのことですか?」
キラはファイルを開いてそれに尋ねた。
「プラントのことでもあります。そして」
「そして?」
「人類のことでもあります。中を御覧になってからお答え下さい」
「はい・・・・・・えっ!?」
キラはそのファイルを見ているうちにその顔を驚愕の色で覆っていった。
「これってまさか・・・・・・」
「そこあることは事実です」
ラクスは言う。
「それを信じるか信じないかは貴方次第です」
「馬鹿な、こんなことが本当なら」
キラは狼狽の声と共にラクスに対して述べる。
「プラントも。そして人類も。滅んでしまうじゃないか」
「そうです、ですから貴方にお話するのです」
「僕に」
「貴方はそれを止めたいですか?」
キラの目を見て問う。
「人類を救う為に。どうなのですか?」
「僕だって人間です」
キラは言った。
「自分勝手に人類を滅ぼすなんて。そんなことが許される筈がありません」
「では戦われるのですね」
「その滅ぼされる人類には皆がいるから」
それがキラの答えであった。
「僕は戦います。皆を守る為に。それが僕の戦いです」
今彼はわかった。自分の戦うべき理由が。今までは曖昧であったものがはっきりと認識できた。キラは今本当の意味で戦う理由を見出したのであった。
「ですから。行きます」
「迷いはありませんね」
「はい」
迷いはなかった。
「わかりました。それでは」
ラクスはそこまで聞いたうえでまたキラを見た。
「来て下さい。お渡しするものがあります」
「それは一体」
「自由です」
「自由!?」
「はい、それこそが貴方の新しい剣」
ラクスは言う。
「ZGMF-X10A、フリーダムです」
「フリーダム」
「詳しいことはあちらで。さあ」
「ええ」
ラクスに連れられてプラントの軍港に向かう。そこにはシャトルもあった。
「ここですね」
「はい」
ラクスはキラの問いに答えた。今二人はある倉庫の中にいた。
「そしてこれがそのフリーダムです」
「ガンダムですか」
見ればそこには全く新しいガンダムがあった。キラはそれを今見たのだ。
「この機体はニュートロンジャマーキャンセラーも搭載しています」
「ニュートロンジャマーを無効化するのですか?」
「そして核エンジンを搭載し機体が持つ限りの戦闘が可能です」
「凄いですね」
「もっともニュートロンジャマーがなくてもシズマドライブ等もありますのでそちらはあまり意味はないと思いますが」
「そういえばそうですね」
キラはそれに答えた。今人類が持っているエネルギーは何も原子力だけではないのだ。だからニュートロンジャマーがあっても経済活動は最小限の支障で済んでいるのである。
「これを貴方に託します。世界の為に」
ラクスの声が強くなる。
「宜しいですね、キラ=ヤマト」
「僕に」
「貴方の願いにこれは必要な筈です。あの男を止め、世界を救う為には」
「その為の剣なのですね」
「悲しいことですが平和を守る為にも剣は必要なのです」
「ええ」
「ヒイロ=ユイ達はそうであるように」
「彼等のことを知っていましたか」
「リリーナ様には深い感銘を抱いております。平和は強さがあってはじめてなるのもだとあの方に教えて頂きました」
「その力で僕は」
「想いだけでも・・・・・・力だけでも」
ラクスはキラを見て言う。
「出来ないことがあります」
「想いだけでも・・・・・・力だけでも」
キラのその言葉を呟いた。
「その両方があれば。若しかしたら」
「はい、行けるかも知れません」
「わかりました、僕はこの機体を受け取ります」
顔を上げた。
「ですから。もう」
「貴方はこれから多くの戦いを経ることでしょう。ですが」
「最後まで戦います、皆の為に」
「はい、自由と共に」
今キラは新たな剣を手に入れた。そしてシャトルに乗り込みフリーダムと共に地球に向かうのであった。
キラはザフトの軍勢に紛れていた。誰も疑う者はない。彼は今進む。皆を、人類を守る為に。戦う為に。

第百十八話完

2006・10・6  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧